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最近「旧車」という言葉をよく耳にするが、そもそも旧車って、どういうクルマなのだろうか?
字面をそのまま解釈するなら「旧車=旧いクルマ」だから、モデルチェンジされれば、それまでのモデルは旧型となって、旧車の仲間入りと考えることもできる。
でも、イメージとして感じるのは、ある年代以前に生産されたクルマ。
またイギリスのミニのように、1959年の誕生から2000年に生産完了するまで、基本的なデザインを変更することなく生産されていた特例もあった。
90年代末期には、ミニは新車で買えるクラシックカーだと表現する人もいた。
▲1998年発売の限定モデル、スポーツパックリミテッド。ボディカラーは塗り替えられている
では、ある年代とはいつなのか?
これは線引きが困難なテーマだ。
例えばR32型スカイライン。
ボクの感覚だと新世代モデルの部類であるが、デビューは89年だから旧車といってもおかしくないのかもしれない。
そこで考えたのが下記に示す旧車の世代分類だ。
分類することで旧車の話をする上で的が絞りやすくなるし、これから旧車道(?)に足を踏み入れようとする人にもイメージしやすいと思うからだ。
■旧車第一世代:公害対策以前のクルマ
基本的に1973年までに生産されたモデルを示す。
▲1969年型の対米輸出モデルで、国内ではフェアレディ2000、現地ではDATSUN 2000と呼ばれていた。我々愛好家は、型式であるSR311またはSRL311(輸出仕様)と呼ぶことが多い
日本の自動車産業が、自動車先進国である欧米に追いつき追い越そうと躍起になっていた時代だ。
1964年の東京オリンピック開催を目指し、道路をはじめとするインフラが急速に充実。
1963年には鈴鹿サーキットで第一回日本グランプリが開催されたことにも刺激を受け、国産自動車の高性能化に拍車がかかった。
各社の開発競争も激化し、その結果、今でも魅力に溢れる多くの名車が誕生している。
トヨタ2000GT、1600GT、S800、スカイライン2000GTR、S54型スカイライン2000GTA&B、510型ブルーバード、初代シルビア、フェアレディ1600&2000、ホンダS600&800、コスモスポーツ、ベレットGT>R、117クーペ、そして初代のサニー&カローラなど、時代を超えて輝く魅力的なモデルの宝庫だ。
■旧車第二世代:公害対策初期から、パワー復活のきざしが感じられるようになった時代までのクルマ
概ね、1973年〜80年代初期頃までのモデルだ。
▲は80年型サニークーペGX。旧車といってもかなり新しく感じる後期型の310サニーである。パワーステアリングやパワーウインドウなどの便利装備はないが、エアコンさえ装着すれば近代的モデルとほぼ同じ感覚で楽しめる
大気汚染防止のために自動車の排出ガス規制が強化されたことから、1973年以降、華やかだった国産スポーツカーは牙を抜かれ、自動車趣味人にとって暗黒の時代に突入する。
点火時期を遅らせたり、酸化触媒コンバーターを装着することで排出ガスを抑えることから始まったのだが、メーカーは年々強化される規制値に対応しなくてはならなかった。
目標としていた規制値を完全に達成できたのは1978年施行の昭和53年規制から。
三元触媒コンバーターの実用化によって達成できたのだ。
規制クリア後は、再び高性能化の流れが戻り、元気で楽しいクルマが復活。
今でも高人気のAE86型レビン&トレノや、KP60系スターレット、「マッチのマーチ」で知られる初代マーチ、直列3気筒エンジンを実用化したシャレードなど走りが楽しいクルマが数多く誕生している。
また、デートカー的イメージが強かったが、当時としては高いボディ剛性とバランスの良い軽量ボディで、FFながらFRに近い挙動を示す軽快な走りが魅力の初代プレリュード誕生もこの時代だ。
■旧車第三世代:基本的に80年代中期から20世紀末(2000年)までに誕生したモデル
80年代半ばをすぎると、世の中はバブル景気で大賑わい。
▲走行会仕様にモディファイされたホンダS2000。1999年に発売され2009年をもって絶版となった。イメージとしてはまだ新しいが、後継モデルのない絶版車であり、生産終了が発表された時点で旧車と同等以上に珍重されているモデルだ
旧車第二世代に誕生した初代ソアラが83年のマイナーチェンジ以降販売台数が増え続けていたが、86年に2代目にモデルチェンジするとさらなる大ヒット車となる。
日産の高級セダン「シーマ」と共に、ハイソサエティカーブームを巻き起こした。
スポーツモデルも元気いっぱいで、R32〜R34スカイライン、S13〜S15シルビア、アルテッツァ、SW20型MR2、EF型シビック&CR-X、インプレッサSTi、ランサーエボリューション、そして初代マツダ(ユーノス)ロードスターなど、各社の力作が次々に誕生している。
日産Be-1やパオ、フィガロ、エスカルゴといった限定生産車両や、異業種とのコラボレーションによるトヨタのWILLプロジェクトなど、個性に溢れるクルマが数多く出現したのも旧車第三世代だ。
旧車というより、ネオクラシックな絶版車という感じだけど実用性は高く、気軽に付き合える近代的旧車としての存在感は格別だ。
■迷ったら「自分が興味を持つクルマの世代を確認」するといいかもしれない
大雑把な分類だし、各世代とも、世代をまたぐ車種もある。
しかし、自分が興味を持つクルマがどの世代付近にあるかを再確認することで、当時のライバル車が見えてくるからワクワク感もヒートアップしてくるのではないだろうか。
「何年式の〇〇が欲しい」とターゲットが決まっているならまっしぐらに進めば良いが、まだターゲットが決まっていないのであれば、世代ごとに魅力を感じるクルマをピックアップするといいかもしれない。
さらに予算を加味しながら少しずつ絞り込んでいくと良いだろう。
実際、ボクの初マイカーもこの方式で選択した。
もっともその当時はまだ旧車という概念がなく、モデルチェンジによって人気が出た旧型モデルや、公害対策等の理由で消滅した絶版車が注目されはじめた頃。
ネットなんてない時代だったから雑誌広告が大きな情報源で、興味あるクルマを見つけるとショップの住所&電話番号をメモし、並べ替えて効率良い訪問方法を考えて見に行ったことが懐かしい。
■ピンポイントで狙うなら、辛抱強く、ジックリ構えることが大切
具体的な車種が決まったら、いよいよクルマ探しだ。
ターゲットとなるクルマが、旧車の中では新しい旧車第三世代のモデルであれば、情報も多く見つけやすいだろうけど、旧車第一世代&第二世代となると簡単には見つからない。
・・・となると焦ってしまい、別の車種で妥協したくなってくる。
これは、「あのクルマが欲しい」から「あのクルマが」がするりと抜けおち「欲しい」だけが大きく主張してくる恐ろしい症状だ。
ボクも何度かこの症状に支配され、見に行った販売店で、ターゲットはすでに売れてしまってなかったけど、その時たまたま在庫にあった別のクルマを買っている。
でもね、不思議なもので、しばらくすると最初に狙っていたクルマがポロッと現れてくる。
もちろん、偶然の出会いの結果がすべて失敗だったわけではないけど、ピンポイントで狙うなら、辛抱強く、ジックリ構えることが大切だと思う。
■「買いたい」と思えるクルマに出会えたら、コンディションチェックは必須!
ボクの場合、まずボディ全般を観察したのち、下回りを覗き込む。
見たところで状態はよくわからないが、腐食部分や下回りのサビが目立つ場合は評価が下がる。
次にエンジンルーム、トランクルーム、そして室内をチェックする。
最後にエンジンをかけ、試乗できる場合は試乗して、その個体を感じとるようにしている。
このときのチェックポイントは音やクラッチの状態、ミッションの感覚、手を離しても真っ直ぐ走るかどうかなど。
オートマ車の場合は、停止した状態でブレーキを踏みながらニュートラルからリバース、ニュートラルからドライブとシフトして、シフトショックやシフトタイミングの遅れをチェックする。
旧車第三世代のモデルの場合、エアコンの効きやパワステの動きなどの快適装備も重要なチェックポイントだ。
まぁ、ボクが魅力を感じるのは40年以上前のクルマ、つまり旧車第二世代以前のクルマが大部分。
少々の問題は仕方がないことなので、大きくイメージと乖離している場合は別として、基本的にはさほど気にしないようにしている。
ただし、そのままで普通に乗ろうと思って買ったクルマでも、いざ自分のモノとなると、どうしてももっと良くしたくなってくる。
現車の観察は、購入後にかかる改善費用を想定する時間ともいえるかもしれない。
旧車と初めて付き合うという人にとって、購入時に、購入後にかかる改善費用を想定する感覚は理解できないかもしれない。
でもね、どんなに良いコンディションのクルマであっても、経年劣化という現象からは逃れられないわけ。
例えばタイヤ。
まだ山が充分に残っていたとしても、数年以上前のタイヤではいつトラブルが起きてもおかしくない。
安全で快適な旧車ライフを楽しむためにも、交換を前提に考えた方が良いと思う。
また、個人売買やオークションなどの現状販売車両であれば、購入直後に、すべてのオイル交換に加え、オイルフィルターや燃料フィルターなどの交換もやっておくべきだろう。
■まとめ:積極的に出会いを求めていこう!
いろいろな注意点はあるものの、魅力を感じたクルマを特定したなら現在の豊富な情報量を駆使して積極的に出会いを求めること。
そして、予算面がなんとかクリアできるなら、勇気を持って旧車ライフをスタートすると良い。
オイルレベルや水のチェックなどの古典的走行前点検作業に始まるクルマとの対話も楽しいし、走行中のサウンドや独特の匂いもたまらない。
旧車ライフは、手をかければかけるほど、ともに過ごす時間が長ければ長いほど、愛車とのキズナが深まるのだ。
そして、いつの日か心が通じ合い、愛車のちょっとした不調でもすぐに感じ取れるようになる。
そんなときは、「変だと思ったらすぐ工場」を励行すること。
そうすれば、意外なほどフツーに旧車ライフをエンジョイできるはずだ。
クルマとの出会いは偶然と思えても実は必然。
チャンスを逃さず一歩を踏み出し、ディープな旧車の世界を堪能していただきたい。
[ライター・撮影/島田和也]