流麗なファストバックスタイルの117クーペは、1968年7月から1981年4月までいすゞが販売していた2ドア4シータークーペです。発売から50年以上経った今もなお「世界で最も美しいスポーツカー」と評され、スポーツカーとしての性能よりも、そのスタイルだけで多くの車ファンを魅了してきました。日伊合作による自動車開発の成功例として、日本の自動車殿堂の歴史遺産車にも認定される117クーペは、まさにカーデザインの革命児なのです。
走る芸術品とも称された117クーペの魅力
1960年代、いすゞでは国産乗用車のイメージアップを図るべく、社運をかけたフラッグシップカーの開発が行われていました。
この開発でデザインを手掛けたのはイタリア・デザイン界が誇る美の巨匠、ジョルジェット・ジウジアーロ氏。そして1966年、彼がデザインしたプロトタイプがジュネーブショーで「コンクール・ド・エレガンス賞」を受賞。さらにイタリアで開催された「国際自動車デザイン・ビエンナーレ」でも、名誉大賞を受賞しました。
その後、このプロトタイプは正式に117クーペと命名。その美しさから「走る芸術品」とも称され、多くの人にとっての憧れの車となったのです。
ジウジアーロといすゞのタッグが生まれた背景
1960年代中頃の日本車市場は、イタリアのカロッツェリア(デザイン工房)と提携してカーデザインを起こすのがブーム。ダイハツの「コンパーノ・バン」、日産の「410型ブルーバード」、マツダの「ファミリア」など、ヨーロッパテイストを取り入れた車で賑わっていました。
そしていすゞも同様にフラッグシップモデルとなるべく117クーペのデザインをイタリアに求め、カロッツェリア・ギア社と委託契約を結びます。そのギア社に在籍していたのがジウジアーロだったのです。
天才ジウジアーロが手掛けた流麗なデザイン(初期型)
ジウジアーロが考えた117クーペのエクステリアコンセプトは、滑らかな流線型のファストバックスタイル。当時のイタリアンデザインに見られたホイールアーチに沿ったフェンダーライン、大きなガラスエリアに細いピラーなど斬新なデザインが随所に見られます。
フロントフェイスは、一体型のバンパーに丸目4灯のヘッドライト。センターには獅子のエンブレムを備えます。ジウジアーロの最大の拘りは、ボディの溶接面やガラスの接合面を見せない配慮。スッキリと1枚の面で構成されたフォルムになっています。
そしてインテリアにも、ジウジアーロならではのセンスが散りばめられています。インパネやステアリング、シフトノブに本物の木材を使うなど随所で高級感を演出。そして7連メーターでスポーティさもしっかりアピールしています。
ちなみに117クーペが発売された1968年当初、いすゞにはこの美しい造形を量産化する機械技術がなかったため、ボディの板金製作や装備は全てハンドメイドで行っていました。そのため月間の生産台数は30台前後、価格は172万円で、現在の価値に換算すると大体620万円(消費者物価指数で換算)と高価。それでも当時は作れば作るだけ赤字を計上していたと言われています。
高級なハンドメイドから量産化により爆発的にヒット
117クーペは1968年から1981年まで間に、2度のマイナーチェンジが行われています。
初期型と呼ばれるモデルはハンドメイドで製造されましたが、1973年の中期型では製造方法がライン生産に変わり、生産台数が飛躍的に向上しました。
また高すぎるコストの削減にも成功し、初期型と比べ車両価格を抑えた117クーペは爆発的にヒット。販売開始以降、初の黒字化を達成。一方で中期型では内装の素材が木材から金属やウレタンに変わり、初期型独特のエレガンスな雰囲気が損なわれてしまいました。
さらに、1977年に登場した後期型では、特徴的だった丸目のヘッドライトが角目に変更。また、内外装に樹脂パーツが多く使われるなど、さらになるコストカットが図られました。そして117クーペはフルモデルチェンジをせずに1981年に生産終了。総生産台数は86,192台でした。
いすゞ117クーペの中古車市場
初期型の117クーペの新車価格は172万円。当時の大卒初任給は平均で3万950円だったと考えると、かなりの高級車であったことは間違いありません。しかし、マイナーチェンジによるコストダウンにより、新車価格も廉価版では100万円前後まで抑えられます。
そんな117クーペの中古車市場(3月15日現在)を覗いてみると、取引台数は16台。最高値はハンドメイド製法の初期型で685万円、最安値は後期型で148万円と共に新車価格を上回っています。
続いて買取り相場ですが、歴史的価値の高い117クーペは一般査定なら95万円、旧車王ならおよそ120万円と高額査定も期待できます。もちろん希少価値の高いハンドメイドなら高額買取も望めます。
まとめ
まさに「魅せる」という1点張りで名車の仲間入りを果たした117クーペ。ジウジアーロ自身も「最高傑作」と称するほどのスタイリングに、現在もコレクターを中心に高い人気を誇っています。
いすゞが赤字採算を覚悟してまで世に出したフラッグシップカーは、それまでの日本のカーデザインの概念を変えたと言っても過言ではありません。
日本とイタリアの技術が融合して生み出された117クーペと言う名の超傑作、もし機会があれば、一度は手にしてみたいですね。
[ライター/増田真吾]
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