日本大衆車の先駆け!アメリカで低評価だったスバル360が高値で取引されている理由

目次
1.まだマイカーが浸透していない時代に誕生した360 2.アメリカでの360の価格上昇 3.360はアメリカの道には適さなかった 4.360の中古車相場と直近のオークション価格 5.まとめ

日本大衆車の先駆け!アメリカで低評価だったスバル360が高値で取引されている理由

日本初の大衆車として、戦後国内の自動車事情を支えてきたスバル360。キュートで印象なフォルムは「てんとう虫」の愛称で親しまれ、現在でも根強い人気を誇っています。しかし、そんな360でもアメリカ市場では辛酸を舐め、辛い時代があったのです。

今回はスバル360がアメリカで受け入れられなかった理由、そして現在は高値で取引されている現状を解説していきます。

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まだマイカーが浸透していない時代に誕生した360

日本では1950年代当時、戦後の経済成長を図るために「国民車構想」という自動車生産計画が提唱されていました。

排気量350~500ccで、価格は25万円以下。さらに、最高時速100km/h、車両重量400kg以下で4人乗車可能という当時の技術では厳しい条件が示され、各メーカーは頭を悩ませます。

そんななか、スバルが1958年に発売したのが360という全長3mにも満たない小さな自動車でした。

機械遺産にも選ばれた技術の結晶

余計なフレームを必要としない「モノコックボデー」を採用し、FRPと0.6mm鋼板を使用することで385kgという軽さを実現。リアに横置きされた排気量360ccの空冷2気筒2ストロークエンジンは、最高出力16馬力ながら4人乗車の状態でも最高速度83km/hを記録しました。

そして、サスペンションには省スペースの「トーションバースプリング」を使用し、家族4人が座れる室内空間を確保しています。

価格は425,000円で、360が発売された1958年当時、一般的なサラリーマンの月収が16,000円程度だったことを考えるとまだまだ高値の花。しかし、時が経つにつれ国民の給料も上がっていき、1970年に生産が終了するころには、累計で約39万台を売り上げる大ヒットとなりました。

創意工夫を重ね、日本にマイカー時代を到来させた360は現代でも評価されており、2016年には日本機械学会が定める「機械遺産」として認定されています。

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アメリカでの360の価格上昇

そんな一時代を築いた360ですが、半世紀経った現在において市場価格が上昇しています。

2020年1月時点のアメリカで10,100ドル(約110万円)だった1969年式の360が、1年後には44,300ドル(約486万円)まで上昇。さらに2020年10月には、上位グレードの「デラックス」が50,000ドル(約550万円)で取引されています。

半世紀も前に販売されていた360の価値がわずか1年の間で4倍以上も上がっているのは、一体どういうことなのでしょうか。

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360はアメリカの道には適さなかった

もともと360は1968年にアメリカ市場でも展開されており、出荷台数は累計1万台とそれほど振るいませんでした。

360は28km/Lという燃費の良さも売りでしたが、当時のアメリカでは燃費にあまり関心がなく、むしろ車体重量の軽い360は「安全基準の低い車」と捉えられ、良いイメージは与えられなかったのです。

アメリカ車と比べた場合の衝突安全性に、加速性、後部ヒンジドアが走行中に開いてしまう問題など、あらゆる点を考慮した上で360は北米の道路を走るには適さない車だと結論づけられました。

なぜ今になって価格が上がってきているのか?

そんな評価の低かった360が現代のアメリカで再評価され、価格も高騰しているのはなぜなのでしょう。日本のクラシックカーには多くのファンが存在しており、時間が経過するにつれ価値は上がっていきます。

そのなかでも日本大衆車の始祖という立ち位置の360は、海外ファンにとってはジャパニーズクラシックとして非常に人気。年数が経つことで価値が増すクラシックカーと、360の持つ歴史的価値が相まって価格の上昇が起こっているのです。

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360の中古車相場と直近のオークション価格

海外での需要が高い360ですが、日本国内の大手中古車サイトでの消費税込みの車体価格は、90万円~220万円。最高額の個体はエンジンの出力アップや、内外装を洗練させた「ヤングSS」というスポーティグレードで、1972年式で走行距離は14,000kmと低走行で、ファンの方なら220万でも高くはない買い物かもしれません。

直近の海外オークションでも50~120万円の相場になっていますが、状態の良いものが出品されれば200~300万越えは当たり前になってくるでしょう。

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まとめ

スバル 360は1958年の発売から日本国内で市民権を得ることに成功し、日本に「マイカー」を定着させました。

比較的安価で、小さな車体に家族4人が乗れるというコンセプトは日本の生活ではピッタリ。しかし、“大きく重く強い”ことが良しとされていた当時のアメリカでは快く受け入れられませんでした。

しかし、現在はその歴史的かつ技術的価値が見直され、クラシックカーとして多くの人々に愛され需要が上昇。日本国内の中古市場でも手ごろとは言えませんが、個体によっては手の届く範囲の価格ですので、360に乗って道路上で周りの注目を得てみるのも面白いかもしれません。

[ライター/増田真吾]

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