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筆者(ライターのtomato)は、現在、ニュージーランドのオークランドに在住している。
気づけば、かれこれ7年目。
日本からの長期滞在者/永住者のなかでも中堅グループに入りつつある。
さて「ニュージーランド」という国名から、皆さんが連想するモノは一体何だろうか?
ぜひ、数十秒ほど考えていただけないだろうか。
一般的には、「羊がいっぱい」、「ハチミツのマヌカハニー」、「チーズなどの乳製品」、「ワイン」、「キーウィフルーツ」、「ラグビーのオールブラックス」、「先住民のマオリ族」、「壮大な映画のロケ地」といったところだろうか。
正直なところ、ワーキングホリデーや留学などで渡航した経験がない限り、そもそもの地理的位置を含め、あまり認知されていないのが現実ではないだろうか。
▲オークランド(出典: Pexels)
▲マウントクック(出典: Adobe Stock)
■島国「ニュージーランド」とはどのような国?
ニュージーランドという島国について、簡単に概要をまとめてみた。
日本から南南東、およそ9,300㎞離れた南半球にニュージーランドは位置している。
おもに北島と南島の2つから縦長に構成され、日本との時差は+3時間(夏時間は+4時間)となっている。国土面積はおよそ27万平方キロメートルで、日本の7割ほどだ。
人口は、2022年時点で510万人強で、移民により右肩上がりで成長しているが、それでも日本人口と比較してわずか4%ほどと少ない。
最大都市は北島のオークランドで、実に人口の1/3が暮らしている。
自然豊かな国土をテコとした酪農、木材、果実などが主要産業だ。
自動車関連の真面目な話としては、季節が真逆であることを利用し、世界に名だたる自動車およびタイヤメーカーが、北半球の冬を待たずに冬季テストを行う民間試験場が南島クイーンズタウン近郊の山頂にある。
各社の要望に合わせ、「圧雪路」や「氷盤路」などを用意してくれるのだ。
開発期間を短縮できるのだから、とても重要な施設なのはいうまでもない。
なお、冗談みたいな本当の話で、稀に「オーストラリアのすぐ脇にある島国」という誤解があるが、それはオーストラリアのタスマニア島だ。
同国の東海岸とニュージーランドとの時差は2時間であり、それはタイと日本の時差と同じといえば、その距離感をご理解いただけるだろう。
少し乱暴ではあるが、「日本の本州サイズの国土に、福岡県民だけが在住し、その1/3にあたる福岡市民だけが東京都で暮らし、どの主要国からも遠い島国」というアナロジーが成立するように思う。
■ニュージーランドのクルマ事情について
そんななかで、どんな「自動車事情」を想起されるのだろうか。自動車メーカーが存在する日本やアメリカやドイツなどとは異なり、情報が極端に少ないというのが実情だ。特徴を幾つかお伝えしたい。
日本からの直行便が就航するオークランド国際空港に到着し、道路をものの5分も走ればすぐに、多くの日本人は、「何か懐かしい」とても不思議な感覚を抱くだろう。
1. 右ハンドル/左側通行
大きな要因は、第一にそもそもコモンウェルス(イギリス連邦)加盟国であるため、日本と同じく、世界では少数派といえる右ハンドル/左側通行であるためだろう。
実際、日本の運転免許証の書き換えは優遇されている。
▲高速道路(State Highway 1)
唯一、多くの日本人が戸惑うのは、日本国内にはほとんどない円形の環状交差点「ランダバウト」が当たり前のようにあることぐらいだろう。
さまざまな意見があるだろうが、これは欧州に住んでいた頃に初めて経験したが、個人的には非常にシンプルで頭の良いシステムだと思っている。
一番のメリットは高い安全性だろう。通行車輌はどれも同じ進行方向へ走ろうとするため、理論的に(相対速度が大きくなる危険な)正面衝突が発生しえない。
信号機がないから停電にも強い。
ただ、クルマを旋回させるスペースを必要とするのと、一定の交通量を超えると、信号機の交差点に効率面で負けるのがデメリットのようだ。
▲ランダバウト/Roundabout
2. 旧車天国(別名「日本車の墓場」とも)
もうひとつ要因は、懐かしめの日本車が普通に元気に走っているためだろう。
日本とは異なり、地場メーカーや現地生産拠点が存在しないため、すべてが海を渡ってくる高価な輸入車となる。
ところが日本のような立派な鉄道網はないため、主に日本国内で5~10年ほど使用され、十分に安価になった中古車(JDM = Japanese Domestic Marketと呼称される)を大量に輸入することで、貧弱な公共交通を埋め合わせ、「国民の足」とするという構図になっている。
▲スーパーマーケット駐車場-1(スズキ「イグニス」、フォード「レンジャー」、日産「デュアリス」、マツダ「MX-5/ロードスター」、トヨタ「プリウス」ほか)
▲スーパーマーケット駐車場-2 (マツダ「626/カペラ」、トヨタ「ラクティス」ほか)
その裏付けとして、下表にある通り、日本の中古車の輸出先として、ニュージーランドはお得意様になっている。
ロシア/UAEは第三国への経由地も兼ねているのに対して、島国であるニュージーランドは終着駅だ。
したがって、10年落ち/走行距離10万キロ越えのクルマは至って普通で、誰も驚きはしない。
ある意味、日本では買い替えの目安にもなっているのだから、まさに「所変われば品変わる」だ。
なお、2022年にニュージーランドに陸揚げされた輸入新車と輸入中古車の台数比率は、車輌登録実績で、およそ60:40となっている。
その結果、ピックアップトラックや電気自動車を含めた最新の自動車と並び、多くの旧車が元気に走る独特な風景が広がっている。
さらには、イギリスの「バックヤードビルダー」文化も継承されていて、週末になるとレストアされたクラシックカーがどこからともなく湧いて出てくるのも興味深い。
▲スーパーマーケット駐車場-3 (ホンダ「クロスロード」、トヨタ「セリカコンバーチブル」、ホンダ「シビックタイプR」ほか)
▲ぺトロールステーション (フォード「モデルAクーペ(1930年式)」)
3. ニュージーランドにおいて、クルマは「1人1台」
近年、日本では、「(特に若者の)クルマ離れ」がいわれているが、ここニュージーランドでは、起きていないように思う。それを証明する世界ランキングを2つご紹介しよう。
1つ目はクルマの保有率だ。ニュージーランドは、2022年における1,000人あたりのクルマ保有率で堂々の世界第5位に入る。
スマホ同様、ほぼ1人1台の国と解釈できる。
ちなみに、自動車検査登録情報協会「自動車保有台数(2021年)」によれば、日本は500台に満たない。
だが、裏を返せば、公共交通が貧弱なニュージーランドは、「クルマがないと不便」ということになる。
2つ目は、Confused.comというサイトが最近行った調査で、「世界でもっともクルマに頼る国」ランキングで、少し不名誉ではあるが、世界一に輝いている。
とはいえ、結果的には、ありがたいことに維持費(税金/車検)も安く抑えられている。
また、車庫証明も必要なく、複数台持つのもまったく苦にならないので、個人的には素晴らしい国だと感じている。
■ニュージーランドで懐かしい日本車と感動の再会
以上のことから、ニュージーランドは「クルマ好きが大好きになる国」だと筆者は自負している。
これを機に「ドライブ旅行してみたいな」と思っていただけたのなら、嬉しい限りだ。
日本ではあまり見かけない旧車に会えるのはもちろん、日本から大量の中古車を輸入しているのだから、皆さん自身や両親や友人が所有していたクルマたちは、かなりの高い確率でニュージーランドに来ているはずだ。
「愛車に再会できるかもしれない」。
そんな楽しみを持って、ニュージーランドに渡航されるのはいかがだろうか。
[画像/Pexels、Adobe Stock・ライター・撮影/tomato]