かつてフェラーリ348やホンダ NSXより速いと言われた国産車がありました。それが国産ミッドシップスポーツカーの扉を開いた、トヨタSW20型MR2です。しかも新車価格はたった300万円。
販売当初は、過敏なハンドリングが不評だったものの、トヨタ開発陣は市場投入後も改良を続け、国産ミッドシップスーパーカーと言っても過言ではないレベルにまで昇華させました。今回は、SW20の特徴と進化について詳しくご紹介します。
トヨタが手掛けた本格ミッドシップスポーツカー2代目MR2(SW20型)
初代MR2であるAW11は、FF車であるカローラをベースに開発され、安価なミッドシップスポーツカーということで、一定の成功をおさめます。
このAW11の成功を元に、本格的ミッドシップスポーツカーとして開発されたのが、2代目MR2であるSW20です。
先代AW11からの大幅アップグレード
SW20型のMR2は、初代となるAW11からのアップグレードをテーマに開発されました。
特に力を入れて改善されたのが、スタイリングと居住性。結果、ミッドシップレイアウトを存分に活かし、イタリアンテイストとも言えるスタイリングを実現しました。
大型化による居住性の改善と共に、バブル景気を背景にした豪華な内装が施し、1989年~1999年の10年間販売される国産ミッドシップスーパーカーが誕生します。
伝統の名機3S-Gを搭載
SW20のエンジンは、車格に合わせてアップグレード。セリカGT-FOURにも搭載され、当時トヨタのレースシーンで欠かせなかった3S-Gを採用し、2Lという排気量ながらターボ搭載の3S-GTEは、最高出力225馬力を発生させました。
大型化したにも関わらず、当時としては優秀な、0-60mph加速(約96km/h)6.1秒を記録しています。さらに1993年のマイナーチェンジで、最高出力は245馬力にアップ。フェラーリ348やNSXに勝るタイムを叩き出すまでに進化します。
乗り手を選ぶじゃじゃ馬から誰でも乗れるスポーツカーへ
SW20登場時は、デザイン面でAW11の弱点を補えていたものの、スポーツカーとしての評価は決して高くありませんでした。
各部の性能がダイレクトに走行性能に反映されるミッドシップレイアウトは、ミッドシップスポーツカー開発ノウハウの乏しいトヨタにとっては大きな挑戦だったのです。しかし、トヨタ開発陣は改良を続け、SW20がミッドシップスーパーカーとしての地位を確立するまでに高めました。
登場初期のハンドリングはピーキー
SW20登場時、もっとも不評を買ったのは、ピーキーなハンドリング性能。元々FF用に開発された重心の高い3S型エンジンに貧弱な足回り、ハイトの高い14インチタイヤと、腕に自信のあるドライバーでさえ、手に汗握るハンドリング特性でした。
ミッドシップレイアウトは、スポーツカーとしては理想的なレイアウトとという印象がありますが、他のレイアウトに比べ荷重移動が激しいという欠点があります。そのため、重心バランス、足回りの設計などが伴わなければ、操りにくい特性に仕上がってしまうのです。
AW11の開発経験があったとはいえ、FFレイアウトを基本に開発をしてきたトヨタにとって、ミッドシップレイアウトの本格スポーツカーの開発は挑戦の連続でした。
10年間の間に4度もマイナーチェンジ
SW20には、通称I型からV型と呼ばれる5つのモデルが存在します。
トヨタ開発陣は、度重なるマイナーチェンジで、I型販売当初未成熟だったミッドシップレイアウトを完成の域にまで高めたのです。
如何に現在でも高い人気を誇るスーパーカーに仕上がっていったのか、SW20の各モデルの変遷と特徴をご紹介します。
II型(1991年~)
最初のモデルチェンジでは、まずピーキーなハンドリングの改善に取り組みます。
タイヤを14インチから15インチにサイズアップし、フロントサスペンションの改良。スタビライザーの大型化と、足回りを中心に見直し、ハンドリングの安定性向上を図りました。
III型(1993年11月~)
2度目のマイナーチェンジでは、マイナーチェンジとは思えないほどの変更が加えられます。
まず最大の変更はエンジンの大幅なパワーアップ。LジェトロからDジェトロへの変更し、ターボチャージャーの改良、燃料ポンプの大型化などで20psアップとなる245psを獲得します。(NAモデルは15psアップの180ps)
また、外観もリアスポイラーやテールランプのデザインを変更、サイドモールやボディ下部の塗装をボディ同色にするなど、内外装共に大幅な変更が加えられました。
IV型(1996年6月~)
三度目のマイナーチェンジは、小幅な変更に留まります。前回のマイナーチェンジで搭載したスポーツABSを4輪独立制御に変更し、トラクションコントロールシステムにも変更が加えられました。
V型(1997年12月)
最後のマイナーチェンジとなる、4度目の変更では、いよいよ完成形とも言える進化を遂げます。
NAエンジンは、吸排気の見直しにより、排気量1Lあたり100馬力となる200馬力まで最高出力が高められました。外観ではタイヤハウス下部にエアスパッツが追加され、リアには可変式大型スポイラーを装備。空力性能が高められると共に、見た目も完成形と呼ぶに相応しい仕上がりとなります。
また、内装もシート、ステアリング、シフトノブ、メーターの目盛り色に至るまで細かく見直され、スポーツカーのコクピットとして機能美に溢れた仕上がりになりました。
SW20の中古車相場について
SW20型MR2の中古車価格は、マイナーチェンジの世代、グレードによって大きく開きがあるのが特徴です。
安価なものは80万円ほどから購入可能な一方で、最終V型の限定車は480万円ほどに高騰しているので、世代、グレードをよく確認して予算に合わせて選ぶと良いでしょう。
海外での日本車スポーツカー人気の追い風もあり、買取価格は最大150万円ほどと、年式を考えると高値で安定しています。
まとめ
国産ミッドシップスポーツカーのパイオニアとも言えるSW20型MR2は、トヨタの開発陣の粘り強い挑戦によって、名車と呼ばれる域に達しました。
各世代とも特徴があるので、中古車を選ぶ際は求める性能やデザインによって、選ぶモデルが変わってきます。同じ型式の車種で世代によってこれだけのバリエーションのある車種も珍しいので、是非自分好みの一台を探してみてください。
[ライター/増田真吾]
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