タイ最大のカスタムカーショー「バンコクオートサロン2023」は日本にいるかのような空間だった

目次
1.10年以上の歴史を誇るバンコクオートサロン 2.タイで根付いているカスタムカー文化 3.タイらしい「マイペンライ」の精神を感じる開催日程

カスタムカーの祭典として、多くの自動車ファンから注目を集める「東京オートサロン」。実は、東南アジアの人気観光地であるタイにも「オートサロン」という名前を冠したカスタムカーイベントがあるのをご存じでしょうか。2023年も「バンコクオートサロン2023」として、6/28〜7/2の5日間にわたりバンコク近郊のインパクトチャレンジャーホールで開催されていました。

東京オートサロンとのつながりも深い、バンコクオートサロン2023の様子をタイのカスタムカー事情や日本車人気とともに紹介します。

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10年以上の歴史を誇るバンコクオートサロン

バンコクオートサロンの歴史の始まりは、10年以上も前にさかのぼります。初開催は2012年「バンコク・インターナショナル・オートサロン2012」というイベント名で、「東京オートサロン」と正式にライセンス契約を結び開催されました。

バンコクオートサロンはコロナ禍で中止期間もありましたが、基本的に毎年開催されています。自動車メーカーに加え、ホイールや足回り、エアロなどのチューニングパーツメーカーも数多く出展。半分旅行気分でバンコクを訪れている特別感を抜きにしても、単純に自動車ファンとして楽しめる充実したモーターショーでした。

まずは、5日間にわたって開催された、2023年のバンコクオートサロンの概要を紹介します。

展示車輌の多くが日本車

会場奥の広いスペースを確保していたのは、トヨタ、ホンダ、マツダ、いすゞといずれも日本の自動車メーカーです。さらに、東京オートサロン2023の出展車輌の一部も船便ではるばる海を超え、バンコクオートサロンに展示されていました。

タイでは日本車が人気で、街なかでもトヨタやホンダの車をよく見かけます。アフターパーツメーカーやチューニングショップも、日本車を中心にデモカーを制作していました。また、CUSCOやOGURAクラッチといった日本のアフターパーツメーカーもブースを設けるなど、耳に入ってくる言葉を意識しなければまるで東京オートサロンにいるのかと錯覚してしまいます。

90年代JDMが大人気

日本のオートサロンは、メーカーを中心に現行車種か比較的新しい車輌の展示が多いですが、バンコクオートサロンのメインは、1990年代の日本車。

トヨタ 80型スープラやAE86型トレノ、マツダ FC3S型RX-7、日産 R32型スカイラインGT-R、ホンダ EG型シビックなど旧車ファン垂涎のラインナップが、メイン会場のいたるところに展示されていました。

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タイで根付いているカスタムカー文化

タイの自動車ユーザーの多くは、思い思いのカスタマイズを楽しんでいます。ホイールやマフラー交換、追加メーターの装備といったライトチューンからエンジンスワップまでカスタマイズ内容は日本と変わりません。タイ名物のトゥクトゥクまで、カスタムマフラーの低音を響かせて走っていたのには非常に驚きました。

特に日本車ベースのカスタムカーが人気で、各々が個性的なスタイリングを楽しんでいます。車検が厳しいうえ、車離れの進む日本以上にカスタムカーへの熱量を感じました。

日本のオートサロンにはない、一般参加も大いに盛り上がったバンコクオートサロン2023のカスタムカーについて紹介します。

現地のアフターパーツメーカーも力を入れた展示

バンコクオートサロンでも、現地タイのアフターパーツメーカーが数多く出展していました。特にホイールメーカーの出展は、ブースも大きく目立っていた印象です。

また、足回りについてはタイ特有の事情があるようで、オリジナルサスペンションを製造する「TunerConcept」の社長は、「タイの舗装路は、日本のようにきれいではありません。タイで快適に走れるよう、オリジナル設計のサスペンションを開発しました」とブランド立ち上げの目的を明かします。一方で「日本製のアフターパーツは、品質が高くタイ人にとても人気ですよ」と、日本人として嬉しい一言も付け加えてくれました。

ちなみに、サスペンションの販売価格は日本円で8万円前後と、日本のパーツメーカーの価格とほとんど変わりません。東南アジアというと物価の安いイメージがありますが、所得も徐々に上がってきた影響で、一般層の顧客も多いとのことでした。

ユーザー参加の展示イベントも開催

バンコクオートサロンでは、ユーザー参加の展示イベントも開催されています。日替わりでテーマが設定されており、チューニングショップやオーナーズクラブを中心に同じ車種が集合し展示されている様子は圧巻です。

R35 GT-Rといった最新車種もありましたが、展示の中心は旧車。ホンダデーでは、EFからEG、EK型までのシビックやDA、DC型のインテグラなどが展示されていました。AWDがテーマの日にはGD型インプレッサやランサーエボリューションの各世代が勢揃い。他にも日産 A31型セフィーロが集合した日もありました。

タイらしい「マイペンライ」の精神を感じる開催日程

最後に、バンコクオートサロン2023の開催日程が、いかにもタイらしい日程だったことについても紹介します。タイには「マイペンライ」という、「大丈夫」や「問題ない」「気にしない」といった意味の言葉があります。

今回のバンコクオートサロン2023では、会場の広さに対して出展社が少ない点が気になり、出展していたメーカーの方にお話を聞いてみたところ、驚くべき回答が返ってきたのです。

タイ最大のレースイベント「バンセーン・グランプリ2023」が全く同じ日程で開催されており、メーカーやチューナーはそちらにかかりきりで多くの団体が出展できていない、さらに自動車ファンの多くがレースイベントに参加しているため例年より来場者は少ない印象とのこと。

日本であれば、東京オートサロンにスーパーGTの開幕戦や最終戦をぶつけるようなもので、関係者間で日程の調整を図るべき事態です。しかし、タイでは「マイペンライ」。出展者も「こちらに来たい人が来てくれればそれでいい」とあまり気にしている様子はありません。いかにもタイらしい精神を感じた瞬間でした。

[執筆・撮影 / 渡邉 篤]

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