去る2022年11月6日(日)、愛媛県四国中央市の川之江駅栄町商店街で「昭和レトロフェスタ」が開催された。
今回はイベント内で催された「第11回 U-550旧軽自動車ミーティング」を紹介したい。
「戦後からバブル期にかけて排気量や外寸などの規制を受けながら各メーカーが試行錯誤を繰り返してつくりあげたクルマたちから、モノを大事にする本来のエコ精神を感じてほしい」
そんな思いのもとに開催されている。
■懐かしの名車74台が集結!
当日は好天で、汗ばむほどの陽気。
参加車輌は、朝9時半にパレードランで川之江駅栄町駐車場へ入場。74台が集まった。
10時からミーティングが開始となり、会場はすぐに盛況となった。
会場に隣接した商店街には、20店以上にもおよぶマルシェやワークショップなどのブースが立ち並んだ。
また、ステージでは地元のミュージシャンやダンス団体、地元高校の書道部がパフォーマンスし、盛り上がりを見せていた。
▲550cc未満の軽自動車が集結した。手前のトラックはスズキ スズライト キャリイ(L20)。イベントで目にすること自体が珍しい、レアな1台
▲レーシーな個体も(スズキ フロンテクーペ)
▲「昭和レトロ」にこだわった演出!(三菱 360バン)
▲クルマのプロフィールが書かれた暖簾は、スタッフの村上慎也さんが一つひとつ手作りしたもの
▲展示スペース内であればスワップミートもOK
▲ナンバー隠しに遊び心。「ゆっくり直そう」というステッカーにも注目
▲コンテストも行われ、会場投票で「かっこいいで賞」「かわいいで賞」「ロングディスタンス賞」などが決まった
■【VOICE】皆さんの愛車を拝見!
どの個体も貴重なのはもちろん、カスタムにもオーナーの個性が現れて見ごたえたっぷり。
今回参加していたこだわりの愛車たちをご覧あれ!
※年式は個体の年式
●ホンダ ライフ ステップバン(1974年式)オーナー高木雅彦さん
ホンダが大好きというオーナーの高木さん。このクルマを含めて5台を所有しているという。ビート、N360(最終型)、トゥデイ(1995年式)、N-ONE。そしてモンキーも7台所有しているとか。
「愛車のすべてがこだわり」と話す高木さん。
この個体は1989年に購入し、大規模なレストアを行い、大切に乗っているそうだ。
「ホンダが大好きなんです。自分が乗れなくなったら、このクルマは息子に受け継いでもらう予定です」とのこと。
▲スポーティーなステアリングが似合う
●スバル サンバー バン(1972年式)オーナー 佐々木英一郎さん
佐々木さんのサンバー バンは6回目の車検を受けたばかり。
美しいエンジンルームは多くの人が見入っていた。
もともとチューニングカーが好きな佐々木さん。
以前はかなり手を入れたチェイサーに乗っていたそうだ。
商用車に惹かれてこのクルマを手に入れてからは約17年になるという。
「サンバー バンはやりきった感があるので違うクルマを考え中です」と佐々木さん。
次期愛車への構想もふくらませているようだ。
▲愛車に搭載される現在のエンジンは、R2のEK33型エンジンをモディファイしたもの。カワサキの純正キャブレターCVK32を流用
▲チャンバーやサイレンサーは佐々木さんがワンオフで製作している
●マツダ ポーターキャブPC3A(1973年式)オーナー村上慎也さん
今回の主催&スタッフでもある村上さんのポーターキャブは、オレンジ色がとてもキュートだ。
「やんちゃ毒ガエル」をイメージしたという愛車。
「気負うことなく自然に、のんびりと付き合っていけたらいいですね」と村上さんは微笑んだ。
▲レトロテイストを取り入れた室内も素敵
▲「橙蛙屋工房」の屋号アート活動もしている村上さん。粋なデザインのイラストやグラフィックがちりばめられていた
●「橙蛙屋工房」の作品についてはInstagramのアカウント「 tohkayakoubou」をチェック!
https://www.instagram.com/tohkayakoubou/
●三菱 ミニカスキッパーⅣ(1973年式)オーナー五十嵐純一さん
シリーズ2代目にあたるミニカ70をベースにしたモデル。「こしゃくにもクーペです」のキャッチフレーズで知られる。
五十嵐さんの愛車は、2G21型エンジン(バルカンエンジン)が換装された後期型になる。
ちなみに、前期型には2ストで金色のエアクリーナーが装備された「ゴールドエンジン」が搭載されていた。当時38馬力を誇っていたが、排ガス規制によってパワーダウンを余儀なくされ、後期型はマイルドな仕上がりとなった経緯がある。
新潟県から自走で参加したという五十嵐さん。
愛車は手に入れて約6年になるそう。
ほぼ自走で全国の軽自動車ミーティングへ遠征しているというフットワークの軽さに脱帽だ。
「誰とも被らないクルマという点が魅力で購入しました。スペース的にもちょうど良く気に入っています」
そう話す五十嵐さん。オリジナルを大切にしていきたいという。
▲三菱の2G21型エンジン、通称「バルカンエンジン」。「バルカンS」からはサイレントシャフトが採用されている
●スズキ セルボ(1979年式)・ バモスホンダ(1973年式)オーナー中村真一さん
岡山県総社市のカーショップ「エヌ・ファクトリー」のオーナーである中村さん。
今回は2台同時に持ち込んでの参加だった。
【スズキ セルボ】
こちらの初代セルボは、中村さんの知人からの依頼で引き継いだ個体だ。この個体にまつわるエピソードを伺った。
過去に一度、同じセルボを所有していたという中村さん。
ある日、夢の中に突然そのセルボが現れたという。
それから数日後、居酒屋で飲んでいるときに知人から電話があり、「初代セルボがあるので引き継いでもらえないか」との相談があった。中村さんは酔いの勢いも手伝って購入を決めた。あの日の夢は前兆だったのだろうか?どこかシンクロニシティを感じてしまう。
▲先代モデル・フロンテクーペのデザインとRRレイアウトを受け継ぐが、リヤガラスがハッチになるなど実用性も向上
【バモスホンダ】
バモスホンダはもともと中村さんの父親の愛車で、形見ともいえる大切な1台。「幼い頃に家族でドライブした記憶があります」と中村さん。
▲幼少時代を思い出しつつリアシートに座っていただいた
●お問い合わせ:エヌ・ファクトリー
・URL:http://www.n-factory-feel.com/
・住所:岡山県総社市清音柿木461-3
・Tel:0866-94-0670
●ホンダ N360(1968年式)オーナー丸山浩市さん
車体は購入後すぐに塗り替えを行い「クラブマンレーサー」をイメージしたグリーンに全塗装。
「RSCレーシング仕様」の白いレーシングラインを実物の線幅にまで再現したこだわりの1台だ。
「オリジナルにこだわりすぎず、経年変化を楽しんでいきたい。70歳までは元気に乗りたいと思っています」
丸山さんは、軽自動車のみのイベントは初体験だそう。
「ホンダ好きのオーナーとも知り合えた」と笑顔を見せる丸山さん。
この日は奥さま、娘さんと一緒にイベントを楽しんでいた。
▲N360がデビューした「1967年3月」と同じナンバーはこれからも守っていくそう
●スズキ セルボ(1989年式)オーナーPONNEWさん
シリーズ3代目のセルボに乗るPONNEWさん。
こちらのモデルはシリーズ唯一のバンタイプ。現在の実動車は、10台ほどではないかと思われる。
通称「横丁小町」と呼ばれて親しまれ、世界初の電動パワステを装備したモデルでもある。
「部品調達は大変ですが、アガリの1台として大切に乗っていきたい」とのこと。
▲空力性能を意識したルーフのラインは、低燃費を売りにしている現代の車種にも通じるものを感じる
▲グラスルーフで開放感抜群!
▲DIATONEのオーディオシステム
●スズキ キャリイL40(1969年式)オーナー竹本一城さん
シリーズ4代目のキャリイ(L40/前期型)に乗る竹本さん。
このモデルはジウジアーロデザインでも知られる。
2年前にレストアが完了したそうで快調のようだ。
「不具合はないので消耗するパーツをストックしながら現状維持に努めたい」と話す。
▲リアのホイールはなんと自作!
▲リアシートがあり、4人乗り登録なのだ。シートも自作で新調
●東洋工業(マツダ) K360(1962年式)オーナー仲子俊輝さん
知人から譲り受けたというK360は、手に入れた当時の塗装色をそのままにしている。
経年変化を楽しんでおり、ヤレ感に飽きたら再塗装したいとのこと。
なかでも気に入っている点はエンジン音だという。
▲友人の竹本さんと
▲工具箱や整備書、パンフなど貴重な品々をディスプレイ
▲小物入れも当時モノ
●ホンダ ライフ(1974年式)オーナー小田さん
スズキ キャリイのオーナー・竹本さんと友人の小田さん。
この個体は竹本さんからの紹介で北陸から迎え入れた個体だ。
走り好きの小田さんはドリフトやオフロード走行も楽しんでいるそう。
「旧車とはいえ、ライフは速いですね」と走りにも満足している。
自然体がコンセプトで大きく手を加えるところはないという。
▲「もし欲しい方がいたらお売りしますよ」と小田さん
●スズキ アルト ウォークスルーバン(1988年式)オーナー梅崎雄一郎さん
立ったまま作業ができる商用車として開発されたウォークスルーバンは、軽規格ではダイハツ ミラをベースにしたモデルが先行して登場し、スズキ アルト、三菱 ミニカにもウォークスルーバンがラインナップされた。
梅崎さんの愛車は、2代目アルトがベースとなっている。
前の愛車を箱替えしようと思い、中古車サイトを調べていて見つけた個体だという。
「荷物がたくさん積めてかわいいですね」と梅崎さん。
▲車内で立ててしまうこの広さ!
▲特装車ならではの各メーカーカタログ
▲買い物からイベントまで大活躍!
●ミツビシ ミニキャブ5バン(1976年式)オーナー田辺真司さん
1976年に軽自動車規格の改定(排気量は550ccまで、車体サイズは全長×全幅×全高:3200×1400×2000mmまでアップ)が行われたが、各メーカーはすぐにフル新規格モデルを出す余裕がなく、既存モデルを一部改良して新規格に合わせた暫定的なモデルが、わずかな期間ではあるが存在している。
このミニキャブ5もエンジン排気量を471ccに拡大し、バンパーを延長してボディ全長を伸ばしたものの、全幅は360cc規格のまま。わずか11カ月しか生産されなかった。
その後はフル規格化を果たし、550ccのミニキャブワイド55となった。
田辺さんの愛車は、一度廃車になっていた時期があるという。数年の修理期間を経て公道復帰。当時のナンバーを維持している。
「良いコンディションを維持しつつ、残していきたいクルマですね」と田辺さんは話す。
▲軽自動車規格の変遷を感じられる貴重なモデルだ
▲当時モノのステッカーを再現
■取材後記
早朝5時半に「吉備旧車倶楽部」の皆さんと合流し、児島ICから瀬戸大橋を渡って坂出ICを下車し、国道11号を走って会場へ向かった。
「紙のまち」四国中央市は古くから紙を生産する町として栄えた。
今も市内には製紙工場が点在し、工場の煙突が印象的だ。
そして煙突の背後にそびえ、白雲をたなびかす四国山脈。
そんな景色を眺めながらのパレードランから始まった。
その土地ならではの景色や雰囲気も味わえるのが、やはり県外のイベントへ出かける魅力でもある。
「昭和レトロフェスタ」のような地域活性とクルマ文化をうまくからませたイベントが、このさきも増えていけばと思う。
▲会場となる「栄町商店街」までは、吉備旧車倶楽部の三宅さんのアルトに乗せていただいた。アルトの美しい車内。こちらのアルトの詳細を近いうちにご紹介できる…かも!?
[取材協力]
U-550旧軽車ミーティング事務局
吉備旧車倶楽部
[ライター・撮影/野鶴美和]