旧車の魅力

964型ポルシェ 911は劇的変化を遂げたニューモデル!? 見た目はそのままに進化したポイントを紹介
旧車の魅力 2024.06.20

964型ポルシェ 911は劇的変化を遂げたニューモデル!? 見た目はそのままに進化したポイントを紹介

3代目ポルシェ 911として登場した964型は、ボンネットの左右に張り出した丸目2灯という911伝統のフォルムを踏襲しています。しかし、中身に関しては、現在の911にもつながる劇的な変更が加えられたモデルです。 日本のバブル真っ只中に投入され、空前のヒットを記録した964型911の誕生背景と変更点を振り返ってみましょう。 さらなるユーザー獲得を目指して開発された964型 2代目911登場から20年以上経過した1989年。911は北米を中心に依然高い人気を保っていたものの、設計にやや古さが感じられるようになってきました。新たなユーザー獲得を目指すために、時代に合わせた大幅な刷新が求められ、満を持して登場したのが、3代目911の964型です。一気に現代的な装備になった964型について、ポルシェの車名の解説とともに詳しく紹介します。 911とはポルシェの車名 まずは、「911」と「964型」の数字の違いについて解説します。 ポルシェの車名とモデル名は同じような数字を使用しているため、混同してしまう人も少なくありません。国産車を例に改めて整理すると、「911」とはトヨタの「カローラレビン」や「ランドクルーザー」などと同じ意味の車種名です。一方で、今回紹介している「964」は型式名で、カローラレビンであれば「AE86」や「AE92」、ランドクルーザーであれば「70系」や「80系」に相当します。 また、CarreraやTargaといった名称は、モデルの分類を示すいわばグレード名です。それぞれ、ボディタイプや搭載エンジン、装備といったスペックが異なります。 見た目は変わらないのにニューモデル 3代目911の964型は、930型の後継車種として1989年に登場しました。一般的な車種のフルモデルチェンジといえば見た目も先代から大きく変わりますが、964型の外観は先代930型からほぼ変更されていません。初代から続く伝統的な「911」の外観の変更が許されなかったためです。 しかし、964型のポルシェは、80%が新開発された正真正銘のニューモデルです。エンジンはもちろん、パワートレインや駆動方式、各種装備まで徹底的に見直されました。 現代的な装備に生まれ変わった 964型911が最も進化したポイントは、充実した装備で誰でも扱いやすいクルマになったことです。930型以前のモデルは、ピーキーな面もあり乗り手を選ぶクルマでした。しかし、細部まで見直された964型は、性能と乗りやすさを両立したモデルに仕上がっています。 足回りはトーションバーからコイルスプリング式に変更され、パワーステアリングやABSといった現代的な装備も備えられて操作性が格段に向上しました。また、MTライクな操作を可能にする、ティプトロニックという新型のATも搭載しています。仕組み自体は従来のトルクコンバーター式ATと大きくは変わりませんが、現在のATでは当たり前になっているマニュアルモードの元祖的な機構として業界全体に大きな影響を与えました。 さらに、964型では、4WDモデルも新たに追加されています。911伝統のRRは安定性が課題でしたが、4WDによって誰でもハイパワーポルシェを操れるようになりました。 930型から大幅にアップデートした964型 964型でアップデートされた多くの点が、現代の911にもつながっています。911における、エポックメイキングなモデルだったといってもよいでしょう。 964型のアップデートポイントを、詳しく紹介します。 3.6Lに拡大されたエンジン 964型最大の注目ポイントは、排気量が3.2Lから3.6Lに拡大された新型エンジンです。ポルシェ伝統のフラット6と呼ばれる水平対向6気筒のM64型エンジンは、最高出力250ps / 6,100rpm、最大トルク31.6kgm/4,800rpmを発揮。後継の993型にも搭載された、ポルシェ最後の空冷エンジンです。 実はボディもディテールが現代的に変化 930型と見た目がほとんど同じ964型ですが、実は細部が大きく刷新されています。特に、フルモノコック化されたボディによって剛性を強化したことで、より高いハンドリング性能を実現しました。 また、バンパーのデザインも、前後に張り出したデザインからボディラインと一体の形状に変更されています。この変更は後継モデルでも踏襲され、ポルシェの新たな伝統になりました。さらに、リアスポイラーも、964型での大きな変更点です。従来は大型の固定式リアスポイラーでしたが、走行速度に応じて自動的に開閉する電動スポイラーに変更されています。 ターボモデルは2種類ある点に注意 964型にも先代と同様に、ターボモデルが設定されています。しかし、人気の高いのは1993年に登場した後発の3.6Lターボモデルで、1991年に投入されたターボモデルは不評でした。1991年登場のモデルは、ボディこそ964型だったものの肝心のエンジンは先代930型のターボモデルと同型だったためです。さまざまな箇所の改善と改良に追われ、ターボ用の新型エンジンを用意するのが間に合わなかったといわれています。 一方、964型に搭載された新型エンジンをベースに開発された3.6Lターボモデルは、新時代を感じさせる十分なパワーを発揮しました。最高出力は360ps、最大トルクは52.0kgmにも達し、シートに押し付けられるような爆発的な加速力を味わえます。 さらに、走行性能だけでなく、内外装も特別感のあるデザインに仕上げられていました。外装面で目立つのは、赤色に塗装されたブレーキキャリパーとスピードライン製3ピース18インチホイールです。また、フロントには8ウェイ操作可能なパワーシートが備えられ、ダッシュボードまで含めたフルレザーインテリアになっています。 バブル景気に支えられ日本国内でも大ヒット 964型911がデビューした1989年は、折しも日本がバブル景気に沸いていたタイミングでした。現代的で扱いやすいクルマになったことも手伝って、日本国内でも大ヒットを記録します。大きく生まれ変わったモデルだけに現在でも人気は高く、安定した価格で取引されています。特に熱い支持を得ているのが、3.6Lターボモデルです。わずか1,875台しか販売されておらず、その希少性の高さから、標準車のカレラの3倍近い価格がつけられることも珍しくありません。 ただし、30年以上前のモデルである964型を売却する際は、旧車専門の買取業者に相談することをおすすめします。年式や劣化具合だけに着目した評価ではなく、市場での需要を踏まえて正しく査定してもらえるためです。964型911のご売却を検討される際には、旧車取り扱いの経験豊富な旧車王にぜひ一度ご相談ください。

W204型メルセデス・ベンツ C63 AMGは最後の大排気量モデル!? 人気のブラックシリーズも含めて徹底紹介
旧車の魅力 2024.06.20

W204型メルセデス・ベンツ C63 AMGは最後の大排気量モデル!? 人気のブラックシリーズも含めて徹底紹介

6Lを超える自然吸気V8エンジンの力強い吹け上がり、標準車とは異なる存在感のあるエクステリアデザインによって今でも根強い人気を集めるW204型 メルセデス・ベンツ C63 AMG。メルセデス・ベンツのスポーツブランド、AMGが手掛けたカスタマイズモデルです。 標準モデルの性能をさらに高めたブラックシリーズとともに、W204型 C63 AMGの魅力をたっぷりと紹介します。 W204型 C63 AMGはクラスを超えた存在 絶対的な高級車としてSクラスやEクラスを用意するメルセデス・ベンツのなかで、Cクラスは高級路線のいわば入門車的な位置づけです。しかし、長年メルセデス・ベンツのチューニングとカスタマイズを手掛けるAMGが製作したC63は、クラスを超越した圧倒的な完成度を誇ります。 AMGの成り立ちも含めて、まずはC63 AMGの魅力を紹介します。 メルセデス・ベンツのスポーツブランドAMG AMGは、「究極のハイパフォーマンス」を追求するメルセデス・ベンツのスポーツブランドです。現在ではメルセデス・ベンツ・グループの傘下ですが、かつてはレース用エンジンのチューニングメーカーでした。 特にメルセデス・ベンツのチューニングに注力していたAMGは、レースで輝かしい実績を残して地位を築いていきます。高い実力が評価されたAMGは、1990年にメルセデス・ベンツと正式に協力協定を結びました。 AMGらしさを存分に盛り込んだモデル Cクラス3代目のモデルとして2007年に登場したW204型のAMGモデルが、メルセデス・ベンツ C63 AMGです。6.2Lという標準モデルの3倍近い大排気量エンジンが、AMGの存在感を示しています。 また、デザイン面でもさまざまな点が、ベース車輌から変更されました。大型エンジンの搭載に合わせてフロントノーズは延長、全幅も同シリーズ最大の1,795mmにまで拡張されています。さらに、フロントのバンパースポイラー、サイドスカートといった、AMGらしいエアロパーツも魅力的です。 迫力の6.2L V8エンジン C63 AMGに搭載されたエンジンは「6.2Lの自然吸気V型8気筒」というスペックを目にしただけで迫力を感じます。M156型と呼ばれるこのエンジンは、最高出力457ps、最大トルク61.2kg・mを発揮。0‐100km/h加速は4.5秒、最高速250km/h(リミッター)を誇り、走りにこだわる世界中のメルセデス・ベンツ、AMGファンの心を掴みました。 また、このM156型エンジンは、メルセデス・ベンツ最後の大排気量エンジンといわれています。すでにW204型から環境に配慮したダウンサイジング方向に開発が進んでいたためです。 究極まで性能を高めたブラックシリーズ マットブラックというメーカー純正としては極めて珍しいカラーがテーマに設定され、特別感がより高められたC63 AMGブラックシリーズ。自然吸気で500psの大台に乗せたエンジンや突き詰めた足回りなど、見た目の迫力だけでなく確かな実力を備えた究極の1台ともいえるモデルです。 ここからは、C63 AMG ブラックシリーズの圧倒的な実力についてみていきましょう。 サーキットを意識させる圧倒的な実力 C63 AMG ブラックシリーズのエンジンは通常のC63 AMGモデルと同じM156型ながら、517psにまで出力が高められています。SLS AMG用の鍛造ピストンをはじめ、コンロッドや軽量クランクシャフトを手組みすることで、M156型エンジンのポテンシャルを最大限引き出しました。 さらに、車重は90kgも軽量化されていて、0-100km加速はわずか4.2秒という爆発的な加速力を発揮します。また、専用のスポーツサスペンションに19インチのダンロップ スポーツMAXXレースを組み合わせ、ワインディングでのクイックなハンドリング性能を実現。ロードカーというよりも、レーシングカーを彷彿とさせる迫力のあるドライビングがブラックシリーズの魅力です。 内外装もとことんこだわった仕様 ブラックシリーズは、走りに主眼をおきつつディテールまで突き詰められています。もっとも驚くべきことは、Cクラスにも関わらず後席が約40万円のオプション扱いということです。C63 AMG ブラックシリーズは、事実上2シーターとして発売されました。フロントシートは専用のバケットシートで、ブラックシリーズの機敏な動きに対応できるよう身体をしっかりとホールドしてくれます。 エクステリアでは、カナードを備えたフロントバンパーやサイドスカート、リアスポイラーまで専用設計のエアロパーツが用意されていました。特に、オプションのカーボンエクステリアパッケージを装備したモデルは、まさにレーシングカーといった佇まいでした。 ベストセラーになったC63 AMG W204型 C63 AMGは世界累計4万台を販売し、当時のAMGとしてベストセラーを記録しました。C63の標準モデルはそれほど人気が高いとはいえませんが、AMGモデルは別格です。特に、究極にまで走行性能を高めたブラックシリーズは、1,500万円を超える買取価格がつくことも珍しくありません。 一方で、W204型 C63 AMGの登場からは、すでに20年近く経過しています。各部の劣化のみを指摘されてしまうと、クルマ本来のもつ価値を過小評価されかねません。より高い買取価格で売却するためには、旧車の取り扱い経験が豊富な専門業者への相談をおすすめします。

ランチア デルタHFはわずか半年で作られた?! WRCの時代を築いた名車を振り返る
旧車の魅力 2024.06.20

ランチア デルタHFはわずか半年で作られた?! WRCの時代を築いた名車を振り返る

WRCで今も破られていない金字塔、マニュファクチャラーズタイトル6連覇を成し遂げたランチア デルタHF 4WD。圧倒的な性能もさることながら、ブリスターフェンダーや上品な内装といったデザイン面も人気の理由です。 本記事では、レギュレーションの変更からわずか半年で完成させたといわれる、デルタHFについて詳しく紹介します。 WRCのレギュレーション変更に合わせて登場したデルタHF デルタHFは、WRCで勝つために開発されたクルマです。わずかな開発期間しかないなかで、ファミリーカーだったデルタをWRCで戦えるように仕上げました。 まずは、デルタHFの開発背景と、誕生に欠かせなかったアバルトの存在について紹介します。 開発決定からわずか半年で発表された新モデル デルタHFは、開発の決定からわずか半年で発表されました。開発のきっかけは、WRCが安全上の理由から参加車輌の規定を変更したことです。グループBでは重大事故が多発していたため、1987年からWRCのトップカテゴリーが市販車ベースのグループA規定に変更されました。 1986年半ばに突如発表された規定変更に各メーカーが対応方法を模索するなか、ランチアはシーズン終了前にデルタHF 4WDを発表します。開発を早期に決定し、余裕をもって間に合わせたことが1987年以降の輝かしい成績につながったのかも知れません。 影に徹したアバルトの高い開発力 デルタ HF 4WDを短期間で発表できたのは、同じフィアット傘下だったアバルトの高い開発力があったからこそだといわれています。グループ内のラリーマシン制作を担っていたアバルトは、習得したWRC車制作ノウハウを活かしてごく短期間でデルタ HFを完成させました。 しかも、ちょっとした変更ではなく、レースで勝つための戦闘力を備えたマシンに生まれ変わらせています。もっとも大きな変更点は、駆動方式とエンジンです。アウディ クアトロの登場により4WDでなければ戦えない状況だったため、FFだったデルタをフルタイム4WDに改変。さらに、ロードモデルにも165psを発揮する2Lターボエンジンを搭載し、ベース車輌がファミリーカーだと思えないほどのスペックに仕上げました。一方で、車体にはアバルトのエンブレムや名称の記載はなく、まさに影の立役者といった存在でした。 投入初年度から無類の強さを発揮 グループA初年度の1987年開幕モンテカルロで、ミキ・ビアジオンとユハ・カンクネンがワンツーフィニッシュを決め、デルタHFはいきなり圧倒的な速さをみせつけます。1987年シリーズは、9勝を挙げてドライバーズとマニュファクチュアラーズのダブルタイトルを獲得しました。 翌年以降も勢いは変わらず、1992年まで前人未到のマニュファクチュアラーズタイトル6連覇を成し遂げます。しかし、トヨタを中心にした日本勢の台頭もあり、ランチアは1991年にワークス体制を解消、さらに1993年にはデルタ自体もWRCから姿を消しました。 市販車としての完成度も高かった グループA規定では一定以上の市販車としての販売実績が必要なため、ランチアHFも当然市販されています。また、WRCで勝つために、毎年のように仕様変更されたこともデルタHFの特徴です。 ここからは、市販車としてのデルタHFの魅力を解説します。 アルカンターラを多用した上質な内装 デルタはもともとゴルフに対抗すべく作られたモデルで、大衆車ながら上品な内装が特徴です。デルタHFでも内装面の特徴は引き継がれ、随所に手触りのよいアルカンターラが使用されています。 レースカーとしての高い戦闘力を期待させるブリスターフェンダーを備えた外装と、上品な内装のコントラストもデルタHFの魅力です。 積極的な開発で生まれた3つの代表モデル デルタHFは登場以降、WRCで勝つために毎年のように改良を続けました。1989年には、エンジンを16バルブ化したHFインテグラーレ16Vを投入。前年のインテグラーレでブリスターフェンダー化して拡幅していたところに、高性能エンジンを搭載してさらなるパワーアップを実現しました。大型化したエンジンを搭載するため、盛り上がった形状のボンネットに変更されています。 さらに、1992年にはWRC参戦の最終形HFインテグラーレ エヴォルツィオーネへと進化を遂げます。市販車の最高出力は大台を突破する210psに達し、まさにエボリューションモデルと呼ぶべき存在でした。 最終的に市販モデルは、1993年のHFインテグラーレ エヴォルツィオーネⅡまで作られます。おもに日本市場を意識したモデルで、最後の限定車HFインテグラーレ16vエヴォルツィオーネⅡコレッツィオーネは限定台数を急遽増やすほどの人気を集めました。 ランチアが導き出したWRCグループAの最適解 フルタイム4WDに2L16バルブDOHCターボエンジン、ボディにブリスターフェンダーというデルタHFの仕様は、6連覇という偉業によりグループAの最適解であることを証明しました。事実、三菱 ランサーエボリューション、スバル インプレッサといった1993年以降に活躍するWRカーに多大な影響を与えています。 デルタHFの買取価格は優に500万円を超え、現在でも高い人気を誇っています。輝かしい成績を残したことだけでなく、WRCの歴史に大きな影響を与えた点も含めて価値が高まっているのでしょう。

世界限定499台の希少車! フェラーリ スクーデリア スパイダー 16Mを徹底紹介
旧車の魅力 2024.05.24

世界限定499台の希少車! フェラーリ スクーデリア スパイダー 16Mを徹底紹介

世界にわずか499台しか存在しない特別車、フェラーリ スクーデリア スパイダー 16M。フェラーリの運営するレーシングチーム「スクーデリア」の名を冠したモデルだけに、単なる特別車の域を超えて走行性能にもこだわって開発されました。 今回は、スクーデリア スパイダー 16Mが制作された理由も含めて、その魅力を徹底的に紹介します。 特別な2台を組み合わせたスクーデリア スパイダー 16M スクーデリア スパイダー 16Mはゼロから開発された新モデルではなく、販売台数限定の特別仕様車です。しかし、ただ記念エンブレムを貼り付けたとか、内装のカラーリングを変えたといったレベルではなく、究極の1台ともいえるほど作り込まれています。 F430スパイダーとスクーデリア 430を高次元で融合させて誕生した、スクーデリア スパイダー 16Mの開発背景を振り返っていきましょう。 フェラーリのコンストラクターズタイトル獲得記念モデル スクーデリア スパイダー 16Mは、2008年のF1シリーズでフェラーリがコンストラクターズタイトルを獲得したことを記念して制作されました。翌2009年に499台の限定モデルとして販売され、日本国内に正規輸入されたのはわずか50台のみといわれています。 ベース車輌はF430のオープンモデル、F430 スパイダー。徹底した風洞実験を行うなど、オープンボディながらオリジナルモデルと遜色ないほどに性能の高さを追求したモデルです。徹底的に作り込まれたクルマをベースにしていることからも、スクーデリア スパイダー M16にかける情熱の強さがうかがえます。 さらに、同じくF430をベースに製造されたスクーデリア 430のテクノロジーを組み込み、性能を飛躍的に向上させている点も大きな特徴です。まさに、記念モデルにふさわしい、フェラーリ究極のモデルといえます。 あのシューマッハが鍛え上げたスクーデリア 430 スクーデリア スパイダー 16Mの性能を大幅に向上させた要因は、スクーデリア 430の革新的な技術を数多く取り入れたことです。実際、スクーデリア スパイダー 16Mは、スクーデリア 430と同じく最高出力510psを発揮します。 スクーデリア 430は、直線で速いだけのただのハイパワーマシンではありません。技術革新の手を緩めることなく、どんなシチュエーションでも速く走れるように仕上げられています。例えば、F430に初めて搭載されたE-DIFF(電子制御デフ)に、F1-TRACと呼ばれるトラクションコントロールシステムを統合。E-DIFF2に進化させ、コーナー脱出速度を従来比で40%も向上させました。 そして、スクーデリア 430が特別なクルマである最大の理由は、F1で揺るぎない実績を残すミハエル・シューマッハが深く関わって開発されたことです。車のポテンシャルを最大限引き出すべく、テスト走行を重ねてスクーデリア 430を鍛え上げました。 これだけこだわって開発されたスクーデリア 430の技術が、スクーデリア スパイダー 16Mに惜しみなく投入されています。 フェラーリ史上最速で特別なオープンスポーツ とことん性能にこだわって開発されたスクーデリア スパイダー 16Mは、フェラーリ史上最速のオープンスポーツです。事実、フェラーリのテストコース「フィオラノ」で、「フェラーリのオープンスポーツ史上最速のラップタイムを刻んだ」と発表されています。 圧倒的な性能の影に隠れがちになってしまう記念モデルとしての魅力も含めて、スクーデリア スパイダー 16Mを紹介します。 オープンモデルなのに妥協のない高い走行性能 走る喜びや爽快感を目指すオープンモデルは、オリジナルモデルに比べて走行性能が犠牲になりがちです。しかし、スクーデリア スパイダー 16Mは、むしろ走行性能が最大の特徴といえるほど妥協せずに開発されています。 搭載エンジンは430 スパイダーと同型のV型8気筒DOHC4.3L自然吸気エンジンながら、各部の徹底的なチューンナップによって最高出力は510psを発揮。パワーアップの難しい自然吸気エンジンで、20psもの引き上げに成功したのは驚異的です。 また、オープンモデルはボディ剛性の問題から車重が重くなる傾向にありますが、オリジナルの430 スパイダーに対して80kgもの軽量化に成功。パワーウェイトレシオは2.0kgを達成し、停止状態から100km/hまでわずか3.7秒で到達します。 エンブレムが歴史的な偉業と希少性を主張 類まれな走行性能とF430譲りの外側からエンジンが見える独創的なデザインを兼ね備えたスクーデリア スパイダー 16Mは、記念モデルという側面を抜きにしても十分魅力的なクルマです。しかし、特別なモデルであることを象徴するエンブレムによってさらにその価値が高まります。 「F1 CONSTRUCTORS 16 2008 WORLD CHAMPIONSHIPS」と刻まれたリアのエンブレムが歴史的偉業を称え、センターコンソール上部の「16M SCUDERIA SPIDER LIMITED 499」が世界でわずか499台のみという希少性を主張。そして、ボディサイドには「16M SCUDERIA」のエンブレムが輝きます。 エンブレムが外観に大きな影響を与えるわけではありませんが、しっかりと作り込まれているモデルだからこそエンブレムがより魅力を高めてくれているのではないでしょうか。 希少性の高さから買取金額はF430の2倍以上 スクーデリア スパイダー 16Mははわずか50台しか正規輸入されていないため、中古車市場にはほとんど出回っていません。ベース車輌であるF430が2,500万円程度のところ、スクーデリア スパイダー 16Mは条件にもよりますが5,000万円を優に超えます。 希少性が高ければ価格も高いことは想像に難くないところですが、実はあまり流通していない車の価値を見極めて値段をつけるのは簡単ではありません。参考にできる流通実績がないため、販売まで考えた場合に買取価格をいくらにすれば妥当なのか判断ができないためです。 スクーデリア スパイダー 16Mのように、歴史的意味合いも含めて希少性のある車の価値を見極められる業者は決して多くありません。もし、歴史的価値の高い旧車の売却をお考えでしたら、専門業者としてのノウハウのある旧車王にご相談ください。

ホンダ 初代シティはスタイリッシュな都会派コンパクトカー!? 過激な加速が魅力のシティターボⅡも紹介
旧車の魅力 2024.05.22

ホンダ 初代シティはスタイリッシュな都会派コンパクトカー!? 過激な加速が魅力のシティターボⅡも紹介

丸目のヘッドライトと個性的なスタイリングが特徴のホンダ シティ。都会派の新しいコンパクトカーとして、こだわり抜いて作り上げられたクルマです。話題を呼んだCMとともに、当時の若者の心を鷲掴みにしました。 現在の軽自動車やコンパクトカーにもつながる、新しい思想で設計された初代シティについて振り返ってみましょう。また、コンパクトカーの枠を超えた走りが人気だった、シティターボⅡの魅力も紹介します。 シティはホンダが提案した都市型コンパクトカー 都市型コンパクトカーとして登場した初代シティは、発表の仕方も都会的でした。東京モーターショーの前夜に、新宿センチュリーハイアットで発表したのです。東京の、しかもど真ん中の新宿で発表したところに、ホンダがシティに込めた思いが表れています。 トールボーイという新しいスタイリングが話題を呼んだ、初代シティの誕生について振り返ってみましょう。 トールボーイという新しいアプローチ 1981年にデビューした初代シティは、都市圏に住む若者がお洒落に乗れるコンパクトカーという位置づけの車種です。トールボーイという新しいスタイリングで、デザイン性と居住性を両立しています。都市型のコンパクトカーとして最適なクルマを作り上げるため、開発の中心にはターゲット層と同じ20代のスタッフが起用されました。 コンパクトカー最大の課題は、居住性の確保です。トールボーイという呼び名のとおり、全高を高くすることでゆとりのある車内空間を実現しました。一方で、ただ全高を高くすると、デザイン性が損なわれてしまいます。そこで、全高が高くてもスタイリッシュにみえるよう、ボディの傾斜や全長とのバランスなど細部に渡ってとことん追求されました。 シンプルながらこだわり抜いたデザイン トールボーイと呼ばれる初代シティのボディデザインは、実によく考えて作られています。全長の短いコンパクトカーでキャビンの高さを上げると、不安定で野暮ったくみえがちです。しかし、正面からみたボディサイドの傾斜の角度、オーバーハングの長さ、先端部を低くしたスラントノーズなど、絶妙なバランスでスタイリッシュにまとめられています。また、全体的に直線基調のデザインであることも、シンプルながらおしゃれに感じられる理由の1つでしょう。 内装もボディと同様に、直線基調で余計な華飾のないシンプルなデザインです。ドアパネルも含めて抑揚のないデザインとすることで、居住スペースを最大限確保しています。一方で、視認性の高いメーターパネル、やや運転席側にオフセットされているセンタークラスター、各所に設けられた小物入れやポケットなど機能性は抜群です。徹底的に追求された機能美は、車格は異なるもののドイツ車のような雰囲気すらあります。 大きな話題を呼んだテレビCMとモトコンポ デザイン性の高さと新しさがインパクトを与えた初代シティですが、車輌そのもの以外でもさまざまなブームを作り出しました。まずは、イギリスのバンドマッドネスを起用したテレビCMです。彼らの曲に乗せたラップのような「ホンダホンダホンダホンダ」というフレーズとムカデダンスと呼ばれる動きは、子どもたちの間でも流行しました。 モトコンポという折り畳み式の50ccバイクも、シティとは切り離せない存在です。独特の直方体のデザインが特徴的で、シティの荷室にそのまま積み込めました。おでかけ先でバイクに乗るという、ホンダの遊び心が詰まっています。個性的なデザインは現在でも人気が高く、日本では未発売なものの「モトコンパクト」という電動バイクとして先日復活したほどです。 レース入門車にもなった迫力満点のシティターボⅡ 都市型コンパクトカーとして誕生したシティですが、実は性能面を突き詰めたモデルも存在します。ターボエンジンや専用の架装を施した、シティターボです。 ここからは、性能やデザインにさらに磨きがかけられ、レース入門車としても人気の高かったシティターボⅡを紹介します。 軽量ボディとターボエンジンで味わう過激な加速感 最高出力110psを発揮するエンジンと車重の軽さを活かして爆発的な加速を魅せるシティターボⅡ。0-400m加速は、同年に登場した名機4A-Gを搭載したトヨタ AE86の16.14秒を上回る、15.92秒を叩き出しました。また、加速力を示す指標の1つパワーウエイトレシオは6.68kg/psと、AE86の7.38kg/ps(GT-APEX)を大きく上回っています。 先代のシティターボと同様のER型1.2Lターボエンジンですが、クラス初のインタークーラーを装備したことで10psのパワー向上を果たしました。最大トルクは、シティーターボからさらに1.3kgmアップの16.3kgmを発揮します。 一方で、パワーのあるエンジンを支えるシャシー周りも、シティターボⅡ専用に作り込まれています。トレッド幅を広げることでコーナリング安定性を高め、単なる直線番長ではなく運動性能全体が高められていました。 ブルドックと呼ばれた個性的な内外装デザイン シティターボⅡは、メーカーのホンダ自らが「ブルドック」と名付けるほど個性的なスタイリングのモデルです。前後に「ダイナミックフェンダー」という名のブリスターフェンダーを装備し、併せて前輪30mm、後輪20mmもトレッド幅が拡大されています。 一方、内装で目を引くのはメーターパネルです。中央に配置したデジタル表示のスピードメーターを取り囲むように、回転式のタコメーターを配すという先進的なデザインでした。また、シートはサイドポートの張り出した、バケット形状になっています。 今でも人気のシティターボII 今見ても個性的なスタイリングと爆発的な加速力を兼ね備え、根強いファンをもつシティ ターボⅡ。登場から40年以上が経つにも関わらず、状態次第では100万円以上の買取価格がつくほどの人気を誇っています。 ただし、走りを楽しむ層の支持を集めていただけに、酷使されている可能性は否めません。中古車で購入する際は、状態を十分見極めることをおすすめします。 売却の際にも、状態によっては思わぬ高値がつく可能性があるため、価値を熟知した旧車専門の買取業者に依頼しましょう。

トヨタ 初代セリカ 1600GTはスペシャリティという新たなジャンルを切り開いた名車!
旧車の魅力 2024.05.16

トヨタ 初代セリカ 1600GTはスペシャリティという新たなジャンルを切り開いた名車!

滑らかで美しい曲線によるボディラインが特徴的なトヨタ 初代セリカは、スペシャリティカーという新たなカテゴリーを定着させたモデルです。 個性的なスタイリングから「ダルマセリカ」とも呼ばれた初代セリカのなかでも、特に人気の高かったグレードが1600GT。リフトバックの最上位グレードである2000GTと双璧をなしたともいわれています。今回は1600GTを中心に初代セリカの魅力と歴史を解説します。 初代セリカは自動車の新カテゴリーを定着させた 初代セリカは、スペシャリティカーという新カテゴリーを定着させたモデルです。走行性能にこだわりながらも、デザイン性の高さも併せ持っていました。 セリカの個性を際立たせた1600GTを中心に、誕生の歴史を振り返ってみましょう。 スペシャリティという新しい提案 1970年に登場した初代セリカは、カリーナと多くの部分が共通であるものの、それまでの国産車にはあまり存在しなかったスペシャリティカーという新しい位置付けのクルマでした。スペシャリティカーの定義はややあいまいですが、落ち着いたセダンでもなく尖ったスポーツカーでもないスポーティな車種全般がスペシャリティカーと呼ばれています。 シャシーやパワーユニット、ギヤボックスは共通でありながら、ボディタイプは2ドアハードトップクーペのみ(登場時)というカリーナとは明確に方向性の異なる車種でした。 ダルマセリカの愛称で呼ばれた個性的なスタイリング 初代セリカは、その個性的なスタイリングから「ダルマセリカ」という愛称で親しまれました。当時の国産車としては珍しい、滑らかな曲線で構成されたボディラインに由来します。また、正面から見ると、メッキのフロントバンパーがダルマのヒゲのように見えるからだともいわれています。 肉厚で重厚感のある個性的なデザインは、スペシャリティカーという新たなカテゴリーのクルマとして多くの人から愛されました。 最上位グレードの1600GT スペシャリティカーという初代セリカのアイデンティティを最も感じられるグレードといえば、走りにこだわった1600GTです。ヤマハ製のDOHCエンジン2T-Gを搭載し、内外装も専用パーツが用意されていました。 初代セリカは、内外装をはじめ、エンジンやトランスミッションまで好みのものを選べる、フルチョイスシステムと呼ばれる販売形態をとっていました。しかし、最上位グレードとしてこだわり抜かれた1600GTに関しては、フルチョイスシステムの対象外でした。 すべてが特別だった1600GT スペシャリティという言葉のとおりセリカは特別なクルマであり、なかでも1600GTは性能、デザインともに、当時としては先進的なモデルです。海外のレースでも多くの活躍を見せ、その実力を世界に示しました。 ここから1600GTの魅力をさらに詳しくみていきましょう。 名機2T-Gと専用設計の内外装 1600GTの最大の特徴は、トヨタのDOHCエンジンの先駆け的存在だった名機2T-Gを搭載していたことです。2T-GはDOHCの1.6L 4気筒エンジンで、115psもの最高出力を発揮します。最高速度は、スポーツカーにも劣らない190km/hに達しました。 また、内外装の多くの部分が1600GT専用に設計されています。ハニカム構造のフロントグリルとサイドストライプには、専用の「GT」の文字があしらわれていました。内装も1600GT専用のデザインで仕上げられています。 世界的なレースでも活躍 1600GTは、世界のレースでも実力を見せつけます。まず、1972年のRACラリーにワークスとして本格参戦し、クラス優勝を果たしました。さらに、翌年の1973年には、世界の名門レースで連続して素晴らしい結果を残します。 ニュルブルクリンク6時間レースでクラス優勝を飾ると、スパ24時間レースでも同じくクラス優勝。性能と信頼性の高さを世界的なレースで証明しました。 後発の2000GTと甲乙つけ難い人気 初代セリカのなかでも人気の高かったモデルは、1973年に投入された2000GTリフトバックです。2.0Lの18R-G型直列4気筒DOHCエンジンは、1600GTを大きく上回る最高出力145psを発揮しました。 しかし、絶対的なパワーでは劣るものの、軽快でスポーティな走りに関しては1600GTに軍配が上がります。また、スペシャリティカーという新カテゴリーを切り開いたという意味においても、1600GTは唯一無二のモデルです。1975年の排ガス規制によって惜しまれつつ生産が終了しましたが、現在でも1600GTは2000GTと甲乙つけがたい人気を誇っています。

ホンダ初の量産型乗用車N360の圧倒的な実力とは?! 和製ミニクーパーとも呼ばれた魅力に迫る
旧車の魅力 2024.05.10

ホンダ初の量産型乗用車N360の圧倒的な実力とは?! 和製ミニクーパーとも呼ばれた魅力に迫る

個性的でかわいらしい外観が魅力的なホンダ N360。見た目の愛らしさに加えて、他社を圧倒するパワーと快適な居住性によって大ヒットを記録した軽自動車です。全長3.0m、全幅1.3m、全高2.0m、排気量360ccという限られた軽自動車規格のなかに、ホンダの技術力が惜しみなく注ぎ込まれていました。 今回は、ホンダ初の量産型乗用車であるN360の開発背景と魅力をたっぷりとお届けします。 ホンダ乗用車の源流となったN360 N360は、ホンダが初めて開発した本格的な量産型乗用車です。二輪車メーカーとしては高評価を得ていたホンダですが、四輪自動車の開発を手掛けたのは1950年代後半からでした。 まずは、ホンダの量産型乗用車の源流となったN360の開発背景を振り返りましょう。 四輪自動車としては後発メーカーだった 創業から二輪車を作り続けているホンダですが、実は四輪自動車としては後発でした。大ヒットを記録したスバル 360が登場したのは1958年、ホンダ初の量産車T360の登場は4年後の1962年です。しかも、一般向けに広く販売される乗用車ではなく、限られたユーザーが利用する軽貨物自動車でした。 軽自動車規格は、1950年に全長3m、全幅1.3m、全高2mと定められ、1955年には排気量の上限が360ccに制定されました。(いずれも施工年)この変遷を考えると、ホンダの四輪自動車開発は他のメーカーに遅れをとっていたといわざるをえません。 参照:軽自動車の規格 – 一般社団法人 全国軽自動車協会連合会 軽自動車活況の中で投入されたN360 ホンダ初の量産型乗用車N360が発売されたのは、T360発売から5年後の1967年です。軽自動車の開発で先行するスズキ、スバルに続いて、1960年代に入るとマツダとダイハツも相次いで参入し市場は活況を呈していました。 N360は、並み居る自動車メーカーのなかで比較的遅く投入された軽自動車です。しかし、当時の軽自動車の常識を打ち破る広さとパワーで強い存在感を示します。エンジン、レイアウト、実用性と随所にホンダの高い技術が投入され、「Nコロ」という愛称もつけられるほど市場にしっかりと食い込みました。 和製ミニクーパーとも呼ばれたN360の挑戦 N360は当時の軽自動車ではまだ少なかった4サイクルエンジンを搭載し、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)レイアウトでもあったことから「和製ミニクーパー」とも呼ばれていました。かわいらしい見た目ながらハイパワーエンジンを搭載しているという点は、ミニクーパーと共通しています。 ここからは、N360の成功につながった、エンジンとレイアウトについて詳しく解説します。 パワフルな4サイクルエンジンを採用 当時の軽自動車のエンジンは、多くが2サイクルエンジンでした。360ccという小型の4サイクルエンジンは、当時の技術では開発が難しかったためです。しかし、ホンダは長年培ったエンジン開発のノウハウを活かして、N360に4サイクルエンジンを採用。最高出力は31psを発揮し、20ps台前半が一般的だった当時の軽自動車のなかで別格の高出力を誇りました。 N360の高性能エンジンは乗用車だけにとどまらず、フォーミュラカーやプロトタイプスポーツカーにも活用されています。 広い居住空間を実現したFFレイアウト N360はFFレイアウトを採用し、限られた軽自動車規格をクリアしつつ広い居住空間の確保に成功しました。駆動と操舵を1つの車軸で行うFFの開発には、高い技術力が要求されます。当時の軽自動車の多くは、RR(リアエンジン・リアドライブ)によって居住性の確保を図っていました。 RRはエンジンは時代の流れとともに減少しますが、一方でFFは普通車のセダンにも採用されるほど現在の普通車では一般的なレイアウトです。初の量産型乗用車で、現在にも通じるFFレイアウトを確立していたホンダの技術力には驚嘆せざるを得ません。 2度のマイナーチェンジでNIII360まで進化 N360は1971年までのわずか4年間で、2度もマイナーチェンジを行っています。1969年の最初のマイナーチェンジでは大幅な外観の変更はなかったものの、空洞のあったダッシュボードや剥き出しだったシフトレバーなどをパネルで覆って乗用車らしくなりました。また、保安基準の変更に合わせて、シートにはヘッドレストが備えられたほか、2点式シートベルトも追加されています。 そして、1970年のマイナーチェンジでは、名称を正式にNIII 360に改めるほど大幅な変更が施されています。フロントフェイスのデザイン変更で印象が大きく変わったほか、フルシンクロミッションが投入されてより現代的な装備になりました。 後発モデルながら好調なセールスを記録 N360はエンジン出力や居住性といった性能面で優れていただけでなく、商業的にも成功し生産台数および販売台数を伸ばしたモデルです。スバル 360やマツダ キャロルが40万円前後だったのに対し、N360は31万5,000円(東京・神奈川店頭渡し現金価格)という破格の価格設定だったことも要因の1つだと考えられます。 デビュー2ヶ月後には国内の軽自動車の販売台数トップを奪い、その後43ヶ月間に及んで、軽自動車のトップを走り続けます。最終的に総生産台数65万台にものぼり、40万台弱といわれるスバル 360を大きく引き離しました。 四輪自動車メーカーとしてのスタートは他社にやや出遅れたものの、最初の量産乗用車で圧倒的な性能を見せつけた点はさすがのホンダだといえます。

「街の遊撃手」いすゞ 2代目ジェミニは最初で最後のヒット作?! 話題になったCMも含めて歴史を振り返る
旧車の魅力 2024.04.26

「街の遊撃手」いすゞ 2代目ジェミニは最初で最後のヒット作?! 話題になったCMも含めて歴史を振り返る

コンパクトカーにカテゴライズされるいすゞ 2代目ジェミニは、絶対的に優れている性能や高級感はないのになぜか人の心をひきつけるクルマです。パリの街をデートしているかのように、2台のジェミニがピッタリと寄り添って走るCMを記憶している人も多いのではないでしょうか。 「街の遊撃手」というキャッチコピーで登場し、軽快な走りで人気となったいすゞ 2代目ジェミニの歴史と魅力を振り返ってみましょう。 いすゞの乗用車で最大の成功をおさめた2代目ジェミニ 現在はトラックや実用車を中心に生産しているいすゞですが、かつては国内有数の自動車メーカーとして乗用車の開発、販売も手掛けていました。特に、2代目ジェミニはいすゞ最大のヒット作です。総生産台数は74万8,216台にものぼり、大成功をおさめました。 2代目ジェミニの誕生の歴史を、当時話題となったテレビCMも含めて振り返ってみましょう。 初代が販売を継続するなか自社開発に踏み切った 2代目ジェミニは、初代がまだ販売されていた1985年に登場。GM主導で開発された初代に対し、2代目ジェミニは「クオリティコンパクト」をコンセプトにいすゞが自社開発しました。駆動方式も、FRからFFに改められています。新開発の1.5L直列4気筒SOHCエンジンが搭載され、4ドアセダンと3ドアハッチバックが用意されていました。 エクステリアデザインは、イタルデザインの創業者でありデザイナーのジョルジェット・ジウジアーロが手掛けました。ジウジアーロのデザインの特徴である直線基調のボディラインからは、ハンドリング性能の歯切れのよさが感じられます。 なお、初代と併売される形で投入されたため、2代目ジェミニは当初「FFジェミニ」という名称で販売されていました。 パリで撮影されたCMが大きな話題を呼んだ 2代目ジェミニが注目を集めたきっかけは、パリで撮影された前代未聞のテレビCMでした。棒でつないだように2台がピッタリと横付けしたドリフト走行、息のあったスピンターンや片輪走行などトップスタントチームのドライビングで、ジェミニがパリの街を駆け抜けます。軽快でキビキビしたハンドリングが魅力の、ジェミニの特徴を見事に表現したCMでした。 また、ロケ場所のユニークさも、CM人気が高まった理由の1つです。凱旋門前の通りやパリの石畳、さらには地下鉄の駅でもスタント走行シーンが撮影されました。人気とともに複数のバージョンのCMが制作されますが、いずれも一糸乱れぬ編隊走行を披露しており、見応え十分です。 パリの街並みにあった優雅で軽快な音楽も、CMに華を添えていました。花のワルツやラデツキー行進曲、オー・シャンゼリゼといったなじみのある曲が使われています。 人気の中心は追加されたスポーツモデル CMで話題となった2代目ジェミニですが、標準車のスペックはそれほど高いとはいえませんでした。人気の中心になったのは、性能を向上させたスポーツモデルです。 特に、イギリスの名門メーカー、ロータスとタッグを組んだZZハンドリング・バイ・ロータスは高い人気を集めました。 2種の追加モデルを投入 2代目ジェミニは、発売後に相次いでハイスペックのスポーツモデルが投入されます。最初に登場したのは、標準エンジンにターボを搭載したイルムシャーです。1.5LのSOHC2バルブエンジンながら、最高出力120psを発揮しました。 続いて1988年に投入されたZZハンドリング・バイ・ロータスは、ロータスが足回りのチューニングを施したモデルです。新開発の高回転型NAエンジンを搭載し、ホットモデルのイルムシャーに対して、上品でゆとりのあるキャラクターのモデルでした。 高回転エンジンとしなやかな足回りのZZハンドリング・バイ・ロータス ZZハンドリング・バイ・ロータスには、7,200回転で最高出力135psを発揮する新開発の1.6L直列4気筒DOHC16バルブエンジンが搭載されていました。ほぼ同時期に販売されていたトヨタ AE86 カローラレビン(トレノ)(1987年に販売終了)が130psだったことを考えると、十分なスペックだったことがわかります。 ロータスによるサスペンションのチューニングは、ロードホールディングと乗り心地を両立させる方針で施されました。強化ブッシュやモノチューブタイプのガス封入式ダンパーなどによって、走りの上質さが徹底的に高められています。 追加グレードでより洗練されたZZハンドリング・バイ・ロータス ZZハンドリング・バイ・ロータスは、性能面だけでなく内外装もスポーティに仕上げられています。フェンダーアーチには標準車にはないモールが取り付けられ特別感を演出、さらにBBS製ホイールもオプションで選べました。 内装では、MOMO製のステアリングに加え、レカロ製のシート(フロント)を標準装備。161万円という強気の価格設定にも関わらず、大ヒットを記録しました。 なお、1989年6月にはセダン限定ながら、ZZ-SEというさらなる豪華仕様のモデルが追加されています。オプション扱いだったBBS製アルミホイールを標準装備し、エクセーヌのレカロシートとBOSEスピーカーまで備わっていました。 乗用車から撤退したのに現在でも根強い人気 2代目ジェミニをヒットさせたものの後続モデルの販売が振るわず、いすゞは2002年を最後に乗用車から撤退しました。しかし、2代目ジェミニの人気は今も根強く、ZZハンドリング・バイ・ロータスは100万円以上の買取価格がつくこともあります。25年前の大衆車だと考えると、2代目ジェミニがいかに魅力的なクルマなのかうかがい知ることができます。 名門ロータスがチューニングしたスポーツモデルとはいえ、同時期の他車と比べても絶対的に優れた性能があるわけではありません。しかし、2代目ジェミニは今も多くの人の心に残り続けている名車です。ジウジアーロのデザイン、パリで撮影された印象的なCM、そして自社開発にこだわったいすゞの情熱、さまざまな要素が影響し合って魅力が高まったモデルだといえるでしょう。

まだまだ旧車と一緒に生きたい!クルマを長持ちさせる“自動車再生”への挑戦
旧車の魅力 2024.04.18

まだまだ旧車と一緒に生きたい!クルマを長持ちさせる“自動車再生”への挑戦

私たちは古いクルマ専門の買取サービス「旧車王」を展開しています……と堅苦しく自己紹介することが多いですが、そもそもは皆さんと同じ「ただの旧車好き」です。 古いクルマならではのボディラインとか質感とか、オイル臭さとか、エンジン音とか振動とか、魅力満載ですよね。もちろん新車だっていいところたくさんあるけど、旧車でしか感じられない刺激の虜になってしまったのが私たち「旧車王」なんです。 旧車の魅力をどうにかして末永〜〜く伝えていきたい、いやもう未来の人類にも直にその目で見て触れて感じてほしい!好きすぎるがあまりに気持ちが溢れ、旧車を次世代につなげる取組みを自分たちではじめてしまいました。同じ旧車好きの皆さんにもぜひ、その取り組みを知ってほしいので今回ちょっと熱く語らせていただきます。 若者にとって旧車は新しい文化!? 1980〜1990年代のファッションやインテリアが「昭和レトロ」「平成レトロ」として、若い世代からの注目を集めています。現在「旧車」と呼ばれる古いクルマの多くも、この領域にカテゴライズされます。当時の国産車といえば、プレリュード、シルビア、セリカ、マークⅡ……名車を挙げたら切りがない。特にプレリュードなんてエクステリアがたまらないですよね、低くて美しいボンネットや、可愛いリトラクタブルライト、横長のテールランプにも趣があるし……と、すみません。思わず熱くなりました。 話を戻します。昭和レトロ、平成レトロを中高年の方々が目にすると「いや〜懐かしいな〜俺が大学生の頃はこれがああでこうで△●×■※……」などと大体昔話が始まるものです。でも、それらの文化に熱を上げている20代〜30代のほとんどは、当時まだ生まれていません。「エモい」という言葉で形容されることが多い文化ですが、若者の多くは懐かしさよりもある種の新しさを感じているのではないかと思います。 だから旧車も若者にとって新しい刺激なわけです。クルマが生まれたのははるか昔だけど、出会ったのはつい最近。だと考えると、まだまだ旧車と一緒にいたいですよね?お父さんやお母さんの世代よりも、知り合ってからの時間が浅いんだから。まだまだいろんな場所をドライブしたいし、たくさん想い出をつくりたいですよね。 ずっと旧車と一緒にいたい! 旧車に乗り続けるには、旧車を「残して」いく必要があります。しかし悲しいことに、工業製品であるがゆえに経年劣化は避けられません。ただ乗っているだけでも、どんどん傷んでしまいます。中古車として出会ったときにはすでにもうあちこち故障していた、なんてケースも旧車では少なくないですよね。   でも!まだまだ!旧車と一緒にいたい!   そんな想いが強すぎるため、旧車王は“自動車再生”に力を入れています。言葉のとおり、「自動車」を「再生」する事業です。買取ったクルマを、次のオーナー、また次のオーナー、そしてまた次のオーナー……といつまでも乗り継いでもらえるように、大事に修理・修復しています。ただ壊れている箇所を直すだけじゃなくて、クルマそのものの魅力をさらに輝かせるように。 1990年代のネオクラシックカーだって、きちんとメンテナンスすればあと20年は走行できます。つまり、あなたがもっと歳を重ねても、たとえば将来子供ができたときにだって、今の愛車は元気に走っていられるのです。願わくば、その子供が大人になる未来にも旧車文化を残していきたいと思っています。   ★旧車王は古いクルマの買取を行っています! 旧車王、実は20年以上にわたって古いクルマを取扱っていて、多くのクルマたちに触れてきたノウハウを活かし、買取サービスを行っています。手放す際のオーナー様の気持ちも痛いほどよくわかるので、1台1台慎重かつ丁寧に査定しております。大事な愛車をいつか売却するときがきたら、旧車王のことを思い出していただけると嬉しいです。 <買取のお申し込みはこちら> 👉Webフォーム👉お電話(フリーダイヤル)0120-389-777受付時間 9:00〜22:00 年中無休

マツダ AZ-1は軽自動車版スーパーカー!? 見た目だけではなく性能面も秀逸だった
旧車の魅力 2024.04.17

マツダ AZ-1は軽自動車版スーパーカー!? 見た目だけではなく性能面も秀逸だった

重心の低いウェッジシェイプのボディにミッドシップレイアウト、ガルウィングというスーパーカーと同様の設計思想で作られたマツダ AZ-1。軽自動車という制限の多い規格のなかで、妥協を許さず作り込まれたマツダの情熱と技術力を感じる1台です。 今回は、現在もなお人気の高い軽自動車ミッドシップスポーツ、AZ-1の歴史と魅力を紹介します。 スーパーカーのレイアウトを軽自動車で実現したAZ-1 AZ-1は全長3,295mm、全幅1,395mmという軽自動車と同等のサイズでありながら、スーパーカーさながらのレイアウトを実現しました。特にAZ-1のアイコン的存在の装備が、軽自動車で唯一のガルウィングです。 実は合理的だったといわれるガルウィング採用の理由も含めて、AZ-1の基本構造をみていきましょう。 ミッドシップレイアウトでガルウィングまで装備 1992年に登場したAZ-1は、「軽自動車」という点を除けばまさにスーパーカーといえる仕様のモデルでした。ミッドシップに搭載したターボ付きDOHCエンジン、ガルウィングドアと装備だけをみればランボルギーニやフェラーリに引けをとりません。 ミッドシップレイアウトにしたことで、前後重量配分は42:58とスポーツカーの理想に近い数値を実現。スーパーカーらしい見た目だけでなく、高い運動性能もAZ-1の魅力です。。 ガルウィングはボディ剛性確保のために必要だった ガルウィングの採用には、実は合理的な理由がありました。スポーツカーに欠かせないボディ剛性を確保するためです。加えて、メルセデスベンツ 300SLのようにサイドシルを高く設計したことから横開きのドアでは乗り降りが難しく、乗降性確保の目的もあってガルウィングが採用されました。 一方で、軽快な走行性能を実現するため、徹底した軽量化も図られています。外板の強度に依存しないスケルトンモノコックボディという構造にすることで、ボディ剛性と軽量化を両立。外板の多くにFRPを使用し、わずか720kgという車重を実現しました。 アルトワークス譲りの高い基本性能 AZ-1のパワートレインは、実はスズキ アルトワークスと共通です。自主規制いっぱいの64psを発揮する、F6A型直列3気筒DOHCターボエンジンが搭載されています。 また、サスペンションもアルトワークスと同じです。すでに高い評価を得ていたアルトワークスの基本性能が、そのままAZ-1に移植されました。加えて、シャープなハンドリングを実現するため、ダンパーやバネ、ブッシュ、スタビライザーに至るまで、マツダこだわりのチューニングが施されました。 振り切った内外装デザイン AZ-1のデザイン上の特徴は、ガルウィングだけではありません。本格的なミッドシップスポーツカーと遜色のないデザインが、細部に渡って取り入れられています。 続いて、AZ-1の内外装の特徴をみていきましょう。 スーパーカーをそのままコンパクトにした外観 ランボルギーニ カウンタックやフェラーリ 328GTBなどと同様に、AZ-1のボディ形状はウェッジシェイプです。さらに、サイドのエアインレット、エンジンルーム上の放熱スリット、後部の開口部などスーパーカーをそのままコンパクトにしたようなデザインに仕上げられています。 また、AZ-1の個性をより一層引き立たせているのが、丸目のヘッドライトです。一般的なクルマと違い、フロントノーズよりやや奥まったところに配置されています。実はコンセプトカーでは、リトラクタブルヘッドライトが採用されていました。空力に影響する先端部のため、できるだけ流線型を犠牲にしないように配慮されたのかもしれません。 居住性は皆無のスパルタンな内装 お世辞にもAZ-1の居住性は高いとはいえません。乗員の背中側にエンジンが来るため車内は狭く、ドライバーのスペースの確保さえ苦心した様子がみえます。もっとも特徴的なのはエアコンのコントロールパネルの場所です。ドライバーの左足側のスペース確保のため、センターコンソールに縦向きに設置されています。 さらに、安全上の理由からスペアタイヤをフロントノーズ部に収納できず、車室内後部に搭載せざるを得ませんでした。軽自動車サイズでミッドシップスポーツカーを実現するためには、居住性を犠牲にするしかなかったようです。 さらに個性的な特別仕様車もあった ベース車輌自体が個性的なAZ-1ですが、特別仕様車もいくつかリリースされました。マツダスピードバージョンでは、大型のエアインテークのあるボンネット、エアロバンパーと大型リアスポイラーが装備され、コンパクトなAZ-1が迫力のある外観に生まれ変わっています。 また、当時マツダのグループ会社だったM2社の手掛けたM2 1015は、かなり個性的な1台です。ボンネットの切り込み形状の変更によってヘッドライトの形が変わり、さらに中央部にはフォグランプが追加されたことでまったく印象の異なるクルマに仕上がっています。専用アルミホイールや後部には「M2 1015」のエンブレムまで装着されました。 唯一無二の存在だけに失われない価値 AZ-1は、軽自動車にスーパーカーの要素をたっぷりと詰め込んだ、唯一無二の個性的なモデルです。現在でもAZ-1の人気は高く、大手中古車サイトでは180~270万円程度で取引されています。1992~1995年のわずか3年間しか作られなかったこともあり、今後さらに希少性が増していくでしょう。 一方で、希少性の高いクルマを売却する際は、買取業者選びに注意が必要です。流通力が少ないと参考にできる価格情報が限られているため、一般的な買取業者だと価値を正しく判断してもらえない可能性があります。AZ-1のような旧車を売却する際は、旧車専門の業者に相談しましょう。

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