ドイツで生活をしていると、日本車の少なさに日々驚かされる。
世界中どこの国に行っても日本車が至るところで活躍していると思い込んでいた著者は、ドイツに来て現実を目の当たりにしたときにすぐに理解することができなかった。
なぜなら、この国では国産車いわゆるメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン、BMWなどが圧倒的な人気を誇っており、ドイツにおける日本車の年間新規登録台数はわずか7%に過ぎないという現実だ。
では、なぜドイツでは日本車が不人気なのか。
著者はとある3つの答えに辿り着いた。
今回はドイツの日本車事情について解説していく。
■1.そもそも右ハンドル車がほとんど存在しない?
まずは世界全体の右ハンドル車と左ハンドル車の割合を見てみよう。
現在では、右ハンドル:3割、左ハンドル:7割という割合になっており、右ハンドルの生産台数は全体の25%、左ハンドルは75%である。
アメリカや中国、ヨーロッパなど、ほとんどの国では左ハンドル・右側通行が標準となっている。
対して右ハンドルが標準となっている国で最大の地域、日本、インド、インドネシア、イギリス、南アフリカ、オーストラリアとなっている。
上記の割合も見ても分かる通り、世界全体で見たときに右ハンドル車の割合は少なく、ドイツをはじめヨーロッパのほとんどの地域では左ハンドルが標準となっている。
ではヨーロッパでは左ハンドルしか運転できないのか、というと、そういうわけでもない。
EU諸国では2014年、欧州司法裁判所によって右ハンドル車を自由に購入し登録することができるよう正式に許可されている。
しかし、ドイツ最大手の中古車サイトで見てみると、総台数約100万台のうち、右ハンドル車はわずか300台ほどしかない。
ちなみに日本の大手中古車サイトと比較してみると、日本では総台数約55万台のうち、1万台が左ハンドルとなっている。
その差は歴然である。
■2.マニュアル車が選ばれているドイツ
ドイツでは日本と違い、いまだになお多くのMT車が走っている。
それはトラックやバスに限らず一般の乗用車でも同じだ。
ドイツにおける中古車全体のMT車の割合は驚異の44%、ほぼ2台に1台はMT車と言っても過言ではない。
ドイツ人はクルマをスポーティに走らせたいと考える人が多く、AT車では物足りないため、新車・中古車問わずMT車が選ばれている。
しかし、日本ではどうだろうか。
ほとんどの乗用車がAT車となっており、MT車といえば軽トラやバンなどの商用車、または一部のスポーツカーなど限りなく少ないのではないだろうか。
仮に右ハンドルがドイツで受け入れられたとしても、そもそもマニュアルの設定がない日本車が選ばれるとは思えない。
ちなみに、ドイツで販売されている日本車には多くのモデルで新車販売時にMT車とAT車を選択できるようになっている。
個人の主観ではあるが、ドイツにある少し年式が古い日本車はほとんどがMT車のイメージだ。
■3.右ハンドル車は販売店泣かせ
例えば、マニュアルトランスミッションの日本車が多くあったとしよう。
さらにコストパフォーマンスにも優れた日本車は間違いなくドイツでも人気のクルマとなるだろう。
しかし、仮に右ハンドルのクルマを日本からドイツへ輸入した場合、改造変更をしなくてはならない。
当然、日本とドイツでは車検の検査基準が異なるからだ。
恐らく、ドイツの車検は日本よりも厳しい。
基本的にはすべてオリジナルのパーツでなくなてはならず、タイヤも少しのヒビ割れでNG、ヘッドライトも調整もしくはドイツ基準のものに交換しなくてはならない。
そうこうしていたら、販売するまでに多くの出費が重なり、せっかく日本から安く仕入れたとして蓋を開けてみればドイツにある日本車よりも高くなってしまうなんてことも十分あり得る。
■右ハンドル車をドイツで買うメリットがないという事実
つまり、日本から仕入れてドイツでクルマを販売するということは現実的ではないということだ。
それゆえ、ドイツにある日本車はほとんどがドイツ国内で新規登録されたもので、日本から輸入したものはほとんどない。
ドイツにおける日本車の販売台数は年々減少しており、当然新車が売れなければ中古車にも回ってこないため、負の連鎖となっている。
そもそも右ハンドル車をドイツで買うメリットがないと考える。
パーキングの出し入れやドライブスルーなどは左側となっているため、実用的にも右ハンドルだと不便だと感じるだろう。
さらに売却もしくは下取りの際に右ハンドルであればかなり安くなってしまうだろう。
上記の理由が、日本の中古車が選ばれない理由ではないだろうか。
[ライター・撮影/高岡ケン]