著者がドイツで生活を始めて、約一年が経過した。
この国でクルマを所有している人にとって、一度は疑問に感じたことがあるのではないだろうか。
そう、ドイツでは自分の敷地内であっても、決められた場所以外での洗車は禁止されていることだ。
自宅での洗車は連邦政府による禁止事項ではなく、地方条例によって規制されているのだ。
仮に自分の敷地、私道、または公共の駐車場で洗車した場合は罰金で処罰を受けることもある。
ではなぜ自宅での洗車が禁止されているのか?
今回はドイツの洗車事情について解説していく。
■ホースでクルマに水を掛けることさえNG
まずクルマを洗うと、汚れやほこりだけでなく、油やガソリンも一緒に洗い流されるだろう。
これらはただの水と違い、蒸発して消えてなくならないため、環境汚染へと繋がることが懸念される。
このような汚染から環境を守るために、水保護条例が制定されている。
ドイツでは水資源法に従って、有害な物質を水域に流してはならないと規定されている。
従って、私有地であったとしても洗車をする場合、汚れた水が浸透して道路を汚染してはならないというわけだ。
■日曜日は洗車場も使えない?
ドイツでは日曜日になると、スーパーやカフェ、レストランをはじめ、ほとんどの店舗が閉まっている。
これは1900年頃に制定された出店法により、基本的に日曜祝日は休みとし、家族と過ごしたり、教会へいくべきとされているからだ。
例外としては基本的な物質を確保するために、ガソリンスタンドや薬局、また日曜営業の特別許可を申請した一部のお店のみが営業を許されている。
そのため、洗車場は一般的に休業となっており、ガソリンスタンドに併設された洗車場もガソリンの販売のみとなっているところが多いようだ。
しかしこれらは、全国的に統一された規制ではなく、連邦州によって異なるため、中には日曜日も営業している洗車場も存在する。
ただでさえ、自宅での洗車が禁止されている上に、日曜日はどこの洗車場も閉まっているとなると不便極まりないという状況だ。
■洗車をしたい場合は全自動洗車機がお得
上記のような厳しい規制があるため、洗車をしたい場合は決められた洗車場へと行かなければならない。
ドイツの洗車場といえば主に2パターンあり
1.日本と同様に高圧洗浄機と洗剤噴射機が備え付けられた手洗い洗車専用スペース
2.クルマから一切降りずに足回りの洗浄から乾燥、拭き上げまでをすべて自動で行ってくれる全自動洗車機
この2つが存在する。
手洗い洗車の場合は1回1ユーロ(約150円/5月24日現在)と、リーズナブルな価格で高圧洗浄を行えるが、時間制限が設けてある。
従って、洗剤を吹きかけて→ブラッシングして→高圧洗浄して→足回りを洗浄して→また高圧洗浄をする……といった流れだ。
このようにひととおりの工程を行うと、結果的に5〜6ユーロ(約750円〜900円/5月24日現在)が必要になり、最低でも1時間ほどは時間を費やすため、時間とコスパがあまり良くない。
しかし、日本では見かけることがなかったドイツの全自動洗車機はかなり優秀だ。
まず洗車機の入り口へと入り、店員さんに希望のプランを伝えると高圧洗浄機で全体の汚れを落とし、足回りも重点的に洗浄してくれる。
その後、少し進むと次はワイパー下などの洗車機では届かない箇所を洗ってもらい、そのまま20mほどの全自動洗車機へと入る。
洗剤の噴射から始まり、最後は機械が拭き上げまで行ってくれるというシステムだ。
これで所要時間はわずか10分ほど、価格はベージックプランで10ユーロ(約1,500円/5月24日現在)からと、驚くほどにコスパが良い。
洗車機を抜けた時点でほとんど綺麗になっているが、最後の拭き残し等があれば横の室内清掃スペースで仕上げを行えばあっという間に洗車完了だ。
決められた場所でしか洗車ができない分、このような洗車場は平日の昼間でも列ができることがある。
日本では好きな時に好きな場所で出来たはずの洗車が、ドイツでは一苦労だ。
■まとめ:ドイツ人は綺麗好きが多い?
これまでドイツの洗車事情について解説してきたが、ドイツ人は綺麗好きが多いと著者は感じている。
街を走るクルマはどれも綺麗に保たれており、住宅街を歩けば綺麗に手入れが行き届いた庭ばかり。
スーパーや日用品店へ行くと洗車関連商品や清掃用品が豊富に取り揃えており、価格も非常に安い。
だからこそ、綺麗好きが多い国で洗車ができないというギャップに驚かれた。
しかし、必ずしもすべてが不便というわけではなく、自宅での洗車ができない分、全自動洗車機という日本では見かけることがなかった便利なシステムがこの国には存在した。
これには長年、クルマ業界に携わってきた著者も感動した。
日本でも導入されればきっと洗車好きを唸らせるはずだ。
[ライター・撮影/高岡ケン]