■台湾で独自進化したセダン達
クルマは一家に一台!
そんな感覚も日本ではもはや過去のものになりつつあるが、海外を見ればまだやっとクルマを初めて手に入れることができる家庭も少なくない。
かつての日本も、高度経済成長期のころはクルマの存在は高嶺の花であり、憧れの対象だった。
それを象徴するかのように、各車のグレード名も”スーパーデラックス”や”ロイヤルサルーン”などなど…。
とにかく凄く良いクルマを所有することができたことを実感できる、そんなネーミングが多かったように思える。
ほんの20年位前まで、あるいはまだ進行形なのかもしれないが、アジアの国々で良いクルマの象徴といえば、セダンという見方がまだ強かったと思う。
上を見ればショーファードリブンなクルマたちもいるが、オーナーカーとして手に入れられるクルマで、高級さやスポーティーさの雰囲気を味わうことができるのは嬉しいことだ。
特にそれらが凝縮された3BOXの車種には、色濃く現れていると感じる。
アジア各国の90年代から00年代にリリースされた車種を振り返ってみても、そのラインナップの豊富さは市場を席巻していたことをありありと示しているし、何よりその国々のクルマにまつわるトレンドが見えてくるかのようで興味深い。
今回は、日本からアジアの国々に輸出されていたセダンにフォーカスして紹介してみたいと思う。
といってもその車種群は幅広く、あまりにも数が多いので、少しづつピックアップしていこうと思う。
今回は台湾を走っていたトヨタのセダンを、ごく一部だが取り上げてみよう。
■小さくてもラグジュアリーに...異なる仕立ての雰囲気!
まじめな作りの、壊れない日本車の代名詞といえばやはりトヨタのブランド力は強い。
それは台湾という国の市場でも同じだ。
日本では90年代当時、100万円以下で購入できたエントリーセダンのひとつに、トヨタ ターセルがある。
北米でもバジェットカーとして、まるでゲタ感覚で乗りつぶされることも多かったが、20年以上が経過した今でも時折その姿を見ることができる。
その生命力はシンプルな装備類と頑丈なエンジンの組み合わせの賜物であるが、便利で飽きの来ない実直さもオーナーに愛される理由の一つだろう。
台湾仕様のターセルといえば、日本や北米の仕様よりは少しグレードの高いものだ。
現地法人の国瑞汽車で生産されていた台湾仕様のターセルは、フェイスリフト時にメッキのフロントグリルが装着されたり、専用のバンパーやレザーシート、LEDメーターパネル、木目調パネルの採用などグレード感漂うものだ。
日本国内では1999年に生産を終了しているが、台湾仕様は2003年まで生産を続け、需要に合わせた独自進化をしていったといえるのではないだろうか。
似たように、独自進化っぷりで興味深いのはコロナ・プレミオだ。
日本でいうところのT210型、6代目コロナは名前こそ同一であるが、外観の差異は小さくない。
先述のターセルと同じように、マイナーチェンジが進むほど豪華さを増していったプレミオは、フロントグリルやバンパー、リアランプのメッキモールの縁取りをこさえ、もはやクラスを越えて日本のクラウンのような印象すら感じる。
近年ではだいぶ街中ですれ違う機会も少なくなりつつあるが、それでも当時の販売台数が少なくなかったことを感じさせるものだ。
■これはUSDM?アジアですれ違う意外な仕様
では、ターセルとコロナ・プレミオの中間を担うカローラも、物凄くリッチな仕様なのでは...?と想像していると、意外な姿を見かけることになる。
例えば日本の90系、100系、110系に相当する台湾仕様のカローラは、北米仕様をほぼそのまま販売していたのである。
そのため、サイドマーカーに5マイルバンパー、90系や100系ではマイルメーターまで装備されている時代もあり、台湾にありながらもアメリカのベーシックカーらしい雰囲気がさらに強まっている。
もちろん台湾独自のグレードも存在しているのだが、車種自体がよりアジアらしい雰囲気が強まるのは、2000年代に入って120系のカローラ・アルティスがリリースされてからといえよう。
この現象は、上位車種のカムリにも同様のことがおきている。
特に筆者がカッコいいと思うのは、日本名トヨタ セプターセダンが、そのままカムリとして台湾市場では販売されていたことだ。(当時、北米では台湾と同じようにカムリとして販売されていた)
どちらの車種も、2018年ころの渡航時にはまだ街中で見ることができ、ゴージャスないでたちのトヨタ車と北米ベーシックな雰囲気のセダンが、同じブランドのショールームから販売されていたことを考えるとかなり面白い。
この現象は実はトヨタに限ったことではなく、現地法人が力を入れて生産する車種と、海外からそのまま輸入してくる車種が入り乱れた結果が現れている。
近年でも、独自進化系の車種をラインナップを有するブランドは継続して台湾に存在しているので、もし渡航する際は調べてみると面白いだろう。
[ライター・撮影/TUNA]