10月1日から中古車の販売価格が「支払総額表示」になって、間もなく3か月が経過しようとしている。
支払総額表示?何それ?と初耳の方もいらっしゃるかもしれない。
なぜ、「支払総額表示」が義務化されたのか。
一社)自動車公正取引協議会の公式サイトには、「大手等専業店の中古車販売の問題点を解決するための対応」と記されている。
中古車販売の問題点は、ユーザーに直接かかわってくる。
知らずに言われるがまま不明瞭な費用を収めることがないよう気を付けて欲しい。
支払総額表示や購入時の諸費用、オプション費用などについて正しい知識と情報を持っておくことは、これから旧車をはじめとした中古車を買おうとしている人にとって非常に大切である。
簡単に言うと、本来は車両価格に入れるべき費用を諸費用としてユーザーに負担させ、逆に必須ではないオプション費用を「外せない」として見積もりに計上するなどの不適切行為を禁止し、明朗な会計にするのが主たる目的である。
なお、支払総額表示の義務化が対象となる店は自動車公正取引協議会や中販連(JU)の会員店となるが、わが旧車王を運営するカレント自動車も会員である。またカーセンサーやグーネットなどの大手中古車情報メディアも含まれているため両誌に掲載される中古車はすべてが支払総額表示の対象となる。
では、支払総額表示とは何なのか?内容と義務化された経緯について理解し、悪徳業者に騙されて不正に多額の費用を払わされることのないよう、どうかよく知っておいて欲しい。
■中古車価格の「支払総額表示」とは?
「支払総額」とは「車両価格」に、当該中古車を購入する際に最低限必要な「諸費用」を加えた価格のことである。
●車両価格とは?
①車両を引き渡す場合の消費税を含めた現金価格で、店頭で車両を引き渡す場合の消費税を含めた現金価格で、展示時点で既に装着済の装備(ナビ、オーディオ、カスタムパーツ)等を含む。
②定期点検整備や保証を付帯して販売する場合、その費用は車両価格に含めて表示する。
●諸費用とは?
保険料、税金(法定費用含む。)、登録等に伴う費用(新規又は移転登録を行う場合の検査登録手続代行費用及び車庫証明手続代行費用)をいう。
しかしこの諸費用には、適切であっても支払総額に含んではいけないものや、そもそも諸費用としては不適切な費用ゆえ、車両価格に含めて掲示する必要がある費用もある。
■諸費用としては適切だが、支払総額に含まれない費用
●1.保険料
①任意保険料(自賠責保険ではないいわゆる自動車保険のこと、購入者により要否が異なるため支払い総額には含まない)。
●2.法定費用
①希望ナンバー申請費用(証紙・印紙代など)
②リサイクル料金(未預託又は追加が必要な装備がある場合)
2.リサイクル料金(未預託又は追加が必要な装備がある場合)
●3.登録等に伴う費用→購入者が行うべき手続きを、購入者の依頼に基づき販売店が代行する場合に発生する費用
①下取車諸手続代行費用→信販会社または他の販売店の所有権留保車両を下取る場合の解除費用
②下取車査定料→徴収する場合は事前に説明し必ず査定書を発行すること
③管轄外登録(届出)費用→県外登録(届出)など管轄外の運輸支局で登録(届出)する際の追加費用
④納車費用→購入者の指定する場所まで配送する際の費用 ※積載車で陸送する場合は許可が必要
■諸費用ではなく、車両価格に含めて掲示する価格
●1.販売店が中古車を販売するにあたり、当然行なうべき作業にかかる費用
「納車準備費用」「通常仕上げ費用」「車内清掃」「ボディコーティング」など
●2.納車前の最低限必要な点検・軽整備や、販売店が必ず実施する軽整備の費用、必ず付帯して販売する場合の費用
「保証費用」「定期点検整備費用」「納車点検費用」「納車整備費用」など、その名称を問わず納車前の「点検」や「オイル、バッテリー交換」等の軽整備の費用。
保証や定期点検整備の実施が条件である場合の費用
●3.その他、販売する中古車の「車両価格」に含まれるべき性質のもの
「土日祝納車費用」「販売手数料」「オークション陸送費」「広告掲載料」などは支払い総額に含まれない費用のため、車両価格に含むべき費用である。
■まとめ
安価な車両価格を提示することでお客を引き寄せ、いざ店舗にて商談となると有料保証や納車準備費用や納車前点検などの費用が車両価格に載せられて、車両本体価格+30〜50万円という金額になったというケースも珍しくない。
これらは近年、大手中古車販売店で当たり前のように行われてきた 「車両価格を安価に表示してオプションで儲ける」というスタイルだ。
このようななか、悪徳中古車店を排除し中古車業界の信頼回復を目的と画期的な取り組みも始まっており、その最たるものが10月1日から中古車の価格を「支払総額表示」と義務付けること規約変更が行なわれている。
中古車販売店で表示した支払総額で購入することができない等、不当な価格表示に対しては、悪質な場合は違約金として100万円(初回最高額)~500万円(再違反最高額)を課すなど厳しい処分がある。
このたびの支払総額表示が浸透し、不正な費用を計上する業者が激減してゼロになり安心して中古車を購入できる環境が整うことを強く願っている。
[ライター / 加藤 久美子 画像・一般社団法人 自動車公正取引協議会(一部) ]