日本が世界に誇るスーパーカーといえば、真っ先に思い浮かぶのが「日産GT-R」という方も多いのではないだろうか?
日産GT-Rといえば、数々のレースでタイトルを獲得し、過去にはニュルブルクリンクで量産車史上最速タイムを叩き出した、日本を代表するスーパースポーツカーだ。
また、映画「ワイルドスピード」などでも起用されたことから、その名を世界中へと轟かせた。
現行モデルにあたるR35型は、2007年に登場して以来、日本、イギリス、アメリカ、中東など、世界中でカー・オブ・ザ・イヤーを獲得した、もはや伝説となりつつクルマといえる。
今もなお世界中で愛され続けるR35型GT-Rだが、2022年3月に欧州市場から撤退し、15年の歴史に幕を閉じた。
当然、ヨーロッパにもGT-Rファンは多く存在し、今でも度々自動車関連記事に出てくるほど人気のあるモデルだが、なぜ、このクルマが欧州市場から撤退することになったのか。
またドイツではどのように評価されているのか。
今回はドイツから現地調査をおこなった。
■日産GT-Rは欧州で生産中止
日本が誇るスーパースポーツモデルは長年にわたり、ヨーロッパで多くのファンを獲得してきた。
そのなかの代表的なモデルが日産GT-Rだ。
欧州市場では2008年に発売され、フェラーリやランボルギーニなどと比べると……ではあるが、比較的手頃なスーパーカーとして成功を収めた。
そして、多くのファンがR35の後継モデルを期待していたなか、2022年3月に欧州市場から撤退することとなった。
その理由は、EUとイギリスの間で施行された、騒音をさらに削減することを目的とした通行騒音規制によるものだ。
象徴的なスポーツカーをヨーロッパ向けに改良し、音響規制を施すことはもはや価値がない。
ゆえに、多くのファンが待ち望んでいたR35の後継者を、ヨーロッパで入手することは今後できなくなってしまったのだ。
■R35の愛称は「ゴジラ」
日産スカイラインGT-R(R34)の生産終了から5年、2007年に開催された第40回東京モーターショーにおいて、生産型のR35型GT-Rが初公開された。
このときから、GT-Rはスカイラインのいちモデルとしてではなく、「日産GT-R」として新たなスタートを切ったのだ。
初めて、日本やイギリスなどの右ハンドル市場だけでなく、左ハンドルの国でも販売された。
怪物級の車輌スペックであることから、海外での愛称は「ゴジラ」と呼ばれている。
欧州市場での販売時は、GT-R(81,800ユーロ)、GT-Rプレミアムエディション(83,500ユーロ)、GT-Rブラックエディション(85,200ユーロ)が用意されていた。
当初のGT-Rは3.8リッターV6エンジン ツインターボを搭載し、最高出力は485馬力を発揮。
現行モデルではさらに改良が加えられ、最高出力570馬力、「ニスモ」バージョンでは600馬力を発揮し、最高速度は315km/h、0〜100km/hはわずか2.8秒という驚異的なスペックを誇っていた。
また、イギリスの自動車雑誌「トップギア」では、485馬力を発揮する初代日産GT-Rが、シリーズ専用テストコースであるダンスフォール飛行場を周回し、シボレー コルベットC6、フォード GT、ポルシェ 911カレラGT、ランボルギーニ ムルシエラゴなどの、並み居る競合車を抑えて最速タイムで周回したと発表した。
■ドイツでの評価とは?
欧州における日産GT-Rの生産終了というニュースは、ドイツ人にとって衝撃のニュースとなった。
ドイツ国内のサイトでは、度々GT-Rに関する記事が取り上げられており、名実ともスーパーカーとして非常に高い評価を得ている。
この国では、古くからGT-Rファンが存在する。
なぜなら、その歴史は1964年にまで遡る。
当時、日本のグランプリで4ドアの日産2000GTがポルシェ904からリードを奪ったことにより、多くのモータースポーツファンに衝撃を与えた。
1988年のR32型スカイラインGT-Rからは、「ゴジラ」の愛称でトップカテゴリーのスポーツカーとしての地位を確立した。
世界中で長年愛され続けてきたR35型GT-Rが、伝説の名車となるのもそう遠くはないだろう。
[ライター・高岡 ケン / 画像・Dreamstime]