日産を代表するスポーツカーとして長い歴史をもつフェアレディZ。そのなかでも高い人気を誇るのが初代フェアレディZのS30型、通称「S30Z」です。ロングノーズ・ショートデッキの流麗なボディラインに魅せられ、購入を検討している方も多いのではないでしょうか。
しかし、S30Zは発売から半世紀近くも経過する、いわゆる“旧車”です。憧れの気持ちが強い一方で、いざ所有する際に自分で維持できるのだろうかと不安を感じる方も少なくないでしょう。
そこで今回は、S30Zの維持費と購入時の初期費用について解説します。
S30Zの維持費の内訳
まずはS30Zの維持にかかるおおよその費用について、燃料代、自動車税、任意保険、車検代、メンテナンス代の5項目にわけて解説します。
今回は、1969年に発売されたベースグレードの情報をもとに維持費を算出します。
<S30Z 1969年発売 ベースグレード 情報>
エンジン | L20 |
排気量 | 1,998cc |
車輌重量 | 975kg |
燃料代
S30Zの平均的な燃費は、6〜7km/L程度といわれています。発売された当初のカタログには15km/Lと記載されていましたが、当時の測定方法は現在ほど正確ではないため、実際に走行した場合の数値とは大きく差がある場合も珍しくありません。
また、S30Zは馬力を上げるためにエンジンを載せ替えている方が多い傾向にあります。なかでも目立つのは、日産のL型エンジンの最大排気量 2.8Lを誇るL28への載せ替えです。発売当初のベースグレードに比べると1.5倍近くも排気量がアップすることになり、結果としてメーカーが想定していた燃費より悪化してしまいます。
ここから、実際にかかる燃料代をシミュレーションしてみましょう。
燃費6km/Lとして、1ヶ月あたり300km走行した場合、使用するガソリンは50Lです。2024年6月30日時点のハイオクガソリンの平均価格182.2円/Lをもとに燃料代を算出すると、1ヶ月で9,110円、1年間で10万9,320円かかることになります。
自動車税
自動車税は、エンジンの排気量によって税額が変わるだけでなく、初年度登録から13年以上経過していると重課されます。
そのため、S30Zの自動車税は、5万1,700円(2L超〜2.5L未満、重課後の税額)です。
任意保険
S30Zの自動車保険料を大手のネット型保険でシミュレーションしました。
【条件】
年齢:26歳
等級:6F等級
使用目的:日常・レジャー
走行距離:3,000km超5,000km以下
主な使用地:東京都
運転者:本人限定
【補償内容】
対人賠償(1名につき):無制限
対物賠償(1事故につき):無制限
対物超過特約(相手自動車1台につき50万円まで):あり
人身傷害:あり(車内のみ補償)
人身傷害(保険金額/1名につき):3,000万円
車両保険:なし
上記の条件でシミュレーションしたところ、自動車保険料は年間約4万2,000円でした。ただし、この保険料には車両保険が含まれていないため、車輌トラブルが発生した場合には保険が適用できないことに注意しなければなりません。
車検代
続いて車検代について解説します。
まず、S30Zは発売から50年以上経過するモデルのため、ディーラーでは車検を受け付けていない可能性が高いです。民間の整備工場でも、古いクルマは断られる場合があるため、対応可能かどうかを事前に問い合わせてから依頼しましょう。
【民間車検の場合】
自賠責保険:1万7,650円(24ヶ月)
自動車重量税:2万5,200円(24ヶ月)※初度登録年月から18年以上経過している場合
印紙代:2,300円 ※認証工場の場合
車検基本料金:6万円 ※点検・検査・代行費用
合計:10万5,150円
※車検基本料金は内容や整備工場などにより変動します
S30Zは古いクルマであり、重量税が重課されるものの車輌重量が比較的軽いため、同年代の他のクルマよりは負担を抑えられます。しかし、旧車であるために、車検のたびに複数箇所の部品交換や整備に費用がかかる可能性があることは覚えておきましょう。
メンテナンス費用
S30Zのメンテナンスには、次のような項目があります。
・エンジンオイル交換
・オイルフィルター交換
・冷却水の交換
・グリスアップ
・ディストリビューターのパーツ交換
・キャブレター調整
・ボディのワックスがけ、錆とり
など
金額にすると、年間でおおよそ10万円です。エンジンオイルや冷却水の交換など近年のクルマでもメンテナンス必須な項目に加え、旧車だからこそ定期的にチェックしなければならない箇所があります。
たとえば、グリスアップはパーツ同士の摩耗を防ぐために実施します。最近のクルマのベアリングには事前にグリスが封入されているため人の手で行う必要はありません。しかし、発売から数十年も経過しているクルマの場合、定期的にグリスアップしないとパーツが摩耗して焼付きを起こしてしまう可能性があります。
また、ボディのワックスがけや錆とりなど外装のメンテナンスも重要です。 特に下回りは錆つきやすいため、こまめに点検しましょう。
S30Zの年間維持費はいくら?
ここまでS30Zの年間維持費の内訳について解説しました。すべてあわせるといくらになるのでしょうか。
【S30Zの年間維持費】
・燃料代:10万9,320円
・自動車税:5万1,700円
・任意保険:約4万2,000円
・車検代:5万2,575円(2年ごとのため10万5,150円の半分)
・メンテナンス代:10万円
合計:35万5,595円
月々に換算すると約2万9,000円です。今回算出したのは、あくまで最低限かかる金額のため、突発的な故障が発生したり、走行距離が伸びたりするとさらに費用がかかるでしょう。
購入後のレストアにはいくらかかる?
S30Zの年間維持費について解説しました。しかし、S30Zを購入するにあたっては、維持費だけではなく初期費用についてもしっかりと見積もっておく必要があります。
繰り返しお伝えしているとおり、S30Zは半世紀近く前に発売されたクルマです。何も手を加えずに当時の状態のまま走行させるのは非常に難しいといわれています。現に、多くのS30Zオーナーの方がレストアしてその力を復活させるばかりか、よりパワーアップさせてドライブを楽しんでいます。
主に修理・修復の対象だといわれるのは以下の項目です。
・エンジンのオーバーホールや載せ替え
・トランスミッションの換装
・外装の再塗装
・内装の張替え
など
すべてレストアすると500万円程度の費用がかかります。個体によっては丸々修理せずに走行できる場合もあるため、購入するS30Zの状態を事前に把握し、どの程度の初期費用が必要なのか見積もっておきましょう。
まとめ
S30Zの維持費と購入時の初期費用について解説しました。
S30Zは、旧車といわれるクルマのなかでも、年式が古いほうに分類されます。そのため、維持費も初期費用も決して安いとはいえない金額です。しかし、絶大な人気を誇るフェアレディZの歴史の始まりといえる名車を所有する満足感と考えれば、見合う金額だといえるのかもしれません。
今回紹介した情報を参考に必要な費用を見積もり、S30Z購入の準備にお役立てください。