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■旧車マニアというけれど
ボクは一見、ディープな旧車ライフを楽しんでいる人、に見えるらしい。
事実、所有するクルマはどれも旧い。
フォーマルな席にも使えるようにと考えて選んだ、メルセデスベンツCLKコンプレッサーがボクにとっての最新モデルだが、それでも2008年式だから、一般的には旧いモデルに属するだろう。
でもね、旧いクルマだから好き、というわけではなく、今、魅力を感じるクルマの年式が「旧い」というだけなのだ。
年式やブランド、生産国へのこだわりより、個々のクルマが持つ固有の個性を楽しむのがボク流の趣味人生活。
常時数台のクルマを所有するスタイルを続けているけど、最近ではなぜか旧いのが集まってきているわけだ。
ただ、若いはずだったボクも古希に近づき、そろそろジャンル別に最後のクルマを決める時期。
そこで、お気に入りの80年式サニークーペGX(HB310)と83年式ブルーバードバン(VJ910)を手放し、憧れの1台を迎えるためのプロジェクトを進行しているのだ。
■なんとなくやってきた「新しい旧車」
▲逆マンハッタンカラーでノーマルルーフの2by2はかなり少ないと思う。このカラーリングのシルバーとブラックを入れ替わったのがマンハッタンカラーだ
そんなとき、突然舞い込んできたのが、ワンオーナー車のGS130型フェアレディ情報だ。
以前、仕事のアシとしてHGS130(280Z)のオートマ車を愛用していた時期があったが、今回のは2000のターボでマニュアル、しかもノーマルルーフの逆マンハッタンカラーでノンレストア車ということ。
本来の計画においての最終追加車は、実用性の高い小型セダンだったが、セダンではないものの2by2だから荷物の置き場に困ることもない。
さらに、他のダットサン系モデルならともかく、フェアレディ属だからムラムラくる。
資金繰りには大きな問題があったが、進行中のプロジェクト完了時に下取りに出す予定のサニークーペとブルーバードバンを先に渡すことを条件に、支払いは後で良いという…。
なんとも甘い悪魔の囁だ。
ということで、資金問題に猶予が与えられてしまったことで気が大きくなったのか、悪魔の囁きに翻弄されたのか不明だが、気がつくとウチには、構想外の「新しい旧車」、83年式フェアレディ2by2 2000ターボ(Z200-T)が、悠然と鎮座していたのだ。
このグレード、日本初のワイドタイヤ215/60-R15を標準としたことでも知られるが、当時サラリーマンだったボクは、その時点での衝撃は覚えていない。
▲初年度登録1983年8月のワンオーナー車。超ワイドタイヤの元祖らしい
■初期状態の問題点チェックを改善しながらドロ沼へ
1994~97年頃、AT車の79年型280Z 2by2を仕事のアシとして愛用していたボクだが、久々にS130型フェアレディを入手しての第一印象は、過去の記憶からのイメージ以上に「デカイ!!」だった。
5ナンバーサイズだから車幅は1690ミリだけど、長さは4620ミリもある。
少し大きいと感じていた910バンより、50ミリ広く、180ミリ長いだけに存在感もデカイ。
そこで、新参の愛車を「デカレディ」と名付け、ジワジワと状態をチェックする。
購入時、外装は仕上げたのでキレイではあるが、窓枠やドア周りをはじめ、ほぼすべてのゴムが傷んでいることが目につく。
これが最初に見つけた要改善ポイントだ。
さらに、全般にキレイではあるけど、運転席サイドサポート上部が少し擦り切れ、乗り降りの際、中の金属部に触れることも少々気になる。
また、予想はしていたが、リアゲートのダンパーがアウト!!
まぁ、根本的な欠陥ではないので、乗りながら、少しずつ改善していけば良いのだが、これが実はドロ沼への入り口なのだ。
■まずはリアゲートのダンパーとシートの問題から
リアゲートは驚異的に重く、ダンパーがアウトでは実用性ゼロなので、モノタロウの汎用品ダンパーでサイズの近いモノを選び、即交換してもらった。
でもね、長さの関係から純正より開口部が狭いし、パワーが強すぎて、リモートオープナーで開けると勢いよく跳ね上がり、閉じる時には大きな力が要求される。
まぁ、我慢すれば使えるけどどうにかできないものかと考えていたとき、フェイスブックで「Fairlady S130 Owner’s Network」というグループを発見したのですぐに入会を申請し、皆さんの対策を教えてもらったわけだ。
そこで得た情報がスバラシイもの。
「テンポイント」というショップで純正タイプの新品が買えるという第1報があり、続いて、アメリカの「Tuff Support」で直輸入がオトクという情報もいただいたのだ。
ボクは、万が一の返品などの手間を考え、国内で対処できるテンポイントに発注。
たまたま在庫切れで、納期には3週間ほどかかったが、到着した商品を見てビックリ!!
アメリカのTuff Support社製のダンパーだったからだ。
つまり、どちらに頼んでも同じモノを手にする結果となるわけ。
価格には多少は差があるのだろうけれど、手間とリスクを思えば、国内調達が正解だったとボクは感じている。
で、この商品、手抜きのない純正タイプであり、なんの加工も調整も必要なく、ボルトオンで交換できるから嬉しくなる。
▲純正タイプのRゲート用ダンパー。アメリカのTuff Support製だが、日本国内にある「テ ンポイント」で扱っている。ボクは楽天市場で見つけた
▲装着作業中…加工の必要がなく、ボルトオンで装着できる
■次のステップはシート
純正シートはかなりソフトタッチだ。
S130型フェアレディは、スポーツカーというより、ゆったりタイプのツーリングカーというイメージが強いクルマなので、それにマッチした仕様にしたのだろう。
だから、代えるのではなく、張り替えるか、穴部分の補修がベストかもしれないが、ボクは硬めのタッチが好きなので、スパルコのセミバケットシートを選択した。
これ、左右両サイドのレバーでリクライニングできるので、車中での仮眠にも便利。
ただ、レールのせいか、ヒップポイントが随分と高くなってしまった。
当然アイポイントも高くなるので、走行中や駐車時の周辺確認は楽。
普段使いの実用車なのだから、むしろ美点といえるかもしれない。
唯一の欠点はシートベルトのショルダー部が安定しないこと。
純正のシートにはシートベルトのサポートみたいなのが付いていたようだけど、ボクのは最初からそれが折れていたので工夫&加工しての流用も不可能。
まぁ、そのうち良いアイデアが湧いてくるでしょう。
▲ほんの小さな穴だけど、中の金属に時々引っかかるので気になるのだ。スパルコのセミバケットに交換した
■大きな問題のひとつがゴム系パーツ
これは、購入時のチェックでわかっていた問題点ではあるけど、現時点で未対策。
強い雨の日に乗ったとき、一時的ではあるものの、結構な水の侵入があったので、早期に対策しないとまずい。
2シーター用のウエザーストリップは、まだ純正が出るようだけど2by2用はなしとのこと。
まぁ何用であれ、加工して置き換えてしまえば機能的解決はできるでしょう。
■自分のモノにしてみてのファーストインプレッション
新車から39年間ワンオーナーの個体で、走行距離は約13万キロ弱という、ステアリングがモモ製になっていただけの、フルノーマル&ノンレストア車両。
さすがにショックアブソーバは交換歴があるだろうけど、ブッシュやマウントは交換していないらしく、ユッタリとした乗り心地ながら、強めの突き上げを感じることも少なくない。
エンジンはターボチャージャー付きのL20ET型で、Z200-Tというグレードだ。
まだ黎明期だった時代の電子制御インジェクション付きだけど、エンジン始動はイグニッションを捻るだけの「儀式レス」だし、即安定したアイドリング状態を保つから近代的なクルマだ。
そういえば、エアコンもバッチリ効くし、パワーステアリングやパワーウインドウ、リモコンミラーという快適装備も満載。
なんとまぁ楽チンなクルマなんでしょう!!
一歩足を踏み入れたドロ沼は、すぐにズルズルとボクを深みに引き寄せる。
そこで、デカレディを、長距離出張を含めた冬場のメイン車両に任命した。
冬場はもちろんスタッドレスタイヤにするが、サイズは、ボクのデカレディの標準である215/60-R15ではなく、冬用は、他のグレードの標準サイズとなる195/70-14インチを選択した。
以前乗っていた280Zは、3速オートマではあったがトルクフルで、ストップ&ゴーを繰り返す渋滞路でも違和感なく快適だった記憶がある。
今回の2000ターボってやつは、ターボが効きはじめるまでの極低回転域でのトルクが細く、チョロチョロ走るのは苦手なんだなと感じる。
3000回転弱あたりからターボがジンワリと効きはじめるけど、決して速くない。
ヒュイーンという過給機独特の音はするけど、最新ターボ車のようなインパクトはない。
あっ、そういえば、ボクの個体はターボメーターが動かない、交換しなくちゃね。
■改良はするけれど、機械的にはノーマル状態を保つ予定
まぁ、このGS130型フェアレディは、ボクのファミリーになってまだ2ヶ月。
これから少しずつ改善しながら、ボクにとって、より快適なデカレディに仕上げていく予定だ。
スポーツカーとはいえないけど、乗っているだけでなんとなく頬が緩む可愛いヤツ。
ノーマルルーフのGS130型フェアレディとニヤけた顔のコンビネーションは、これからが本番なのだ。
▲真横から見ると随分と長い。2by2はカッコ悪いという人が多いようだけど、スポーツワゴンと考えるとカッコイイ!
▲誇らしげなTURBOのエンブレム。ヒューンという独特のターボサウンドを発しながら、重厚な走りを提供してくれる
[画像/ボルボ 撮影&ライター/島田和也]