兄弟が亡くなった場合、誰が被相続人の車を相続するのかについて、遺言書をもとに決定していく必要があります。しかし、必ずしも遺言書があるとは限らないうえに、肝心の相続について記載がない場合も少なくありません。
今回は兄弟のクルマを相続するケース、相続することになった場合の具体的な手続きと流れ、必要書類などを紹介します。
兄弟のクルマを相続するケース
兄弟のクルマを相続するケースは、以下のいずれかです。
ケース1: 遺言書で車を相続させることを指定している場合
亡くなった兄弟が遺言書で自分の車を特定の兄弟姉妹に相続させる旨を指定している場合、その指示に従って車を相続することになります。
ケース2: 法定相続人である場合
法定相続人になった場合、兄弟のクルマを相続できる可能性があります。
法定相続人とは、被相続人の財産を相続する権利がある人のことで、民法で相続順位が定められています。具体的な相続順位は、下記のとおりです。
第一順:配偶者・子ども(直系卑属)
第二順:父母・祖父母(直系尊属)
第三順:兄弟姉妹
参考:民法「889条」
つまり、兄弟に配偶者や子ども、父母などがいない場合は、兄弟姉妹にクルマを相続する権利が与えられる可能性があります。
兄弟姉妹が複数人いる場合は、下記のように均等に分配されます。
長男:被相続人
長女:1/3
次男:1/3
次女:1/3
他の兄弟姉妹が亡くなっている場合は、代襲相続人として、被相続人の甥や姪が法定相続人となります。代襲相続人とは、被相続人の子どもや兄弟姉妹が亡くなっている場合に、代わりの相続人となる人のことです。
ただし、代襲相続は兄弟の甥や姪までしか発生しません。甥や姪の、子どもや孫は代襲相続人になれないことに留意してください。
また、被相続人に配偶者がいる場合、兄弟姉妹は以下の分配で相続します。
配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4
兄弟姉妹が複数人いる場合は、1/4を人数で均等に分けて相続します。
兄弟のクルマを相続するときの流れ
まず前提として、自動車を相続する人全員が名義変更をする必要があります。
どのように名義変更をすれば良いのか、以下で流れを確認しましょう。
-
1.対象車の正式な所有者を確認する
故人が使っていたクルマだからといって、名義が故人本人になっているとは限りません。
例えばローンで該当車を購入した場合などは、名義が信販会社や自動車販売店、ディーラーになっているケースが考えられます。また、リース契約で車を使用していた場合は所有者がリース会社であるケースもあるでしょう。
クルマの正式な所有者は「自動車検査証」(車検証)上で確認できるので、相続が発生した時点でまず故人の名義になっていることを確認しましょう。
2. 新しい所有者を決めて「遺産分割協議書」を作成
新しい所有者を決める際は、最初に遺言書で次の所有者が指定されているかどうかを確認しなければなりません。
故人が遺言書で車の相続者を指定している場合は、その遺言書に従います。
遺言書がなかったり、車の相続に関する記載がなかった場合は、誰が自動車を受け継ぐのかを遺産分割協議で決める必要があります。名義変更には協議の内容に基づいて作成する「遺産分割協議書」が必要です。この協議書には法定相続人全員の署名と捺印があることが必須です。
また、クルマの価格が100万円以下である場合には「遺産分割協議成立申込書」という簡易な書類でも手続きが可能です。
3. 警察署で車庫証明の申請をし、必要書類を準備する
運輸支局で名義変更をするために必要な書類を集めます。
なかでも車庫証明は受け取りまでに時間がかかるため、早めに申請しましょう。ただし、車の置き場が故人の使用していた場所と変わらない場合は車庫証明は必要ありません。
車庫証明の申請場所は、これから登録する車庫証明の場所を管轄する警察署です。当日持参する必要のあるものを所轄の警察署に事前確認してから、申請に行くようにしましょう。
当日は所定の申請用紙に必要事項を記入し、必要書類と一緒に提出します。この申請用紙は運輸局や自治体のウェブサイトからダウンロードが可能です。
申請から交付まで約1週間ほどかかるため、申請後に発行された頃になったら再度管轄の警察署に出向き、交付を受けましょう。
4. 運輸支局で名義変更の手続きをする
1から3までの手順が無事に終わったら、名義変更を行います。必要書類を運輸支局へ持参のうえで手続きします。受付時間は平日の限られた時間帯のため、直接行くのが難しい場合は委任状を用意して代理人を立てることも検討しましょう。
5. 名義変更完了後の手続き(クルマの新しい所有者になったらすること)
名義変更によって自身が新しい所有者になった後の対応については、今後クルマをどうしたいかによって異なります。「相続した車に乗り続けるのか?」「相続したクルマを売却するのか?」また値段がつかない等の理由で売却できない場合は、「廃車するのかどうか?」などの選択肢が考えられるでしょう。以下、パターン別に手続きのポイントを解説します。
パターン1. 相続したクルマに乗り続ける場合
この場合は、自動車保険の引き継ぎや変更をする必要があります。故人の利用していた保険の保険会社に連絡しましょう。
パターン2. 相続したクルマを第三者に売却したい場合
この場合は、ディーラーや中古買取業者に連絡しましょう。通常の売却時に必要な資料に加え、以下の書類が必要です。
・被相続人の戸籍謄本
・遺産分割協議書
なお、通常の売却に必要な資料は以下のとおりです。
・実印
・印鑑証明書
・自動車検査証
・自動車税納税証明書
・自賠責保険証
・リサイクル券
パターン3. 相続した車を廃車したい場合
必要書類を揃えて運輸支局で手続きをし、廃車手続きを行います。詳細は管轄の運輸支局のホームページで確認しましょう。
兄弟のクルマを相続するときの必要書類
ここでは、兄弟の車の相続における名義変更の際に必要な書類一式を紹介します。
相続人が1人だけで、その1人が相続するパターン
・故人の戸籍謄本 (全部事項証明書)
・相続人の戸籍謄本 (全部事項証明書)
・相続人の印鑑証明書 (発行から3ヶ月以内のもの)
・相続人の実印
・車検証 (原本)
・車庫証明書
複数人の相続人のうち1人が相続するパターン
・遺産分割協議書 (もしくは遺産分割協議成立申込書)
・故人の戸籍謄本 (全部事項証明書)
・相続人の戸籍謄本 (全部事項証明書)
・相続人の印鑑証明書 (発行から3ヶ月以内のもの)
・車検証 (原本)
・車庫証明書 (40日以内のもの)
なお、名義変更の際は費用も発生します。自身で全ての手続きを行う場合は約6,000円、行政書士やディーラーなどに代行を依頼する場合は1万円以上はかかります。
兄弟のクルマを相続するときの注意点
兄弟の車を相続することになったときに何に注意したら良いか見ていきましょう。ここでは重要かつ見落としがちなポイントを2点ご紹介します。
自動車保険も名義変更する
相続した自動車に乗り続ける場合は、自動車保険の名義を変更する必要があります。自賠責保険と任意保険はいずれも名義変更しましょう。名義をそのままにしておいて万が一事故を起こした場合は、補償が受けられない場合があります。
相続税が課税されないか確認する
兄弟のクルマを相続するときは、相続税が課税されないか確認しましょう。預金額や不動産などを相続したときと同様に、クルマも相続税の対象です。
ただし、遺産の合計が基礎控除額より少なければ相続税はかかりません。基礎控除額は、下記のように相続する人数によって金額が異なります。
計算式:3,000万円+(600万円×法定相続人数)
1人:3,600万円
2人:4,200万円
3人:4,800万円
相続するクルマとその他の財産の合計が、上記の基礎控除額を超えていないか確認してみてください。
評価額(クルマの価値)を調べる方法は下記のとおりです。
・買取相場価格による評価
・売却査定価格による評価
・減価償却による評価
なお、相続税の申告で漏れがあり税務署から指摘された場合は、ペナルティが課されるケースがあることに注意が必要です。正確に相続税を計算したい場合は、専門家に相談するとよいでしょう。
車検が切れている場合は手続きが複雑
車検が切れているクルマは、通常通りに名義変更できないため、相続手続きが複雑です。車検切れのクルマを相続するには、まず車検を通さなければなりません。
相続したクルマを処分する場合は、車検に通す必要はないものの、解体業者にスクラップを依頼した後に「移転抹消登録」をする必要があります。
また、車検切れでは公道を走行できないため、仮ナンバーを取得しなければ、整備工場や運輸支局にクルマを持ち込めません。
相続する際に必要な書類のほかに「移動報告番号と解体通知日が記載された書類」や「永久抹消登録申請書」などを揃える手間もあります(処分する場合)。
クルマの相続はただでさえ複雑なものの、車検切れの場合はさらに手間がかかることに留意してください。
▼なお、下記記事では車検切れのクルマを相続する際の、対応方法や注意点を具体的に解説しています。廃車にしたいときの手続きについても解説しているため、相続したクルマの処分を検討している場合は参考にしてみてください。
車検切れのクルマを相続するときにはどうしたらいい?対応方法や注意点を解説!
旧車の買取なら「旧車王」におまかせ!
長い時間を共にした愛車だからこそ、売却先にもこだわりたいという方は多いのではないでしょうか。
旧車王は、旧車に特化して20年以上買取を続けております。旧車に関する実績と知識なら、どこに負けない自信があります。また、ご契約後の買取額の減額や不当なキャンセル料を請求する「二重査定」も一切ございません。誠実にお客さまのクルマと向き合い、適正に査定いたします。
全国どこでも無料で出張査定にうかがいますので、大事な愛車の売却先にお悩みの方はぜひ「旧車王」にご相談ください。