日本車黄金時代の名をほしいままにしている1980~1990年代の国産車。
筆者が物心ついたころには、ニューモデルよりクラシック、今やネオクラシックと呼ばれるような存在に。
しかし現行モデルは興味が持てず。
そんな経緯もあり、高年式のクルマを買うことはないと思っていたのですが……。
1973年型セリカLBも「経年劣化との戦い」に敗北を認め、普段使い用の高年式の軽自動車を考え、いろいろ縁あってRC1型スバルR2がやってきたのが4月某日でした。
最近は疎遠になってしまった知人に、初期型S13型シルビアに長年乗っていた人がいます。
風の便りでその知人もまたシルビアは保存に回し、今は某コンパクトハイブリッド車を普段使いにしていると聞きます。
もしかしたら、今後は1980~1990年代のクルマのほうが「経年劣化との戦い」が激化するかもしれません。
■勝負は3日間
急遽、筆者の所にやってきたR2。
「お金はかけず手間をかける」で、臨番運行、名義変更、登録車検、保管届はすべて自分ですることにしました。
最大の難関は車検です。
半年前まで動いていたし、改造車でもキャブ仕様のクルマでもないので、灯火器類とワイパーさえ見ておけばいいだろうと、一か八かこのまま車検を通してみることに……。
1日目
まず購入したスバル360専門店で自賠責保険に加入。
その足で区役所へ臨番運行の申請に行き、いわゆる「仮ナンバー」を申請し、筆者の住民票を発行してもらいます。
この時点で翌々日の1ラウンド目に車検の予約を取ります。
2日目
前日申請した臨時運行許可証と臨番を持ってクルマ屋さんへ。
クルマを取りに行くのでクルマに乗っていくわけにいかず、久しぶりに公共交通機関を利用することに。
名古屋市交通局の市バスとガイドウェイバスのゆとりーとラインを乗り継いで、守山の某スバル360専門店に向かいます。
ナンバープレートはすでに返納されていたので、そのまま仮ナンバーを取り付けます。
念のため灯火器類とワイパーと警笛の動作確認、ただ「HIDが光量不足という事態もありうるので気を付けて」と一抹の不安も……。
一旦、運行届の経由地にも書いたいつものガレージに移動します。
ウォッシャー液とクーラントとブレーキフルードの残量を確認し、油脂類の漏れがないことを確認。
ここで、ワイパーゴムが硬化して切れかかっていることが判明したのです。
すぐに近くのホームセンターで新品のワイパーゴムを調達するも、ブレードが純正と違っていたようで、現物で形状と長さを確認する必要がありました。
実は一番てこずったのは、ワイパーゴムの選定だったかもしれません。
あとは下回りをしっかり洗車し、ガソリンを満タンにして翌日の車検に備えます。
3日目
継続車検なら、最寄りの小牧の軽自動車検査協会で済みます。
しかし今回は名義変更と中古新規登録があるため、名古屋市港区の軽自動車検査協会に行く必要がありました。
1ラウンドで予約を入れているのと、エンジンやエキゾースト周りのカーボンが少しでも飛ばせればと、名古屋高速を使って名古屋市港区まで走行します。
軽自動車なので住民票だけで名義変更は可能です。
重量税を納付し、ラインに並びます。
この日のうちに通検できなければ諦めて、どこかの業者に整備と車検に出すという「安物買いの銭失い」コースも覚悟していました。
幸い、特に問題なく車検に合格。
晴れて新しいナンバープレートが交付されます。
そのまま、その足で最寄りの警察署に寄り、保管届を申請します。
登録車の場合、名義変更では実印と印鑑証明が必要で、車庫証明の認可が出てから登録となるため、乗れるようになるまで一週間ほどかかります。
しかし軽自動車は取得して「登録した後ただちに」保管届の申請なので、あらかじめ置き場所が決まっていればその日のうちに乗れるようになります。
この手軽さも近年の軽自動車人気のひとつかもしれません。
■掘り出し物?それとも安物買いの銭失い?
正直、安く買えて軽トラック以外のMT車の軽であれば、グレードも装備も問わないつもりでした。
しかし、筆者が購入したR2は、純正エアロにアルミホイール、キーレスにBluetooth対応の地デジ付きナビ装備です。
エンジンはNAのEN07型ですが、可変バルブのDOHCエンジン、ヘッドライトもまさかのHID仕様。
自分の名義になってから「実は身の丈に合わない物を買ったんじゃないか?」と面喰う始末です。
探していたときは、普段乗りなのだし、エアロ組んだりダウンサスを入れたり「いらんことをしないように気を付けないと」と冗談半分で考えていました。
しかし、いざ蓋を開けてみれると「いらんことをする気が失せるほどの豪華装備仕様(?)」だったのです。
まずは、町工場の多い地区で放置されガサガサになったボディに、最低限の手を入れます。
鉄粉取りの粘土クリーナーで鉄粉を除去し、ポリッシャーをかけてシュアラスターのワックスで仕上げて、鮮やかなプリズムブルーが復活。
実は青いクルマというのは磨くと映えるものなのです。
友人たちと、これで5万円くらいは査定がアップしたんじゃない?と冗談を飛ばせるくらいには仕上がったと思います。
オイルはサービスで交換してもらえたのですが、ファンベルトとエアクリーナーエレメントは後日、某中古カー用品店のジャンクコーナーで適合品の新品(合計で税込み660円!)を見つけて交換しました。
とはいっても自分のクルマになったのに何もしないのも寂しいので、長年使わずに持ってた水中花シフトノブを装着。
さらに、国産車特有の味気ない平板シングルホーンからエアホーンに変更しました。
■結局あちこち手をいれたくなってしまうのは宿命か?
しかし、好事魔多し、そうそう都合よくコトが進むわけでもないのが世の常です。
この際だからスパークプラグも新品にしようと品番を調べると、BKR5E-11が出てきたのですが、よく見ると「SOHC」のみの文字が・・・
筆者のR2は機械式スーパーチャージャーモデルではないものの、可変バルブのDOHCヘッド、まさかと思い、さらに詳細な適合を調べると……。
NAのDOHCと機械式スーパーチャージャー付きで、それぞれ違うプラグが設定されていることが判明。
NAはLKR7AI、スーパーチャージャーはKR8BIというイリジウムプラグ専用の品番。
スーパーチャージャーならまだしも、シングルカム、ツインカムですらプラグを使い分けているあたりが、旧富士重工らしいといいますか……。
4気筒なので4本分のイリジウムプラグが必要となり、軽自動車としては地味にコストがかかります。
サスペンションアッパーマウントひとつにしても、かなりがっしりした物を使っているため、これでは高コスト体質になってしまいます。
他メーカーと価格面と利益率で不利になってしまい、軽自動車の自社製造からの撤退もやむなしだったのだろうな……と改めて感じました。
最近の気温上昇にともないエアコンの効きが悪いと感じるようになり、某カー用品店でエアコンガスを調べて貰ったところ「漏れもなくガスも正常ではあるが、圧縮が落ちている」という診断結果が。
ガスクリーニングやコンプレッサーオイルの交換で改善できるものではなく、コンプレッサー本体を修理するしかないという結論になりました。
都合のいい話というのはそうそうないもので、あとは海外製の低価格品でもいいのでタイヤを新品。
できればアブソーバーも新品(あわよくばガレージでDIY交換も考えていたり)にしたら、あとは最低限の油脂類と消耗品交換だけと思っていたのですが……。
覚悟はしていましたが、グレードの高い人気モデルを格安で買った以上、やはり相応のリスクは避けられないのが世の常とでもいうべきでしょう。
幸い、エアコンは効きが弱いと感じるものの、まったく冷えないわけでもないので、今年はこのまま乗り切って、来年の課題に回そうと思います。
普段乗りの普通のクルマを買ったつもりでいたのですが、人とは違うクルマを好きになる者の宿命からは逃れることができないようです。
[ライター・撮影 / 鈴木修一郎]