皆様はドイツにおけるHナンバー制度をご存知だろうか。
日本でクラシックカーのイメージといえば、税金が高く、維持するのも一苦労。
…といったところだろうか。
初年度登録から13年以上経過したクルマは自動車税が大幅に上がってしまうのが現実だ。
そんなクラシックカーのイメージを覆す制度がここドイツには存在する。
それがこのHナンバー制度だ。
今回は、クラシックカー大国といわれるドイツにて導入されている「Hナンバー制度」について解説していく。
■1.Hナンバー制度とは
1997年1月1日より、自動車の文化遺産を保護するために導入された。
HナンバーのHとはドイツ語で「Historisch」(歴史的)という意味を表し、ナンパプレートの右側にHが記されるのだ。
ドイツでは一般的に、初年度登録から30年が経過すると、クラシックカーと呼ばれるようになる。
そしてこの国では、クラシックカーの文化を維持するために、Hナンバープレートを取得すると、税負担の軽減などの恩恵が受けられるようになる。
つまり、新しいクルマよりも維持費が安くなるのだ。
なんて素晴らしい制度なんだ。
もちろん、30年経過したクルマが全てこのHナンバーを取得できるかと言われると、そうではない。
このナンバーの取得に際しては、ほぼオリジナルの状態であること、または専門的に修復された車両のみに与えられる。
Hナンバーを取得したクルマだけが、真のクラシックカーとなるのだ。
■2.自動車税は一律3万円!
前述でも述べたとおり、Hナンバーを取得するのは簡単ではない。
まずは大前提として自動車保険に加入しており、車検が有効である状態でなれければならない。
その後、専門家によるクラシックカーの査定、主な検査を行ってもらい、クラシックカーレポートを取得する。
このレポートや車検証などの必要書類を準備し、登録事務所へと提出する。
ここでHナンバーの基準をクリアすることができれば、晴れて登録が完了するというわけだ。
実際に査定や登録などの費用は車両の状態などにより異なるが、おおよそ300〜400€(現在のレートで約6万円)ほどの費用がかかってくる。
それ以降、年間の税金は排気量に関係なく、一律191.73€(現在のレートで28,759円)となっている。
日本では13年以上経過したクルマで、例えば排気量が3000ccの場合、66,700円にもなってしまう。
Hナンバーの税金が実に安いことをお分かりいただけるだろう。
ちなみに、オートバイにもHナンバー制度は導入されており、この場合の税金は一律46.02€(現在のレートで6,903円)となっている。
■3.ドイツで30年以上経過したクルマは100万台以上!?
連邦自動車交通局(KBA)の調べによると、2022年1月1日、ドイツでは30年以上経過したクルマが100万台を超えた。
そのうち、Hナンバーのクルマが648,365台も登録されている。
Hナンバープレートの普及率は驚異の57.3%だ。
これは、古い車の所有者の半数以上が、クラシックカーとして登録していることを示している。
クラシックカーの在庫はここ25年間で常に増加傾向にあり、ドイツにおけるクラシックカー人気は今もなお上昇し続けているのだ。
最も人気のあるクラシックカーは、メルセデス・ベンツW124、SLクラス、 フォルクスワーゲンビートル、バスとなっている。
■まとめ
結果的にHナンバー制度は大成功のモデルとなった。
クラシックカー愛好家は、環境保護区域内でも自由に運転することができ、税金を安く抑えることができるため、Hナンバーを取得しない理由はない。
クラシックカーは自動車の歴史そのものであり、古くなったら終わりではなく、古いからこそ価値があるのではないだろうか。
また、ドイツにおける自動車文化遺産を保存し、維持する姿勢にも素晴らしいものを感じる。
著者は日本にも導入してほしいと切実に願っている。
[ライター・撮影 / 高岡 ケン]