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■パシフィコ横浜で開催されたクラシックカーの祭典
去る2月18日、19日の2日間にわたってみなとみらいのパシフィコ横浜でノスタルジック2デイズが開催された。
主催はノスタルジックヒーローやハチマルヒーローでおなじみ文芸社、後援として横浜市の文化観光局がついている。
カーイベントとしても既に定番のひとつに数えられるほど、規模の大きなイベントだ。
国産だけでなく欧米、欧州車も展示されるイベントではあるが、今回は訪れた初日である土曜日の国産車を中心に話を進めていきたいと思う。
■レストア全盛の時代を迎えたノスタルジック2デイズ
筆者も足繫く通う同イベントだが、かつては各ショップが腕を競うように一押しの車両を仕上げて出店していることが多かった。
しかし世の中が変わったのか、以前とは少し違って見えた。
少し前にMAZDAが初代ロードスターのレストア事業を立ち上げたり、日産が芸能人の所有するシーマを再生したりと国産車もいよいよレストアに力を入れ始めた。
そのこともあってか各ブースにはショップのデモカーだけでなく、レストア工程を見せる展示やリプロダクトパーツの販売がずいぶんと目につくようになった気がした。
かつてはデッドストックや中古パーツを多く見ていたものが、現在は出店ブースによっては、リプロダクトパーツ等に置き換わっていた。
実際に話をうかがったショップでもすべて専門の業者に委託、作成したものでそれらはすべて動作確認をおこない、不具合のないように入念にチェックもされているという。
また、かつては専門の治具を駆使して実質ワンオフ状態で作成していたボディパーツなども現在は元パーツからの型取りや、3Dスキャナーなどにより金型を起こしての制作をおこなって対応しているという。
そんなことをして採算が取れるのだろうか?そう思って話を聞くと、現在では国内には少数でも海外も含めれば十分に採算が取れるだけの需要が見込めるので、そこをクリアすれば問題はないのだそうだ。
■夢のクルマを走らせる
こうした半ばメーカーのようなパーツを作り上げるリプロダクト企業もあれば、イチから制作して組み上げていくところもある。
この黄色い制作途中の車両、ご存じの方もいると思われるが、日産のレーシングカーのR380であり、そのレプリカだ。
制作したのはノーチラススポーツカーズ。
サーキットの狼ミュージアムのディノレーシングスペシャルを制作したコーチビルダーといえば、ご存じの方もいるかもしれない。
桜井眞一郎氏の会社S&Sがオリジナルから復刻した際に、ゼッケン等はパテ修正をして譲ってもらったとのこと。
プリンスのロゴのレリーフだけはそのままになっていたことから、あえて残すことにしたのだとか。
実はこの車両は筆者がまだひな形しかないときから周知していた車両だけに、今回の初お目見えには注目していた1台だった。
現段階でもフレームまで組まれていたのだが、これでも若干フレームとボディでズレがあるので、フレーム側は制作しなおすという。
このR380はまた機会があれば完成までを別途取材で追いたいと思う。
■舞台裏から見るノスタルジック2デイズ
開場して最初にステージでおこなわれる催しに、選ばれし10台というプログラムがある。
今回も選りすぐりの車両たちがステージ前に現れたのだが、この選ばれし10台をきっかけに数奇なめぐりあわせをした人物がいた。
昨年「アルミ弁当箱協会会長」として外車王SOKENで紹介されていた「マツドデラックスこと山本圭亮氏」である。
奇しくも第1回の選ばれし10台の最後のひとりとしてオペル・レコルトで登場したのが山本氏であった。
このことが縁で、これ以降このノスタルジック2デイズの音響担当として裏方で活躍することとなる。
この日も氏のチョイスによる絶妙な70~80年代歌謡やポップスが会場内をBGMとして流れて、会場内にいるおじさん世代の甘酸っぱい思い出や、ほろ苦い記憶をよみがえらせていたかもしれない。
■イベントの横道を行く 巨大地下駐車場に見たクラシックアメリカン
イベント会場には参加ができなくとも隠れた名車や、お宝なクルマがきっとある。
そう信じて疑わない筆者が、毎回お届けするイベントの横道。
今回はパシフィコ横浜の巨大地下駐車場を訪ねてみた。
しかし、筆者が降り立ったのは諸事情で地下2階、見渡せば最新のランボルギーニのSUVやロールスロイスといった超高級車が目白押し。
しかし、よくよく見れば、これ等はすべて月極めに止まっている。
残念だがこれは筆者の望む車両ではない。
あくまでのイベントに訪れた車両でなければならないからだ。
そこでさらに見渡すとキレイな「R」ではないハコスカや、SW20こと2代目MR2などなんとなくそれらしい車両がちらちらと見受けられる。
それでも、もうひとつパンチがほしい。
さすがに今日は難しのか?あきらめて出口へ向かおうとしたときに見つけたこちら。スチュードベーカー・チャンピオンそのカブリオレモデルだ。
1950年代のスチュードベーカーの代表的モデルとして、インダストリアルデザイナーのレイモンド・ロウイの手によりデザインされた。
ジェット機を思わせるフロントグリルは時代を象徴するようなデザインでもあった。
■煌びやかな見た目か、歴史を感じさせる重みか?
会場では制作途中も含めて、レストア技術を見せる展示が本当に多かった。
こうして一通り見て回って感じたのは、どれも非常にキレイにまた丁寧に仕上げられているということだ。
同時にそれ故にまるで新車のように仕上げられているという見方もできてしまう。
人によってはそれを年式相応に見えないと考える人もいる。
しかし、この場合どちらも正解だと筆者は考えている。
もちろんキレイに仕上がったクルマはいい。
しかし、歴史を重んじて当時の雰囲気を残すことも、また「良い味」として魅力的なのだ。
これはオリジナルにこだわって仕上げるのと、普段から使えるように現代パーツに置き換えて、日々の足にも使えるようにすることにも似ている。
果たしてどちらがいいのか?
その悩みはこの会場を訪れた方だけが見出せるのではないかと思う。
[ライター・撮影/きもだ こよし]