トヨタのスポーツ4WDの歴史は、「GT-FOUR」の登場と共に幕を開けました。高い走行性能とスタイリッシュな外観で若者の心を掴みつつ、WRCという世界最高峰のステージで着実に結果を重ねていきます。現在WRCで活躍しているGRヤリスにもつながる、GT-FOURの歴史と魅力を振り返っていきましょう。
トヨタWRCの歴史とともに歩んだGT-FOUR
「GT-FOUR」はトヨタのスポーツ4WD最高グレードとして受け継がれてきた称号です。2車種4世代に渡って使用されたグレードで、その時代の最新技術が投入されていました。
トヨタのスポーツ4WDの礎を築いたGT-FOURは、最終型の3代目カルディナの販売終了まで実に20年以上も使用された伝統のグレード名称です。
トヨタ初のスポーツ4WDとして登場
初代のGT-FOURは4代目セリカ(160系)の追加グレードとして1986年に登場しました。トヨタ初のスポーツ4WDとなり、以降「GT-FOUR」という名称はトヨタのスポーツ4WDを象徴する称号として受け継がれることになります。
GT-FOURはセリカとして3代、別車種カルディナで1代の合計4世代に渡ってトヨタのスポーツ4WD最高峰グレードとして君臨。WRCのベース車両ともなった高い走行性能が魅力でした。
WRCでトヨタ黄金時代を築く
初代160系セリカGT-FOURは、1986年の登場の2年後となる1988年からWRCに参戦します。5,000台販売というWRC参戦規定のクリアを待ったためです。参戦初年度こそランチアに苦戦を強いられますが、翌年には初優勝。さらに1990年には、ドライバーズタイトル獲得と目覚ましい活躍をします。
続く2代目ST185系セリカでは、トヨタのラリー黄金期を築き上げます。1992年から1994年にわたってドライバーズタイトルを3年連続で獲得。さらに1993年と1994年についてはマニュファクチャラーズタイトルも獲得し2冠に輝きました。トヨタのマニュファクチャラーズタイトル獲得は、日本車初という快挙です。
後継となるST205では車両規定違反があったこともあり、GT-FOURによるWRCの歴史は1995年で終了します。
歴代GT-FOUR
トヨタのスポーツ4WDとして一時代を築き、トヨタのみならず日本の自動車史に残るGT-FOUR。ここからは、4代目セリカから3代目カルディナまで、歴代GT-FOURについて振り返ってみたいと思います。
映画でも話題になったST165
初代GT-FOURは、185psを発生する2Lターボ3S-GTEエンジンにトヨタ初となるフルタイム4WD車として1986年に登場。すでに販売されていたST160系セリカの追加モデルとして発表されました。
高いスペックとリトラクタブルライトという先進の外観から、若者を中心に注目を集めます。当時はスタイリッシュに乗れる高性能車が人気で、ホンダ プレリュード、日産 シルビアと並んで3大デートカーとも呼ばれました。
また、映画「私をスキーに連れてって」にも登場。劇中で雪道のカーアクションシーンがあり、当時ブームとなりつつあったスキー用の車としても人気が高まりました。
WRC黄金時を築いたST185
ST165の後継車種として投入されたST185型GT-FOUR。エンジンの型式こそ先代と同様の3S-GTEながら、セラミックタービンと空冷インタークーラーによって、40psアップとなる225psを実現しました。走行性能も随所に先進技術が投入され、日本初のトルセン式リミテッドスリップデフ、油圧制御式アクティブサスペンション(限定車)などが装備されています。
WRCには1992年から参戦。6連覇中のランチアを抑えて日本車初のマニュファクチャラーズタイトルを獲得するなどトヨタWRCの歴史のなかでも輝かしい黄金期を築き上げました。
車としての完成度は高かったST205
1993年のセリカモデルチェンジから1年遅れで登場したのが、ST205型GT-FOURです。セリカ最終型のT230系セリカにはGT-FOURの設定はなかったので、セリカとして最後のGT-FOURとなります。
インジェクター容量の増加やメタルガスケットの採用など、改良された3S-GTEエンジンの出力は255psに到達。対向4ポッド(後輪は2ポット)アルミ製キャリパーを採用したブレーキをはじめ、当時のWRカーとしては完成の域に達していました。リトラクタブルヘッドライトを廃止し丸目4灯式ヘッドライトになった点が外観上の大きな変更点です。さらに大型のリアスポイラーを装備し、WRCでの活躍も期待されました。
しかし、ST205型GT-FOURは参戦翌年の1995年シーズン途中で車両規定違反が見つかり、トヨタはWRCから遠ざかることになってしまします。1998年にWRCに復帰する際は車両をカローラに変更していたため、GT-FOURでのWRC参戦はST205型セリカで幕を閉じることになりました。
GT-FOURの称号を復活させた3代目カルディナ
ST205型GT-FOURの販売終了から3年後となる2002年、GT-FOURの称号が別車種で復活します。3代目カルディナ(T240系)のターボモデルのグレードにGT-FOURの名が冠されました。
260psまで高められた3S-GTE型エンジンと高い走行性能が魅力で、ニュルブルクリンクでは80型スープラよりも速いタイムを記録したという逸話まで残っています。この逸話には多くの説があり真偽は不明ですが、3Lツインターボのスープラと比較されるほどの高性能であったことは間違いありません。
ただし、用意された設定は4速ATのみということでWRC等のレース参戦車両となることもなくカルディナの販売終了と共に2007年にGT-FOURの名称は終了しました。
まとめ
現在GT-FOURの名称は使われていませんが、GT-FOURの名称を受け継いだ「GR-FOUR」という名称が使用されています。WRCで第2の黄金期を築きつつあるGRヤリスの4WDシステムの名称です。
トヨタ初となるスポーツ4WDに冠されたGT-FOURは、トヨタのWRC参戦の歴史に輝く最初の黄金期を築きました。GT-FOUR以来のスポーツ4WDとなるGRヤリスに搭載されたGR-FOURは、新開発された画期的な4WDシステムです。
GR-FOURもGT-FOUR同様、トヨタ最高の技術が投入された証でもあります。WRCでのGRヤリスの活躍とともに、GR-FOURの今後からも目が離せません。
[ライター/増田真吾]
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