去る2023年11月19日、茨城県稲敷市江戸崎商店街の通りを使い、『昭和のくるま大集合』のイベントが4年ぶりに開催された。
同イベントは、毎年サテライト水戸という場外車券売り場で開催されていたイベントだ。
200台にもなる昭和に製造(設計)された車輌が集まる、北関東でも屈指のイベントである。
今回『特別編』と銘打って開催された同イベントに主催者から来ませんか?と打診を受けたのは、つい2ヶ月前の10月半ばのことだ。
今年は空冷ビートルのイベントである「Show your VW’S meet」と合同で開催するという。
それはどういったことなのか?
主催者であるクラシックカー愛好家クラブ「バックヤードつくば」の代表である石川氏によれば、例年行なわれてきたサテライト水戸の会場はこのコロナ禍で警備の縮小がされてしまい、会場側がとてもではないが例年通りのイベント規模では安全が確保できないとされてしまったのだそう。
そこに、Show your VW’s meet主催者(えどさきワーゲンミーティング)から、商店街全体(今回のため歩行者天国を150m延長)を使ってのイベントにしたいので、合同開催をできないかと話があったという。
石川氏は急遽有望な参加者を集い、50台限定で開催をすることを決めた。
それだけに参加車輌は粒が大きい。
スーパーカーから名車、珍車、原付バイク…はてはあまり聞かないエピソードを持った車輌など、大いに会場を沸かせてくれた。
■展示会場としての商店街
会場となった江戸崎商店街は、協賛である「稲敷市えどさき街づくり協同組合」が、稲敷市地域おこしの一貫としてバックアップを行なっている。
商店街の中程にある「えどさき笑游館」を中心に、メインストリートでは毎回様々なイベントが開催される。
『昭和のくるま大集合』のイベントは、ケータリングやフリーマーケットが出店され、一般の見物客も多く訪れる。
子供たちが集まった旧車を興味深々で見入る姿もあった。
■4台のゲスト車輌
多くの車輌のなかでも目玉といえるのが、やはりカウンタックだろう。
つい先日仕上がったばかりのこの個体は、オーナーがこだわった碧に塗装されて、11月の日差しに輝いていた。
元々は別の色に塗り直されていたという同車輌は、内装を含めオリジナルに戻されて今に至るという。
オリジナルを追求するオーナーは、なんとスペアタイヤ周辺にまでこだわっていた。
タイヤにはホイル内に工具バッグが収納されているのだが、まず残っていることはない。
それを手に入れるために大変な労力を費やしたとのことだ。
スカイラインGT-Rも、一見すると当時から乗られているという印象のみに思えるが、オーナーはスカイラインの世界では重鎮であり、おぎやはぎの愛車遍歴で準レギュラーのように度々出てくる方だという。
S30クラブジャパンの代表が乗られてきたのが、総生産台数が30台とも50台ともいわれるZ432R。
100kgにも及ぶ軽量化が施された競技ベースのクルマ。
また、現在のZをデザインする際にも一役買っているということだ。
自ら手掛け、エアコンまでエンジンルームに納めた2000GT。
本来つけても後方からの吹き出ししかなかった当時のエアコン(クーラー)。
それをダッシュボード内に納め、吹き出し口も前方にしたことで、大変よく冷えるとのこと。
■バイクだって昭和のクルマ
音楽に乗って紹介で現れたのは、えらく年季の入ったバイク。
ステップではなくペダルがあるこちらのバイクはトヨモーター T6型。
60㏄等排気量で黄色の原付ナンバーを着けている。
つまり今も現役で路上を走っているバイクだ。
このトヨモーターは、まだ戦後の黎明期ともいう頃に愛知に現れたバイクメーカー。
なんと販売店はトヨタ自動車だったという経緯を持つ。
正しくは、扱っていた商社が日新通商という豊田通商の前身だった。
この力を借りて、トヨモーターは全国のトヨタディーラーから販売されたのだ(もちろんその他のチャンネルもあった)。
面白いのはこのバイク、製造方法が国内によくある自社生産スタイルではなく、アッセンブリー式の生産方法をとっていたことだろう。
ヨーロッパではありがちな生産方法だが、国内ではあまりない方法だった。
■筆者が選んだ選考車輌
イベントでは、招待された出版社やジャーナリストが選んだ選考車輌の表彰が行なわれ、筆者もその選考者のひとりとしてランサーGLを選ばせていただいた。
決して特別なグレードではなく、ごくスタンダードなグレードのモデルだ。
塗装を含めオリジナルの状態をしっかりと維持した、というかよくぞここまで生き残ってくれた!ということを理由に選考した。
受賞者には昭和のくるま大集合のオリジナルトートバックを、筆者のサイン付きで送らせていただいた。
■スバリスト集う
商店街の終わり付近に停まっていたスバルの一団。
レオーネやドミンゴといった、筆者でも懐かしく感じるモデルが並ぶ一角。
うっかり話を聞いたら、それはもうスバリストの集まりであった。
スバルに関してとかく熱く語ってくれた。
面白い経緯を持ったのはドミンゴ。
これまたクルマ自体をもあまり見なくなってしまったが、こちらのクルマはある劇場アニメの参考資料として使われた経緯があるという。
この夏公開された「アリスとテレスのまぼろし工場」という映画をご存じだろうか?
その劇中車輌を描くために資料を集めていた監督が、どうしても資料が足りなくて、Webで見かけたオーナーにTwitter(現X)でメッセージを送り打診されたという。
オーナーも当初は危ない人からの連絡かと思ったらしい。
が、よくよく話を聞き、それならと快く応じたとのことだ。
ちなみに、しっかりとエンディングクレジットにオーナーのお名前があったそうだ。
DVDやアマゾンプライムなどで見ることがあったら、ぜひともドミンゴの活躍を見てほしい。
■まとめ
50台という限られた台数、限られた時間内で、すべてを決め開催された『昭和のくるま大集合特別編』。
完璧なレス卜レーションが行なわれたLP400から黎明期のモペットバイクに至るまで、まさに大集合となった。
当日の天候のように、晴れやかで素晴らしいイベントだったと筆者は考える。
開催までの時間や制約を考えれば、主催者始めスタッフの努力はさぞや大変であったであろう。
それでもこのイベントの成功は次回へと繋がる道だと思える。
また来年もこの一直線の商店街に、多くの名車が整列することを願ってやまない。
[ライター・カメラ / きもだこよし]