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メルセデス・ベンツとポルシェ、どちらもドイツを本拠地とした人気メーカーですが、この2社が共同製作した「500E」というモデルが存在したのをご存知でしょうか。500Eは今でいうEクラスと呼ばれる車体に、大パワーのV型8気筒エンジンや強化された足回りなどを装備したポルシェ仕込みのチューニングが施された奇跡の1台です。「ポルシェライン」とも呼ばれる500Eは、いったいどんな車なのか、詳しく解説していきます。
W124のフラッグシップモデルとして誕生
当時500Eは、メルセデス・ベンツのミディアムセダン「W124型」の高性能グレードとして1991年春に販売されました。全長×全幅×全高は4755×1795×1410mmと、車幅はベースのW124よりも広く、フェンダー部は大きく張り出しているのが特徴です。
しかし、E500のキャッチコピー「炎の情熱 絹の優美」のように、元々の優美な外観デザインはキープされており、まさに羊の皮を被った狼といえます。1995年4月までに10479台が生産され、日本でも1184台が販売。ポルシェが作ったW124として、人気を獲得したモデルでした。
高貴なボディに隠されたハイパワーエンジン
エンジンはW124のボディに、当時の2ドアクーペ「R129型 500SL」のV型8気筒5.0L自然吸気エンジン「M119E50型」を搭載しています。
最大出力は330PS/5,700rpm、最大トルクは50kgm/3,900rpmという強大なパワーとトルクを発揮し、4速ATながら0~100km/h 加速は6.1 秒をマーク。大パワーゆえにこの大柄なV8エンジンは、W124のボディにはそのまま搭載することはできず、車体の前半部分はほぼ作り直されています。
500E開発が困難だったメルセデス・ベンツ
1989年、V型8気筒エンジンを搭載した500SLが人気を博したことで、メルセデス・ベンツはW124に同エンジンを積んだハイパワーモデル、500Eの製作を決定。しかし、当時のメルセデス・ベンツはR129やW140の開発や製作で手一杯になっており、500Eに人員と場所を割く余裕はありませんでした。
そんな中、メルセデス・ベンツが500Eの開発を委託したのは、同郷でありつつも資本提携などは全くなかったポルシェだったのです。
経営危機を迎えていたポルシェ
一方のポルシェは、1980年代後半からの経営不振真っ只中。主力商品である「911」の売り上げが北米マーケットでは伸び悩み、その状況を一転させるような新型車も生み出せない状態でした。
そんな経営危機の中、メルセデス・ベンツからの救済の手ともとれる500Eの開発依頼にポルシェは応じ、自社のバイザッハ研究所にて開発を開始。ポルシェは開発だけでなく、500Eの前期モデルが販売されていた92年までは、ツッフェンハウゼン工場にて車体の生産も請け負っていました。
その後、名前を変更した後期モデル「E500」が全てメルセデス・ベンツの生産に変わったことから、前期モデルが“ポルシェライン”と呼び分けられるようになったのです。
V8エンジンを搭載するためにボディを大幅加工
ベースの車体にV8エンジンを移植するには、その大パワーを受け止める強靭なボディと十分なスペースが必要でした。そこで、バイザッハ研究所では3.0Lエンジン搭載の「300E」のボディを使い、各部の剛性を強化し、エンジンベイやバルクヘッドの拡大を行ったのです。
くわえて、エンジン移植の際には排気経路の変更が必要となり、モノコック底面のセンタートンネルも拡大する必要がありました。その結果、後席中央のシートはオミットされ、左右が独立したリアシートに変更。500Eの乗員定数は、それまでの5人乗りから4人乗りに変更されています。
各部にあしらわれた強化パーツ
エンジンのほか、足回りのパーツも500SLから移植されており、ブレーキローターはフロント300mm、リア275mmの大型のものを、キャリパーはブレンボ製が採用されています。
それにより、タイヤサイズは225/55R16へ拡大し、ボディはオーバーフェンダー化され、500Eとその他のグレードを見分ける最大のポイントともなりました。他にもバンパー形状の変更、ヘッドライト部にはドライビングライトの増設など、細かな追加箇所もあります。
まとめ
メルセデス・ベンツとポルシェ、それぞれの事情を抱え、お互いが助け合うことで誕生した500E。
ポルシェの高い技術力により完成した500Eは出荷台数こそ多くなかったものの、1550万円という新車価格ながら日本でも大きな反響を呼びました。
それから30年経過した今でも、メルセデス・ベンツとポルシェの共同開発車は500Eの他に存在していません。おそらく最初で最後ともいえる2大メーカー夢の競演で誕生した500Eのような車の存在は、これからも語り継がれ、人々の記憶から消えることはないでしょう。
[ライター/増田真吾]
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