シリンダーの動きがパンチを打ち合うボクサーの様子に似ていることから、「ボクサーエンジン」とも呼ばれる水平対向エンジン。高性能を誇るスバルの代名詞ともいえるエンジンで、現在でもなお新型車に搭載されています。
一方で、実はデメリットも多く開発が難しいために、量産車に水平対向エンジンを搭載しているのはスバルを含めて世界にたった2社しかありません。
水平対向エンジンの特性や開発の難しさについて、わかりやすく紹介します。
水平対向エンジンは理想的なスポーツエンジン
低重心で低振動、しかもコンパクトに設計できる水平対向エンジンは、運動性能を求めるスポーツカーにとっては理想的なエンジンです。
水平対向エンジンはどういった点で優れているのかを詳しく解説します。
物理特性に優れた水平対向エンジン
水平対向エンジンの最大のメリットは、エンジンの振動が理論上少ない点です。左右対称に配置されたピストンは対になっており、互いの振動を打ち消す方向に動きます。エンジンの振動は乗り心地を悪化させるだけでなく、コーナリング時の微妙なハンドリングにも影響するため、スポーツ走行をするうえでは重要なポイントです。
また、水平対向エンジンはコンパクトな設計が可能で、車自体を低重心化できます。シリンダーを横に寝かせるため、直列エンジンのようにストローク長分の高さが必要ありません。車輌のパーツ単体としては最も重いエンジンを、より低い位置に搭載することで安定性と運動性能が向上します。
さらに、シリンダーを左右互い違いに配置するため、エンジンの前後方向がコンパクトになり、スポーツカーにおいては大変有利にはたらきます。重量物であるエンジンは、できるだけ車体の中央に寄せて搭載したほうが運動性能が向上します。前後方向のサイズの小さい水平対向エンジンなら、直列エンジンよりも理想的な配置に近いレイアウトが可能です。
量産車に採用するのは世界で2社
水平対向エンジンといえば、スバルのイメージが強い方も多いでしょう。しかし、世界では、もう1社量産車に水平対向エンジンを搭載している自動車メーカーがあります。ドイツの老舗高級スポーツカーメーカー、ポルシェです。しかも、水平対向エンジンは、ポルシェが実質的な元祖といわれています。
リアエンジンという独特のレイアウトを採用するポルシェにとって、コンパクトに設計できる水平対向エンジンは不可欠でした。エンジンを後部に搭載することで、後輪のトラクションが得やすくなる一方、重心が高くなると走行安定性に悪影響をおよぼすためです。また、スペースの限られる車体後部に収めるという意味でも、水平対向エンジンはポルシェにとって理想的なエンジンでした。
実は万能ではない水平対向エンジン
性能面ではメリットばかりの水平対向エンジンですが、世界でも2社しか量産していないことには理由があります。最も大きな理由は、製造コストが高いことです。また、エンジン全体で見るとコンパクトではあるものの、横幅がサイズ面での足かせになり、どんな車種でも搭載できるわけではありません。
メリットが大きい反面、開発の難しい水平対向エンジンのデメリットについて解説します。
部品点数が多くコストが高い
水平対向エンジン最大のデメリットは、直列エンジンに比べて部品点数が多いことです。まず単純に、シリンダーヘッド、左右それぞれに部品を用意する必要があります。当然部品数が2倍になるため、開発が困難なうえコストの増加は避けられません。
車の開発は車格によって程度の差こそあれ、コストとのせめぎ合いです。いくら性能面で有利でも、搭載できる車種はおのずと限られてしまいます。
横幅の問題で搭載できる車種が限られる
低重心、コンパクトに設計できる水平対向エンジンですが、実は幅が直列エンジンよりも大きくなってしまいます。シリンダーとヘッド部分が左右それぞれに設置されているためです。
水平対向エンジンを搭載するには十分な車幅の確保が必要なため、回転半径の小さなコンパクトカーなどには向きません。また、排気ガスをマフラーへと流すエキゾーストマニホールドの取り回しや補機類の設置など、設計上さまざまな制約が伴います。
低速トルクと燃費面が弱点
水平対向エンジンは、低速トルクと燃費面で開発上の制約があります。低速トルクの発揮には不利なショートストロークのうえ、燃費面においてデメリットの大きいビッグボアという形状を取らざるを得ないためです。
横幅の制約から、水平対向エンジンのシリンダー長(ストローク)は、直列エンジンやV型エンジンに比べて短く設計する必要があります。また、ショートストローク化によって減少する排気量をシリンダー直径(ボア)で補う必要があり、結果的にショートストローク・ビッグボアという高回転型エンジンになってしまうのです。
世界でも貴重な水平対向エンジン搭載車
スバルの高い技術力を世界に示す水平対向エンジン。高出力で低重心という理想的な性能を誇る一方、コストや設計上の制約も多いのが実情です。高コストを吸収できる高級車メーカーのポルシェはともかく、スバルは一般的な価格で購入できる車種に水平対向エンジンを搭載しています。
しかも、初代GC型インプレッサ WRX STiでは、5ナンバーサイズという制約もあるなかで、ハイスペックのEJ20型エンジンを搭載していました。また、レガシィB4といった純粋なスポーツカーではないモデルにも、水平対向エンジンを展開しています。最近では、ピュアスポーツとしてトヨタと共同開発したBRZに、FA20型水平対向エンジンが採用されました。
スバルの水平対向エンジンには根強いファンも多く、低年式車でも一定の人気があります。もし水平対向エンジン搭載車を売却するのであれば、エンジンの歴史や価値までしっかりと見極められる業者に依頼するのがベストでしょう。
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