三菱 ランサーのスポーツモデル・ランサーエボリューションは、“ランエボ”の愛称でファンから絶大な支持を集めました。1992年の初代登場から2016年の最終型まで実に24年間に渡って続いたランエボの歴史の中で、最強との呼び声が高いのが第3世代である2000年代に登場した3つのモデルです。
熟成と進化の結果生み出され、現在でも高い人気を誇るランエボVII・VIII・IXの3モデルの違いを詳しくお伝えします。
2000年代に登場した第3世代ランエボ
第3世代ランエボはベースであるランサーのモデルチェンジに伴って、2001年に登場しました。
新開発のボディや各種装備など、大幅なポテンシャルアップを果たした第3世代ランエボについて詳しく紹介します。
ベースとなったのはランサーセディア
第3世代ランエボのベース車両は、6代目ランサーとして2000年に発売された“ランサーセディア”です。先代ランサーから大型化された新開発のボディには、スポット溶接の追加や取付部の補強に加え、専用レインフォースメントまで装備され、剛性面で圧倒的な進化を遂げます。
また、HIDヘッドライトやアクティブ・センター・ディファレンシャル(ACD)という先進装備の採用も積極的に行われました。特にACDは、各種センサーから読み取った「車両の旋回状況」に合わせて前後輪の差動制御を電子的に実施するという、運動性能向上につながる画期的な装備です。
4G63エンジン搭載最後のモデル
第3世代ランエボは、三菱の名機の一つである4G63型エンジンを搭載する最後のシリーズになりました。
2.0L直列4気筒ターボの4G63型エンジンはすでに完成の域に達しつつありましたが、第3世代ランエボでさらなる熟成を重ねます。最高出力こそ先代と同様の280psだったものの、モデルを追うごとにトルクの向上が図られました。最大トルクは、ランエボVIIで先代から1.0kg・m増の39.0kg・m、VIIIで40.0kg・m、最終モデルのIXでは41.5kg・mにも達します。
エンジンのもつポテンシャルが限界まで高められていることは、第3世代ランエボが最強と呼ばれる理由の一つです。
ランエボ史上“初”のバリエーションが加えられた
幅広いユーザー層を取り込むため、第3世代ランエボには史上初のバリエーションが2つラインナップに追加されました。
一つは、ランエボVIIに追加された初のAT採用モデルです。INVECS-IIと呼ばれるスポーツモード搭載の5速ATが搭載されました。エンジンの出力こそ272psに抑えられていたものの、最大トルクの発生をMTモデルよりも500rpm低い3,000rpmに設定。低中回転域のトルクを重視した扱いやすい特性に仕上げられていました。
もう一つが、ランエボIX発売後に投入された初のワゴン仕様車です。ランエボIXをベースに、ランサーワゴンの設計を流用して開発されました。エンジンを始め多くの仕様はランエボIXを踏襲しており、ステーションワゴンながら高い性能を発揮。ワゴン化によって低下した剛性もスポット溶接の追加で補っており、280psを発生する4G63型エンジンのパワーを十分にいかせるモデルでした。
ランエボVII・VIII・IXの違い
第3世代ランエボは、すべて同型のランサーセディア(2003年以降の名称は「ランサー」)をベース車両として開発されています。また、4G63型エンジンを採用している点も共通です。
しかし、それぞれのモデルを改めて比較してみると、実はいくつかの違いがあります。
ここからは第3世代ランエボのモデルごとの違いについてチェックしていきましょう。
2度の大きな方向転換をしたグリル形状
第3世代ランエボの外観上の違いでもっとも特徴的なポイントはグリル形状です。ランエボVIIのグリルは、比較的スタンダードな長方形に近い形状を採用していました。しかし、ランエボVIIIでは大きなデザイン変更が施されます。
三菱が新しく迎えたデザイナー、オリビエ・ブーレイが三菱車共通のアイデンティティとして提唱した、通称“ブーレイ顔”と呼ばれる富士山のような意匠を中央に配置したデザインに変更。しかし、ブーレイ顔への変更は、冷却性能の低下や空気抵抗の増大を招くなど発売当時大きな不評を買いました。
ランエボIXでは、不評だった“ブーレイ顔”を廃止。再びコンサバティブなグリルデザインに変更されます。ただし、下部に丸みをもたせるなど現代的でシャープな印象のグリルになりました。
性能はモデルごとに着実に進化
ランエボVIIからVIIIへの変更で大きく変わったポイントは、不評だったグリルだけではありません。トランスミッションがシリーズ史上初めて6速化され、向上したトルクを最大限いかせるようになりました。
ランエボIXでは、性能面でさらなる進化を遂げました。型式こそ4G63型と、同型エンジンですが、ランエボとしては初めて、三菱の連続可変バルブタイミング機構である“MIVEC”を搭載したエンジンを採用します。さらに、ターボについても性能向上が図られました。コンプレッサーハウジングの見直しやコンプレッサーホイールの素材をマグネシウム合金に変更。最大トルクをランエボVIIIから1.5kg・mも向上させ41.5kg・mとしたうえ、発生回転数も500rpm低い3,000rpmまで下げました。
高騰する第3世代ランエボ
クルマとしての基本性能が高められ正統進化を遂げた第3世代ランエボは、三菱の名機4G63型エンジンが搭載された最後のモデルということもあり、現在でも高い人気を集めています。
大手中古車サイトで確認したところ、状態によって価格にばらつきはあるものの、全体的に高騰している様子でした。高値の車両でみると、2001年式のランエボVIIで498万円、2003年式のVIIIだと958万円、2006年式のIXも950万円もの価格がつけられていました。
また、旧車王でもランエボIX MRを350万円で買い取った実績があるほか、買取価格の上限は、ランエボVIIが250万円、VIIIが380万円、IXでは500万円にものぼります。
最強のランエボを手に入れたい方は、ぜひ早めに探してみてください。手元にあるランエボを手放したい方は、価格が高騰している今がチャンスです。
※価格は2023年2月執筆時
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