根強いファンから支持を集める三菱 ランサーエボリューション(以下適宜ランエボと表記)。特に第2世代と呼ばれるランエボIVからVIは、WRC(世界ラリー選手権)で輝かしい成績を残しました。
WRCでの活躍によって「トミ・マキネンエディション」というドライバーの名を冠した特別仕様車も発売されるほど人気を集めた、第2世代ランサーエボリューションについて詳しく紹介します。
三菱の実力を世界に示したランエボ
ランサーエボリューションは、そもそもWRCで戦うことを目的に作られました。そして、三菱は狙い通り、ランエボで実力を世界に証明します。
特に無類の強さを誇った第2世代を中心に、ランサーエボリューションの開発背景と実績を振り返ってみましょう。
ランサーエボリューションは戦うために作られた
ランサーエボリューションは、WRCの当時のトップカテゴリー「グループA」の出場条件を満たすために開発されました。当時の参加車輌の条件は、最低2,500台生産された市販車輌ベースと規定されていたためです。
初代の登場は1992年で、小型なランサーにギャランの4G63型2.0Lターボエンジンを搭載。以降2006年まで、ランサーエボリューションの基本フォーマットとして踏襲されます。
ランサーエボリューションは、1992年から2016年までの14年間で合計10モデル(派生モデルを除く)が販売されました。また、ベースのランサーのフルモデルチェンジにあわせて(ランサーエボリューションXのみギャランフォルティス)4世代に分類されています。
第2世代が三菱の黄金期を作り上げた
ランサーエボリューションのなかでも特に人気を集めるのが、第2世代に分類されるIVからVIの3モデルです。第2世代ランサーエボリューションは、トミ・マキネン選手が全てのモデルでドライバーズタイトル4連覇(最初の獲得はランエボIII)という前人未到の記録を達成。さらに、ランエボVでは、三菱初のマニュファクチャラーズタイトルをもたらしました。
実は、初代ランサーエボリューションの投入当初は、開発期間が短かったこともありあまり目立った成績は残せませんでした。しかし、ランエボIIで初勝利を挙げると、ランエボIIIではトミ・マキネン選手が初のドライバーズタイトルを獲得。徐々に強さを見せはじめたなかで、満を持して投入されたのがフルモデルチェンジを図った第2世代だったのです。
結果を追い求めて進化し続けた第2世代ランエボ
ベース車輌ランサーのフルモデルチェンジに合わせて、第2世代に更新されたランサーエボリューション。ランエボIVからVIの3モデルは、同モデルがベースです。
しかし、モデルを追うごとにマイナーチェンジとは思えない進化を遂げて、WRCで結果を残し続けました。ここからは各モデルの違いや特徴を、WRCの戦績と合わせて紹介します。
(1シーズンに2モデル投入された年度もあるため、成績は単一モデルでのもののみ掲載)
ランサーエボリューションIV: 1996年
ランサーエボリューションIVは、ランサーのフルモデルチェンジに合わせてボディを刷新。ボディ刷新に合わせて、エンジンの左右を先代から180度入れ替えました。エンジン回転を逆転させるシャフトが不要な、合理的でシンプルな構造に変更されます。また、エンジンの最高出力は、当時の自主規制いっぱいの280psまで引き上げられました。
次期モデルよりボディをワイド化したため、最後の5ナンバーランエボとしても有名です。WRCの戦績は4勝で、トミ・マキネン選手が2年連続でのドライバーズタイトルを獲得しました。
ランサーエボリューションV: 1998年
ランサーエボリューションVが登場した1998年は、WRCが新たに認めた改造範囲の広いWRカーの参戦が本格化した年でした。三菱は、市販車ベースのグループAでの参戦を決定。より一層高い戦闘力の実現を目指して、ランサーエボリューションVは開発されました。
すでに自主規制いっぱいまで高出力化されていた4G63型エンジンでしたが、細部の見直しでトルクを38.0kg・mまで引き上げます。また、2,500〜6,000回転の常用域のパワーとトルクも引き上げて、高い加速性能を実現しました。
ボディのワイド化も、ランエボVの大きなトピックです。走行性能の向上を目指して、1,770mmまで拡幅されました。迎角調整式の新型リアスポイラーといった、エアロパーツも一新。先代と同じ車種がベースとは思えない、どっしりとした印象になりました。
WRCでは、念願のマニュファクチャラータイトルを獲得します。トミ・マキネン選手は、ついにドライバーズタイトル3連覇を達成しました。
ランサーエボリューションVI: 1999年
第2世代の完成形ともいわれるのが、ランサーエボリューションVIです。先代でワイド化されたボディはサイズこそ変更はないものの、空力性能と冷却性能をさらに向上させました。
エンジンでは大型のオイルクーラーの採用や吸気口の大径化に加え、世界初のチタンアルミ合金製タービンホイールを採用。高回転域での効率化と、レスポンスアップを実現しました。
WRCでは1999年度に4勝を挙げたものの、2年連続でのマニュファクチャラーズタイトルは逃します。しかし、トミ・マキネン選手は前人未到のドライバーズタイトル4連覇を達成しました。
トミ・マキネンエディション: 2000年
トミ・マキネンのドライバーズタイトル4連覇を記念して、三菱はランサーエボリューションVIをベースに開発した特別仕様車をリリースします。ランエボ6.5とも呼ばれる「ランサーエボリューションIV トミ・マキネンエディション」です。
ランサーエボリューションIVを、舗装路(ターマック)向けに特化した仕様に変更。中低速域のレスポンス向上や専用のサスペンションを装備するなど、一般道を走るロードカーに最適な仕様だったこともあって高い人気を集めました。
また、専用に新開発されたフロントバンパーエアロや三菱のWRCワークスラリーカーと同デザインのホイールを採用するなど、細かい点まで三菱ファン垂涎の仕様になっています。
ランエボ第2世代は根強い人気を保っている
ランサーエボリューションのなかでも、特に第2世代はWRCでの活躍もあっただけに20年以上が経過した今でも人気は衰えていません。さらに、ランサーエボリューションIV トミ・マキネンエディションともなると販売台数はわずか3,000台前後ともいわれていて、さらに希少性が高まっています。
ただし、中古車の売買をする際は、高い専門性のある業者を選定しましょう。最も新しいランサーエボリューションIV トミ・マキネンエディションでも登場から20年以上が経過していて、ランサーエボリューションIVは1996年の登場から30年近くの年月が経っています。思わぬ不具合に見舞われないよう、車両状態を見極められる業者と取引することが重要です。
また、希少性の高いクルマは、一般的な買取業者に依頼すると売却時に正しく査定してもらえない可能性があります。車輌状態だけでなく、クルマそのものの価値も正しく査定してくれる旧車の取り扱いに慣れた業者に相談しましょう。
※経過年数は2023年11月執筆当時
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