1.旧車を盗難から守る方法とは?
自動車盗難情報局には相変わらず旧車スポーツカーの盗難が毎日のように報告されている。
▲旧車は盗難されるとあっという間にバラバラにされてしまう
7月だけを見ても、RX-7(FD3S)、スカイライン(R33GT-R、同R32GT-R)、シビック(EK9)、スープラ(A80)…などの貴重な国産旧車スポーツカーが盗難の被害にあっている。
これらの盗難情報には「盗難対策の有無」という欄があるのだが、そこには「なし」「ハンドルロック」「ハンドルを外していた」「周りをクルマで囲んでいた」などと書き込まれている。
逆に言えば、完璧なセキュリティ対策が施された旧車は盗まれていないことになる。
これまで筆者が取材をしてきた盗難車のオーナーさんたちに、どのような対策をしていたかを聞くと、「ドアロック」「ハンドルロックとタイヤロック」「とくに対策なし」「バッテリーとハンドルを外していた」などの回答が目立つ。
正直言って…盗む方がもちろん悪いわけだが、盗まれた方も「施錠」以外に、もう少し本気で盗難対策をするべきではないかと思う。
「まさか、自分のクルマが盗まれる対象になるとは思わず、何の盗難対策もしていなかった」
「普段は夜帰ってきたら、ハンドルを外して、バッテリーも外していたのに、その日に限って外していなかった」と、嘆く被害者の皆さん、後悔してもしきれないのではないだろうか?
ではどうすればいいのか?
ハンドルロックやタイヤロック、ハンドルを外すなどの対策はポピュラーではあるが、実際は数分間の時間稼ぎにしかならないのが現実だ。
旧車窃盗団は数週間前から下見をしており、ターゲットとなる旧車にどのようなセキュリティ対策が行われているのか?を入念に確認している。
時にはセキュリティが作動するのか(どのような音が出るのか)なども確認している。
▲セキュリティアラームを付けるなら多少高くても確実な取り付けができるお店で
ハンドルロックやタイヤロックをしているクルマにはそれらを簡単に切断できる道具を準備し、ステアリングがない場合はサイズの合うステアリングを、バッテリーを外している場合はバッテリーを持参して盗みにくるのだ。
理想の盗難対策はゴルゴ、パンテーラに代表される国産セキュリティを専門店にお願いして確実に取り付けることである。
これがもっとも「盗まれにくい」方法といえる。
価格にして30~40万円とかなり高額にはなるが効果は絶大である。
▲誤報ゼロの国産セキュリティなら安心!こちらはユピテルのパンテーラ
そして大事なことは高級カーセキュリティでも誤報が多いのはダメ。
例えば、地震や豪雨や台風による影響で誤報を多く出してしまうセキュリティでは、オーナー自身が「近所迷惑」だと思ってアラームを切ってしまう。
東日本大震災のあと、高級セキュリティを装着したR32スカイラインGT-Rが東北~関東各地で盗難被害にあったのもこれが理由である。
2.市場価格と同等の車両保険はつけられる?
盗まれてしまった後の対策としては、GPSで追跡する方法が有効だ。
GPSなんてすぐ外されて役に立たないと思うかもしれないが、ココセコムの「セコムくるま盗難監視」のように自動車盗難に特化したシステムであれば安心度も高い。
GPSで追跡して盗まれたクルマの居場所を特定し、オーナーに返還された例も実際にある。
また、最後の手段としては旧車に車両保険を付けることだ。
一般的な車両保険ではどれだけ価値がある旧車であっても、たとえば400万円で購入したAE86でもせいぜい保険金額は50万円以下。
さらに通販型の自動車保険では初度登録から15年~20年など一定の年数を経たクルマの車両保険は新規の場合は一律に引き受け拒否される。
新車時から継続して保険契約を行い、そのうえで15年を超えた場合などには継続して車両保険を付けられることもあるがその場合も保険金額は低額となる。
しかし、旧車に市場価格と同レベルの車両保険を付けることは不可能ではない。
同じ代理店型損保でも、「車両保険の金額は年々下がってR32GT-Rで60万円」というケースもあれば、「19歳オーナーが所有するAE86に新規で購入額とほぼ同じ360万円の車両保険がつけられた」というケースもある。
▲ShowさんのRX-3 奥に見えるのはFDをベースにした『RX-7 Fortune』
この違いは何なのか?
筆者の友人であるRX-3オーナーShowさんは現在の市場価格と同レベルの800万円の車両保険を付けているが、どうやってつけたのか?
Showさんの保険担当者である損害保険代理店の保険代理店、株式会社ソナエル(千葉県東金市)代表の泉明弘さんに聞いてみた。
「『特認』と呼ばれる制度で諸条件をクリアすれば、購入額と同程度の車両保険がつけられます。車種はもちろん年式や走行距離など同条件のクルマが中古車市場でどれくらいの価格で取引されているか?などを丹念に調べます。金額が決まると、保管状況をチェックします。かなり厳しい条件をクリアすることが必要となります。
私が旧車スポーツカーの保険を扱うときには、自宅までうかがって、
・車庫にシャッターがついているか
・そのシャッターは施錠できるか
・クルマはきれいな状態で保管されているか?
・周囲を壁に囲まれたしっかりした車庫に入っているか?
・どのようなセキュリティ対策が行われているか?
などを確認します。
他にも諸々の確認事項があります。
自宅から離れた露天の駐車場など、セキュリティしっかりしていない場所で保管されている場合には盗難のリスクが高いので、購入額と同レベルの車両保険を付けることはまずできないでしょう。
あとは、盗難リスクの高い千葉県や茨城県などの特定エリアも難しい場合があります」
かなり厳しい条件にはなるが旧車であってもマンションの駐車場であっても市場価格と同レベルの車両保険を付けることは不可能ではなさそう。
保険屋さんとの信頼関係を重ねていくことも重要な条件となる。
「もし盗難されて800万保険金がもらえても、同じクルマは2度と手に入りません。長い時間をともに過ごした家族同様の存在です。盗まれないように最大限の対策をしてください」
とShowさんは付け加えてくれた。
▲解体ヤードに運び込まれると盗難車が返還される可能性は限りなくゼロになる
また、保険契約の条件などがやや緩く、年間の保険料がリーズナブルなチャブ保険の「クラシックカー保険」なるものをご存じだろうか?
条件としては、
・製造年から25年以上経過した国産車および輸入車(二輪自動車を含む)
・年間走行距離が5,000km以内
・通常走行が可能な状態にある登録車両(ナンバープレートの付いた車両)
・レプリカや改造車はダメ
次回はこの「クラシックカー保険」を扱う保険会社に取材をして詳細をお伝えしてみたい。
[撮影・加藤ヒロト、Showさん/ライター・自動車生活ジャーナリスト加藤久美子]