個人事業主必見!クルマ売却した際に影響する税金や申告方法を紹介

目次
1.確定申告が必要になる条件 2.個人事業主によるクルマ売却で譲渡所得扱いとなるケース 3.クルマ売却による譲渡所得の計算方法 4.クルマ売却の譲渡益の申告方法 5.クルマ売却の譲渡益の仕訳 6.まとめ

事業用のクルマの売却を検討している個人事業主の方は、売却益にかかる税金について確認しておく必要があります。売却益が出た場合は譲渡所得の扱いになるため、所得税や住民税に影響します。

この記事では、個人事業主がクルマを売却した際の譲渡所得の計算方法や申告方法などについて解説します。

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確定申告が必要になる条件

スズキ エブリイ トヨタ ハイエース

所得が48万円を超えた場合は、確定申告が必要です。年間所得が2,400万円以下の場合は、所得から48万円を差し引けます。所得が48万円以下の場合は、基礎控除により課税額が0円になるため、確定申告が不要です。

基礎控除は2,400万円超の個人事業主でも適用されるものの、控除額は合計所得金額に応じて異なります。

・2,400万円超〜2,450万円以下......32万円
・2,450万円超〜2,500万円以下......16万円
・2,500万円超......0円

参考:国税庁「No.1199 基礎控除」

なお、確定申告書の控えは、事業を行っていることや売上金額を証明できる書類の1つです。そのため、賃貸契約やクレジットカードの申込などの場面で事業や売上金額を証明するために確定申告書の控えを使用したい場合は、所得が48万円以下でも確定申告するとよいでしょう。

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個人事業主によるクルマ売却で譲渡所得扱いとなるケース

個人事業主が所有するクルマを売却すると、譲渡所得扱いとなるケースがあります。譲渡所得とは、資産の譲渡や売却をした際に生じる所得のことで、所得税の課税対象です。譲渡所得は、翌年の住民税にも影響します。

ここでは、個人事業主によるクルマ売却で譲渡所得扱いとなるケースを紹介します。

事業目的で所有しているクルマを売却した

営業車や配送車などの事業目的で所有しているクルマを売却すると、譲渡所得として扱われます。レジャー用で所有しているクルマを売却した場合も、譲渡所得扱いとなります。

一方、通勤や買い物などといった、生活するうえで必要なクルマは対象外です。ただし、嗜好性が高い高級車やスポーツカーなどは生活するうえで必須ではないため、事業やレジャー目的でなくても課税対象になる場合があることに留意してください。

50万円超えの売却益を得た

クルマの売却で50万円超えの売却益を得た場合は、譲渡所得扱いとなります。

譲渡所得には特別控除が適用されるため、売却益から50万円を差し引けます。つまり、売却益が50万円以下であれば、特別控除により所得税は課税されません

なお、譲渡所得には下記の2種類があり、税額の計算方法が異なります。

・短期譲渡所得......クルマを購入してから5年以内に売却
・長期譲渡所得......クルマを購入してから5年以上経過してから売却

短期譲渡所得は、譲渡所得の全額が課税の対象です。一方、長期譲渡所得の場合は、譲渡所得金額の2分の1が課税対象になります。

長期譲渡取得の方が税額が低くなるため、税金を抑えたい場合は、購入から5年後にクルマを売却するとよいでしょう。

クルマ売却による譲渡所得の計算方法

クルマ売却による譲渡所得の計算方法は、下記のとおりです。

・短期譲渡所得
売却額 −(取得価格 + 売る際にかかった費用減価償却費)− 特別控除 = 譲渡所得

・長期譲渡所得
{売却額 −(取得価格 + 売る際にかかった費用減価償却費)− 特別控除} × 1/2 = 譲渡所得

取得価格とは、クルマを購入する際に要した費用のことで、車輌本体価格に加えて下記のような諸経費も含みます。

・オプション品
・納車費用
・税金(自動車税や重量税など)
・自賠責保険料
・リサイクル料金

ただし、税金や自賠責保険料、リサイクル料金は必ず取得価格に含む必要はありません。事後的費用のため取得価格には含まず、別で経費として計上できます。

また、減価償却費はクルマの購入価格を耐用年数に応じて分割し、その期ごとに計上した費用です。クルマは長年使用する資産であり、取得した年に全額を計上すると、収益との対応関係がわかりづらくなります。そのため、定められた耐用年数で分割して、経費として正しく計上しなければなりません。

耐用年数は、新車の場合「普通車 6年」「軽自動車 4年」と定められています。120万円の軽自動車を新車で購入した場合、耐用年数は4年のため、毎年30万円ずつ帳簿に計上します。

ただし、クルマの構造や用途によって耐用年数が異なるため、事業用として登録している場合は正確な年数を把握しましょう。

参考:国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」

たとえば、下記の条件でクルマを売却した場合、譲渡所得は本来30万円ではあるものの、特別控除が適用されるため課税対象外です。

1.売却額......300万円
2.取得価格.....220万円
3.減価償却費......50万円
4.特別控除........50万円

※300万円 -(220万円+50万円)− 50万円 = 0円

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クルマ売却の譲渡益の申告方法

クルマ売却の譲渡益は、確定申告のタイミングで申告します。ここでは、クルマ売却の譲渡益の申告方法を紹介します。

1.減価償却費を確認する

譲渡所得を算出する必要があるため、まずはクルマの減価償却費を確認します。

減価償却費を確認する際の減価償却法には「定額法」と「定率法」の2種類があり、それぞれの計算式と特徴は下記のとおりです。

減価償却法

計算式

特徴

定額法

購入価額 × 定額法の償却率

・毎年同じ金額を計上できる

・計算が簡単で理解しやすい

・資金計画が立てやすい

定率法

未償却残高 × 定率法の償却率

・初年度の金額が最も多く、年々減少する

・初年度の節税効果が高い

・計算方法が複雑

参考:国税庁「減価償却資産の償却率等表」

なお、個人事業主は計算方法が簡単な「定額法」が用いられるケースが多い傾向にあります。

2.仕訳をする

下記を帳簿に記録し、仕訳をします。※直接法・税込処理・売却益ありの場合

・売却額
・帳簿価格(取得価格 − 減価償却費)
・リサイクル預託金
・売却益または売却損

個人事業主がクルマ売却により、売却益を出したら「事業主借」、売却損が発生した場合は「事業主貸」の勘定項目で仕訳をしなければなりません。

一方、法人で所有しているクルマを売却した場合は「固定資産売却益」または「固定資産売却損」を使用します。同じクルマ売却ではあるものの、個人事業主と法人では使用する勘定項目が異なることに留意してください。

3.青色申告決算書を作成する

仕訳をしたら、日々の帳簿付けの結果を決算書の形式で記入する「青色申告決算書」を作成します。

個人事業主がクルマを売却した場合、青色申告決算書の3ページ目の「減価償却費の計算」に、売却時に伴った利益や経費などを記入しなければなりません。

具体的には、取得金額や償却方法などの16項目の内容を記入する必要があります。下記は、定額法で減価償却した場合の記入方法です。決算書作成時の参考にしてみてください。

項目

記入内容

減価償却資産の名称等

メーカー・車種名

面積または数量

台数

取得年月

取得した日

取得価格

取得価格

償却の基礎になる金額

取得価格

償却方法

定額法

耐用年数

減価償却費で用いた耐用年数

償却率または改定償却率

減価償却費で用いた償却率

本年中の償却期間

本年中に所有ていたた期間(月数)

①本年分の普通償却費

本年分の減価償却費

②割増(特別)償却費

-

③本年分の償却費合計

① + ②

④事業専用割合

事業で使用した比率を%で記入

本年分の必要経費算入額

×

未償却残高

1年間所有:前年末の未償却残高

1年の途中で取得:取得価格

摘要

-

参考:国税庁 決算書・収支内訳書(「減価償却費の計算」欄)の書き方

下記に該当する場合は、その旨を摘要に記入しましょう。

・中古車を取得した場合
・均等償却した場合
・「割増償却」や「特別償却」をした場合
・少額減価償却資産の特例を使う場合 ※「措法28の2」と記入

4.確定申告書Bに詳細を記入する

作成した青色申告決算書をもとに、「確定申告書B」を記入します。確定申告書は、収入金額や所得金額のほかに、控除される金額や納める税金などを記入する書類です。

確定申告書には、下記の2種類があるため間違えないようにしましょう。

・確定申告書A……会社員・アルバイト
・確定申告書B……個人事業主・フリーランス

なお、確定申告書は税務署の窓口で配布されているほか、国税庁のWebサイトでもダウンロードできます。

5.消費税を計算する

最後に、消費税を計算します。

売却したクルマを事業用とプライベートの両方で使っていた場合、売却額全額に消費税が課税されるわけではありません。たとえば「事業用70%」「プライベート30%」で使用していたクルマを100万円で売却した場合、下記の金額を課税売上高に加算します。

・100万円×70%=70万円

計算自体は単純ではあるものの、見落としやすい部分でもあるため、事業とプライベートでクルマを併用している場合は消費税の計算方法に注意しましょう。

クルマ売却の譲渡益の仕訳

クルマ売却の譲渡益の仕訳

クルマ売却の仕訳方法には「直接法」と「間接法」の2種類があります。

直接法は、減価償却費を差し引いた金額を帳簿に記入します。一方、間接法は減価償却費の累計額を借方に記入し、帳簿上で減価償却を行う方法です。

ここでは、個人事業主で採用率が高い傾向にある「直接法」で、クルマ売却した際の譲渡益の仕訳方法を紹介します。

売却益がある場合(直接法)

下記の条件でクルマを売却し、売却益が発生した場合の仕訳方法を紹介します。

・購入金額......250万円
・帳簿価格.....100万円
・売却額......150万円
・リサイクル預託金......1万8,000円

借方勘定項目

金額

貸方勘定項目

金額

摘要

普通預金

150万円

車輌運搬具

100万円

売却額 / 帳簿価格

普通預金

18,000

預託金

18,000

リサイクル委託金

 

 

事業主借

50万円

売却益

合計

1518,000

合計

1518,000

 

売却益がある場合は、貸方勘定項目に金額を記入します。

リサイクル預託金は、減価償却の対象ではないため、売却額や帳簿価格とは分けて仕訳しなければなりません。売却時の契約書で、リサイクル預託金がいくらなのか確認しましょう。

売却損が発生した場合(直接法)

下記の条件でクルマを売却し、売却損が発生した場合の仕訳方法を紹介します。

・購入金額......250万円
・帳簿価格......100万円
・売却額......50万円・リサイクル委託金......1万8,000円

借方勘定項目

金額

貸方勘定項目

金額

摘要

普通預金

50万円

車輌運搬具

100万円

売却額/帳簿価格

普通預金

18,000

預託金

18,000

リサイクル預託金

事業主貸

50万円

 

 

売却損

合計

1018,000

合計

1018,000

 

売却損がある場合は、借方勘定項目に金額を記入します。また、リサイクル預託金は減価償却の対象ではないため、売却益があるときと同様に分けて仕訳しなければなりません。

なお、売却損がある場合は損した分の金額を事業所得から差し引けます。たとえば、上記の表でクルマを売却した場合、事業所得から50万円を差し引くことが可能です。

クルマの売却は金額が大きく、数十万〜数百万円の単位で損をする可能性があるため、売却損が発生しても必ず会計処理を行いましょう。

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まとめ

個人事業主が事業用で使用しているクルマを売却し、売却益が出た場合は譲渡所得として扱われるため、所得税や住民税に影響します。一方、売却損が発生した場合はその分を事業所得から差し引けます。

売却益や売却損の金額を把握するには、まず減価償却法を用いてクルマの帳簿価格を算出しなければなりません。また、クルマの売却で発生した売却益や売却損は、確定申告のタイミングで申告する必要があります。

減価償却法や申告方法が難しいと感じた場合は、税理士や会計士などの専門家に相談するようにしましょう。

 

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