海外で日本産スポーツカー人気の加熱が言われ始めてしばらく立ちますが、現在中古車市場でにわかに価格が高騰しているのが、日産R33スカイラインGT-Rです。
販売当初は、R32から大きく印象の変わった大柄なボディが不評を買い、結果的に新車販売台数も伸び悩みました。ここにきて、なぜR33GT-Rが注目なのか、R33の基本情報と合わせてご紹介します。
R33スカイラインGT-Rの概要
第2世代と呼ばれるGT-Rの中で、R33は販売当時不評でした。
動力性能を追求し、ターボエンジンに四輪駆動という現代のGT-Rの礎にもなったスパルタンな印象のR32。そして、シャープでより洗練されたデザインを採用し、第2世代の完成形とも言える精悍なイメージとなったR34。この2台に挟まれたR33は、少し異質な存在です。
十分な速さを持っていながら、不当とも言える低い評価をされていた不遇のGT-R、R33について振り返ります。
バブルに翻弄されたR33
R33が発売されたのは、ちょうどバブル経済崩壊直後の1995年。開発当初はバブル期であったものの、社内でも不要論が出るほど風当たりは強く、開発に当たっては、当初の計画からさまざまな面で変更を迫られます。
例えば、内装にはステアリングをはじめ、一部パーツで全車共通化が図られ、マーチと同じパーツが使用された徹底的なコストダウン。500万円という価格を考えると、チープな印象と言わざるを得ませんでした。
大型化した車体は歴代最長
さまざまな制約の中で開発されたR33ですが、R32からの改善も試みられています。
R32で数少ない不評ポイントだった居住性の低さを改善するべく、車両サイズを一回り大きくし、広い居住空間を確保。しかし、これがユーザーの不評を買う大きな原因となります。
丸みのあるデザインとなったボディと広々とした室内は、ほかの日産車と共通化された内装とあわさって、R32と比較するとまるでセダンのようなイメージでした。
GT-Rに卓越したスポーツ性能と特別感を求めるユーザーにとって、期待はずれになってしまったのです。
走行性能は正常進化!R32より21秒も短縮
走行性能については、GT-Rの名に恥じない進化を遂げています。
まず、大型化によって増加した車重の問題を解決したのがエンジンの進化。型式こそR32と同様のRB26DETTながら、ECU変更、バルブタイミングや吸排気、圧縮比の見直し、過給圧の上昇によって最大トルクは1.5kgmも増強されています。
さらに、車体のサイズアップによりロングホイールベース化したことで、R32の弱点だったコーナリング性能が向上。ニュルブルクリンクでR32が記録したタイムを21秒も縮め、「マイナス21秒ロマン」というキャッチコピーで売り出されました。
販売当時は不評であったものの、R32を凌駕する高い運動性能は、“GT-R”の名に恥じないものだったのです。
今後R33スカイラインGT-Rの価値が爆上がりするかもしれない
車そのもの価値以外に、中古車の価格を決定する要素は、需要と供給のバランス。バランスが崩れ、市場への供給以上に需要が高まると価格は高騰します。
R33GT-Rの中古車は、現在急激に需要が高まりつつあり、今後の価格の高騰が予測されるモデルの一つです。
アメリカで新車販売されることの無かった第2世代GT-Rが、輸入解禁と共に需要が高まるのは既にR32で証明済み。さらにR33GT-Rは、生産台数が少なかく、市場に残る中古車の数も限定されています。
25年ルール適用でアメリカの門戸が開く
正規ルートで販売していない車をアメリカに輸入するには、かなりハードルの高い基準をクリアする必要があります。
ところが、発売から25年を経過すると、この規制が緩和され、比較的自由に輸入できるようになります。これがいわゆる「25年ルール」です。
1995年発売のR33は、2020年からこの25年ルールの適用対象となりました。これまで主に日本国内需要しかなかったところに、一気にアメリカのコレクターの需要が加わったことで、価格が上昇しているのです。
また、販売当時は不評だった「大型化」ですが、比較的体格の大きなアメリカ人や、ファミリー層から評価されています。
希少価値が価格高騰に拍車をかける
R33が高騰する可能性が高いもう一つの理由は、生産台数の少なさです。
販売当時、バブル経済が終焉した直後ということと、不評だったことから、販売台数が伸び悩み、1.6万台しか生産されませんでした。この台数は、同じく25年ルールによって高騰したR32の3分の1ほどの台数です。
輸送中には販売先が決まるほど加熱している現在の状況は、暫く続くと見られ、今後R33スカイラインGT-Rの価格動向から目が離せません。
欲しいなら今すぐ買っとけ!R33スカイラインGT-Rの中古車相場
R33スカイラインGT-Rの価格高騰はすでに始まっています。大手中古車サイトで販売価格を調べたところ、完全ノーマルながら低走行の無事故車で1600万円以上(2021年7月執筆時点)という価格で販売されている個体もあるほど。
また、旧車王での直近の買取価格も上がってきていて、最大700万円の値段がつくこともあります。これまでご紹介した通り、今後さらに価格が高騰する可能性が高く、現在購入を検討されている方は、すぐに車を探した方がいいかも知れません。
一方で、買取については、今後年数が経過すると、経年による劣化の分、査定価格が下る可能性もあります。
もし自宅に眠っているR33スカイラインGT-Rがあるのなら、このタイミングで一度買取店にご相談されることがおすすめです。
まとめ
アメリカ市場でのR32GT-Rの中古車価格の高騰は記憶に新しいところですが、2020年の25年ルール解禁をきっかけにR33スカイラインGT-Rにその軸足が移りつつあります。
もともと国内でも再評価され、需要が伸びていたモデルなので、海外需要まで伸びると今後の価格が落ちることは無さそうです。
新車販売当時、あれだけ不評だったR33スカイラインGT-R。新車価格を上回る価格で取引されるようになるとは、当時、さまざまな制約の中で開発せざるを得なかった日産の開発担当者でさえ予想していなかったことでしょう。
[ライター/増田真吾]
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