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1990年代の日本製スポーツカーが今、アメリカなどで絶大な人気を誇るのはもはやいうまでもない。
■90年代の日本車が人気なのはアメリカにおける「25年ルール」の存在が大きい
漫画やアニメ、ゲームなどに登場する往年の名車たちの中古車価格は年々高騰を見せているが、それもアメリカにおける「25年ルール」の存在が大きい。
「25年ルール」を超簡単に解説すると、「右ハンドルのクルマであっても製造月から25年経過していればアメリカに輸入し、公道を走行すること」を可能とするもの。
詳しい解説は私が以前執筆した記事を参考にしてほしい。
●旧車にも関わり深い米国「25年ルール」。その歴史や本来の目的は?
https://www.qsha-oh.com/historia/article/ivsca/
とにかく、このルールによって日産 スカイラインやマツダ RX-7、トヨタ スープラ、ホンダ シビックなどの、多くの90年代スポーツカーがアメリカへ輸出されていっているのだ。
だが、アメリカでの日本車人気はそういったスポーツカーやスポーツコンパクトにとどまらず、今ではオールジャンルなものとなっている。
そのなかには意外な人気を誇るクルマたちも多数存在する。
いくつか見ていこう。
■今、アメリカでは日本の軽トラが大人気!
▲軽トラだけじゃない。軽ワンボックスも人気!こちらはアクティストリート
まずは、日本が世界に誇る労働者の道具、「軽トラ」だ。
軽トラは今、アメリカで絶大な人気を集めている。
日本中、特に農村部ではそこら中で見ることができる軽トラは、いまやアメリカでは「パワーがあって大きな荷物も積載可能、それでいて経済性にも優れているミニトラック」として認識されている。
学校や会社の広大な敷地を管理・清掃する際や、サーキットでの移動用、山奥での狩猟など、多種多様な需要にもマッチする最高のパートナーだ。
アメリカで人気となっている軽トラのほとんどが、製造より25年経過した古い軽トラ。
スバル サンバーやダイハツ ハイゼット、スズキ エブリィ、ホンダ アクティなど、日本では中古の軽トラといえば50万円もしないで取引されているものが多い。
だが、同じ50万円以下のモデルでも、アメリカでは100万円越えの価格が付けられて販売されている例はしばしば見る。
製造から25年以上経過した軽トラは他の日本車同様、アメリカにおける各種規制の対象外となるため、公道を走行するための登録が可能となる。
また、新車の軽トラをアメリカに輸入して使っている例もあるが、こちらは主に高速道路などを走行しない「オフロード登録」(悪路を走るクルマという意味ではない)を適用してナンバーを付けるカタチとなる(とはいえ、このケースは近年、州によっては認められなかったり、多額の税金や手数料を請求されたりすることも増えている)。
アメリカは州によってルールが違うので一概にいえないが、日本から新車の軽トラを輸入してオフロード車として登録することも可能ではある。
■90年代のRVブームを牽引したモデルも人気急上昇中!
▲アメリカでの人気急上昇中!ハイラックスサーフ
軽トラ以外にもまだまだたくさんの意外な日本車が人気となっている。
例えば、90年代のRVブームで誕生したクルマたちもアメリカ人の注目の的だ。
2021年に2年ぶりの実地開催となったアメリカ西海岸最大の日本車集会「JCCS(日本旧車集会)」では、大半の出展車両がスポーツコンパクトのジャンルに該当するものだが、なかには三菱 デリカやトヨタ ハイラックスサーフなどの、アウトドア志向な旧車たちの出展も目立った。
コロナ禍によって後押しされた、人里離れた場所でアクティビティを楽しむ「アウトドアブーム」の需要にも、これら90年代の「レクリエーショナル・ヴィークル」はピッタリなパートナーとなるだろう。
そういった経緯もあり、今後はRVだけではなく、トヨタ カムロードや日産 アトラスキャンパーなど、アメリカでよく見るキャンピングカーよりも一回り小さい、日本製キャンピングカーが支持を集めるのもそう遠くない未来のことかもしれない。
■今となっては懐かしい「パイクカー」も人気モデル
これら以外に、パイクカーと呼ばれる部類のクルマたちもマニアからは密かな注目を集めている。
パイクカーを簡単に説明すると、1980年代の終わりから1990年代中頃まで流行っていた「レトロ調な外観を与えたクルマ」のこと。
代表格は日産のBe-1やフィガロ、パオなどが挙げられる。
これらのパイクカーも他の90年代の日本車と同様に人気が高まりつつある。
さらに意外なのは、根っからの「クルマ好き」ではないような人にもパイクカーが売れているという点。
もちろん、日本車への理解が深いクルマ好きが以前から注目していた存在ではあるが、それ以外にも、単純に「見た目が可愛らしい」という理由で、セカンドカーとしてクルマ好きではない人の所有が目立ってきている状況となっている。
コンパクトながら、どこか「国籍不明」感のあるルックスは間違いなく、日本のパイクカー独特の要素だろう。
■まとめ:日本では不人気車種だったクルマがアメリカで花開く?
▲岩国基地で活躍する軽トラ、マツダ・スクラムトラックはスズキ・キャリイのOEM車だ
このように、いまや日本の旧車はスポーツカーだけでなく、幅広いジャンルが人気となっている。
また、そういったスポーツカーから日本車の奥深い世界に興味を持ち始めたクルマ好きが突き詰めた結果、まったく別ジャンルの日本車を好きになってしまうという「興味の底なし沼」のような状態になっている人も多く見受けられる。
今後、日本では見向きもされなかったような意外な日本車が、アメリカで爆発的なブームとなる事例はますます増えていくだろう。
[ライター・カメラ/加藤ヒロト]