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DIY初心者が陥りやすい、旧車ジャッキアップの意外な注意点とは?

目次
1.■1.メンテナンスの基本中の基本、ジャッキアップ 2.■2.決してマニュアル通りとは限らない、旧車のジャッキアップ方法 3.■3.旧車のジャッキアップに必要な知識と道具とは? 4.■4.旧いクルマには、常にいたわりをもって接したい

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■1.メンテナンスの基本中の基本、ジャッキアップ

▲空冷ビートルに付属する車載ジャッキ。欧州車は新旧関わらず、この手のジャッキが多く標準装備されるが、あくまでもパンク時のスペアタイヤへの交換用だこれを普段のメンテナンスに使用するのはもってのほかだ。車両の下に潜るような用途には絶対に使用してはいけない

DIYでクルマのメンテナンスを行うオーナーにとって、避けて通れない作業がジャッキアップだ。

旧車のみならず、DIY初心者にとって登竜門になると思われるエンジンオイル交換やホイール脱着を行う際にジャッキアップが必須の作業となる。

また、作業を行わないまでも、晴れて購入したクルマの下回りを覗いてみたいと思うメカ好きなオーナーも多いはずだ。

旧車のみならず、クルマの真のコンディションは下回りを見てみなければ分からないからだ。

ジャッキアップ自体は、DIYの中では基本中の基本の作業なので、ハウ・トゥー的な記事は他にも数多く存在する。

今回は、生産後数十年が経過した旧車オーナー向けに、20年来のポンコツ愛好家である筆者が、旧いクルマの独特な注意点をお伝えできればと思う。

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■2.決してマニュアル通りとは限らない、旧車のジャッキアップ方法

▲空冷ビートルのジャッキアップポイント。新車時ならともかく、旧車で錆による腐食などでフロアやサイドシルにダメージがあるクルマでは、果たしてこんな部分で、クルマの重さを支えることができるのであろうか?

DIY初心者であるオーナーが、クルマをジャッキアップしたいと考えたとき。

まず手にするものは、パンタグラフ式を代表とする「車載ジャッキ」ではなかろうか?

結論からいえば、旧車については、これを普段のメンテナンスに使用するのはかなり危険だ。

クルマの「トリセツ(取扱説明書)」には当然のごとく、パンク修理用に車両に付属する車載ジャッキの使用方法が記されているはずだ。

そして、これらはほとんどの場合、ボディーのサイドシルと呼ばれる部分にあるジャッキアップポイントにあてがって使用することを前提としている。

しかし、考えてみてほしい。

旧車と呼ばれるクルマは最低でも生産後20年は経過している。

「オールドタイマー」と呼ばれるクルマであれば、生産後40年~50年は当たり前だ。

すでに「アンティーク(骨董品)」となっている車載ジャッキが果たして使い物になるのか?という問題も当然あるが、クルマのボディー自体がジャッキアップに耐えられない状態になっている場合も存在するのだ。

旧車のみならず、クルマのサイドシルという部分は、縁石などのダメージを受けることが多い。

さらにクルマが長らく放置された場合、この部分に雨などの水分が溜まり、フェンダー裏などと同様、錆で腐食が進行しやすい部分といっても過言ではない。

ジャッキアップポイントには、そのクルマの重さが集中して掛かる。

取扱説明書に記されている通りに車載ジャッキでジャッキアップした瞬間に、いきなりサイドシルが潰れてしまった!そんな話は旧車の世界では決して珍しい話ではない。

このような話は、きれいにレストアされたクルマのオーナーには他人事の様に聞こえるかもしれない。

しかし、実施にはきれいに仕上げられたクルマほど、要注意である。

なぜなら、レストアされたクルマはどのような方法で作業されたのかが不透明な場合が多いからだ。

海外では、腐ったパネルを鈑金せずにFRP樹脂とファイバーパテで埋めるという方法が当たり前のように存在する。

その道のプロであっても、きれいに仕上がっていると一見ではなかなか判別しづらいものである。

塗装面にクラックが入って初めて、厚く盛られたパテが露見するのだ。

旧車にとって、何も考えずにジャッキアップするという行為は、クルマに致命的なダメージを与えてしまう可能性がある行為そのものなのだ。

また不確実なジャッキアップは、作業中に事故に遭う可能性がある。命の危険すらあるのだ。

それでは、一体どうすればよいのか?次項で説明しよう。

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■3.旧車のジャッキアップに必要な知識と道具とは?

▲実際に筆者クマダが使用しているフロアジャッキとリジットラック。どれも安価品だが十分に使えている。赤いフロアジャッキはそろそろ寿命だ

まずは、そのクルマの正しいジャッキポイントを探ることが最優先である。

前回の記事で触れたが、サービスマニュアルに必ず記されている項目の一つだ。

なお、フロアジャッキ用のジャッキポイントは良しとして、リジットラックをあてがう部分はサービスマニュアルにおいても、サイドシルが指定されている場合が多い。

前述のとおり、旧車のサイドシルは必ずしもフロアジャッキやリジットラックをあてがえるコンディションではないことが多い。

そうなるとボディーやシャーシの強度のあるポイントを探すこととなるが、これはその車種によって異なる。

そのため、同車種のベテランオーナーか、やはり専門知識を持ったプロに尋ねることをおすすめする。

だいたいの場合、フレームや足回りのサスペンションアーム等の付け根の部分が、強度のあるポイントとして検討できるはずだ。

予備知識を得たら、ここからが道具選びだ。まずはジャッキを選ぼう。

はじめに、車載ジャッキでは定番のパンタグラフ式は、ここではおすすめしない。

それはなぜか?

先述の通り、旧車はサイドシルにダメージを負っている可能性がある点もあるが、何よりもパンタグラフ式のジャッキは車両の前後方向に倒れやすい点がある。

何らかの原因で車両の前後方向に力が加わると、いとも簡単に倒れてしまう。

後述するが、輪留めなしの状態での使用は非常に不安定でとても危険だ。

おすすめはやはり、油圧式のフロアジャッキとリジットラック(通称:ウマ)のセットだ。

これらはベテランのDIYオーナーであれば、必ずガレージに備わっていることであろう。

まずは、フロアジャッキから説明する。

大きく場所をとり、重量もあるフロアジャッキだが、整備工場で使用されるプロ用はとても頑丈な代わりにたいへん高価で、DIYでの購入はハードルが高い。

実際にはDIY向け工具店でのラインナップから選択することになることであろう。

この場合、まずはじめの一台は、鉄製の2.5~3トン程度のものをおススメする。

ネット通販などでアルミ製の3トンといったものも存在するが、これらはあくまでも2トン程度までの使用で考えたほうが良い。

実際に使用すれば分かるが、明らかに容量不足を感じるはずだ。

アルミ製の2トンについては車載用と考えたほうが良いだろう。

安価なアルミ製のフロアジャッキは軽くて持ち運びしやすいが、よくしなる。重量車には使えない。

フロアジャッキの次は、車体を保持するリジットラック選びだ。

これは、一部の折りたためるものを除けば、ホームセンターで販売されている2トンのもので十分こと足りる。

3本脚か、4本脚かの検討ポイントもあるが、ここでは省略する。

実際に手に取って気に入ったものを選んでほしい。

あえて注意点を述べるとすれば、リジットラックが車両と接触する部分の形状だ。

車載ジャッキの先端を注意深く見ると、サイドシルのジャッキポイントの部分にジャストフィットする形状になっているはずだ。

しかし、この部分は市販のリジットラックではぴったりフィットするとは限らない。

また、先述の通り、旧車ではサイドシル以外の部分にリジットラックをあてがう場合もある。

ジャッキアップ後にクルマがリジットラックの上に安定して乗っていればよいが、不安定な場合、車体をしっかり保持できる形状のアダプターを用意する必要がある。

ほとんどがゴム製になると思われるが、この部分は市販のものがうまくフィットしないなどの理由で、木端などの材料で自作している強者も存在する。

最後に輪留めを忘れずに用意してほしい。

輪留めについては、持ち上がっているタイヤの対角線上となる位置のタイヤに使用する。

旧車に限った話ではないが、ニュートラル状態のマニュアル車やサイドブレーキが甘い車両の場合、ジャッキアップした瞬間にクルマが動き始めてしまうということが十分にあり得る。

DIY初心者のみならず、ベテランオーナーにも注意喚起をしたい。事故が起きてからでは遅いのだ。

付け加えれば、スロープを用意するととても便利だ。

スロープについては、本来ローダウンされたクルマなどで、フロアジャッキを車体の下に潜らせることができない場合に使用するものだ。

しかし、車高の高い旧車の場合、エンジンオイル交換などは、ローダウンでもしていない限り、クルマをスロープに上らせれば対応できてしまう場合が多いのだ。

「スロープ+輪留め」で作業をすれば、クルマの下敷きになる可能性は大幅に減少する。

DIYの初心者・上級者に関わらず、ここは必ず実施したいところだ。

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■4.旧いクルマには、常にいたわりをもって接したい

▲旧車でこのようなジャッキアップを行うと・・・

ここまで駆け足で説明したが、話の要は、変形しやすい箱を、いかにダメージを与えずに持ち上げることができるかだ。

分からないことは、なんでも指先で検索できてしまう時代。

いわゆる「自称・正しい方法」とやらが、生産後数十年を経過した旧いクルマにそのまま当てはまると思ったら、それは大間違いである。

今回は旧車という偏った観点からジャッキアップについて短めにまとめてみた。

これは良かれと思って行った作業が、かえってクルマにダメージを与えてしまうということがある一例である。

せっかくの愛車だ。この記事の読者の方は、小さなことでもよく考えて、いたわりをもってクルマに接してほしい。

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[ライター・撮影/クマダトシロー]

 

 

 

 

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