クルマの売却を検討しているものの、会計処理や仕訳方法について深く理解していない方もいるでしょう。個人事業主と法人で仕訳方法が異なるため、適切に処理しなければなりません。
この記事では、個人事業主と法人がクルマを売却した際の仕訳方法について紹介します。
【個人事業主】クルマ売却時の仕訳
個人事業主がクルマを売却した際は、事業主借と事業主貸として仕訳する必要があります。また、個人事業主がクルマを購入した際は減価償却を用いて処理する必要があり、直接法または間接法を使って仕訳しなければなりません。
ここでは、個人事業主がクルマを売却した場合の仕訳について解説します。
事業主借と事業主貸として仕訳する
個人事業主がクルマを売却した際は「事業主借」または「事業主貸」の勘定科目で仕訳します。具体的には下記のように行います。
・売却益が出た場合......貸方に事業主借
・売却損が発生した場合......借方に事業主貸
売却益が出たかどうかは、下記の方法で算出が可能です。
・クルマの帳簿価格 − 売却額
帳簿価格とは、会計帳簿に記載されている資産の評価額のことです。帳簿価格が50万円のクルマを100万円で売却した場合、50万円の売却益が出たことになります。
個人事業主がクルマを購入した際は、定められた耐用年数に応じて、分割して購入代金を経費計上する「減価償却」をしなければなりません。たとえば、耐用年数6年のクルマを240万円で購入した場合、毎年40万円ずつ経費計上する必要があります。
まずはクルマの帳簿価格を確認し、事業主借と事業主貸を使って適切に仕訳しましょう。
▼なお、耐用年数は車種ごとに異なるため、下記から該当する年数を確認してみてください。
国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」
直接法と間接法で算出方法が異なる
個人事業主がクルマを売却した際は、直接法と間接法で仕訳方法が異なります。
今まで採用している方法があれば、それに従うことが一般的です。初めて減価償却したクルマを売却する場合は、自分に合った方法を採用しましょう。
直接法は、クルマの購入代金から減価償却費を直接減らす方法です。一方、間接法は減価償却費を引かずにそのまま購入代金を記入し、帳簿上で減価償却をします。
なお、間接法より経理処理が容易にできるため、個人事業主のほとんどが直接法(税込)を採用しているケースが多い傾向にあります。
直接法(税込)
直接法(税込)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※税込金額
・購入金額......200万円
・帳簿価格......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・売却額......120万円
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
120万円 |
車輌運搬具 |
100万円 |
売却額/帳簿価格 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
|
|
事業主借 |
20万円 |
売却益 |
合計 |
120万8,000円 |
合計 |
120万8,000円 |
|
リサイクル預託金とは、廃車する際に必要な費用のことで、新車購入時にあらかじめ支払います。売却は廃車にするわけではなく、売却先からリサイクル預託金が返金されるため、売却時の見積書に記載されている金額を確認して金額を記入しましょう。
また、リサイクル預託金は有価証券と同じ扱いであり減価償却を行わないため、帳簿価格とは別で仕訳しなければならないことに留意してください。
直接法(税抜)
直接法(税抜)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※税込金額
・購入金額......200万円
・帳簿価格......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・売却額......120万円
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
109万910円 |
車輌運搬具 |
90万9,091円 |
売却額 / 帳簿価格 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
|
|
仮受消費税等 |
10万9090円 |
消費税 |
|
|
事業主借 |
7万2,729円 |
売却益 |
合計 |
109万8,910円 |
合計 |
109万8,910円 |
|
税抜経理を採用している場合、売却額の消費税は「仮受消費税等」の勘定科目を使って仕訳します。
また、個人事業主は「課税事業者」と「免税事業者」の2種類があり、後者は税込処理を適用しなければなりません。
参考:国税庁「No.6909 税抜経理と税込経理の選択適用(個人の場合も)」
課税事業者と免税事業者の違いは下記のとおりです。
・課税事業者......前々年度の課税売上高が1,000万円を超える事業者
・免税事業者......前々年度の課税売上高が1,000万円以下の事業者
参考:国税庁「消費税のしくみ」
そのため、開業したての個人事業主は基本的に免税事業者です。ただし、上記の条件に該当していなくてもインボイス制度に登録している場合は、課税事業者となります。これは、インボイス制度に登録できるのは課税事業者のみのためです。
なお、課税事業者の場合は、税込経理と税抜経理のどちらを採用するかは事業主次第です。
間接法(税込)
間接法(税込)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※すべて税込
・購入金額......200万円
・売却額......80万円
・減価償却累計額......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
80万円 |
車輌運搬具 |
200万円 |
売却額 / 購入金額 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
減価償却累計額 |
100万円 |
|
|
減価償却費 |
事業主貸 |
20万円 |
|
|
売却損 |
合計 |
200万8,000円 |
合計 |
200万8,000円 |
|
間接法(税抜)
間接法(税込)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※すべて税込
・購入金額......200万円
・売却額......80万円
・減価償却累計額......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
72万7,273円 |
車輌運搬具 |
181万8,182円 |
売却額 / 購入金額 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
減価償却累計額 |
90万9,091円 |
仮受消費税 |
7万2,727円 |
減価償却費 / 消費税 |
事業主貸 |
25万4,545円 |
|
|
売却損 |
合計 |
189万8,909円 |
合計 |
189万8,909円 |
|
【法人】クルマ売却時の仕訳
法人の場合、使う勘定科目は異なるものの個人事業主と同じような考え方で仕訳します。ただし、個人事業主とは仕訳方法が異なる点もあるため、違いを把握しておきましょう。
ここでは、法人のクルマ売却の仕訳について紹介します。
固定資産売却益と固定資産売却損として仕訳する
法人がクルマを売却した際は「固定資産売却益」と「固定資産売却損」の勘定科目を使って仕訳します。具体的な使い方は下記のとおりです。
・売却益が出た場合......貸方に固定資産売却益
・売却損が発生した場合......借方に固定資産売却損
個人事業主は勘定科目が異なる点に注意して仕訳しましょう。
直接法と間接法で算出方法が異なる
個人事業主と同様に、減価償却費の仕訳方法には直接法と間接法の2種類があります。
直接法は、帳簿価格を一目でチェックでき、経理処理が間接法より簡単です。一方、間接法は帳簿価格を把握しにくいものの、購入金額や減価償却費を把握しやすいメリットがあります。
資産管理や財務分析をしやすいことから、ほとんどの大企業は間接法(税抜)を採用しています。自社に合う方法を選んで、適切に仕訳しましょう。
直接法(税込)
法人が直接法(税込)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※税込金額
・購入金額......200万円
・帳簿価格......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・売却額......120万円
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
120万円 |
車輌運搬具 |
100万円 |
売却額/帳簿価格 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
|
|
固定資産売却益 |
20万円 |
売却益 |
合計 |
120万8,000円 |
合計 |
120万8,000円 |
|
直接法(税抜)
法人が直接法(税抜)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※税込金額
・購入金額......200万円
・帳簿価格......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・売却額......120万円
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
109万910円 |
車輌運搬具 |
90万9,091円 |
売却額 / 帳簿価格 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
|
|
仮受消費税等 |
10万9090円 |
消費税 |
|
|
固定資産売却益 |
7万2,729円 |
売却益 |
合計 |
109万8,910円 |
合計 |
109万8,910円 |
|
間接法(税込)
法人が間接法(税込)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※すべて税込
・購入金額......200万円
・売却額......80万円
・減価償却累計額......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
80万円 |
車輌運搬具 |
200万円 |
売却額 / 購入金額 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
減価償却累計額 |
100万円 |
|
|
減価償却費 |
固定資産売却損 |
20万円 |
|
|
売却損 |
合計 |
200万8,000円 |
合計 |
200万8,000円 |
|
間接法(税抜)
法人が間接法(税抜)で仕訳した場合の例を紹介します。
【条件】※すべて税込
・購入金額......200万円
・売却額......80万円
・減価償却累計額......100万円(耐用年数4年・2年目で売却)
・リサイクル預託金......8,000円(非課税)
借方勘定項目 |
金額 |
貸方勘定項目 |
金額 |
摘要 |
普通預金 |
72万7,273円 |
車輌運搬具 |
181万8,182円 |
売却額 / 購入金額 |
普通預金 |
8,000円 |
預託金 |
8,000円 |
リサイクル預託金 |
減価償却累計額 |
90万9,091円 |
仮受消費税 |
7万2,727円 |
減価償却費 / 消費税 |
固定資産売却損 |
25万4,545円 |
|
|
売却損 |
合計 |
189万8,909円 |
合計 |
189万8,909円 |
|
まとめ
クルマを売却した場合は、適切な勘定科目を使って仕訳する必要があります。また、減価償却したクルマは直接法もしくは間接法を使って仕訳しなければなりません。
税込や税抜とでも処理の仕方が異なるため、自分または自社に合った方法を選択し、適切に仕訳しましょう。クルマの売却の仕訳について深く理解できない場合は、税理士や会計士に相談してみてください。
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