私的な話になりますが、私、30年ほどライターと作家業で食っておりまして。
自動車に関わるライティングのご依頼をいただけるようになったのは、ここ5年ほど。
それまでは、主にゲームやゴルフといったジャンルで活動をしていました。
ライター仕事の多くは取材記事、うち半分くらいがインタビュー主体の記事でしょうか。
詳しく数えたことはないのですが、これまでに100人を超える方々にインタビューをお願いしました。
自動車関連の取材はもちろんですが、他ジャンルの取材でもクルマにまつわる話題が出てくることは多く、旧車やクラシックカー、ハイパフォーマンスカー、デザインが気に入ったという大衆車などなど。
愛車にこだわりをもった方がたくさんいらっしゃいましたね。
今回はこれまで取材してきた方々のなかから、念願の1台を購入した方に共通する特徴や考え方をまとめてみました。
■特徴1:「自分には無理」と考えない
「自分には無理」とか「自分にはできない」って考えません。
というか、そういうネガティブな発想を“思いつかない”といった方が正しいのかもしれません。
とある雑誌の「著名人に質問するコーナー」を執筆したときのこと。
事前に編集部より預かったハガキから質問をまとめ、インタビューに臨みました。
いくつかあった「●●ができなくて、落ち込みます。自分には才能がないのでしょうか」といった旨の質問に対し、逆に著名人さんから「ねぇ、ライターさん。多くの人って、そういう考え方をするの?」との質問を受ける事態に。
この著名人さん、苦労や挫折を知らないわけではありません。
幾度かのやり取りから、問題に対して「無理」とか「できない」とは考えず、「今、できないだけ。クリアするにはどうするか」を自然に考え、過程や苦労を楽しみながら取り組んできたことがうかがえました。
ちなみに先の取材でも「多くの人がどう考えるの分かって勉強になったよ」と、ポジティブに受け取られていたのが印象的でした。
■特徴2:人に頼ることをためらわない
何かに取り組むにあたって、遊びに誘うかのように人に連絡を入れる。
人が人を呼び、自然と多くの人が集まり、取り組みごとを一気に成し遂げてしまう。
インタビューではそんなエピソードを多くうかがいました。
「無理」って言わない人たちの集まりですから、困難が立ちはだかっても悲観することなく、知恵や力を出し合って乗り越えてしまうんですね。
また、大勢いれば誰かがその道のプロと繋がりを持っているもの。
声をかけられたプロも楽しげな雰囲気にひかれて仲間に入る。
このポジティブな輪のなかだと、悲観的な人や現状に引き留める人は居づらさを感じ、出て行ってしまうのでしょう。
よく「相手の都合を考えろ」との言葉を聞きますが、インタビュー先さんはどのようなときでもためらいなく(失礼じゃない範囲で)連絡を入れていました。
さすがに「いつでも電話するんですか?」とは聞けなかったのですが、考え方は「電話に出るかでないかは相手の判断。こちらが判断することじゃない」といった感じでした。
■特徴3:お金にこだわるよりワクワクを優先
ちょうど大きな一歩を踏み出すインタビュー先を取材したときのこと。
これまでの稼いだ資産を全部注ぎ込んでの事業展開プロジェクト。
聞けば、賃料を節約するため、それまでの住まいを退去。
ご自身は安アパートに引越され、奥様は(ちゃんと同意の上で)ご実家に帰したとのこと。
もちろん展開が失敗する可能性もあるでしょう。
それまでの収入でも生涯、お金に困ることはなかったはず。
どうして展開に踏み出したのかをうかがったところ、「失敗しても殺されるわけじゃないし、お金が無くなるだけ。今はすごくワクワクしているしやらない理由はないよ。もし無一文になっても、また最初からはじめればいいじゃない。(最初からやり直すなら)まったく違う仕事をはじめようかな、それも面白そうだしね」との返答をいただきました。
たとえ今回、事業や展開に失敗しても、この人は本当に言葉の通り、再起を図ることができるのだろう。
そう思わせるインタビューでした。
■大切なのは欲しいクルマを「買えない」と思わないこと
“念願の一台を購入した方は”は「自分には無理」と考えず、人に頼ることをためらわず、お金にこだわるよりワクワクを優先する。
私もどちらかといえばネガティブでぼっちな人間なので、これらの実践が難しいのは分かります。
けれど、安心して下さい。
(当時は自分のために)実践するコツも聞いてあります。
なりたい自分になるためのコツは、心に上官を持つことだそう。
現実の軍隊は分かりませんが、心の上官から出された命令に「いいえ」ということは禁じられています。
ただ、命令を実行に移すための要望は認められています。
上官殿!エランのスプリントが欲しいであります!
「エランを買ったら、貴様の毎日はワクワクするのか?」
もちろんです、上官殿!
「よろしい、ならば買うがいい」
えっ?ですが、買うためのお金がありませんし、維持するお金もありませんっ!
「バカもんっ! 無理などというなっ!」
サー、イェッサー!
「金が無いなら、金を稼ぐための手段を考えろ」
それこそ無理無理っ!いくらかかると思っているんですかっ!?
「無理というなというのが、分からんのかっ!」
サ、サー、イェッサー!
「大金というならば、その額に見合うだけ頭を使わんかっ!ただ悩むだけでは時間の浪費だ、先達や書に学べっ!知識が無ければ知恵はでぬっ!」
サー、イェッサー!
「いいか、決して楽をしようと思うな。算段がついたら、先達に相談しろ。人に聞かれるのを嫌がる算段など、妄想や詐欺と同義語だ!」
サー、イェッサー!
「よろしい、半年で算段を付けろ」
はっ、半年って……。
「これまで、どれだけ諦めてきたっ!期限を決めねば、お前は動かんだろうがっ!」
サー、イェッサー!心が痛いですっ!
「それと週一で俺を呼び出せ、そうしないとお前は怠けるっ!」
サー、イェッサー!
「先達や仲間にも隠すことなく語れ、苦労を楽しむために必須なことだ!」
サー、イェッサー!恥ずかしながら、仲間は「やめろ」、「いい年齢して夢を見るな」、「現実を見ろ」とばかり……。
「それはそいつの生き方だ、否定はするな。だからこそ必要なのは先達だ、同じ土俵に経っている仲間だ。勉強と平行して先達と仲間を探せ、いいなっ!」
サー、イェッサー!
「人生は短いぞ、急げっ!」
サー、イェッサー!
…いやいや、自分で書いててなんですが、これはかなりの覚悟が必要ッスね。
こういったことを、息を吸うように実践できるようになる日なんて、果たしてくるのやら……。
「面倒と思う前に頭と手足を動かさんかっ!動かねばワクワクする気持ちなど湧くわけがないっ!」
サー、イェッサー!
[ライター・糸井 賢一 / 画像・AdobeStock]