ドイツ現地レポ

ドイツ最大の自動車オークションサイト「Auto1」の仕組みとは?
ドイツ現地レポ 2023.07.24

ドイツ最大の自動車オークションサイト「Auto1」の仕組みとは?

日本の最大のライバルと言っても過言ではない、自動車大国のドイツ。 この国では、日本と同様に自動車のオークションサイトがあるのはご存知だろうか。 実際に知っているという人は少ないだろう。 それもそのはず。 このオークションサイトは個人での参加はできず、法人のみが閲覧できるようになっているからだ。 その名もAuto1(ドイツ語でアオトアインツ)と呼ばれている。 今回は、ドイツ最大規模の自動車オークションサイトである、Auto1について解説していく。 ■1.日本のソフトバンクが出資!? Auto1グループは、2012年に設立された会社で、法務本部はミュンヘン、管理本部はベルリンに置くヨーロッパ最大の中古車サイトだ。 クリスチャン・ベルダーマンとハカン・コチによって設立されたこの会社は、中古車取引をデジタル化するというアイデアのもと生まれた。 2018年には、日本のソフトバンクが4億6000万ユーロ(現在のレートで約720億円)を投資し、評価額は29億ユーロ(約4500億円)となった。 2019年にはヨーロッパで最高評価の非上場スタートアップ企業となり、2021年にはフランクフルト証券取引所に上場した。 ここ数年で急成長を遂げた、今ヨーロッパでもっとも勢いのある中古車取引会社だ。 ▲点検・査定用ガレージ ■2.ドイツ意外の国からも購入できる? Auto1グループでは、現在3つのプラットフォームで構成されている。 ・Wirkaufendeinauto.de 主に自動車の点検と購入をおこなう部門であり、ドイツ国内だけで120以上の拠点を持っている。 国外では、オーストリア、ベルギー、フランス、イタリア、スペイン、スウェーデン、オランダ、ポルトガルに拠点がある。 クルマの売却希望者はウェブサイトにて車輌データを入力し、あらかじめおおよその買取金額を把握することができる。 実際に売却を行う場合は、車輌を最寄りの拠点へと運び、点検や査定を受けて最終金額の確定をおこない、小切手を受け取り売却完了となる。 ▲買取後の売買手続きを行う事務所 ・Auto1.com Auto1は、中古車の売買をオンラインでおこなうBtoBマーケットプレイスだ。 30カ国以上、6万社以上のディーラーが利用しているヨーロッパ最大のオークションサイトである。 毎日3000台以上の買取を行い、常時在庫は30,000台以上保有している。 ディーラーは専用サイトにて、オークション形式で車輌を購入することができる。 これにはドイツ以外の国のディーラーも参加しているため、もちろんドイツ以外の国からも車輌を購入することができる。 ▲検査場 ・Autohero Autoheroは2016年に設立された、オンライン自動車ディーラーである。 あらゆるメーカーや価格帯のクルマを取り扱う、日本のカーセンサーと同様のサイトである。 ■3.急成長を遂げたその仕組みとは Auto1に掲載された車輛は、すぐにディーラーが車輛データを確認できるようになっている。 サイト上には複数枚の写真とともに、年式、走行距離、グレード、オプションなどはもちろんのこと、直近の整備記録やオーナー数など事細かく記載されている。 さらに、専門の査定士による車輛のチェックが行われ、事故歴や修復箇所、エンジンや足回りなども細かくチェックがおこなわれる。 修理が必要な場合や、タイヤの残り溝やブレーキパッドの残量までもサイト上で確認することができるため、現車を確認せずともほとんどの情報が得られるというわけだ。 しかもオークションの開催期日は最大2日と、非常に短く、オークションに限らず一括で購入することも可能となっている。 ディーラーが車輛を購入した場合は、陸送の手配まで自動でおこなってくれるため、車両金額を振り込めば、あとは到着を待つだけ。 この異常なほどの回転率の速さと効率の良いシステムが、会社の成長へと繋がったのではないだろうか。 ■まとめ ドイツでは、5年ほど前まで中古車市場がまとまっておらず、車輛の売買は主にディーラー同士、または個人とディーラーでおこなわれていたそうだ。 この中古車売買を統一し、一本化に成功したのが、Auto1というわけだ。 実際に、著者はこのサイトを何度も利用しているが、非常に使いやすいサイトとなっている。 ネット上で車輛データを事細かく把握することができ、現車確認をする必要がないからだ。 1つ問題を挙げるとすれば、ドイツ国内以外の出品車輛は買いづらいということ。 なぜなら、ドイツの車検基準は非常に厳しく、ドイツ国外(例えばイタリアやフランス)などから購入した車輛は、ほとんどの確率でドイツの車検に通らないからだ。 しかし、デメリットを踏まえた上でも、非常に扱いやすいサイトであることは間違いない。 今後も利用者が増えることが予想されるため、これからのAuto1グループの成長に目が離せない。 [ライター・撮影/高岡ケン]    

果たしてドイツは旧車の楽園なのか?この国の旧車の定義とは
ドイツ現地レポ 2023.07.20

果たしてドイツは旧車の楽園なのか?この国の旧車の定義とは

日本では、一般的に新車登録から13年が経過したクルマは自動車税と重量税が高くなり、必然的に旧車を維持するためには税金を含めた維持費が上がります。 このような要因も含め、日本では旧車を見かける機会がなかなか少ないのではないかと想像していました。 一方、ドイツでクルマを運転していると、その道中、駐車場を問わず旧車を見かけることがとても多いのです。 毎週クルマで数百キロを移動しますが、行く先々でほぼ毎回見かけるほどです。 この記事では、ドイツにおける旧車の状況について見ていこうかと思います。 ▲フォルクスワーゲン ケーファー(Käfer=ドイツ語でカブトムシ、つまりビートルの意) ■そもそも旧車とは?(ドイツ編) そもそも旧車とは、どのようなクルマを指すのでしょうか。 ドイツでは「オールドタイマー」という定義で法的に統一されており、最初の登録から少なくとも30年が経過しているクルマのことをいいます。 さらに車輌の大部分がオリジナルの状態であるか、もしくはオリジナルの部品で修復されていること、車輌の状態が良好であること、クルマの文化遺産を維持する役割を担っていることなどとされています。 1997年にはHナンバー (H-Kennzeichen) としても知られる、ヒストリックナンバープレートが導入されました。 クルマのナンバープレートには、「ヒストリック」であることを意味するHの文字が追加で記されます。 クルマが上記の条件を満たしていれば申請することが可能で、専門家による肯定的な所見に基づき付与され、自動車文化財として認められるようです。 ちなみに年式こそ古いものの、登録から20年から29年経過しているクルマは「ヤングタイマー」と呼ばれます。 条件としてはオールドタイマー同様、可能な限りオリジナルの状態に近く、保存状態が良好であることなどとされています。 ただし、どうやらこのヤングタイマーにはオールドタイマーのような法的な定義は存在しておらず、保険会社や愛好家、イベント主催者などによりその定義が異なることもあるようです。 ▲外出先に駐車していたメルセデス・ベンツ Sクラス、フォルクスワーゲン ゴルフ(筆者撮影) ■旧車への税金優遇 たいていの場合、Hナンバー登録されているクルマの税金は、通常の自動車税よりも安くなります。 さらに700cc以下、または浄化装置を搭載しているオールドタイマーについては、自動車税はより安くなる場合があるようです。 そんなドイツでも、オールドタイマーに対するこの優遇に対して、異議を唱える声が多くあがっているのが実情です。 例えば、会計検査を管轄する政府機関は、この減税措置に異議を唱え続けており、Hナンバーのオールドタイマーの増加により政府の税収が減少しており、かつ政府が掲げる気候政策目標と矛盾すると主張しているのです。 今後このような優遇措置が見直される可能性もあるかと思いますが、このような声があがっているにもかかわらず、現状オールドタイマーに対する減税措置が維持されていること、そして後述するようにオールドタイマーの登録が右肩上がりに増えていることを踏まえると、ドイツは旧車にとっての楽園ととらえることができるのかもしれません。 ■ドイツにおける旧車の登録数 ドイツではどのくらいオールドタイマーがいるのか、その台数とモデルを見てみましょう。 ドイツで登録されている自動車の数は全体で6,770万台(乗用車以外も含む)ですが、731,795台がオールドタイマーとしてのステータスを持っているとされています。 このうち88.6%にあたる648,403台は乗用車、4.8%にあたる31,536台はトラック、3.1%にあたる22,450台はトラクターとなっています。 ドイツでは、見るからに旧車のトラックなどもしばしば見かけます。 なお統計では、オールドタイマー(Hナンバーの有無は問わず年式のみを考慮)の2022年の登録数は、前年比10.8%増となっています。 2022年現在登録されているオールドタイマーの年代別では、30年~34年のクルマが160,741台、35~39年のクルマが139,848台、40~44年が106,509台、45~49年が97,532台、50~59年が154,598台、60年以上経過しているクルマは72,439台となっています。 さらにKBA(ドイツ連邦自動車庁)の統計を見ると、2011年から2022年にかけての登録数は、30年~40年経過したオールドタイマーは多少上下しているもののほぼ一定であるのにに対し、50年が経過しているオールドタイマーの登録数が右肩上がりに伸びているのは興味深いところです。 次に、州別のオールドタイマーの登録数です。 一番多いのはノルトラインヴェストファーレン州で158,794台、次いでバイエルン州で138,931台、バーデンヴュルテンベルク州で118,605台であり、この3州において登録数がとりわけ多くなっています。 ところが、過去10年の統計では、この3州以外での登録が倍増しており、オールドタイマーの人気が急上昇しているというのです。 今回その理由まで確実に調べることはできませんでしたが、今後追っていきたいと考えています。 ▲外出先に駐車していたメルセデス・ベンツ Sクラス(筆者撮影) ■Hナンバー登録車のメーカー・モデル別ランキング オールドタイマー(Hナンバー登録されているクルマに限る)のメーカー、モデルごとのランキングは下記の通りです。 1:メルセデス・ベンツ2:フォルクスワーゲン3:ポルシェ4:BMW5:オペル6:フィアット7:GMC8:フォードUSA9:アウディ10:フォードEU モデル別では、 1:メルセデス・ベンツ W123, E Class2:フォルクスワーゲン ケーファー(ビートル)3:フォルクスワーゲン バス(全車種)4:メルセデス・ベンツ SL(全車種)5:ポルシェ 911 / 993 / 996 6.:メルセデス・ベンツ Sクラス 7:フォルクスワーゲン ゴルフ 8:BMW 3シリーズ 9:メルセデス・ベンツ W201(190)10:メルセデス・ベンツ Strich 8 となっています。 ▲フォルクスワーゲン バス(T2) ■おわりに いかがでしょうか。 これまでは「ドイツではまだ古いクルマが比較的たくさん走っているんだな」程度にしか思っていませんでしたが、その背景には旧車の立場がしっかりと確立され、さらには税金の優遇措置があったりと、旧車が走り続けやすい、または維持しやすい体制が整っていることがわかりました。 今後はオーナーの実際の声を聞く機会を探り、旧車に関する事情などをオーナー目線も交えながら深堀していきたいと思います。 [画像・Shima,フォルクスワーゲン / ライター・ Shima]  

街中を散策するだけで楽しい!ドイツのクルマ事情について
ドイツ現地レポ 2023.07.19

街中を散策するだけで楽しい!ドイツのクルマ事情について

はじめまして。 今回から旧車王ヒストリアにて記事を執筆させていただきます、西尾菜々実です。 私は去年の夏からドイツに移住したのですが、散歩をするだけで日本とは違うクルマ事情と出会います。 日本の京都で生まれ育ったため、街で輸入車見る機会は多くなかったのですが、移住してからはあたりまえのように走っています(現地では"国産車"だったりします)。 その結果、今までの環境とは違い、さまざまな国のメーカーが製造するクルマを見ることができるようになりました。 今回は、ドイツに移住してどのようなクルマと出会い、私がどのような感想を持っているかご紹介いたします。 ■ドイツでどのようなクルマに出会う? ドイツでは路上に駐車場が多く、街を散策するだけでさまざまな種類のクルマと出会うことができます。 日本ではBMWやメルセデス・ベンツというと、やはり高級車というイメージが強いのではないでしょうか。 もちろんBMWといえば小型車も有名なのですが、私が日本で暮らしていた感覚だとやはり高級車を想像します。 私が日本で働いていたときも、高級車向けの部品を担当していました。 ドイツに移住し、街を散策していると、やはり小型車やクラシックカーを見かける機会が多い印象です。 私としては実際にクルマの購入をディーラーの方に相談しなくても、多種多様なクルマを駐車場で観察したり時間をかけて眺めることができるので嬉しいです。 デザインが特徴的なクルマや、日本車では滅多に見ないカラーバリエーションなどと出会うことが多いのです。 その結果、クルマの良さや比較する項目を見つけることができ、散策の時間が楽しく過ごせます。 比較的決まった車種をいつも見るのではなく、いつも新しい車種に出会えます。 ドイツでは、小型車でも二人乗りの小さいミニカーを見かけることがあります。 もちろん日本でも走行しているのですが、ドイツに移住してからのほうが見る機会が多いです。 個人車としての利用も見かけますが、ピザなどの配達の使用としても見ることができます。 軽自動車の定員よりも定員数が少ないので、車体の大きさもより小さくなっており、小回りが効く印象です。 街中で二人乗りのミニカーに出会うと、特徴的な走行に目が引かれます。 電動式のミニカーも存在し、気軽に外出できる印象があります。 ▲筆者撮影 ■輸入車について ドイツではヨーロッパ車だけでなく、さまざまな国のクルマを見ることが可能なことも、移住して気づいた点です。 先ほども記載したのですが、ドイツでは駐車場が車道に多いため、展覧会のように車を眺めることができます。 多種多様なクルマが偶然その日に駐車された順番で並べられているため、配色違いの同車種が停車されている偶然に出会うことがあります。 将来このクルマの新バージョンが購入したいなどと考えながら街を散策しています。 ドイツでは住宅の配色が日本よりも多様であるうえ、建築様式も違うため、クルマが走行していたり停められている姿がより一層映えて目に映ります。 輸入車以外に、もちろん日本車に出会うこともあります。 日本出身の私からすると、見るだけで日本車だと認識できるので、クルマのメーカーを日本車かどうか判断するというのが最近の楽しみ方です。 個人的には、日本車にドイツで遭遇する率は高いという体感を持っています。 アメリカでの日本車の使用率までは届きませんが、やはり目にする機会は多いです。 ドイツではやはり、BMWやメルセデスベンツと言った国産車の使用率が高いですが、有名な輸入車や日本車を均等に見かけることができます。 国ごとの使用されているクルマメーカー率を現地で見ると、他国ごとのクルマに対する要望の違いが現れているので興味深くて楽しいです。 本当に驚いたことは、ベンツの高所作業車を間近で見ることができたことです。 生活を支える働くクルマとしてメルセデス・ベンツを見ると、少しカルチャーショックを受けました。 ドイツ在住の方は日常の光景として暮らしているのだと考えると、本当に身近なクルマメーカーとして親しまれているのだなという印象を持ちました。 ■個人的なドイツの交通事情への感想 ドイツでは、都市の大きさによってのクルマメーカーの使用率が違うという感想を持っています。 やはり大都市では高級車を目にする機会が多く、駐車場の位置によっても停められるクルマのメーカーの違いを見つけることができます。 私の場合、バスで旅行をしたことがあるのですが、窓から見える景色が違う気がしています。 クルマの外観が購入するきっかけとなる人には、大きな違いとして影響するのではないかと思います。 街を散策していて思うことは、クルマのメーカーのこだわりだけではなく、個人がどのような用途でどのような機能を必要としているか? さまざまな国のクルマが並んでいるドイツだからこそ、個人の思いがより深く現れているように受け取れるということです。 などなど、私はドイツでのクルマ事情をこのように感じながら暮らしています。 今後も素敵な街並みが存在するドイツから、現地の情報をお届けする予定です。 これからもよろしくお願いします。   [ライター・西尾菜々実 / 画像・西尾菜々実、AdobeStock]

多くの現役オールドタイマーが走るドイツの自動車事情とは?
ドイツ現地レポ 2023.07.06

多くの現役オールドタイマーが走るドイツの自動車事情とは?

ドイツで毎日のようにクルマを運転していると、旧車を見かける、またはすれ違うことが日本よりも多く感じます。 クルマへのこだわりが強い人が多いのではないか、そのような印象を受け、そもそもドイツでのクルマ事情がどのようなものなのか気になっていました。 この記事ではそんなドイツのクルマ事情について、いくつか見ていきたいと思います。 ■ドイツ国内における自動車保有率から見えてくることは? ドイツでは、全世帯の77%もの割合で、最低1台は自家用車を保有しているというデータがでています。 また、このデータがとられた同じ時期には、2台を保有する世帯は23.4%から27%に、3台以上のクルマを持つ世帯は3.7%から6.1%に増加しています。 人口1000人あたりの乗用車数で見ても、最新のデータがとられた2021年には、過去最高の記録となっているようです。 加えてドイツにはアウトバーンの存在もあり、年間の走行距離が平均14,259㎞におよび、クルマを伴った人々の移動距離も相当なものであることが分かります。 これらの数字からも、ドイツでの生活にはクルマが欠かせないということが見てとれます。  ▲フォードの旧車、Taunus(画像:筆者撮影)  ▲よく見かける旧車モデルの一つ、メルセデス・ベンツ190E ■マーケットシェアと購入実態 ドイツのクルマメーカーといえば、メルセデス・ベンツやBMW、フォルクスワーゲン、アウディなど名だたるメーカーが数多くありますが、ドイツ本国におけるシェアはどのくらいなのでしょうか。 2022年の新車登録ランキング、およびマーケットシェアを上位5位に絞り見てみると 1位:フォルクスワーゲン(マーケットシェア18.3%)2位:メルセデス・ベンツ(マーケットシェア10.6%)3位:アウディ(マーケットシェア9%)4位:BMW(マーケットシェア8.2%)5位:スコダ(マーケットシェア5.8%) となっています。 もともとクルマに興味があった筆者が初めてドイツを訪れた際、日本ではプレミアムブランドとして認知されている、これらのメーカーのクルマがあたりを駆け巡っている光景を目の当たりにし、衝撃を受けたことをよく覚えています。 いくら本国とはいえ、決して安くはないであろうそのようなクルマが、大量に走っている状況に驚きました。 ドイツでは日本よりもクルマに対してこだわりが強く、お金をかけているということは考えられるのでしょうか。 そこで、2022年に新車登録されたクルマをモデル別に調べてみました。 第1位はテスラ モデルYであり、前年比1064.4%と驚異的な数字となっていますが、スペックやクルマの魅力が大きいことはさることながら、テスラのほかに、フォルクスワーゲンのIDシリーズがシェアを伸ばしてきていることからも、環境問題にとりわけ関心の強いドイツならではという側面があるのかもしれません。 しかし、そのほかのモデルに目を向けると、上位20位にはフォルクスワーゲン  パサートやBMW 3シリーズ、メルセデス・ベンツ  Cクラスやアウディ A6など、比較的上級といえるモデルもランクインしているのは興味深いところです。 さらに、ドイツにおけるクルマの購入形態を調べてみると、中古での購入が27%であるのに対し、新車で購入する人の割合は47%にものぼります。 現地でのクルマ関連メディアをチェックしていると、上記モデルは本国においても価格帯は高く、同等のスペックを持つ日本メーカーのクルマは、コストパフォーマンスに優れていると紹介されているのをしばしば目にします。 それでもなおこれらのモデルが多く購入されていることから、少々強引な解釈かもしれませんが、ドイツではクルマに対するこだわりが強く、お金をかけることに抵抗がない人が多いと捉えることもできるのではないでしょうか。 この点については、比較対象を明確にしたうえで、機会があればさらに調査をしていきたいと考えています。  ▲メルセデス・ベンツCクラス ▲アウディA6 Avant ▲フォルクスワーゲン パサート ■アウトバーンで速度制限が設けられているエリアは全体の20.7% さて、ドイツでは平均の年間走行距離が14,259㎞におよぶことに言及しましたが、これにはアウトバーンの存在が大きく関わっていることは、間違いないでしょう。 日本の高速道路のような通行料はかからず、かつ速度制限がないことからも、移動距離を問わず重宝されていることは言うまでもありません。 そこで、このアウトバーンについてご紹介します。 日本の高速道路の総延長は9,231.7km、一方のアウトバーンの総延長は13,192㎞におよびます。 上述したように、アウトバーンと聞くと、速度制限がないということで有名だと思います。 日本でもそのイメージを持つ方は多くいらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、実際には工事現場、勾配が続くエリア、合流地点付近など、速度制限が設けられているエリアも意外と存在します。 制限速度は130km/h、120km/h、100km/h、80km/h、60km/hなど、状況によりさまざま。 各速度制限が設けられている距離と割合は、130km/h制限が672㎞で全体の4.7%、120km/h制限が2028㎞で全体の7.8%、100km/h制限が1454㎞で全体の5.6%、80km/h制限が585㎞で全体の2.3%、60km/h制限が85㎞で全体の0.3%となっています。 このように、速度制限が設けられているエリアの合計は、アウトバーン全体の20.7%となります。 このほかにも事故などが発生すれば、当然そのエリア付近では速度制限が設けられたり、路面が濡れている場合のみ速度制限が設けられているエリアなどもあります。 この数字を見て多いと感じるでしょうか、少ないと感じるでしょうか。 実際にアウトバーンを走行していると、意外と細かく速度制限が設定されており、標識を気にしながら走ることが多いです。 実際のアウトバーンの様子や走行状況などについては、またの機会に紹介させていただきます。 [画像・Shima,メルセデス・ベンツ,BMW,アウディ,フォルクスワーゲン / ライター・Shima]    

ベルリンの街が2000台以上のクラシックカーで埋まる日「Classic Days Berlin」
ドイツ現地レポ 2023.06.02

ベルリンの街が2000台以上のクラシックカーで埋まる日「Classic Days Berlin」

去る2023年5月6、7日の2日間に渡り、旧西ベルリンのクアフュルステンダム通りを会場に「Classic Days Berlin(クラシック・デイズ・ベルリン)」が開催されました。 同イベントは、毎年2000台以上の希少価値の高いクラシックカーが通り沿いに展示され、70万人を超える来場者が訪れる大人気イベントです。 高級ブランドショップが立ち並ぶショッピングスポットとしても有名なクアフュルステンダム通りの約2キロメートルを歩行者天国として開放し、クルマの展示だけでなく、飲食のできるフードエリアやトークショーが開催されるステージなども設置され、まるでフェスティバルのようです。 初日の土曜日は曇り空でしたが、日曜日は天候にも恵まれ、多数の人で賑わう大盛況イベントとなりました。 その様子を現地レポートとしてお届けします。 「Calssic Days Berlin」は「人々にインスピレーションを与え、都市と自動車の生きた歴史を伝える」という理念を掲げています。 開催地となったクアフュルステンダム通りは「選帝候の道」という意味を持ち、ベルリン最古の通りのひとつとして16世紀にベルリンの中心地にある王宮から郊外の狩りの館へ出向くために造られたといわれています。 そんな歴史的背景を持つ有名な通りを埋め尽くすクラシックカーたちは、より一層高級感を漂わせ、貴族のようなエレガントで堂々とした佇まいを見せていました。 ズラリと並んだ個性豊かなクラシックカーの多くは個人が所有しており、オーナー自ら運転しながら自慢の愛車とともに通りに登場するといった名物パフォーマンスが披露されました。 好みのクルマが通るたびに歓声が上がったり、多くの人がスマホやカメラを向けて我先にと撮影を開始します。 それだけ珍しく、希少価値の高いクルマが多く、筆者もずっと興奮が止まりませんでした。 メルセデス・ベンツ、アルファ ロメオ、アウディ、BMW、ベントレー、シボレー、シトロエン、DS、ジャガー、ジープ、ランドローバー、マセラティ、フェラーリ、フォード、シュコダ、ボルボ、VW、ポルシェといった、まさにクルマメーカーのドリームチームが集結し、メーカーごと数台ずつ並んで展示されていたのも特徴的です。 また、通りの両側には各メーカーや部品メーカーなどのテントブースやショールームが設置され、クラシックカーや最新モデルの展示販売が行われていました。 ベルリンの街中でも頻繁に見かけるクラシックカーですが、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンといったドイツメーカーのクルマが多く、白、黒、グレー、赤など定番のカラーが多数です。 しかし、「Classic Days Berlin」では街では見たことのないメーカー、年代、デザイン、カラーが多く、まるでクラシックカーのファッションショーを見ているようで、華やかな気分に浸ることもできました。 そんな魅力的なクラシックカーが2000台以上集結していたなかから、筆者が特に印象に残ったクルマを紹介していきたいと思います。 まず、最寄りの地下鉄の駅から通りにでるとすぐにワーゲンの通学バス「Wagen 1126」が出迎えてくれました。 ベルリンの公共交通機構のBVGが実際に使用していた1957年に生産された2階建てバスに試乗できるサービスを行っており、子どもたちに大人気でした。 ビビッドだけど深みもあるグリーンカラーが美しく、品も漂う「アルファ ロメオ 1300 ti」。1962年から1977年まで生産されていたモデルです。 多数展示されていたメルセデス・ベンツのなかではこちらの「メルセデス・ベンツ 190 SL」は圧倒的な存在感と迫力がありました。 ブラックカラーも渋くて、こんなオープンカーに乗ってみたい憧れのメルセデス・ベンツです。 販売元はテューリンゲン州シュライツに拠点を構える2014年に設立されたクラシックカーとバイクの専門店「エーデルワイス・カスタム」です。 コロンとしたかわいいフォルムながら、車内は高貴溢れるデザインで、これからの季節にもぴったりな淡いブルーが美しい「FMR TG 500」は人集りができるほどの人気を誇っていました。 ドイツの「Fahrzeug- und Maschinenbau Regensburg GmbH(*略称FMR)」が生み出した史上最速のキャビンスクーターとして活躍した「Tiger」は、現在ではオークションにかけられているとのことで、お目にかかれたのはラッキーでした。 展示や販売されていたクルマ以外にも中世ヨーロッパの貴族のファッションに扮した来場者やオーナーを発見して、歴史へのリスペクトを感じさせました。 ほかにも、メルセデス・ベンツやフォルクスワーゲンの年代物のトラックを改造したフードトラックも多数出店しており、同イベントの徹底した主旨にも感心しました。 「Classic Days Berlin」が開催されていたことは以前から知っていましたが、今年のようにきちんと参加したのは初めて。 わずか1日でこれほど多くのクラシックカーを見られるイベントは他になく、来年もまた絶対に参加したいと思えるほど充実した内容でした。 [ライター・撮影/Kana Miyazawa]  

ドイツでは自分の敷地で洗車しても罰金に!? 納得の理由とは
ドイツ現地レポ 2023.05.29

ドイツでは自分の敷地で洗車しても罰金に!? 納得の理由とは

著者がドイツで生活を始めて、約一年が経過した。 この国でクルマを所有している人にとって、一度は疑問に感じたことがあるのではないだろうか。 そう、ドイツでは自分の敷地内であっても、決められた場所以外での洗車は禁止されていることだ。 自宅での洗車は連邦政府による禁止事項ではなく、地方条例によって規制されているのだ。 仮に自分の敷地、私道、または公共の駐車場で洗車した場合は罰金で処罰を受けることもある。 ではなぜ自宅での洗車が禁止されているのか? 今回はドイツの洗車事情について解説していく。 ■ホースでクルマに水を掛けることさえNG まずクルマを洗うと、汚れやほこりだけでなく、油やガソリンも一緒に洗い流されるだろう。 これらはただの水と違い、蒸発して消えてなくならないため、環境汚染へと繋がることが懸念される。 このような汚染から環境を守るために、水保護条例が制定されている。 ドイツでは水資源法に従って、有害な物質を水域に流してはならないと規定されている。 従って、私有地であったとしても洗車をする場合、汚れた水が浸透して道路を汚染してはならないというわけだ。 ■日曜日は洗車場も使えない? ドイツでは日曜日になると、スーパーやカフェ、レストランをはじめ、ほとんどの店舗が閉まっている。 これは1900年頃に制定された出店法により、基本的に日曜祝日は休みとし、家族と過ごしたり、教会へいくべきとされているからだ。 例外としては基本的な物質を確保するために、ガソリンスタンドや薬局、また日曜営業の特別許可を申請した一部のお店のみが営業を許されている。 そのため、洗車場は一般的に休業となっており、ガソリンスタンドに併設された洗車場もガソリンの販売のみとなっているところが多いようだ。 しかしこれらは、全国的に統一された規制ではなく、連邦州によって異なるため、中には日曜日も営業している洗車場も存在する。 ただでさえ、自宅での洗車が禁止されている上に、日曜日はどこの洗車場も閉まっているとなると不便極まりないという状況だ。 ■洗車をしたい場合は全自動洗車機がお得 上記のような厳しい規制があるため、洗車をしたい場合は決められた洗車場へと行かなければならない。 ドイツの洗車場といえば主に2パターンあり 1.日本と同様に高圧洗浄機と洗剤噴射機が備え付けられた手洗い洗車専用スペース 2.クルマから一切降りずに足回りの洗浄から乾燥、拭き上げまでをすべて自動で行ってくれる全自動洗車機 この2つが存在する。 手洗い洗車の場合は1回1ユーロ(約150円/5月24日現在)と、リーズナブルな価格で高圧洗浄を行えるが、時間制限が設けてある。 従って、洗剤を吹きかけて→ブラッシングして→高圧洗浄して→足回りを洗浄して→また高圧洗浄をする……といった流れだ。 このようにひととおりの工程を行うと、結果的に5〜6ユーロ(約750円〜900円/5月24日現在)が必要になり、最低でも1時間ほどは時間を費やすため、時間とコスパがあまり良くない。 しかし、日本では見かけることがなかったドイツの全自動洗車機はかなり優秀だ。 まず洗車機の入り口へと入り、店員さんに希望のプランを伝えると高圧洗浄機で全体の汚れを落とし、足回りも重点的に洗浄してくれる。 その後、少し進むと次はワイパー下などの洗車機では届かない箇所を洗ってもらい、そのまま20mほどの全自動洗車機へと入る。 洗剤の噴射から始まり、最後は機械が拭き上げまで行ってくれるというシステムだ。 これで所要時間はわずか10分ほど、価格はベージックプランで10ユーロ(約1,500円/5月24日現在)からと、驚くほどにコスパが良い。 洗車機を抜けた時点でほとんど綺麗になっているが、最後の拭き残し等があれば横の室内清掃スペースで仕上げを行えばあっという間に洗車完了だ。 決められた場所でしか洗車ができない分、このような洗車場は平日の昼間でも列ができることがある。 日本では好きな時に好きな場所で出来たはずの洗車が、ドイツでは一苦労だ。 ■まとめ:ドイツ人は綺麗好きが多い? これまでドイツの洗車事情について解説してきたが、ドイツ人は綺麗好きが多いと著者は感じている。 街を走るクルマはどれも綺麗に保たれており、住宅街を歩けば綺麗に手入れが行き届いた庭ばかり。 スーパーや日用品店へ行くと洗車関連商品や清掃用品が豊富に取り揃えており、価格も非常に安い。 だからこそ、綺麗好きが多い国で洗車ができないというギャップに驚かれた。 しかし、必ずしもすべてが不便というわけではなく、自宅での洗車ができない分、全自動洗車機という日本では見かけることがなかった便利なシステムがこの国には存在した。 これには長年、クルマ業界に携わってきた著者も感動した。 日本でも導入されればきっと洗車好きを唸らせるはずだ。 [ライター・撮影/高岡ケン]

右ハンドル車は超希少!ドイツで日本の中古車は売れない3つの理由とは
ドイツ現地レポ 2023.05.01

右ハンドル車は超希少!ドイツで日本の中古車は売れない3つの理由とは

ドイツで生活をしていると、日本車の少なさに日々驚かされる。 世界中どこの国に行っても日本車が至るところで活躍していると思い込んでいた著者は、ドイツに来て現実を目の当たりにしたときにすぐに理解することができなかった。 なぜなら、この国では国産車いわゆるメルセデス・ベンツやフォルクスワーゲン、BMWなどが圧倒的な人気を誇っており、ドイツにおける日本車の年間新規登録台数はわずか7%に過ぎないという現実だ。 では、なぜドイツでは日本車が不人気なのか。 著者はとある3つの答えに辿り着いた。 今回はドイツの日本車事情について解説していく。 ■1.そもそも右ハンドル車がほとんど存在しない? まずは世界全体の右ハンドル車と左ハンドル車の割合を見てみよう。 現在では、右ハンドル:3割、左ハンドル:7割という割合になっており、右ハンドルの生産台数は全体の25%、左ハンドルは75%である。 アメリカや中国、ヨーロッパなど、ほとんどの国では左ハンドル・右側通行が標準となっている。 対して右ハンドルが標準となっている国で最大の地域、日本、インド、インドネシア、イギリス、南アフリカ、オーストラリアとなっている。 上記の割合も見ても分かる通り、世界全体で見たときに右ハンドル車の割合は少なく、ドイツをはじめヨーロッパのほとんどの地域では左ハンドルが標準となっている。 ではヨーロッパでは左ハンドルしか運転できないのか、というと、そういうわけでもない。 EU諸国では2014年、欧州司法裁判所によって右ハンドル車を自由に購入し登録することができるよう正式に許可されている。 しかし、ドイツ最大手の中古車サイトで見てみると、総台数約100万台のうち、右ハンドル車はわずか300台ほどしかない。 ちなみに日本の大手中古車サイトと比較してみると、日本では総台数約55万台のうち、1万台が左ハンドルとなっている。 その差は歴然である。 ■2.マニュアル車が選ばれているドイツ ドイツでは日本と違い、いまだになお多くのMT車が走っている。 それはトラックやバスに限らず一般の乗用車でも同じだ。 ドイツにおける中古車全体のMT車の割合は驚異の44%、ほぼ2台に1台はMT車と言っても過言ではない。 ドイツ人はクルマをスポーティに走らせたいと考える人が多く、AT車では物足りないため、新車・中古車問わずMT車が選ばれている。 しかし、日本ではどうだろうか。 ほとんどの乗用車がAT車となっており、MT車といえば軽トラやバンなどの商用車、または一部のスポーツカーなど限りなく少ないのではないだろうか。 仮に右ハンドルがドイツで受け入れられたとしても、そもそもマニュアルの設定がない日本車が選ばれるとは思えない。 ちなみに、ドイツで販売されている日本車には多くのモデルで新車販売時にMT車とAT車を選択できるようになっている。 個人の主観ではあるが、ドイツにある少し年式が古い日本車はほとんどがMT車のイメージだ。 ■3.右ハンドル車は販売店泣かせ 例えば、マニュアルトランスミッションの日本車が多くあったとしよう。 さらにコストパフォーマンスにも優れた日本車は間違いなくドイツでも人気のクルマとなるだろう。 しかし、仮に右ハンドルのクルマを日本からドイツへ輸入した場合、改造変更をしなくてはならない。 当然、日本とドイツでは車検の検査基準が異なるからだ。 恐らく、ドイツの車検は日本よりも厳しい。 基本的にはすべてオリジナルのパーツでなくなてはならず、タイヤも少しのヒビ割れでNG、ヘッドライトも調整もしくはドイツ基準のものに交換しなくてはならない。 そうこうしていたら、販売するまでに多くの出費が重なり、せっかく日本から安く仕入れたとして蓋を開けてみればドイツにある日本車よりも高くなってしまうなんてことも十分あり得る。 ■右ハンドル車をドイツで買うメリットがないという事実 つまり、日本から仕入れてドイツでクルマを販売するということは現実的ではないということだ。 それゆえ、ドイツにある日本車はほとんどがドイツ国内で新規登録されたもので、日本から輸入したものはほとんどない。 ドイツにおける日本車の販売台数は年々減少しており、当然新車が売れなければ中古車にも回ってこないため、負の連鎖となっている。 そもそも右ハンドル車をドイツで買うメリットがないと考える。 パーキングの出し入れやドライブスルーなどは左側となっているため、実用的にも右ハンドルだと不便だと感じるだろう。 さらに売却もしくは下取りの際に右ハンドルであればかなり安くなってしまうだろう。 上記の理由が、日本の中古車が選ばれない理由ではないだろうか。 [ライター・撮影/高岡ケン]

市場シェアは驚異の44%!ドイツでMT車が人気の理由とは
ドイツ現地レポ 2023.04.21

市場シェアは驚異の44%!ドイツでMT車が人気の理由とは

著者がドイツに移住して約10ヶ月が経過した。 この国ではトラック、タクシー、レンタカー、一般の乗用車でさえも日本とは比較にならないほどのマニュアル車が走っている。 著者はドイツで自動車業界に携わっており、日々新しい在庫車の仕入れを行っているが、働き始めた当初はそのマニュアル車の多さに驚きを隠せなかった。 ドイツ最大手の中古車取引サイトを見てみると、現在約130万台の中古車が掲載されており、そのなかでもマニュアル車の掲載台数は約57万台である。 ドイツ国内におけるマニュアル車の市場シェアは驚異の44%、おおよそ2台に1台がマニュアル車と言っても過言ではない。 ではなぜドイツではこれほどまでにマニュアル車が選ばれているのか? 今回は現地調査を行ってみた。 ■マニュアル車の歴史 ガソリン自動車がこの世に誕生したのは1886年。 ドイツ人のカール・ベンツとゴットリープ・ダイムラーによってガソリン自動車の歴史が始まった。 その後、1908年にはアメリカのフォード社によって流れ生産方式が構築され、初めて自動車の量産が行われた。 当時は一般的に2速のマニュアルトランスミッションが搭載されていた。 1930年にはドイツの高級車メーカー、マイバッハによって変速機技術は飛躍的な進歩を遂げ、伝説の名車「マイバッハDS8 ツェッペリン」には8速のマニュアルトランスミッションが搭載されるまでになった。 1970年代には3速および4速のマニュアル車が支流となり、現在では5速および6速のマニュアル車が一般的となっている。 ■オートマ車は女性の乗り物? 1940年代から1950年代にかけてゼネラルモーターズ(GM)を始め、アメリカの主要メーカーは急速にオートマチックトランスミッションの開発を促進した。 日本でも1960年代からオートマ車の普及が始まり、1963年にはトヨタ・クラウンに初の2速オートマチックトランスミッションが搭載された。 しかし、1990年代に入るまでオートマチックトランスミッションは動きが鈍く、高価であり、マニュアル車と比べると燃費が悪いと考えられていた。 そのため、当時のドイツでの新車登録台数の80%はマニュアル車が占めていた。 さらにドイツ人男性はスポーティに運転するのを好み、オートマ車は女性の乗り物だという偏見が根強く残っているそうだ。 ■マニュアル車はいずれなくなる? これまでにドイツでのマニュアル車における人気度を解説してきたが、今後もマニュアル車は選ばれ続けるのか。 現在、ドイツでは新車の3分の2(66.4%)がオートマ車となっている。 マニュアル車の新車販売台数は年々減少傾向にあり、その背景にはヨーロッパにおける電気自動車の急速な普及が関係している。 電気自動車(EV)およびプラグインハイブリッド車(PHEV)にはマニュアル車の設定がなく、電気自動車の普及が進めば進むほどマニュアル車の数は減少していくだろう。 加えて、ドイツの大手自動車メーカーはマニュアル車の設定を徐々に減らしているため、マニュアル車に乗りたくても乗れない現状となっている。 これについて、多くのドイツ人が不満を抱えていることはいうまでもないだろう。 [画像・PORSCHE/Adobestock、撮影・ライター/高岡ケン]

2023年度最新版!ドイツでもっとも売れている日本車とは!?
ドイツ現地レポ 2023.04.05

2023年度最新版!ドイツでもっとも売れている日本車とは!?

日本が世界に誇る自動車産業。 2022年度のグループ別世界販売台数では、トヨタ自動車が1048万3024台で3年連続の世界1位となった。 2位のフォルクスワーゲンは、中国のロックダウンの影響などもあり、前年比を大きく下回り826万2800台という結果になった。 トヨタ自動車は、新型コロナウイルスの煽りを受けながらも、2位のフォルクスワーゲンと222万台以上の大差でトップの座に君臨した。 また3位に韓国の現代自動車が684万8198台、続く4位にルノー・日産・三菱の3社連合が615万6777台となっている。 未だ衰えを知らない日本の自動車産業。 世界中で選ばれ続けている日本車が最大のライバル、ドイツではどれだけの人気があるのか? またどんな日本車が選ばれているのか? 現地在住の著者が徹底解説をしていく。 ■ドイツのグループ別乗用車登録台数 ドイツ連邦陸運局(KBA)が2023年1月3日に発表した2022年度の乗用車新車登録台数は、265万1357台である。 ●メーカー/年間登録台数/ドイツ国内シェアVW/480,967/18.1%Mercedes/243,999/9.2%Audi/213,410/8.0%BMW/209,722/7.9%Opel/144,588/5.5%Skoda/143,928/5.4%Ford/131,256/5.0%SEAT/111,646/4.2%Hyundai/105,074/4.0%Renault/79,861/3.0%TOYOTA/78,366/3.0%    おわかりいただけただろうか。 日本車メーカーがトップ10に1社もランクインしていないという事実だ。 ドイツで日本車メーカーのトップはトヨタ自動車が78,366台で国内シェア3.0%の11位という結果となった。 では日本車メーカーだけであればどうだろうか。 ■ドイツの日本車メーカー別乗用車登録台数 ●メーカー/年間登録台数/ドイツ国内シェアTOYOTA/78,366/3.0%MAZDA/35,008/1.3%MITSUBISHI/34,430/1.3%NISSAN/26,069/1.0%SUZUKI/15,583/0.6%HONDA/7,709/0.3%SUBARU/3,725/0.1%LEXUS/2,746/0.1% 日本車メーカーの年間登録台数の合計は203,636台、国内シェアの合計はわずか7.7%となっている。 つまりこの数字が表しているとおり、ドイツでの日本車はとても人気とはいえないだろう。 ■もっとも売れている日本車とは? 2023年1月〜2月にかけてもっとも売れた日本車は「トヨタ ヤリス」であった。 シリーズ別販売台数ではVW ゴルフが13,695台、トヨタ ヤリスは5,298台で11位にランクインしている。 輸入車別ではテスラ モデルY、シュコダ オクタヴィアに続いて堂々の3位にランクインしていることから、非常に順調な販売台数で推移していることがわかった。 ■まとめ:ドイツでの日本車市場は年々減少傾向 ドイツでの日本車市場は年々減少傾向にある。 これにはいくつかの理由が挙げられる。 ひとつ例を挙げるとすれば、欧州全体で進められているEV(電気自動車)へのシフト化だろう。 日本車メーカーは海外メーカーと比べるとEVへのシフト化が遅れており、EVのモデルも少ない。 しかし、ドイツをはじめとした欧州全体では環境に配慮したPHEV(プラグインハイブリット)またはEVが選ばれつつあり、新車販売台数でも上位を占めている。 今後は世界全体でますますEVへのシフト化が進んでいくだろう。 ドイツでの日本車市場は非常に厳しい状況に直面しているが、今後も日本車は選ばれ続けるのか。 はたまたドイツから撤退していくのか。 はたまた大きな変革をもたらし、日本車シェアを拡大していくのか。 今後の動きに目が離せない。 [ライター/高岡ケン]  

ドイツ人が選ぶ、一度は乗ってみたい日本のクラシックカーとは?
ドイツ現地レポ 2023.03.20

ドイツ人が選ぶ、一度は乗ってみたい日本のクラシックカーとは?

著者がドイツで生活を始めて8ヶ月。 この国に来て感じたことは、日本と比べても圧倒的にクラシックカーが多い。 街を歩けばメルセデス・ベンツやポルシェのクラシックカーを度々見かける。 それも1日に何十台も。 著者が生活をしているのはドイツの南にあるシュツットガルトという街だが、この街はメルセデス・ベンツとポルシェの本社があるので有名だ。 特にドイツではクラシックカーを大事にしようという考えが強く、年式の古いクルマでもある一定の条件を満たせば自動車税が安くなることもあるそうだ。 そんなドイツで日本車のクラシックカーははたして人気があるのか? ドイツ人はどんな日本車のクラシックカーに興味があるのか? 今回は日本のクラシックカーについて現地調査を行なってみた。 ■第5位: トヨタ スープラ 1993年に発表されたこのモデルは、歴史こそ浅いものの、世界中の日本車愛好家から絶大な人気を誇っている。 3リッター、直6ツインターボエンジンを搭載し、330馬力を発揮する。 当時ドイツで人気のあったポルシェ911ターボをターゲットにして開発された。 長旅でも疲れにくい快適なシートと、比較的低い運転席で走る楽しみを感じることができる。 ドイツでは1996年に約500台が登録され、その後販売停止となった。 左ハンドルのスープラは非常に在庫が少なく、ドイツの中古車市場ではあまり出回っておらず希少価値の高いモデルとなっている。 ■第4位: 日産 300ZX TWIN TURBO 日産 300ZX TWIN TURBO、モデルコードZ32がドイツに導入されたのは1990年。 3リッター、V6ツインターボエンジンを搭載しておりHONDA NSXよりも強力な283馬力を発揮する。 車両重量は1627kgとやや重めだが、0-100km/hは6.2秒、最高速度は250km/hと力強い走りを実現する。 米国市場での成功を狙って開発されたこのモデルは、取り外し可能なTバールーフを備えており、太陽の光と風を存分に感じることができるようになっている。 ■第3位: ホンダ NSX 1990年に、6年間の開発期間を経て誕生したホンダの頂点に君臨するモデル。 当時の新車価格は130,000マルク(約958万円〜)となっており、フェラーリのライバルとして世に送り出された。 シャーシやボディはアルミ製で当時のホンダの技術を最大限に使った日本初のスーパーカーである。 開発には当時のF1ドライバーであるアイルトン・セナが関わっており、当時は非常に注目を集めたクルマだ。 2005年までに約18,000台が販売されたが、開発段階で莫大なコストがかかってしまい利益があまり上がらなかったといわれる。 ■第2位: トヨタ 2000GT トヨタとヤマハが共同開発したスポーツカー。 1967年から1970年まで販売されており、総生産台数はわずか337台。 その生産台数の少なさと知名度の高さから現在ではプレミアが付いており、1億円を超える高値でオークションで取引されている。 まさに日本を代表する伝説のクラシックカーだ。 当時のトヨタはまだ世界では無名の自動車メーカーであったが、トヨタの先進技術をすべて搭載し、世界でも通用するスポーツカーとして開発された。 実際にこのクルマは多くの注目を集め、結果的にトヨタの名を世界中に知らしめるきっかけとなった。 ■第1位: 日産 スカイライン2000 GT-R(ハコスカ) 日本のスポーツカーといえば日産スカイライン GT-Rほど有名なクルマは他にないだろう。 箱型のボディが特徴的で、箱型のスカイラインからハコスカと呼ばれるようになった。 海外では日本を代表するスポーツカーであることからゴジラと名付けられた。 2リッター、直6エンジンを搭載しており、最高出力は160馬力となっている。 このモデルは海外に輸出されておらず、世界中のクルマコレクターの間では非常に高値で取引されている。 ■まとめ:自動車大国ドイツでも、日本車人気は非常に高い ドイツ人が一度は乗ってみたい日本のクラシックカー、特に1990年代のモデルは非常に人気が高く、今でも日本車愛好家のなかで注目の存在である。 週末になるとドイツ各地で日本車オフ会なるものが開催されているだけに、この国でも日本車人気は非常に高いといえるだろう。 著者も稀にドイツで日本のクラシックカーを見かけることがある。 日本から遠く離れたこの国で日本のクラシックカーを見かけると、日本人であることを誇りに思う。 ここドイツに限らず、これからも世界中で日本のスポーツカーが愛され続けることを切実に願っている。 [ライター/高岡ケン]

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