小型大衆車でありながら、スポーツカー並みの動力性能を誇るマツダ ファミリア ロータリークーペ。コスモスポーツに続いて、量産型ロータリーエンジン搭載モデルに選ばれたのは、大衆車として地位を確立していたファミリアでした。
当時最高の技術で作られたスポーツエンジンと大衆車という意外な組み合わせですが、ファミリア ロータリークーペは欧州レースで活躍して高い実力を証明します。ファミリアにロータリーエンジンを搭載したマツダの思惑も含めて、当時を振り返ってみましょう。
世界2台目のロータリーエンジン搭載車は小型大衆車
ロータリーエンジンが搭載された世界初の量産車はコスモスポーツですが、次の搭載モデルとして選ばれたのが小型大衆車のファミリアでした。夢のエンジンとまでいわれた最新エンジンをいきなり大衆車に搭載するのは、一見不釣り合いで大胆な決断に思えます。しかし、ロータリーエンジンの普及を目指すマツダとしては、当然の選択だったのかもしれません。
まずは、ファミリア ロータリークーペが誕生した経緯を振り返ってみましょう。
ロータリゼーションへの第一歩はファミリアへの搭載
当時「ロータリゼーション」という言葉まで生み出して、マツダは実用化したロータリーエンジンの普及を目指していました。そして、コスモスポーツに続くロータリーエンジン搭載車として、1968年にファミリア ロータリークーペを発売。大衆車への搭載は、ロータリーエンジンをより身近に感じてもらう狙いがあったのではないしょうか。
ファミリア ロータリークーペは、1967年のフルモデルチェンジで登場した2代目ファミリアのラインナップに追加される形でその姿を現しました。しかし、実は開発当初、ロータリーエンジンの搭載予定はなかったといわれています。しかし、ロータリゼーションへの第一歩として、クーペタイプとしてレシプロエンジンを搭載する予定だったファミリア1200クーペのシャシーを流用し、大幅に強化してロータリーエンジンを搭載しました。なお、ファミリア ロータリークーペの発売から3ヶ月遅れて、レシプロエンジンを搭載したファミリア1200クーペも登場します。
小型車だからこそ恩恵が大きかった
ロータリーエンジン最大の特徴は、小型軽量ながらハイパワーを生み出せることです。小型車のファミリアに搭載したことで、ロータリーエンジンのよさが最大限引き出されました。最高速度は180km/hに達し、0-400m加速はわずか16.4秒という俊足振りを発揮します。
ファミリア ロータリークーペのロータリーエンジンは、1ローターあたり491ccの2ローター式です。1Lにも満たないわずか982ccの排気量で、最高出力100ps、最大トルク13.5kgf・mを発生させます。さらに、軽量なファミリアのプラットフォームに搭載したことで、国内トップクラスの動力性能を実現しました。
レースでロータリーエンジンの信頼性をアピール
ロータリーエンジンの耐久性能を世界にアピールしたいマツダは、欧州の長距離レースへの参戦を決めます。発売翌年の1969年に開催されたシンガポールGPでは、200psのレーシング仕様のファミリア ロータリークーペで見事優勝。どのメーカーも量産化にこぎつけられなかった、ロータリーエンジンの実力の高さを証明しました。
さらに、1970年のスパ・フランコルシャン24時間レースには4台を出場させ、21時間目までトップを快走して速さを見せつけます。残念ながら残り3時間でエンジントラブルやアクシデントに見舞われたものの、残った1台は5位入賞。甲高いロータリーサウンドが、欧州のファンの心に印象強く残りました。
ロータリーエンジン以外にもこだわって開発されたファミリア ロータリークーペ
ファミリア ロータリークーペの魅力は、ロータリーエンジン搭載モデルという点だけに留まりません。エンジンスペックを最大限発揮すべく、細部までこだわって開発されました。
また、スポーツモデルにふさわしく、内装もかなり作り込まれています。ここからは、ファミリア ロータリークーペのクルマとしての魅力を紹介します。
作り込まれたボディがハイパフォーマンスを後押し
ファミリア ロータリークーペのボディは、風洞実験を重ねてデザインされています。わずか805kgという車重と空力特性に優れたスタイリングによって、2Lクラスに匹敵する加速性能を実現しました。また、高出力化に合わせてシャシー各部はもちろん、サスペンションやブレーキも強化されています。
ファミリア ロータリークーペに搭載されたロータリーエンジンは、コスモスポーツの同型の10A型だったものの、あくまでも大衆車という位置づけから使いやすさを重視した設計に変更されていました。最高出力は、コスモスポーツの128psから30%近くも低い100psにまでデチューンされています。しかし、最高速度180km/hを発揮する性能を維持しているのは、エンジン以外の部分も作り込まれていたからこそでしょう。
スポーティなT字型パネルが特別感を演出
ファミリア ロータリークーペは、スポーティーカーとしてベースモデルとは異なるインテリアに仕上げられていました。特徴的なのはT字型のインパネで、シフトノブまで一体となった大型のセンターコンソールがスポーティさを高めています。
センターコンソールには燃料計、油圧計、時計の3連メーター、さらにメーターパネルは大型の速度計と回転計が存在感をアピール。エアアウトレットにも円形のデザインを採用するなど、まさにスポーティ車にふさわしいインテリアデザインに仕上がっています。
高級車や特別仕様車に限らない旧車の魅力
ファミリア ロータリークーペは、最高級の内装や他車を寄せ付けないほどの動力性能を誇ったモデルではありませんが、世界で初めてマツダが量産化に成功した、ロータリーエンジンを搭載した大衆車というユニークなモデルです。
また、同等性能の日産 スカイライン2000GTよりも20%近く(当時の価格で16万円程度)安かったことを考えると、ファミリア ロータリークーペがいかに優秀なモデルだったかがわかります。
大衆でも世界唯一のエンジンを手にできたファミリア ロータリークーペは、スペックや内装の豪華さだけでは測れない価値のあるモデルです。発売から半世紀以上経過しているために中古車市場ではほとんど見かけませんが、興味をもった方はぜひ根気強く探してみてください。
一方、ファミリア ロータリークーペを売却する際は、必ず専門業者に相談することをおすすめします。歴史的価値の高い車種であることは間違いありませんが車格的には大衆モデルで、しかも流通量が少ないためノウハウの少ない中古車業者では正しく査定することが困難です。希少車の価値を正しく見極めてもらうには、旧車の買取実績の豊富な専門業者に依頼しましょう。
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