スーパーアメリカンフェスティバル2023レポート【後編:〜70'sホットロッド・ピックアップ等】

目次
1.■まずはホットロッドの元祖“デュース”から 2.■続いてはフォードのベストセラー・ピックアップ“パンプキン” 3.■シボレーの名ピックアップ“シェビー3100” 4.■戦前の旧き良き豊かな雰囲気の“シボレー フリートマスター” 5.■50'sのアメリカン・ポップカルチャーのアイコン的存在“ピンク・キャデラック” 6.■ここからは筆者が気になったクルマたちを紹介していきます! 7.■あとがき

2023年10月22日に、東京・お台場で「スーパーアメリカンフェスティバル」が開催されました。

近年のコロナ禍の影響で開催できなかった年を挟みつつも、今回で30回目という、長い歴史を持つイベントです。

会場となるダイバーシティ東京プラザの広大な駐車スペースに、様々なジャンルの350台を越えるアメリカンなクルマたちがぎっしり展示され、かなりの見応えがありますね。

アメ車好きにはたまらない空間です。

その非日常な景色を見るだけでも訪れて良かったという気になりますが、それぞれの車輌をじっくり観ていくと、いつの間にか時間を忘れてじっくり見入ってしまい、気付くと1時間くらいはすぐに経ってしまいます。

展示方式はどのクルマも平等に整列されて並んでいますが、丹念に手をかけられたカスタム車輌はあたりまえで、なかにはかなり希少な個体もさり気なく並んでいます。

さらにはそれをベースにカスタムが施された個体もあり、唯一無二の存在感を放っていて、アメ車好きの人だかりが出来ていました。

前回は前編として「マッスルカー編」を紹介しましたが、今回は70年代以前を中心に、会場で素通りできないオーラを放っていた車輌を紹介していきたいと思います。

⚫︎スーパーアメリカンフェスティバル2023レポート【前編:マッスルカー】
https://www.qsha-oh.com/historia/article/super-american-festival-2023/

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■まずはホットロッドの元祖“デュース”から

1920年代のアメリカでは、まだスポーツカーというジャンル自体が登場していませんでした。

モータースポーツとしてレースは戦前から行なわれていましたが、公道を速く走れる象徴としてのスポーツカーはMGやトライアンフなどのヨーロッパ車を輸入するしかなく、高価で若者には手が出せる存在ではありませんでした。

そこで当時の若者達が目を付けたのが、大衆車として発売された「タイプT」や「タイプA」などの、いわゆる「アーリーフォード」という車種です。

大量生産で安く売られたハシリの車種なので、型落ちなら若者でも手に入れることができました。

この安いフォードをベースにして、フェンダーを取っ払ったり、車高を下げたり、エンジンを改造したりして速さを求める遊びの文化が広がっていきました。

それが「ホットロッド」の起源と言われています。

その中心的存在で黎明期のホットロッドの象徴とも言えるのが「デュース」の愛称で呼ばれる「フォード V8」です。

この車種は1932年に登場し、たった1年しか販売されませんでしたが、その後のアメ車カスタムの代名詞になるくらいに「ホットロッド」を根付かせる原動力として、当時の若者から圧倒的な支持を受けていました。

販売期間が短く、オリジナルはかなり希少ですが、社外製のパーツを駆使すれば1台丸々構成することも出来るため、比較的安価(とはいえ数百万は掛かります)に「ストリート・ロッド」の世界を堪能できます。

こちらの個体は4ドアセダンのロングボディをベースにしてルーフをチョップ(短縮)し、長く低いスタイルにカスタムされた1台です。

エンジンはOHVが搭載されていますが、直キャブ&直管マフラーと当時を思わせるトラッドスタイルでまとめられています。

こちらは珍しいピックアップがベースです。

オリジナルのクーペやロードスターはかなりの額なので、本国でも比較的安価に入手できるピックアップをベースにカスタムするケースも少なくないようです。

この個体はホワイトリボンタイヤでクラシカルな雰囲気を出しつつ、アルミビレットパーツを各所に使った80年代テイストでまとめられています。

こちらは少しジャンルが違って、極太のリヤタイヤと頼りないほど細いフロントタイヤが印象的な、ドラッグレースを意識したカスタムですね。

ウイリーバーとシュートまで装着しているところを見ると、10秒以下で走ってしまいそうな、かなり本格的なマシンかもしれません。

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■続いてはフォードのベストセラー・ピックアップ“パンプキン”

エンジンが収まる中央が盛り上がって、グリルにかけて末広がりに降りていくラインが、まるでダースベイダーのヘルメットを思わせる独特なデザインの「フォード F110」、通称“パンプキン”。

のちの6代目で全米で最も売れたトラックとなり、現在に至るまでフォードを代表するフルサイズのピックアップトラックシリーズです。

このパンプキンは2代目のモデルで、愛称が付いていることからも分かりますが、“ボムデザイン”と呼ばれるその愛嬌のある顔つきとボディデザインが、当時から今まで根強いファンによって支持されています。

特にストリートロッド、ローダウンカスタムのジャンルでは、外せない一角として存在感を示し続けている車種です。

この個体は珍しいパネルバンがベースのカスタム車輌です。

外装は見た感じ、ほぼフルオリジナルですが、バンパーレス化、エンブレム外し、ナンバー移設、そして大径ホイールのナローフィットと上品なツートンペイントによってエレガントな雰囲気に仕上がっています。

控えめな雰囲気ながら、目が離せない存在感が印象的です。

■シボレーの名ピックアップ“シェビー3100”

フォードのFシリーズに並び、カスタムの世界で人気を得ているピックアップトラックが「シボレー 3100シリーズ」です。

1950年代のシボレーの人気セダン「ベルエア」のデザインイメージを受け継ぎ、少しマッチョに仕立てられたスタイリングが支持され、今でもホットなファンがいるモデルです。

元々V8を搭載することが前提の設計だったこともあり、よりハイパワーなエンジンに換装するなどして、ストリートロッドのスタイルでカスタムされているケースをよく見かけます。

鮮烈なパール・オレンジのカラーがひときわ目を惹くこの個体は、特徴的なボディデザインに手を入れずに要所のみにスムージング処理を行なっていて、元の個性的なデザインに対するリスペクトが感じられる1台です。

バンパーやグリル、ホイールなど、外観のアクセントになる光りモノにも抜かりなく気を使っている印象で、派手目なボディカラーなのに上品さも感じられる雰囲気にまとまっています。  

今回の「GOOD TASTE」受賞車輌です。

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■戦前の旧き良き豊かな雰囲気の“シボレー フリートマスター”

戦前の1941年にモデルチェンジを受け、このおでこが張り出した個性的な外観になった「シボレー・デラックス」シリーズ。

その外観のイメージを受け継いで、戦後に販売再開されたのがこの写真の個体のモデルです。

グレードとボディタイプはセダンからコンパーチブルまで多岐に分かれていて、ザックリと下位ラインナップの「DJ」シリーズと上位の「DK」シリーズに分かれていました。

写真の個体はその中でも上位版となる「フリートマスター」グレードのようですね。

スペアタイヤが装着され、それに合わせた形状のバンパーが用意されていることに贅沢な印象を受けます。

シンプルなシルバーのボディ各所には、さり気ない色合いでピンストライプがあしらわれていて、ほど良いアピールが効いています。

また、大型のバイザーやフォグランプ、ワイヤーホイールは車両に合ったレトロ感で似合っていますね。

■50'sのアメリカン・ポップカルチャーのアイコン的存在“ピンク・キャデラック”

1900年代の初頭に登場して以来一貫して高級路線を貫き、大統領やトップスターなどが愛用するなど「成功の象徴」としてアメリカ車のトップに君臨してきた「キャデラック」。

「キャデラック」と聞いて「ピンク」と連想する人はけっこういるのではないでしょうか。

特に65歳よりも上の人には多いと思います。

そもそものきっかけは、50年代にアメリカの国民を熱狂させた「キングオブ・ロックンロール」こと「エルビス・プレスリー」が乗っていたことです。

その件で一躍注目を浴びた車種というのが、1955年式の「キャデラック フリートウッド」でした。

当時はボディカラーのラインナップにピンクの設定は無かったため、専門業者に依頼して、特注色の「エルビス・ローズ」で塗り上げたんだそうです。

その1955年式「キャデラック フリートウッド」を発見。

まさにエルビスが乗っていたという雰囲気をそのまま再現している個体で、オーナーさんのキャデラックとエルビス、そしてロックンロールに対する思い入れがヒシヒシ伝わってきます。

ほど良く下げられた車高がまた、良い雰囲気を醸し出していますね。

こちらはおそらく1958年式の「キャデラック デビル」ですね。

キャデラックには1956年と1957年にのみピンクのカラーがラインナップされていたようです。

これは想像ですが、エルビスのピンク・ショックで一気に人気と要望が高まったため、その期間だけピンクが追加されたのではないかと思います。

この写真の個体はボディカラーの選択もさることながら、各部を細かく見てもかなりコンディションが良くて、この日の晴れ渡った空によく映えていました。

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■ここからは筆者が気になったクルマたちを紹介していきます!

こちらは「リンカーン コンチネンタル」。

おそらく年式は1962年か1963年でしょう。

航空宇宙のイメージが流行して大きなテールフィンを競い合っていた時代から一転、その名残をとどめながらも、側面を前後に貫くウイング状のプレーンな造形がクリーンな印象を与えるシンプルさが新鮮です。

この個体は全体の雰囲気を崩さないように配慮しながら、リヤガーニッシュの磨き上げや小ぶりなドアミラーの装着などさり気ない処理を行なっている一方で、超大径(22インチ?)のホイールを履かせている大胆さも見どころです。

タイヤハウスを大きく加工しないとこのサイズは収まりませんので、けっこう手が入っていると思います。

会場を見て回っているときに素通りを許してくれなかった1台。

その特徴的すぎるノーズ部分の造形を見て、ほとんど無意識にカメラを向けていました。

あとで車種を調べたところ「スチュードベイカー チャンピオン」という車種だと判明しました。

デザインを手掛けたのは「レイモンド・ローウィ」だそうです。

日本ではタバコのピースのデザインが有名ですね。

見た印象のまま、ジェット戦闘機の吸入口を大胆にノーズに採り入れ流線型にまとめたデザインは、当時のアメリカでもかなり話題になり、「スチュードベイカー」の名を広める役割りとなったそうです。

いま日本でこれを維持するのはかなり大変だと思いますが、良いものを見せてもらって感謝です。

こちらも日本ではほとんど見掛けない車種ではないでしょうか。

シボレー初のコンパクトカー「コルベア」です。

写真でお分かりかと思いますが、フロントに空気取り込み口のグリルが無く、リヤのフードを開けるとそこにエンジンが収まっているんです。

写真ではかなりコンパクトなエンジンに見えますが、実はこれ、2.7リットル水平対向6気筒の空冷OHVエンジンなんです。

そう、あのポルシェ911のエンジンとほぼ同じ構成のエンジンを、1960年代のアメ車が搭載していたんです。

驚きですね!

しかもこの車種は、いち早くモノコックボディ化を図ったり、途中でターボやクーラーを導入するなど、GMとしてもかなり意欲的なモデルだったようです。

販売も好調で、けっこうな台数が出荷されたようですが、評論家による風評被害や、同社内同カテゴリーであるカマロの発売などが重なり、わずか9年で廃盤モデルとなってしまいました。

希少な車種ですが、適度にヤレている状態を見ると、しっかり乗られている感があっていいですね。

こちらの個体は、VWビートルのシャーシを使ってバギータイプのボディに換装した「メイヤーズ マンクス」です。

ビートルはフロア部分がフレームを兼ねる構造でボディと分離できるので、こういうボディキットと足まわりのキットを組み込むことで、ダートや砂地を走らせられるバギーに変身できます。

この「メイヤーズ マンクス」は、手軽に作り上げられるイージーさと、アメリカやメキシコの砂漠地帯でおこなわれるオフロードレースで活躍したことでヒットしました。

VWの水平対向4気筒エンジンはいろんなレースにも使われていてチューニングパーツも豊富なので、好みの仕様のエンジンと組み合わせを楽しむことも自在です。

こちらの個体はコンパクトにまとめられたヘッダーパイプが外観のアクセントになっており、明るいイエローのボディラインに入れられたピンストライプの雰囲気と相まって、本場のCALルックに仕上がっています。

最後に紹介するのは「シボレー インパラ」です。

シボレーの最上級モデルである「ベルエア」の追加グレードとして派生した「インパラ」は、当初2ドアがメインのスペシャリティカーとして好評を得ました。

この写真の個体は4代目にあたる1965年に発売のモデルです。

しかもワゴンボディというところに惹かれて写真を撮らせていただきました。

特徴的な6連のテールランプや上品なツートンに塗られたボディカラー、細いホワイトリボンのタイヤとビレットホイール、そして細いパイプの2本出しマフラーなど、けっして押しこそ強くないものの、好感度が高い一台です。

■あとがき

さて、2回にわたって「スーパーアメリカンフェスティバル」の参加車輌を紹介してみましたがいかがだったでしょうか。

これでもまだまだ紹介しきれない個体がいっぱいあって心残りではありますが、その他のクルマはまた、来年の開催の時に再会できることを期待して取っておくことにしましょう。

私自身は数年ぶりに訪れることになった「スーパーアメリカンフェスティバル」。

カーショーの受賞車輌はもちろんのことですが、展示されている参加車輌一台一台のクオリティが高く、全体としてかなり見応えがあるなと感じました。

今回でキリの良い30回を迎えたこのイベントですが、日本のアメ車好きとアメリカの文化が好きな人のお祭りの場として、40回、50回とこれからも続けて欲しいものですね。

筆者も次回開催を心待ちにしています。

[ライター・カメラ / 往 機人]

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