丸目のヘッドライトと個性的なスタイリングが特徴のホンダ シティ。都会派の新しいコンパクトカーとして、こだわり抜いて作り上げられたクルマです。話題を呼んだCMとともに、当時の若者の心を鷲掴みにしました。
現在の軽自動車やコンパクトカーにもつながる、新しい思想で設計された初代シティについて振り返ってみましょう。また、コンパクトカーの枠を超えた走りが人気だった、シティターボⅡの魅力も紹介します。
シティはホンダが提案した都市型コンパクトカー
都市型コンパクトカーとして登場した初代シティは、発表の仕方も都会的でした。東京モーターショーの前夜に、新宿センチュリーハイアットで発表したのです。東京の、しかもど真ん中の新宿で発表したところに、ホンダがシティに込めた思いが表れています。
トールボーイという新しいスタイリングが話題を呼んだ、初代シティの誕生について振り返ってみましょう。
トールボーイという新しいアプローチ
1981年にデビューした初代シティは、都市圏に住む若者がお洒落に乗れるコンパクトカーという位置づけの車種です。トールボーイという新しいスタイリングで、デザイン性と居住性を両立しています。都市型のコンパクトカーとして最適なクルマを作り上げるため、開発の中心にはターゲット層と同じ20代のスタッフが起用されました。
コンパクトカー最大の課題は、居住性の確保です。トールボーイという呼び名のとおり、全高を高くすることでゆとりのある車内空間を実現しました。一方で、ただ全高を高くすると、デザイン性が損なわれてしまいます。そこで、全高が高くてもスタイリッシュにみえるよう、ボディの傾斜や全長とのバランスなど細部に渡ってとことん追求されました。
シンプルながらこだわり抜いたデザイン
トールボーイと呼ばれる初代シティのボディデザインは、実によく考えて作られています。全長の短いコンパクトカーでキャビンの高さを上げると、不安定で野暮ったくみえがちです。しかし、正面からみたボディサイドの傾斜の角度、オーバーハングの長さ、先端部を低くしたスラントノーズなど、絶妙なバランスでスタイリッシュにまとめられています。また、全体的に直線基調のデザインであることも、シンプルながらおしゃれに感じられる理由の1つでしょう。
内装もボディと同様に、直線基調で余計な華飾のないシンプルなデザインです。ドアパネルも含めて抑揚のないデザインとすることで、居住スペースを最大限確保しています。一方で、視認性の高いメーターパネル、やや運転席側にオフセットされているセンタークラスター、各所に設けられた小物入れやポケットなど機能性は抜群です。徹底的に追求された機能美は、車格は異なるもののドイツ車のような雰囲気すらあります。
大きな話題を呼んだテレビCMとモトコンポ
デザイン性の高さと新しさがインパクトを与えた初代シティですが、車輌そのもの以外でもさまざまなブームを作り出しました。まずは、イギリスのバンドマッドネスを起用したテレビCMです。彼らの曲に乗せたラップのような「ホンダホンダホンダホンダ」というフレーズとムカデダンスと呼ばれる動きは、子どもたちの間でも流行しました。
モトコンポという折り畳み式の50ccバイクも、シティとは切り離せない存在です。独特の直方体のデザインが特徴的で、シティの荷室にそのまま積み込めました。おでかけ先でバイクに乗るという、ホンダの遊び心が詰まっています。個性的なデザインは現在でも人気が高く、日本では未発売なものの「モトコンパクト」という電動バイクとして先日復活したほどです。
レース入門車にもなった迫力満点のシティターボⅡ
都市型コンパクトカーとして誕生したシティですが、実は性能面を突き詰めたモデルも存在します。ターボエンジンや専用の架装を施した、シティターボです。
ここからは、性能やデザインにさらに磨きがかけられ、レース入門車としても人気の高かったシティターボⅡを紹介します。
軽量ボディとターボエンジンで味わう過激な加速感
最高出力110psを発揮するエンジンと車重の軽さを活かして爆発的な加速を魅せるシティターボⅡ。0-400m加速は、同年に登場した名機4A-Gを搭載したトヨタ AE86の16.14秒を上回る、15.92秒を叩き出しました。また、加速力を示す指標の1つパワーウエイトレシオは6.68kg/psと、AE86の7.38kg/ps(GT-APEX)を大きく上回っています。
先代のシティターボと同様のER型1.2Lターボエンジンですが、クラス初のインタークーラーを装備したことで10psのパワー向上を果たしました。最大トルクは、シティーターボからさらに1.3kgmアップの16.3kgmを発揮します。
一方で、パワーのあるエンジンを支えるシャシー周りも、シティターボⅡ専用に作り込まれています。トレッド幅を広げることでコーナリング安定性を高め、単なる直線番長ではなく運動性能全体が高められていました。
ブルドックと呼ばれた個性的な内外装デザイン
シティターボⅡは、メーカーのホンダ自らが「ブルドック」と名付けるほど個性的なスタイリングのモデルです。前後に「ダイナミックフェンダー」という名のブリスターフェンダーを装備し、併せて前輪30mm、後輪20mmもトレッド幅が拡大されています。
一方、内装で目を引くのはメーターパネルです。中央に配置したデジタル表示のスピードメーターを取り囲むように、回転式のタコメーターを配すという先進的なデザインでした。また、シートはサイドポートの張り出した、バケット形状になっています。
今でも人気のシティターボII
今見ても個性的なスタイリングと爆発的な加速力を兼ね備え、根強いファンをもつシティ ターボⅡ。登場から40年以上が経つにも関わらず、状態次第では100万円以上の買取価格がつくほどの人気を誇っています。
ただし、走りを楽しむ層の支持を集めていただけに、酷使されている可能性は否めません。中古車で購入する際は、状態を十分見極めることをおすすめします。
売却の際にも、状態によっては思わぬ高値がつく可能性があるため、価値を熟知した旧車専門の買取業者に依頼しましょう。
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