クルマを運転しようとしたときにエンジンがかからないと焦ってしまうでしょう。しかし、その原因は必ずしも深刻な故障とは限りません。実は簡単な操作ミスやその場で対処できる問題である場合も多いのです。
この記事では、エンジンがかからない場合の主な原因や症状、具体的な対処方法について、解説します。
エンジンがかからないときの主な原因
エンジンがかからない場合、どのような症状が出ているのかによって原因を絞り込めます。ここでは、エンジンがかからないときの主な原因と症状について解説します。
燃料不足
十分な量の燃料がないと、他の機関に問題がなくてもエンジンはかかりません。残り5〜6L程度まで減ると、燃料残量警告灯が点灯します。この状態で走行を続けるとエンジンが停止してしまう可能性があり大変危険なため、警告灯の点灯を確認したら速やかに給油しましょう。
燃料は十分に残っているのに、エンジンがかからないケースもあります。これは燃料ポンプの故障や燃料フィルターの目詰まりによって、燃料がエンジンまで正常に供給されていない状態です。
また、寒冷地や長期間使用していなかった場合、燃料タンク内に水分が混入して凍結したり、燃料そのものが劣化したりすることで、エンジンがかからなくなります。
シフトの誤操作・始動手順ミス
エンジンがかからない原因として意外と多いのが、シフトレバーの位置や始動手順の誤りです。特に最近のクルマは安全機能が充実しており、決められた手順を守らないとエンジンが始動しません。
AT車は、シフトレバーが「P」(パーキング)または「N」(ニュートラル)位置に入っていないとエンジンがかからないようにつくられています。シフトレバーを「D」(ドライブ)の位置に入れたままエンジンを切ってしまうケースもあるため、停車時には必ずシフトポジションを確認しましょう。また、ブレーキを踏み込まないとエンジンが始動しないため、手順に問題がないか確かめることが大切です。
MT車は、2000年以前の古い車種を除いて、クラッチペダルを踏み込んでいない状態ではエンジンがかからないように設計されています。AT車と同様に、始動手順が間違っていないかを確認してみましょう。
ハンドルロック
ハンドルロックはクルマの盗難を防ぐための安全機能です。エンジンを切った後にハンドルを左右どちらかに回すと、カチッという音とともにロックがかかります。
駐車時に意識せずハンドルを切った状態でエンジンを停止すると、自然とハンドルロックがかかります。ハンドルロックがかかった状態では、キーを回してもエンジンがかからず、プッシュスタート車の場合はスタートボタンを押してもエンジンが始動しません。
解除方法は車種によって異なりますが、基本的にはハンドルを左右に軽く動かしながらキーを回す、またはスタートボタンを押すことで解除可能です。ただし、ハンドルを強く切りすぎた状態でロックがかかっている場合は、解除がやや困難になることもあります。
スマートキーの電池切れ
スマートキーの電池切れによってエンジンが始動できない場合があります。スマートキーはポケットやバッグに入れたままでドアの開閉やエンジン始動ができる便利な鍵です。しかし、内蔵電池の消耗により車輌との通信ができなくなると、エンジンがかからなくなります。
スマートキーの電池切れが近づくと、ドアの施錠・解錠の反応が悪くなったり、エンジン始動時に「キーが見つかりません」などの警告が表示されたりします。電池切れの予兆に気がついたら、早めに交換しましょう。
ただし、電池が切れた場合でも、スマートキーに内蔵されているメカニカルキーでドアを開けられる場合があります。また、スマートキーをスタートボタン付近にかざしながらエンジンを始動させる緊急始動の方法が用意されているクルマもあります。ただし、この方法は一時的な対応策であり、早めにスマートキーの電池交換を行いましょう。
バッテリー上がり
クルマを動かすための電気量が足りていないとエンジンがかかりません。この状態をバッテリー上がりといいます。長時間クルマを動かさずに放置していたり、ヘッドランプや室内灯を消し忘れたままにしていると、発生しやすいトラブルです。
エンジンをかけようとしたときに「カチカチ」という音がするものの始動できない場合は、バッテリー上がりの可能性が高いでしょう。
また、電気はつくがエンジンがかからない場合は、セルモーターまでは電気が届いているものの、バッテリーの出力が不足していることが考えられます。バッテリー自体が劣化していたり、気温が低くバッテリーの性能が下がったりしているとこの症状が起こりやすいです。
最近のクルマは、メーターパネルにバッテリーマークを表示させたり、警告灯が点灯したりすることで、バッテリートラブルを知らせてくれます。このような警告が出た場合は、早めの対処が必要です。
セルモーターの故障
セルモーターはスターターモーターともいわれる、エンジンを始動させるためのモーターです。正常に動作していると「キュルキュル」という音を発しますが、この音が安定しない場合は故障の可能性が考えられます。
また、エンジンをかけようとしたときに「ガガガ」という異音がする場合も、セルモーターが故障していることが多いです。セルモーターが動いてはいるが、内部の部品が摩耗したり破損したりしていて回りきっていないときに異音が発生します。
冬場や寒冷地での使用
冬場や寒冷地では、気温の低下によってエンジンがかかりにくくなることがあります。低温下ではバッテリーの性能が著しく低下し、エンジン始動に必要な電力を十分に供給できません。また、寒さでエンジンオイルの粘度が上がることで、エンジン内部に上手く行き渡らず始動できなくなります。
寒い時期にエンジンをかけようとすると、セルモーターの回転音が普段より弱くなったり、「キュルキュル」という音が長く続いたりする症状が現れます。このような状態で何度もセルを回し続けると、バッテリーを消耗させるだけでなく、セルモーターにも負担がかかってしまいます。
対策としては、一度の始動操作を長く続けすぎないようにしましょう。エンジンがかからない場合は、5分程度間隔を空けてから再度始動してみてください。また、寒冷地では夜間の駐車時にエンジンをボンネットカバーで保温したり、エンジンブロックヒーターを使用したりすると、改善に期待できます。
エンジンがかからない場合の対処方法
クルマのエンジンがかからない場合、落ち着いて状況を確認し適切に対処しましょう。ここでは、状況別の対処法を解説します。
電気はつくがエンジンがかからない場合
メーター内表示が点灯したりパワーウィンドウが作動したりするなど、電気系統が正常に作動するにもかかわらずのにエンジンがかからない場合は、まずシフトレバーの位置を確認します。シフトレバーが確実に「P」(パーキング)または「N」(ニュートラル)に入っているかみてみましょう。
次に、ブレーキペダルの踏み込み具合を確認してください。踏み込みが浅い場合はエンジンがかからないことがあります。確実にブレーキペダルを踏み込んでから、もう一度エンジン始動を試みましょう。
また、ハンドルロックがかかっているとエンジンが始動できません。ハンドルを左右に軽く動かしながらキーを回す、またはスタートボタンを押すと解除できます。
電気もつかずエンジンがかからない場合
電気系統が全く作動しない場合は、バッテリー消耗や不具合が考えられます。バッテリー上がりが疑われる場合は、ブースターケーブルを使用して他のクルマから電気を供給するか、ジャンプスターターを使用して応急充電を行います。
セルを回したときに「カチカチ」という異音がする場合は、バッテリーの電圧が著しく低下している可能性があります。この場合、無理に何度もセルを回すのは避け、バッテリーの充電や交換を検討する必要があります。
まとめ
エンジンがかからないトラブルは、適切に対策すれば防げます。また、トラブルが発生した際にすぐに対応できるよう、日頃から準備をしておくことが重要です。
日常的な予防策として、クルマを停める際は必ずライトやエアコンの電源を切り、シフトが「P」の位置にあることを確認しましょう。また、週に1回程度は15分以上の走行を心がけることで、バッテリーの充電状態を良好に保てます。
冬場は特にバッテリーへの負担が大きくなります。寒冷時のエンジン始動時は、すべての電装品をオフにしてからエンジンをかけることで、バッテリーへの負担を軽減できます。また、異音や警告灯などの異常が見られた場合は、早めに点検を受けることをおすすめします。
また、もしものときに備えて、ブースターケーブルやバッテリー上がり時の応急処置用品を車内に常備しておくと安心です。また、ご加入の自動車保険のロードサービスの連絡先も、すぐに確認できるようにしておきましょう。
エンジンがかからないトラブルは、突然起こると慌ててしまいますが、本記事で紹介した症状や対処法を知っておけば、落ち着いて対応することができます。定期的なメンテナンスと適切な準備を心がけ、安全なカーライフを送りましょう。