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読者の皆様は「エンジンマウント」という部品をご存知だろうか?
クルマのメンテナンスが好きな方は、なんとなく想像できると思う。
今回、意外と注目されていない部品「エンジンマウント」に注目をしてみたいと思う。
■エンジンマウントってなに?
「エンジンマウント」とは、エンジンを“車体上に乗せる=マウント”するための部品である。
最近、巷で話題の“マウント”という言葉の意味は、確かに合っている(笑)。
エンジンやミッションは、マウントを介してクルマに固定されている。
部品自体は、ゴムなどのブッシュが内蔵された金属や強化樹脂製のブラケットになる。
取り付け時は、ブラケットが車体側・ブッシュがエンジン側になる。
ブッシュによってエンジンの振動が吸収され、車体側に伝わらない仕組みになっている。
トランスミッションにも同様のマウントが存在し「ミッションマウント」といわれている。
今回「エンジンマウント」と銘打っているが、ミッションマウントも同様と考えていただければと思う。
■エンジンマウントがダメになったらどうなる?
交換歴がない旧車(20年以上経過)の多くは、すでにくたびれた状態になっている可能性が高いと思われる。
というのも、エンジンマウントは重量物であるエンジンを支えている部品であり、常に重さが加わり続けている状態である。
そのため、走行距離だけでなく、経過年数により劣化して、その免振機能が低下してしまう。
エンジンマウントが劣化したことに気が付くきっかけの多くは「振動」になる。
劣化によりブッシュが硬化してしまい、今まで吸収されていた振動が伝わることになる。
また、長年エンジンやミッションの重さを支えていたことから、ブッシュがつぶれてしまい、位置が下方向に落ちてしまうことがある。
そのため、エンジンやミッションの搭載位置にズレが生じてしまう。
ズレによって、他の部品へ負担がかかることや、スムーズなシフト操作を妨げることにも繋がる。
■マウント交換は快適性UPに効果テキメン!
筆者の愛車で、劣化に気が付いたきっかけを紹介したいと思う。
1つ目は、AT車でリバースにシフトした際、振動が発生した。
アイドリングや走行をしていても問題となる症状はなかった。
しかし、車庫入れ等でリバースに入れた際、驚くほどの振動が車体を揺らしたのだった。
後退時、エンジンとミッションが普段と逆の方向に捩じれる動きとなる。
劣化したマウントの収まりが悪くなり、振動が発生していた。
交換する際、外した部品の見た目に大きな劣化は見られなかった。
しかし、新旧の部品を並べたところ、古い部品のブッシュ側の固定点位置が下がっていることがわかった。
事実、マウント交換後はエンジン位置が今までよりも高い位置になったのだ!
それだけ、マウントは劣化して搭載位置が下がってしまっていたのだった。
2つ目は、MT車でクラッチを繋ぐ際、ジャダーのような振動が発生した。
この振動の原因は、ミッション側のマウントの破断が主な原因であった。
交換時、取り外したマウントは劣化して切れた状態となっていた。
車両は、走行距離10万kmの2001年式 三菱 トッポBJである。
同じく10万km目前の2000年式ダイハツ ミラでも、ミッション側のマウントが破断していた経験がある。
両車ともにMTであり、ミッションマウントへの負荷が大きいのかもしれない。
助手席側のタイヤハウス内、アクセスしやすい場所にあるマウントである。
もし、読者の方で同様の気になる振動がある方は、確認されてみてはいかがだろうか。
■強化品という選択肢も!
エンジンマウントには、強化品も存在している。
封入されたブッシュが標準よりも硬いものと思っていただければ、イメージしやすいと思う。
強化品がラインナップされている目的としては、モータースポーツ用途のためである。
TRDやNISMOといった自動車メーカー系ブランドからもリリースされている。
加減速時、エンジンやミッションは大きく揺れや傾き・捩じれといった動きをする。
街中を普通に走る分には、気にならない程度の動きである。
スポーツ走行をする場合、高負荷がかかり動きも大きくなるが、可能な限り小さくしたい。
強化マウントは、それらを抑える役割を担っており、アクセルレスポンスやシフトフィーリングが向上する。
調べたところ、すでに旧車の域に入っている人気スポーツカーにも設定されている。
車種によっては、純正部品が製造廃止になっていることも、おおいにあり得る。
その場合、強化マウントを流用するといった対応策も選択肢の一つとして可能となる。
強化マウントではあっても、劣化した本来の性能が出せていない標準のマウントと比較して、快適性や操舵性能が良くなることは間違いない。
そしてほんの少し、スポーティになる副産物がついても来るのだ(笑)。
■まとめ:エンジンマウントは縁の下の力持ち!
エンジンマウントは、快適な車内空間を保つ、縁の下の力持ちなのである。
常に支え続けていることで、距離は走っていなくとも劣化してしまう。
気になる振動が出ている場合、マウントの劣化を疑って、早めの交換をオススメしたい。
快適性向上だけでなく、他部品への負担軽減にも繋がり、より長く愛車との時間を過ごせることに繋がるだろう。
[ライター・撮影/お杉]