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日本車の歴代モデルを振り返ると、「登場した時は斬新で大注目されたけど……売れゆきはイマイチ。そして、ほどなくして絶版という悲運に」というクルマは意外と多い。
しかし、なかには「コンセプトが時代の先を行きすぎ、登場が10年、いや20年早すぎただけ!君たちはいいクルマだよ」と熱く語りたいモデルもある。
そして、今、後継モデルを発売すればヒットするかもしれない、というモデルもある!
筆者の好みが多分に含まれるが(汗)、「魅力にあふれる」それらのモデルを数台取りあげ、讃えていこうじゃないか。
■どこか不器用な憎めないヤツ。その存在にエールを贈りたい、ホンダ エレメント
時代の先を行きすぎ、登場が10年、あるいは20年早すぎた日本車といえばホンダ エレメント(2003年登場)だろう。
開発もデザインもホンダ北米法人だけに、クルマ全体にアメリカ~ンな雰囲気が漂っている。
なにせ開発コンセプトが「ビーチのライフセーバーが詰めるライフガード・ステーション」。
サーフボードが積める室内設計、左右は観音開きドアで風通しバツグンと、「ロサンゼルスのビーチのことしか考えてないでしょ!」とツッコミたくなるつくり。
観音開きドアはユニークだけど、それ以上に使うのがちょいと面倒くさかったことを今でも筆者は覚えている(笑)。
不幸にも、そのツッコミが当たり、エレメントの日本での販売は2年ほどとかなりの短命。
でもね、カクカクした四角いデザインのなかには「個性のホンダ」がいっぱい詰まっていると思う。
同じようなデザインのSUVだらけの現代、見た目はこのままでe:HEVモデルを売れば、注目される可能性高し。
筆者はそう感じる。
■このままのデザインで今の時代に合う「クーペSUV」を出せば大注目間違いなし!いすゞ ビークロス
SUVの流れで、次はいすゞ ビークロスの登場だ。
1997年に登場したクルマとは思えない斬新な外観デザイン。
このデザインだけに限定すれば「まさに登場が20年早すぎたクルマ」と太鼓判を押せる!
全体的に丸みのあるスタイルで、無塗装PPで作られたボディの下部と絶妙な流れがあるオーバーフェンダー。
フロントマスクには洗練さが漂い、スペアタイヤが内蔵されたリアドア……と、どこをとっても斬新で格好いいと、誰もが認める素晴らしさ!
しかも2ドアという部分にスペシャリティ感があり、今、世界的人気の「クーペSUV」を26年も前にいすゞは発売していたのだから、まさに感嘆!
……が。乗り込めば「車内の雰囲気はまんま、ミュー・ウィザードだね!」と腰砕けするところも(笑)、ビークロスの憎めないところ。
ミュー・ウィザードのプラットフォームを採用していたので、車内の雰囲気だけでなく走破性も本格クロカン。
見た目はスタイリッシュ、それでいてタフな走り。
そのギャップ萌えもこのクルマならでは! と感じる。
海外では乗用車も販売中のいすゞ自動車。
思い切ってこのビークロスそのままのデザインで、今の時代に合う「クーペSUV」を出せば、世界中の話題をさらうことができるだろう。
きっと。
■どれがヘッドライト?と「惑わせ上手」な顔が懐かしいぞ、日産 ジューク
斬新なデザインのSUVとして挙げないわけにはいかないのが、日産 ジューク(2010年登場)。
現行トヨタ プリウスをはじめ、今「目つきが妙なモデル」が大人気だが、それを先駆けていたのがジュークといえよう。
なにせ、どれがヘッドライト?上部にあるシャープなものはウィンカーですか?……という感じで、目つきが妙なうえに「惑わせ上手」な顔。
この要素だけでも時代の先を行っていたといっていい。
そして全長4135mmという手頃サイズは、今大ヒット中のトヨタヤリスクロスの全長4180mmと同等。
ラウンドした塊感あるスタイルは、ヤリスクロスとは別方向の個性を発揮しているので、今、後継モデルを販売していたならヒットしていたはず。
惜しい。
……え?欧州では2代目を販売中ですって!(写真を見ながら)
こ、これは格好いい。
このままのカタチで、日産自慢のe-POWER搭載モデルを日本で売れば、「小さめ超個性派SUV」として人気者になるはず。
ぜひ、日本でも!
■確かに脇役ではあったが、光るものがあった日産 ミストラルの3ドアショートボディ
日産のSUVといえば、ミストラルも登場が10年早すぎたモデルだろう。
26文字前、「SUV」と書いたが、ミストラルが登場した1994年当時は、まだSUVという名称のカテゴリーではなく「クロカン」と言われていた。
製造国であるスペインの風を感じる丸みを帯びたオシャレなスタイルは「クロカンにしては優しすぎる!」というイメージが盛られ、販売面はパッとせず。
2.7L、直4ディーゼルターボ搭載という硬派な一面があるにもかかわらず……。
ゆえに、SUVカテゴリーが急成長した10年後の2004年頃にこのままのスタイリングで登場すれば、ミストラルの命運も変わっていただろうと思う。
加えて、オシャレさが増す3ドアのショートボディもいい。
筆者、大好きでした。
もしかして今、この3ドアショートボディのミストラル後継モデルを発売すれば、飽和状態のSUV界に風穴を開けるかもしれない。
■日本車史上、初の市販ミッドシップ。今こそ大いに拍手を贈りたいトヨタ MR2
希望を含めた結論から先に述べましょう。
「BEVも視野に入れ、全方位で開発を進めている今のトヨタさん。あの格好いい超コンパクトスポーツのMR2の後継をBEVモデルで発売してほしい!」と。
今見ても……初代(1984年登場)も2代目(1989年登場)も格好いいスタイリングのMR2。
その初代は日本車史上、初の市販ミッドシップモデルだ。
ショーで出品したコンセプトカー、SV-3をほぼそのままのカタチで発売させたトヨタの心意気に「いいネ!」と賞賛を送るクルマ好きも多かったはず。
低コスト化を図るため、エンジン(1.5L、直4)や足回りなどは既存のカローラのものを流用と、中身的にはちょいと「うむむ…」という部分もあったが、それでも他社にはない2人乗りコンパクト2ドアクーペの存在感。
そのスペシャリティ感は注目の的だった。
その後のビッグマイナーチェンジでスーパーチャージャーモデルが追加され、Tバールーフが備わるモデルまで登場。
話題に事欠かないヤンチャ坊主(でも格好いい)という印象だった。
■趣味的BEVモデルとして、MR2後継をぜひ発売してほしい、トヨタさん!!
1989年には2代目MR2が誕生。
2人乗りコンパクト2ドアクーペというクルマの立ち位置は変わらなかったが、セリカ/コロナベースとなったので初代よりサイズアップ。
曲線を取り入れたデザインは目を引くものがあり、初代と2代目、どっちがいい?と、もし聞かれたら「どっちも好き!」と即答するほど筆者の好みだ。
大ぶりなスポーツモデルでないわりには、車重1270kgという重さなどネガな部分も指摘されたが、セリカと同じ2L、直4にターボを追加したマッチョなパワートレーンはなかなかのもの!
トヨタ MR2。
2世代にわたり「孤高のコンパクト2ドアクーペ」を貫いたが、時代のニーズが薄まったこともあり、残念ながら1999年を最後に販売終了となった。
MR2の項目の冒頭にも述べたが、BEVへも舵を切りつつあるトヨタ。
趣味的なBEVモデルなら、MR2後継モデルの登場も大いにありそうだ。
ぜひとも!
■登場が20年早かったというよりも、32年後の今も視線を集めるはずの日産 フィガロ
最後は日産 フィガロ(1991年)に登場いただこう。
ご存じ、初代マーチをベースにした、Be-1、パオに続くパイクカーシリーズの一台。
最近はテレビのバラエティ番組で、バナナマン・日村勇紀がフィガロに乗っていることもあり、「あのクルマ、何?」と注目もされている。
このフィガロ、今まで紹介したクルマたちと取りあげる意図が異なり……爆発的に売れたモデルなのである!
当初は8000台の限定生産だったが、希望者殺到で2万台に増大。
イギリスをはじめ、世界でも人気が高かったこともトピックだ。
1991~1992年のわずか2年間しか販売されなかったが、インパクトも人気も絶大だったクルマ。
それもそのはず、レトロな雰囲気に仕立てあげられた小型オープンカーで、インパネデザインも白ベースのレトロ調。
加えて白の本革シートの仕立ても好演出。
さらには直4、1Lターボ搭載で走りは必要充分!
登場が20年早かった……というよりも、「32年後」の今、e-POWER搭載で後継モデルを発売すれば、日産のラインナップに華やいだ彩を与えるはず。
最後にひと言。
デザインが完成されているフィガロなので、あまりいじらないで販売してほしい。
日産さんへの願いは、これ!
[ライター / 柴太郎 ・ 画像 / Dreamstime]