7月の中旬、フランスでは「le14 juillet(7月14日の意・パリ祭り)」と呼ばれる祝日がありました。
この日は、さかのぼること1789年、大騒乱に包まれていたパリが、国民によってバスチーユ牢獄を奪取した日。
フランスの絶対王政の終わりを祝した大切な祝日です。
午前中から軍隊によるパレードや航空ショー、夜にはエッフェル塔付近で花火の打ち上げがあり、フランスのバカンスの始まりも意味します。
そんななか私はというと、フランスとスイスの国境付近にある夫の実家で数日間過ごしてきました。
テラスで座ってのんびりとしていたとき、一台のクルマが通過。
すぐに彼が「2CVだ!」と。
そうです、フランス人が愛してやまないシトロエン2CVでした。
しかもお隣さんということで、すぐに義兄が見学の交渉に。
すんなりと承諾をいただけたため、翌日伺うことになりました。
■家族から譲り受けた大事なクルマ
お隣に住むフレデリックさんが所有しているクラシックカーは、シトロエンの2CV special 4vitesse 1987年式です。
29馬力のこのクルマを、2011年より奥様のご家族から譲っていただいたそうです。
ちなみに、彼にとって初めてのクラシックカーだとか。
まったく動かない状態でガレージに保管されていましたが、すべてのパーツを探して取り寄せて修理をされたエピソードを、とても楽しかった思い出としてお話ししてくれました。
やはり長いこと国民に愛されているシトロエンです。
フランスには、現在廃盤となっているシトロエン社の古い型を買い取って、修理用のパーツを製造販売している会社があるようです。
フランス人はクルマの修理だけではなく、家の修繕やキッチン・トイレの配管など、できる範囲は自分たちで直して長く愛用する人が多いのです。
フレデリックさんももちろん、このクルマをこうした会社やサイトで何年もパーツを探して走れるまでに修理をされました。
外装の素敵な赤色は完全にオリジナルで、「年季が入って色褪せてきても絶対に変えたくはない」と語るその少しオレンジがかった赤色は、本当にかっこ良かったです!
逆に内装はすべて変更していて、奥様が作られたデニムのカバーで覆われたシートや小さなフィギュア、ところどころに貼られているステッカーが、フレデリックさんの個性とクルマへの愛着を感じさせてくれました。
■レッツ ドライブ!!!
話を聞いていると、なんとフレデリックさんがドライブの提案をしてくれました。
天気がよかったので、くるくると屋根を開けて、さあ出発です!
私にとって初めての2CVでしたが、サスペンションが効いていてビックリするほど良い乗り心地。
正直、くねくねの田舎道にクラシックカーは、そんなに相性が良いものではないだろうと考えていました。
しかしスピードを保ったまま回るたび、小坂を上がるたびに、体の振動や歪みを吸収してくれたので、たいへん快適で本当に楽しくドライブができました。
このクルマのお気に入りポイントを伺ったところ、田舎のデコボコ道でも安定していて転ばないところとおっしゃっていたのが納得です。
10年以上大事にお手入れをして、現役で走っているこのクルマとの思い出を聞いてみたところ、毎年一緒にbottes de paille(刈り取った藁の束)の横で家族写真を撮っていることだと教えてくれました。
お子様たちが成長しても、変わらず愛着のあるクルマと生活をしている姿がたいへん素敵です。
前のトラクターが積んでいるのかbottes de paille(藁束)です。
この横にクルマを置いて家族写真とは、想像しただけでも絵になります。
その日の夕方、テラスでアペロ(夕飯前のお酒)をしていると、フレデリックさん家族が2CVに乗って外出されていきました。
おそらく祝日の花火を観に行かれたのでしょう。
クラシックカーだからといってガレージの中で眺めるだけではなく、自分で修理をして、このように家族と過ごすためにいろいろな場所へ行くことが醍醐味なのだと感じました。
快くクルマを紹介してくれたフレデリックさん家族には、感謝でいっぱいです。
■2CVと一緒にめぐるパリの街並み
今回の滞在から帰るために鉄道に乗っていたとき、車窓から2CVを発見。
パリではなかなかクラシックカーを見かけないので嬉しくなりました。
現在パリでは「PARIS AUTHENTIC」という会社が、観光客向けに2CVを使ってパリの観光ルートを巡るサービスを始めています。
▲オリジナルではありませんが、シトロエンの型を使って作られたクルマです
タクシーを使うよりも気分が上がるかもしれませんし、フランスらしい良い思い出になるのでは?
ぜひ、パリに訪れた際に乗車してみるのをお勧めします!
[ライター・画像 / スミ]