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去る2023年10月22日、東京・お台場で「スーパーアメリカンフェスティバル」が開催されました。
近年のコロナ禍の影響で開催できなかった年を挟みつつも、今回で30回目という長い歴史を持つイベントです。
会場は、ダイバーシティ東京プラザにそびえ立つ「等身大ユニコーン・ガンダム」が見下ろす位置にある「お台場ウルトラパーク」。
その広大な駐車場には、日本各地から結集してきた華やかなカスタムが施されたアメ車やハーレーなどのビッグバイクが並べられていて、入り口から眺めただけでもワクワクが止まりません。
さらに会場の一角に設営された大型トラックを使ったステージでは、「COOLS」のメンバーをはじめとするロックンロール界の名アーティストたちが歌と演奏を披露。
会場の雰囲気をオールドスクールなアメリカの空気で満たしていて、まるでアメリカンワールドに迷い込んだ気分にさせてくれます。
そして会場を回っていると、どこからともなく香ってくる美味しそうな匂いに惹かれて足を向けると、ずらっと並んだ出店の数々が現れます。
ハンバーガーやホットドッグ、カクテルやビールなど、提供されるメニューやその店舗もアメリカンな雰囲気です。
これでもかというくらいにアメリカンな雰囲気に浸ったら、まるで屋台村のようにたくさん並んだ、アパレルやグッズなどの出店まわりも楽しみのひとつですね。
旧き良きアメリカの雰囲気が詰まったアパレルグッズをはじめ、ビンテージなオモチャやクルマやバイクのグッズ、そしてカスタムパーツなどもあって、ここを回るだけで気付けば半日くらい経っていそうな充実度です。
さてここからは展示車輌の紹介をしていこうと思います。
1回では紹介しきれないので【前編】として“マッスルカー”をテーマに見ていきましょう!
■まずは“シボレー コルベット”から
初代「C1」です。
オープンボディだけのラインナップだった初代C1コルベットは、量産車初のFRP製ボディをまとって華麗にデビュー。
この写真の車輌はかなり希少な初期モデルをベースとしていますが、外装はボンネットとフェンダーが一体となるクラムシェルタイプのフロントカウル、オリジナルのハードトップ、さらにはおそらくオリジナル設計の前後足まわり、極めつけはカウルやドアなどが電動開閉する機構が盛り込まれていて、一見ノーマル風に抑えられた外観に対して、中身は原型を探すのが難しいくらいにカスタムされまくった個体でした。
今回のカーショウ受賞車輌です。
2代目の「C2」コルベットは、リトラクタブルライトを採用した前衛的で独特のスタイルから、「スティングレイ(赤エイ)」のペットネームが与えられた最初のモデル。
また、排気量6リットル420馬力オーバーののビッグブロックエンジンが搭載され、“マッスルカー”と呼ばれるに相応しいパワーを備えたハシリのモデルでもあります。
この車輌は真っ赤なボディにホワイトリボンのタイヤがマッチしていて、上品さも感じられます。
日本で「スティングレイ」というと、こちらの3代目「C3」コルベットを思い起こす人も多いでしょう。
先代より大胆な造形になり、ボディサイズも拡大されて、まさに“マッスル”という雰囲気になりました。
写真の個体はメッキのバンパーが付いた前期モデルで、通称「アイアンバンパー」と呼ばれています。
サイドマフラーが純正のように似合いますね。
こちらはバンパーがボディと一体化された「C3」中後期のモデルです。
ノーズ先端が張り出し、さらに迫力が増しました。
固定ライト化で顔つきの雰囲気が変わっているのに加え、チンスポイラーでアゴがせり出し、ワイドボディ化されていて、マッスル度MAXのC3。
4代目の「C4」ですね。
設計が大幅に見直され、スポーツ性能が高められたモデルです。
この車輌は初めて6速M/Tミッションが搭載され、375馬力までチューニングされたエンジンを搭載した最強グレードのZR-1。
当時憧れていたのを思い出します。
高性能なRAYS製ホイールもマッチしてます。
「C4」からデザインの意匠を引き継いで、なめらかなエアロフォルムになった「C5」です。
写真では同じように見えますが、C4と並べると車幅の広さを強く感じますね。
6代目の「C6」です。
この代からリトラクタブルヘッドライトをやめて固定ライトになりました。
写真の車輌はオプションパッケージのグランドスポーツのようです。
ちなみにこのC6の代の「ZR-1」は、625馬力を発生するスーパーチャージャー付きの6.2リットルエンジンを搭載したモンスターマシンです。
まだまだ現役の雰囲気を感じる「C7」ですが、もう発売されて10年が経つんですね。
この車輌はデザインワークスでカーラッピングされた車両のようです。
モデルの女性も雰囲気に合っていますね。
■続いては“シボレー カマロ”
初代カマロ、カッコイイです。
カマロはコルベットよりも10年遅れて発売されましたので、同世代のコルベットは3代目の「C3」になります。
ライバルメーカーであるフォードから発売され、空前のヒットを記録していた「マスタング」の対抗馬として、GMがクーペボディのハイパフォーマンスカーを作り上げたのがこのカマロです。
初代は3年しか発売されておらず数が少ないなかで、この写真のZ28グレードはレース向けの5リットルエンジンを搭載したスペシャルモデル。
ゆえにかなり希少だと思います。
メタリックブルーに白のレーシングストライプが象徴的です。
2代目は10年間発売されていたのでモデルライフが長く、途中で2回マイナーチェンジをおこなっています。
この写真の個体は前期モデルで、伸びやかなロングノーズのクーペらしいスタイルに、大きく口を開けた丸目2灯の顔つきが迫力を加えています。
この顔つきから「サメカマ」のニックネームで呼ばれているモデルです。
今どきの大径ホイールもよく似合ってますね。
こちらは中期モデル。
メッキ仕上げで前に大きく張り出した“5マイルバンパー”を装着する必要から、顔つきがだいぶ変わりました。
上の初代の個体と同じカラーリングで、しっかりカマロの遺伝子を感じます。
こちらはバンパーがボディ一体風の樹脂製になった後期モデル。
しかも上級グレードの“ベルリネッタ”のようです。
キレイに保って乗っているようで、愛情を感じますね。
3代目はボディサイズがひとまわり小さくなって、デザインが直線基調のカチッとしたものになりました。
かなり引き締まった印象になりつつも、テイストはしっかりカマロっぽさを表現していてカッコイイです。
こちらはアゴがせり出す前の前期モデルですね。
今見るとスッキリしていてシャープな印象です。
こちらはマイナーチェンジ後の後期モデル。
フロントとサイドの下部にエアダム形状のエアロが追加され、レーシーな雰囲気になりました。
これは5.7リットルエンジン搭載の最強グレードのZ28のようです。
デザインが先代から一変してなめらかな曲面構成になり、いかにも空力が良さそうなカタチになった4代目です。
こちらも5.7リットルエンジン搭載のZ28グレードのようですね。
ちなみにこの4代目の販売終了の後、7年ほどカマロがラインナップから消えた時期があるのです。
空白期間から復活して、初代を思わせるグリルをまとった5代目カマロ。
この車輌はドア部にインディ500のオフィシャルビークルのステッカーが貼られていますが、実際にサーキットで使われていた車輌でしょうか。
カマロ編の最後は現行の6代目。
SSグレードをベースにアンダースポイラーが装着され、ボディラッピングが施されています。
派手目なドレスアップがきっちり映えるデザインですね。
■そして“ポンティアック ファイヤーバード”
初代ファイヤーバードは、カマロと共通のコンポーネントを使って「ポンティアック」ブランドで販売された兄弟車にあたるモデル。
カマロとの2枚看板で、強敵の「マスタング」を打倒すべく投入されました。
特徴は、グリルの外枠がバンパーを兼ねるような独特な顔つきです。
この車輌はかなりキレイな状態に仕上げられていますが、エアスクープ付きのボンネットやチンスポイラーの追加などで、さりげなくレーシーな雰囲気が高められていますね。
2代目は、カマロと兄弟車ということを色濃く感じさせるデザインに。
この車輌は初期モデルのようです。
この代からファイヤーバードの象徴ともいえる、“不死鳥グラフィック”がボンネットに飾られるようになりました。
そしてファイヤーバードといえば「トランザム」ですね。
これは「Trans America」の略で、 SCCAというレース団体の市販車改造レースのシリーズ名から取ったグレード名。
カマロの「Z28」と同じく、最強エンジンを搭載したトップグレードです。
ツヤ消し黒で塗りつぶされた、どこか異様な雰囲気をかもし出しているファイヤーバードを発見。
よく見るとリヤのガーニッシュにバットマンのマークがあります。
これ、どうやらバットマンに扮して活動している、その筋では有名な「バッタモン」さんのクルマのようです。
巨大なボンネットバルジや拡張されたリヤフェンダーなど、当時の流儀を踏まえたカスタムは、単なる見せかけだけではなさそうです。
「ポンティアック ファイヤーバード」というと、このカタチを思い浮かべる人も多いんじゃないでしょうか。
2代目ファイヤーバードは10年の間に3回のマイナーチェンジをおこなっています。
この車輌は2代目の中期にあたるモデル。
鷹の目つきのようなライト周りと、トランザム専用のボンネット中央のカバーを囲むように羽を広げた不死鳥のグラフィックは、それを見た者に忘れられないイメージを植え付けますね。
3回目のマイナーチェンジで、さらに顔つきが変わります。
角形4灯の独立したヘッドライトが印象的。
ボンネットの不死鳥が面いっぱいまで大きくなっています。
リトラクタブルヘッドライトになって尖ったフロント周りは、兄弟車のカマロよりもコルベット(C4)に近い印象になった3代目。
この代はなんと言ってもあの「映画・ナイトライダー」の「ナイト2000(KITT)」のイメージが大きいでしょう。
実際に見比べると結構違うカタチにモディファイされているのですが、元のファイヤーバード(黒)を見掛けると「あ、ナイト2000だ」と思ってしまうくらい強く印象づけられてしまっています。
この写真の車輌は、トランザムの特別仕様である「トランザムGTA」。
外観はほぼ純正状態を保ってますね。
ちなみに、写真はありませんがファイヤーバードは(ブランドのポンティアックと共に)この後の4代目で時代の幕を閉じてしまうのです。
■忘れてはいけない“フォード マスタング”
それまでありそうでなかった、“スポーティな雰囲気を持ったちょっと贅沢なクルマ”というジャンルを開拓し、空前の大ヒットとなった「フォード マスタング」。
その精悍なスタイリングと、高性能でパワフルなエンジンを搭載しながらも低価格で購入できるということで、例えるなら身近に会えるスターのような存在として映画や広告に出まくっていたこともあり、日本でも“アメリカのカッコイイクルマ”として人気が高かったのを覚えています。
マッスルカーのイメージもありますが、実際に見ると意外とコンパクトで、日本で走っていてもあんまり違和感はないかもしれません。
写真の車輌は新車以上といってもいいくらいにキレイな状態に仕上げられていて、その上品さを感じる佇まいが、周りと空気が違う印象でした。
こちら、世代で分類するのにちょっとややこしいモデル。
ボディサイズが拡大され、デザインが変更されたのに伴いボディパネルもごっそり変更されていて、もうフルモデルチェンジといっていい内容に思えますが、2代目ではなく初代の後期とする説が有力の模様。
後付けのチンスポイラーは結構大きいサイズですが、車体が大きいせいかそれほど大げさに見えません。
2代目は見付けられませんでしたが、ある意味それより希少かもしれない3代目のマスタングを発見しました。
この代はサイズとデザインからコンパクトスポーツという印象もありましたが、写真の車輌は大径ホイールを履かせてマッチョな雰囲気に仕上がってますね。
こちらは4代目を飛ばして5代目モデル。
まったくテイストが違うクルマなのに、丸目2灯の顔つきや片側3連タイプのテールランプなど、初代モデルを意識したデザインが目を引きます。
■その他会場で印象的だったマッスルカー
プリムス(クライスラー)の3代目バラクーダ、そのハイパフォーマンスモデル「HEMI・クーダ」。
ドアに掛かるグラフィックに「383」と見えるように、6.3リットルのHEMI383エンジンを搭載した、正真正銘のマッスルカーです。
ホイールもボディ同色とした、独特の色使いがカッコイイですね。
こちらは、上のバラクーダの兄弟車「ダッジ チャージャー」。
「映画・ワイルドスピード」ではマッスルカー代表としてその力強さをアピールしていますが、この「チャージャー」が発売された当時、その強大なパワーから「これぞマッスルカー!」と称賛されました。
写真の「R/T」グレードはそのなかでも最大排気量の、7.2リットル440マグナムエンジンを搭載するモデルです。
こちらは「コブラ」を世に出したメーカー「シェルビー・アメリカン」がGTカーレースで打倒フェラーリを実現すべく開発した“ホモロゲーションモデル”である「シェルビー デイトナ」。
レース出場権を取るためだけの生産台数しか作られていないので、世界的に見て超希少な個体だと思います。
実物を見られただけでもラッキーかもしれません。
■あとがき
今回は「スーパーアメリカンフェスティバル」の展示車輌のなかから、代表的なマッスルカーにフォーカスを当てて紹介してみました。
こうして憧れのマッスルカーたちの歴代モデルが一堂に会しているのも、このイベントならではの魅力だと思います。
それぞれの個体1台1台に、ここで書き切れないくらいの魅力が詰まっていますので、会場に訪れたら「1日では回りきれないな…」と思う人も少なくないのではないでしょうか。
次回は他の展示車輌にフォーカスを当てて紹介してみたいと思います。
お楽しみに!
[ライター・画像 / 往 機人]