これまで所有してきたなかで、唯一といってもいいかもしれない「自分なりに卒業できたクルマ」がある。
それはマツダ ユーノスロードスターだ。
長くなりそうなので、何回かに分けようと思う。
デビュー当時から、ユーノスロードスターというオープンカーが人気だということは何となく知っていた。
けれど、その頃の筆者はフェアレディZ(Z32型)に夢中だった。
当時はまだ高校生。
運転免許がないので「走りの楽しさ」といわれてもピンとこない。
速くて、パワーがあって、カッコ良くて・・・。
そういった分かりやすいクルマが好きだった。
そんなわけで、ハタチになったら・・・シルバーのZ32 2by2 ツインターボ 5速MTを60回ローンで手に入れ、メーカーオプションの本革シートとBOSEサウンドは必須だな、マフラーはここ、エアロはこれ、ホイールは・・・なんてことを、授業中にこっそりカーセンサーを読みながら夢想していた。
今考えれば脳天気もいいところだ。
ユーノスロードスターの虜になったのは、19才の夏。
運転免許を取得してからわずか半年後のことだった。
まだ初心者マークが取れるか取れないかという当時の筆者に、クルマ好きの恩師が、このとき所有していた純白のユーノスロードスターを1泊2日で貸してくれたのだ。
ユーノスロードスター借りたのは8月のお盆明け、つまり残暑も厳しい(この年、初めて猛暑日を記録したように思う)夏の日だった。
恩師が所有していたユーノスロードスターは、1.6Lエンジンのほぼ最終型、色はシャストホワイト、スペシャルパッケージ。
恩師の好みでシフトノブがウッドに交換されて以外、ホイールやマフラーもノーマルだった。
こっちとしては「MT車を運転できるだけでも幸せ〜」な時期だったし、まさかのFRのオープンカーを自由に運転できる機会に恵まれたのだ。
有頂天にならないわけがない。
恩師からユーノスロードスターを借りたのは夜遅く、23時頃だったと記憶している。
走り出した瞬間、軽い、そして交差点を曲がるだけで楽しい!
走っても走っても走っても足りない・・・。
熱帯夜で周りの空気が暑いとか、もう何時間も水を一滴も飲んでいないとか・・・そんなことを忘れるほど夢中になっていた。
気がついたら夜が明け始めているではないか。
さすがに疲れて仕方なく家路についた。
そして仮眠してふたたび走り出した。
まだカーナビが高級品で、とにかく知っている道を走るしかなかった。
自宅周辺や市街地、山道を含めて・・・気づけば2日で400kmくらい走ったように思う。
あのときの屋根を開けて走る爽快感と、草木の匂い、エンジン音が近くに感じられた記憶はいまでも鮮明に憶えている。
洗車してガソリンを満タンにして恩師にユーノスロードスターを返すのが辛かった。
よし!自分もユーノスロードスターを買おう!
そう決意するまで時間は掛からなかった。
しかし、当時自分が貧乏学生であること、ユーノスロードスターが人気車であり、新車はもちろんのこと、中古車でもかなり割高であることを知り、愕然とするのであった・・・。
(つづく)
[ライター・撮影/松村透]