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車整備歴20余年の経験者が思う、旧車オーナーが初めて工具を購入する際の注意点とは?

目次
1.■ホームセンターで販売されている工具が、必ずしもクルマの整備に向いているとは限らない 2.■クルマの工具はやはり専門店がおススメ!工具を実際に手に取って選ぼう 3.■ビギナーが最初に選ぶべき基本的な工具を、具体的に挙げてみる 4.■スナップ・オンだけが工具ではない。さまざまな工具を手に取り吟味して選ぼう

旧車オーナーにとって、クルマへの愛情が深くなれば深くなるほど、自身の愛車のメンテナンスに興味を持つことはないであろうか?

詳しい知識はなくとも、できる部分は自身の手でやってみたいと考えているオーナーは決して少なくないと思う。

クルマのメンテナンスを行うためには当然工具が必要なる。

クルマのみならず、機械いじりなど一度も行ったことがないオーナーにとっては、数ある工具の中からどれを選べば良いのか、まったくもって見当もつかないだろう。

今回は、ポンコツ愛好家の私・クマダが、かれこれ20余年の経験を持って、メンテナンスデビューしたいビギナー(初心者)に向けて、なるべく簡単にアドバイスをしたいと思う。

▲ 雑然とした筆者のツールチェストの内部。安価なショボ工(しょぼい工具)から高額なスナップ・オンまで幅広いラインアップ!?
※私クマダはYouTubeでポンコツ再生動画を公開しております。ぜひ動画もご覧ください。チャンネル登録お待ちしております! https://t.co/jshezU8Be0

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■ホームセンターで販売されている工具が、必ずしもクルマの整備に向いているとは限らない

▲すでに購入から20数年が経過したPBボーマンのドライバー。

良い工具は長持ちするうえ、使い込めば使い込むほど愛着がわき、やがて一生モノとなる。

ご存じの通り、昨今DIYがブームとなっている。

ホームセンターの工具コーナーの品揃えも本格的なものとなりつつあるようだ

もはや、プロ志向の品揃えとなっているといっても過言ではないことだろう。

おそらく多くのビギナーが、自身で最初に手にする工具をこのホームセンターで検討されると思うが、購入については少し踏みとどまっていただきたい。

それはなぜか?

私クマダは経験上、ホームセンターで販売されている工具が、必ずしもクルマの整備に向いているとは限らないと考えているからだ。

そもそもホームセンターで販売されている工具は、自動車整備のみならず、建築や工業機械など、その他の用途も含めた目的で製造されたものが多い。

これらはたいがいにして肉厚で強固、かつ重量があるため、クルマのエンジンルーム内など、細かく入り組んだ部分での作業がしづらかったりする。

また、くれぐれも多数の工具が一つのケースに入った一見お得そうなツールセットなるものにはくれぐれも注意してほしい。

安価品は全体的に繊細さに欠ける印象のものが多いが、印象のみならず、実際に精度も悪かったりする。

そもそもしっかりと対象物にかみ合わないのだ。

例えば、錆びてただでさえ緩みづらくなっている旧車のボルトやナットに大きなトルクをかけて使用した場合、いとも簡単に頭をなめてしまう可能性がある。

これは作業をする者の腕がいいとか悪いとかの問題ではない。

場合によっては、大きなトルクをかけて使用した際に突然破損し、ケガの原因になることすらあるのだ(筆者は経験済み)。

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■クルマの工具はやはり専門店がおススメ!工具を実際に手に取って選ぼう

▲ 新卒でディーラーの整備士になったが、支給工具は最低限のもので、当然満足のいくものではなかった。先輩に借りるわけにもいかないので、毎月毎月少しずつ工具を買い足していった。これらは20年経った今もしっかり使えている。

それでは、いったいどこで工具を購入すればよいのか?

それはやはり、自動車整備用の工具を専門に取り扱った店舗一択となるであろう。

ネットではなく店舗で購入するメリットは、実際に工具を手に取り感触を確かめられる点である。

また忘れてはいけないのが、工具店での経験を積んだスタッフからの直接のアドバイスはたいへん貴重だ。

こういったリアルな体験はネットショッピングではまず不可能といっていいだろう。

ぜひ店舗に直接足を運んで工具を自分自身で選んでほしい。

例を挙げると、早回しに必要なラチェットハンドルひとつとっても種類はさまざまだ。

ハンドルの太さや長さ、そして重さ、ラチェットの歯数や空転時の軽さ、ソケットツールのクイックリリースボタンの有無や押しやすさ・・・。

さらにはクロームの仕上げ方法による握ったときの滑り具合などなど、チェックポイントは多数ある。

そして何よりも、高価なブランド工具と、同機能の安価な工具との違いもここで確かめるといいかもしれない。

なお、最初から数多くの工具を購入する必要はない。

まずはじめに揃えておきたい工具の具体的な内容は次の項で述べるが、使用頻度の高い基本的な工具はしっかりとしたブランド・品質のもので購入したい。

あとは、追々、自身の作業内容やレベルに応じて買い足しすることをおススメする。

必要性を感じてから工具を買い足すことで、無駄なく工具を揃えられるのと同時に、いま手元にある工具の使い方に工夫を凝らすことで、メンテナンスの腕の向上にもつながることであろう。

工具があることにありがたみを感じる瞬間でもある。

■ビギナーが最初に選ぶべき基本的な工具を、具体的に挙げてみる

▲ 文中に挙げた最低限の基本的な工具。これらを車載工具として携行できるとさらに頼もしい。

筆者が、メンテナンスのビギナーがとりあえず最初に揃えると良いと思う工具は以下の通りだ。

●コンビネーションレンチ(片側がスパナ、もう片側がメガネレンチになった工具)
●3/8sqソケットレンチとラチェットハンドル(8/10/12/13/14/17/19mm)
●欲をいえば、1/4sqのソケットレンチとラチェットハンドル(8/10/12/13mm)
●エクステンションバー(3/8sq・1/4sqともに長さで2~3種類)
●プラスドライバー(1/2/3号)
●マイナスドライバー(3/4/5号)
●長めのヘックス(六角)棒レンチ(片側がボール型になっているものが良い)
●ノズルプライヤー(ラジオペンチ)
●カッティングプライヤー(ニッパー)
●ウォーターポンププライヤー
●1/2sq スピンナーハンドル

などなど・・・

とはいえ、ビギナーにとってこれらを最初からそれなりのブランドの工具で購入するとなると、予算のことなど、とても勇気が必要になるだろう。

ただ安心してほしい。

ここ十数年で状況はとても良い方向に好転していからだ。

旧来の工具専門店というと、敷居が高く、その道のプロでないと入りづらそうな雰囲気の店が多かった。

しかし昨今では、プロのみならず、個人のユーザー向けに全国展開をしている工具店が複数存在している。

アストロプロダクツや、ストレート、ファクトリーギアなどである。

インターネットで検索すれば、きっとあなたの身近な場所に店舗が見つかるはずだ。

とりあえずこういった工具店では、ショップのオリジナルブランドではあるが、安価でありながらも、品質的にはなんとか及第点となる工具セットが販売されている。

筆者の本音は、それなりに名の通ったメーカーの工具で揃えていただきたいが、セットの内容を吟味したうえで、これらを購入するのも選択肢のひとつだと思う。

これらの工具セットは、コンパクトで仕上げの良いツールボックスに入って販売されていることが多いので、後々ステップアップした後も車載工具として使用することもできる。

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■スナップ・オンだけが工具ではない。さまざまな工具を手に取り吟味して選ぼう

▲「安くて良いもの」は存在しない。しかし、「安い割にはまぁまぁ良いもの」は間違いなく存在する。ただ、それを見極めるのが難しい・・・。

熟練したメカニックの中には、スナップ・オンをはじめとするブランド工具以外は認めないといった風潮があることも事実だ。

彼らはボルト一本を締める行為一つに強い責任感を持ち、情熱を燃やしている。

先述の通り、安価な工具は精度が悪く、ボルトやナットの角に傷を入れることが多い。

当然の意見であろう。

ただ「ブランド工具」といっても、自動車整備の世界には様々な工具メーカーが存在し、各々個性的な特徴を持ち合わせている。

例えば、高額なブランド工具の代表格、米国メーカーのスナップ・オンのレンチはミラーツールとよばれるクロームメッキ仕上げが特徴で、その美しい外観から使用せずに収集するコレクターが存在する。

しかし反対に欧州では手に持っても滑りにくいザラザラとした梨地仕上げのレンチが好まれる。

ハゼットや、スタビレーの柔軟にしなるレンチがこれに該当する。

PBボーマンのドライバーは、オイルまみれの手で握っても不思議とすべらないグリップをもつ。

国産メーカーでは、定番中の定番であるKTC(京都機械工具)、とても精度の高いソケットツールに定評があるコーケン(山下工業研究所)が挙げられる。

また、機械工具の武骨なイメージだったが、ここ数年で自動車整備向けの工具に力を入れてきたTONE(筆者はラチェットギアレンチや、ストレートメガネレンチを愛用)などなど・・・。

いくつか工具メーカーを挙げたが、これらは、どこのOEMで生産されたか分からない各工具専門店のオリジナルブランド品に比べれば、倍くらいの値段がする。

しかし、これらの製品は、スナップ・オンに比べればとてもリーズナブルだ。

仕様の用途や頻度も含め検討するとよい。

なお、ちゃんとした工具は壊れにくい。

それこそ、良い工具を選べば一生モノとなる。

しかし、工具の世界には「安くて良いもの」は存在しない。

やはり「良いものは高い」のだ。

ただ、「安い割にはまぁまぁ良いもの」は間違いなく存在する。

前述したとおり、工具は手に取ってよく吟味したうえで選んでいただきたい。

納得のいく工具選びを繰り返せば、あなたもいつかエキスパートになれることだろう。

今回は、初めての工具選びについてかんたんに執筆させていただいたが、機会があれば、旧車を維持するにあたって、より実践的な工具の選択方法やケミカルについても案内していこうと思う。

次回を期待して待っていてほしい。

[YouTube]BEARMAN's チャンネル
https://www.youtube.com/channel/UCTSqWZgEnLSfT8Lvl923p1g

[ライター・撮影/クマダトシロー]

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