■ロンドンに導入された超低排気量ゾーンとは?
ここイギリスでも、環境問題はいつも取り出されていますが、正直ドライバーにとっては痛いこともあります。
2019年からロンドンでは、ULEZ(Ultra Low Emission Zone)といって、超低排気量ゾーンというものが始まりました。
それは、このエリアを運転するときULEZ対応のクルマでなければ、税金を支払わなければいけないというものです。
このエリアは年々広がっており、今ではロンドン全域のみならず、ロンドン郊外まで拡大しています。
これがきっかけで、クルマを買い替えるオーナーが増えています。
実は私もその一人でありまして、ULEZゾーンをきちんとチェックせずに、たった数メートルその道路を走ったときにしっかりカメラで撮影され、後日罰金請求が届きました。
日本円で約8千円ほどですが、車両税に加え、毎回ロンドンに行くたびに税金がかかるのではやっていられません。
そこで、電気自動車や低排気量車に買い替えざるをえないのです。
最近はクルマを運転していると、本当に電気自動車が増えたと感じます。
目にするクルマの半分は電気自動車です。
ちなみに私のクルマはULEZ対応ではないので、ロンドンに行くときだけもう一台のULEZ対応車を使います(ULEZのためだけに買い替えました)。
■ULEZとユーロカテゴリー
では、クラッシックカーでULEZゾーンを走ると、どうなるのでしょうか?
バリバリに黒いガスと騒音を出しながら走っている、とても環境にやさしいと思えないクルマですが、実は税金が「ゼロ」なんです。
1992年に「ユーロカテゴリー」というものが始まりました。
「ユーロカテゴリー」とは、排気量別にクルマをカテゴリー分けすることで納税額が決まる制度です。
クラッシックカーとよばれるクルマは、このユーロカテゴリーに当てはまらないため、税金免除となります。
要はクルマが古いので、40年以上前のものには枠がないのです。
クラッシックカーによっては、エンジンが7リットルを超えるものもありますし、私の好きな車のひとつ、ジャガーE Typeは4. 2リットルです。
こんなに大きくても税金は一切かからないんですね。
ULEZは環境問題への影響を緩和するために始まったものですが、ちょっと矛盾している気もします。
クラッシックカーファンとしては、これでもいいのかなと思ってしまいますが…。
■クラシックカーとMOTの関係
クラッシックカーは、ULEZのみならず車両税も無料です。
例えば、クルマの製造年月が40年前のもの(1975年以前)であれば、これまた免除です。
今となればたくさんの電気自動車をみますから、高い車両税を払っている人はそれほど多くはないかもしれません。
しかし、クルマによっては今でも高額の税金を払っている人もいます。
例えば、普通車エンジン4リットルの車両税は、年間 約£520(日本円で約95,500円)です。
また、イギリスでは年に一度MOT(Ministry of Transport=陸運省)と呼ばれる、クルマのチェック(日本でいうところの車検)が義務づけられています。
これは道路を走るためにクルマが適しているかどうかというチェックをおこなうことですが、タイヤ、ブレーキの状態、ライト、ミラー、シートベルトなどのベーシックなものです。
実は、クラシックカーならば、これもまたまた免除なんです。
車両製造年月が40年前のクルマであれば、免除の対象になります。
ただ、これに関してだけは不明瞭な点がたくさんあり、誤解をしているオーナーが多いとか。
年間千人以上の人が罰金として、最大£2,500(日本円約456,000円)を科せられています。
免除になるためには、製造時よりエンジン、サスペンション、排気ガスシステムなどの、メジャーな入れ替えをしていないことが条件となっていますが、それを知らずMOTを受けずに走行し続けると、痛い目にあうようです。
こうして税金のことについて考えてみると、クラッシックカーを持つことでの利益はたくさんあるようですし、税金免除ってかなり大きいですよね。
■免除=必ずしもお得とは限らない?
傍から見たら「オーナーはラッキーだ」なんて思われがちですが、実はその逆で、なんでもそうですが、古いものをいい状態で保つのは簡単ではありません。
特にクラッシックカーに関しては、メンテナンスによってコンディションに雲泥の差がでます。
コンディションを保つために費やす費用は相当なものです。
MOTは金額的にそれほど高いチェックではありませんし、メンテナンス費用の方がはるかに金額を上回ります。
それに加え、手間と時間のかけようもかなりのものです。
まあ、趣味なのでそれに関してはクラシックカーを保有する醍醐味でもあるとは思いますが。
今後、ULEZはロンドンに限らず、いろいろな場所で始まっていくことでしょう。
ちなみにスコットランドのエディンバラでもULEZが開始しています。
さらに、罰金は増大していく可能性も大きいです。
そこで自分自身でこんな質問をしてみました。
「もし自分がどちらかを選べるとしたら?」
クラッシックカーで税金免除でいくか、それとも完全な電気自動車に買い替えて、税金ゼロでいくか??
果たしてどちらが得なのか?
税金に関してだけ考えると答えが出ません。
でも、ほとんどのクラッシックカーオーナーはこう答えます。
「税金がかかろうがかからまいがどちらでもいい」と。
税金はたまたまフリーになっただけ。
好きなクラッシックカーを毎日眺め、磨き、そして週末だけオープンカーにして田舎町でのドライブを楽しむことが一番なんだと。
本当に納得です…。
そして、それをみて楽しむのが私なのです。
[ 画像・AdobeStock、Jaguer、ライター・SANAE]