和製スーパーセブンとも呼ばれる、ミツオカ ゼロワン。光岡自動車が国内で自動車メーカーとして認可を受けた記念すべきモデルです。一方、誤解している方も少なくありませんが、実はロータス スーパーセブンのレプリカではありません。光岡自動車がゼロから開発したオリジナル設計の車です。
今回は、個性的なスタイリングが特徴的なゼロワンの魅力をたっぷりと紹介します。
光岡自動車とゼロワンの誕生を振り返る
個性的な車を生み出し続けている光岡自動車は、創業時から車を製造していたわけではありません。国内10番目の自動車メーカーとなった経緯と、ゼロワン開発について振り返ってみましょう。
単なる自動車工場から始まった光岡自動車
光岡自動車は、国内10番目に認可を受けた自動車メーカーです。しかし、1968年の創業当初は、独自の開発はおこなっておらず、板金塗装や自動車整備を事業の柱にしていました。
自動車開発の一歩を踏み出したのは1982年。マイクロカーの修理依頼をきっかけに、「自分たちでも車を作れるのでは」と独自開発したゼロハンカー「BUBUシャトル50」を発売しました。車としての作りの良さと、50ccという手軽さから全国的なヒットを記録します。BUBUシャトル50の成功を受けて、後継車種も順調にリリースされました。
法改正によってBUBUシャトルシリーズの販売が低迷すると、今度は既存車両の改造に着手します。フォルクスワーゲン ビートルをベースに大幅な改造を施した、メルセデス・ベンツ SSKのレプリカ「BUBU クラシックSSK」を発売。日産 シルビアをクラシカルなスタイリングに改造した「ラ・セード」など、独自の視点と高い技術力で多くの改造車両を生み出しました。
既存車両の改造で培ったノウハウが、オリジナル車両の開発、認可につながっていきます。
ゼロワンによって国内10番目の自動車メーカーになった
ミツオカ ゼロワンは、光岡自動車が初めて型式認証を取得した車です。型式認証を取得していないカスタムカーを登録するには、車両を1台ずつ陸運局に持ち込んで検査しなければなりません。しかし、型式認証があれば、新車を販売する都度検査することなくナンバーを取得できます。
1994年のゼロワン発売から2年後の1996年、厳しい適合検査を突破してついに型式認証を取得します。ゼロワンの車検証の車名欄には「ミツオカ」と記載され、光岡自動車は名実ともに国内の自動車メーカーとして認められました。新たな自動車メーカーの認可は、1960年代のホンダ以来の快挙でした。
ロータス スーパーセブンはあくまでも見本だった
「和製スーパーセブン」と評されるゼロワンは、これまで多くのレプリカ車両を手掛けてきた光岡自動車の歴史から、レプリカと誤解されることもあります。実際、ロータス・スーパーセブンのスタイリングをもとにデザインされたことは事実です。
しかし、あくまでも外観上の見本としただけで、車両自体はフレームから光岡自動車によって独自開発されました。さらに、スーパーセブンと似たデザインであることは、実は光岡自動車の高い技術力の証でもあります。1950〜70年代に開発されたオープン2シーターというデザインのまま、1990年代後半の厳しい保安基準をクリアするのは容易なことではありません。
ゼロワンは初の型式認証モデルとは思えない完成度
ゼロワンは、単なる型式認証取得のために作られたのではなく、車としてきちんと作り込まれたモデルです。同クラスの他車種と比較しても、遜色のない走行性能を兼ね備えていました。
本家スーパーセブンと比べると決して高性能とはいえませんが、車作りの情熱が十分に注ぎ込まれて開発されています。ここでは、そんなゼロワンの魅力を詳しく紹介します。
大柄ながら軽量に仕上げられたボディ
ゼロワンの重量はわずか720kg。しかし、ボディサイズは、全長3,645mm×全幅1,690mm×全高1,190mmと、スーパーセブンのレプリカであるバーキンセブンよりも大柄に作られていました。FRPとアルミ材の効率的な使用で、徹底した軽量化が図られた結果です。
エンジンは、ユーノス ロードスターに搭載されていた1.6L直列4気筒DOHCエンジンを採用。最高出力は120psながら、ロードスターの1番軽いモデル(940kg)よりも200kg以上軽く作られていたゼロワンをドライブするには十分な出力でした。
自動車メーカーとして妥協なく作り込んだ
ゼロワンは、本家スーパーセブン同様に走行性能にもこだわって開発されています。また、多くの自動車メーカーと同様に、発売後のマイナーチェンジや派生車種も生み出されました。
サスペンションは、4輪独立懸架の前後ダブルウィッシュボーンを装備。見た目だけではなく、走行性能にもこだわって開発されました。ブレーキも前後ディスクブレーキを採用し、フロントには冷却効率のいいベンチレーテッド型のディスクが装備されています。
型式認証取得後には、マイナーチェンジも実施されました。エンジンを同じくロードスターの1.8Lモデルに変更。最高出力とトルクが向上したことで、さらに走行性能が高められました。また、ボディサイズを全長95mm、全幅5mm拡大し、フロントのデザインを変更した「クラシックタイプF」もラインナップに追加されます。4速ATを新たに設定した点も、クラシックタイプFの特徴です。
販売台数が限られていただけに高値水準を維持
ゼロワンの販売最終年は2000年と比較的最近まで作られていましたが、販売台数そのものが少なかったことから中古車相場は高値で推移しています。
大手中古車サイトで検索したところ、そもそも5台しかなく、250~350万円ほどの価格がつけられていました。
旧車王での買取価格も高水準で、2023年1月に1996年式のベースグレードを250万円、2023年3月に1997年式のクラシックタイプFを195万円で買い取った実績があります。お手元にミツオカ ゼロワンのある方はぜひ一度ご相談ください。
※中古車価格は2023年4月執筆時
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