ライフスタイル

愛車がすべてという考えはいささか危険かもしれないという話
ライフスタイル 2024.05.23

愛車がすべてという考えはいささか危険かもしれないという話

これまで何百人という方に愛車にまつわるお話を伺ってきた。そのなかには「愛車を維持するために人生を掛けている」あるいは「愛車がなくなったら自分は廃人になってしまうかもしれない」と本気でいい切るオーナーも少なくない。 ■愛車がすべて。その気持ちは痛いほど分かる 憧れのクルマを手に入れてから今日まで、惜しみない愛情と時間、そして多額の費用を投じて所有してきたのだから、もうあとには引けないという思いもあるのかもしれない。 筆者自身、一生モノと固く心に誓って維持している愛車がある。仕事が忙しいときには車庫にある愛車を眺め、運転席に座るだけでも気持ちが落ち着く。ある意味、精神安定剤的な役割も担っているのかもしれない。乗れなくてもいい。そこにあるだけで満たされる。 そしてふと思うことがある「このクルマがなくなってしまったら自分はどうなってしまうんだろう」と。そんなこと考えたくもないし、あえて考えないようにしているフシもある。それはなぜか。結末がどうなるか。自分がいちばんよく分かっているからだ。 ■「代わりになるものが存在しない」という怖さ せっかくの機会なので、(ちょっと怖いけれど)自分自身の気持ちを掘り下げてみる。愛車を手放したことで、とてつもない喪失感に襲われ、仕事が手につかなくなるだろう。「仕事は最大の逃げ場」という人もいるが、幸か不幸か自分の場合はクルマに関することを生業にしている以上、逃げ場がない。 おそらく、気晴らしにWebカーセンサーやGoo-netあたりで代わりになるクルマを探してみるはずだ。ものすごく前向きに考えると(対象となったクルマには申し訳ないが)リハビリ用として「以前からなんとなく欲しいと思っていた」クルマを選び、あまり深く考えずに買うんだと思う。あくまでもリハビリ目的として。 このとき「元」となってしまった愛車と似たようなジャンルのクルマを選ぶと、無意識のうちに比較して落ち込みそうだ。そこで、あえてまったく別のモデルを選ぶべきかもしれない。こうしてリハビリをしつつ「時間が解決してくれる」のを静かに待つしかなさそうだ。 ■逃げ道が女性という思考は危険かもしれない 自分の人生のすべてを掛けて愛車に捧げる行為は尊いことだと個人的に思う。ただ、どれほど大切にしていても、いつかは自分の手元を離れるときが必ずやってくる。それが「いつか」であって、「いつなのか」は分からない。もしかしたら、Xデーは明日かもしれない。 少し前にNSXとNRを手放してまで1人の女性に捧げたすえ、最悪の結果となってしまった事件があった。コトの是非はともかく、容疑者が手塩に掛けたであろう2台の愛車を手放し、それでも想いを寄せた女性に拒絶されたときの絶望感を想像したクルマ好きの人も多いと思う。 クルマやバイクに興味がない、あるいはそれほどのめり込む対象がない人にとってはとうてい理解しがたい、というか理解不能だろう。しかし、大げさでも何でもなく「生きる糧」を失ってしまうくらいの喪失感があることも事実だ。 もっとも、容疑者が一方的に想いを寄せていたようなので、本人からすれば「可愛さ余って憎さが百倍」となったことが今回の結末を招いてしまったとしたら…何ともいたたまれない。 おそらくは盲目的にNSXとNRを大切にしていたであろうし、同じように被害者の女性にも想いを寄せていたのかもしれない。ただ、クルマやバイクはその想いを受け止めてくれるけれど、相手が人間(ましてや異性)ともなればそうはいかないことの方が多い。 ましてや、被害者の女性は水商売だし、どれほどの大金を貢いだとしても振り向いてもらえる確率は限りなくゼロに近いと考えてしまうのは、悲しいかな他人事であり、当の容疑者だって、そんなことはいわれるまでもなく頭では分かっていたはずだ。 ■それでも逃げ道はあった方がいい 正直、自分でもいいことだとは思っていないのだが、公私ともにクルマ漬けの日々だ。いざというときに潰しが効かない。好きなことを仕事にできていいねといわれることもあるし、自分でもそうだと思うこともある。 以前、仕事と割り切ってあまり興味のないジャンルを扱う企業に入社し、勤務中はもちろん、雑談のときにクルマのクの字も出てこなかったことがあった。そもそもクルマに興味がある人が周囲に誰も居なかった。ストレスが限界に達すると、勤め先のビルの地下駐車場に行って停まっているクルマを眺めて気持ちを落ち着かせていた。 とはいえ、いまの仕事も当然ながら楽しいことばかりではない。クライアントから無理難題をふっかけられることだって(よく)ある。ふと、目の前からクルマという存在を消してしまいたくなるのだが、現実にはそうはいかない。生活が掛かっているからだ。休んだ分、確実に収入が減る。 そんなとき、旅行やスポーツ観戦に行くとか、バンド活動に勤しむとか。クルマから離れてまったく別ジャンルの世界で楽しみを見つければいいのだが…。なぜかクルマ以上に夢中になれるものがいまのところ見つからない。これはこれで意外と辛い。 あるとき気づいたのが、無理にのめり込むものを見つけようとせず、近くの温泉に行ったり、ふらりと旅行をしてみるなど、「なんとなく逃避できる場所やジャンル」をそのときの気分で探せばいいのではないかと思うようになった。無理矢理逃げ場を見つけようとせずに、こちらも「時間が解決してくれる」くらいがいいのかもしれない。 自分自身への戒めを込めて、いざというときのために逃げ道を作っておいた方がいいのかもしれない。 [画像・Porsche,Alfaromeo,Jaguar,Honda,Mazda,Adobestock ライター・撮影/松村透]

つくづく「クルマはコミュニケーションツールだな」という話
ライフスタイル 2024.04.27

つくづく「クルマはコミュニケーションツールだな」という話

仕事柄、国産車および輸入車、そして新旧問わずさまざまなクルマのイベントの取材を行ってきました。 そこでふと気づいたことを備忘録的にまとめてみます。 ■いうまでもなく「イベントやオフ会ごとにカラーが違う」 「マツダ ロードスター」を例に挙げると、現行モデルを含めて4世代、さらに前期・後期モデル、限定車といった具合に細分化していくと際限がないほどに分けることができます。 ロードスターなんだからどれも同じでない?と思うなかれ。参加するクルマや人、テーマ、場所によって明確に違いがあります。もちろん、これはロードスターに限った話ではありません。ある程度までは似た傾向はあるものの、まったく同じということは公私ともにイベントに参加してみてみてなかったように感じます。 参加してみたいけれど、知り合いはいないし、自称"コミュ障"の人もいるはず。それであれば、ひとまず顔を出してみて、なにか違うと感じたらスッと帰ればいいのです。 そのうち気の合う人と知り合える可能性もあります。さらには自分で気になったイベントに参加するだけでなく、会場で知り合った人から誘ってもらえることだって実際にありますよ! ■主催者の「人となり」で決まるのかもしれない すでに常連メンバーが形成されていて、そこへ単独で乗り込んでいくのは相当な勇気がいります。歓迎してもらえるか、素っ気ない対応をされるのか。こればかりは人と人の相性もあるから、実際に現地に行ってみるまで誰にも分かりません。 じゃあ、どうすれば? とにかく足を運んでみる。これに尽きます。 そこで肌感覚にあうと感じたのであれば、少しずつ距離を詰めていけばいいだろうし、しっくりこないと思えば「フェードアウト」すればいいのです。ここで「ドロップアウト」すると遺恨を残してしまう可能性があるので、「フェードアウトしていく」ことがポイントです。 さらに、フェードアウトしていく際に気をつけなければならないことがひとつあります。腹いせにSNSなどで「あのイベント(またはクラブ)は最悪」といった毒吐きをすることは厳禁です。 不思議と、あっという間に関係者の目に留まることになる可能性が高いからです。今後、どこでどのような接点があるか分からない。自ら出入り禁止になるような行為は避けたいところです。 ■あえて深入りしないのも一興 イベントやオフ会に参加してみたら思った以上に楽しい!充実した休日を過ごせた。こうなったらしめたもの。足しげく通うことで、他のメンバーとの距離もグッと近くなっていきます。 やがて気の合う仲間と忘新年会を開いたり、泊まりがけでツーリングに行くほど親密になっているかもしれません。さらにはメンバーのお宅にお呼ばれしてBBQなんて機会もあるでしょう。こうなると、次なるステップとして「親しいなりの距離感のつかみかた」を考える時期です。 もともと「クルマ」という共通のキーワードで親しくなっていった仲間です。幼なじみや学生時代の友人たちのように「なんとなくウマが合う」から仲良くなったときとは意味合いが違います。さらには人格形成ができてから(つまり大人になってから)知り合った者同士。人生の黒歴史のひとつやふたつ誰もが経験してきているだけに、敢えて触れてほしくないデリケートな部分だってあるでしょう。 さらには一緒に居て楽しいけれど、深く付き合ってみると意外な一面を垣間見たり、酒ぐせが悪かったり(笑)、実は訳ありの人だったり…といったケースはいくらでもあります。お互いのプライベートなところは干渉せず(というかあえて触れずに)、クルマという共通の話題のところで踏みとどまるのも一興かもしれません。「親しき仲にも礼儀あり」です。 ■いかなるジャンルにも「上には上がいる」と思った方がラク いかなるジャンルにも「上には上がいる」ものですが、それはクルマの趣味においても同じ。自他ともに認めるほど詳しいと思っていたはずなのに、「なんでそんなことまで知ってるんだ!?」とツッコミたくなるようなとんでもない「ヘンタイ」がいるのも事実です。そこで変な負けん気を出してマウンティングしても疲弊するだけ。そんなときは、潔く「あの人には到底かなわない」と思うのが得策です。 例外があるにせよ、人が集まってくるところに顔を出す「ヘンタイ(ほめ言葉)」は、総じて面倒見の良い人が多いように感じます。ネットで調べても分からない、あるいは確証が持てないような情報やノウハウを惜しげもなく提供してくれたりします。しかも、見返りを求めません。「自分が苦労してきたから、同じ思いをしてほしくない(嫌なことがあっても手放さないでほしい)」と本気で考えてくれます。当然ながらこの種の「ヘンタイ(ほめ言葉)」は非常に人望があります。それでいて、年齢や乗っているクルマなどで差別せず、誰とでも分け隔てなく接してくれます。「あ、あの人がまさにそうだ!」。まわりを見回してみると、こんなヘンタイ(※繰り返しますがほめ言葉)、いませんか? ■まとめ:リアルな友だちとは違う人間関係が構築できるだけでもクルマ趣味に没頭する価値があるかもしれない 欲しいクルマを手に入れた瞬間はゴールではなく、スタート、プロローグです。「仕事じゃなく、趣味なんだから誰にも干渉されることなく自分だけで楽しみたい」という人もいるでしょう。そういった人のカーライフを否定したり、変えようとは考えていません。今回はあくまでも「自分の立ち位置が揺れ動いている人」向けの話し、です。 知らない世界に飛び込むのだから思うようにいかないことだってあるだろうし、理不尽な経験をする可能性もゼロではありません。しかし、そこで得られた人間関係が「大人になってから友だちができない」と悩んでいる人に風穴を通すきっかけになることは確かです。 「クルマはコミュニケーションツール」なんていいますが、憧れのクルマを手に入れたからこそ知り合える人、足を踏み入れることができる世界が必ずありまます。休日に洗車をして何となくドライブして「それはそれで楽しいんだけど、何かものたりなさ」を感じているとしたら、思い切ってイベントに参加したり、足車でこっそり見学に行ってみるのもいいかもしれませんよ! [ライター・撮影/松村透、画像・Adobe Stock]

若い世代のクルマ好きは、父親の背中を見て育ってきたんだなと感じた話
ライフスタイル 2024.01.31

若い世代のクルマ好きは、父親の背中を見て育ってきたんだなと感じた話

なぜか筆者の周囲には「若者のクルママニア」が多い。 そのなかには、もはや「ヘンタイ」の領域に達している方も少なくない。筆者がまったく知らないようなディープな情報を持っている方もいれば、カツカツのローンを組んでクルマエンゲル係数高めな生活を送ったり、ローンを組んでガレージ付きの家を建ててしまう猛者も。 「どうせ実家が太いんでしょ」とツッコミが入りそうなので先にお伝えしておくと、そんなことはなく(知る限りでは割と平均的)、大手企業に就職したことで有利であることは事実かもしれない。 ディープなカーライフを送る彼らから話しを聞いていると、ある共通点があることに気づいた。それは「クルマ好きの父親(しかもディープな)」の存在だ。 ■父親がクルマ好き(しかもディープ)だった やはり「血は争えない」のか、物心ついたときには父親と同じクルマ好きだという自覚があったそう。クルマ好きの父親のおかげ(せい?)で、家のいたるところに自動車関連の雑誌があり、物置には工具類やゴミ同然(?)のクルマの部品が山積みに…。そして休日はクルマいじりに没頭。 夫婦喧嘩のきっかけが「奥さんが勝手に本を捨てた」とか「休みの日はいつもクルマいじりばかり」とか「海外からワケの分からない大きな荷物が届いている」…などなど、クルマにまつわるものが多いのも特徴。それでも子どもの視点では「遊んでくれないときもあったけど、なんだかパパが楽しそうにしてた」という記憶が鮮明に残っているそう。 ■幼少期に洗車やクルマいじりの手伝いをしている 幼心に「パパが休みの日には何だか楽しそうなことしてる」と感じたのか、それとも水遊びがしたいだけだったのか!? 父親のクルマの洗車を手伝ったことを覚えている(楽しい思い出)そうだ。子どもが小さいころは水遊びの延長線でもあるし、おのずとクルマに水を掛ける担当になるのだとか。 確かに、洗車スポンジでゴシゴシとボディをこするな!なんていわれても、お子さんには分からないし……。お子さんがもう少し大きくなり、小学校3〜4年生頃になると洗車ができるようになったり、スタッドレスタイヤに交換する作業を手伝うようになったそうだ。そしてこの経験が後々クルマいじりの原体験となっていたりする。 ■父親が運転するクルマの助手席に乗り、その光景を鮮明に覚えている 鮮明に覚えている幼少期の記憶があるなか、不思議と「父親が運転するクルマの助手席に乗り、その光景を鮮明に覚えている」ケースが多いことも特徴のひとつ。そのとき乗っていた車種、走っていた場所、その日の天気、車内で流れていた音楽…等々。 既に3日前の夕飯が何だったか思い出せないけれど、幼少期の何気ない日常のひとコマが忘れられないのだとか。また、車内で聴いていた音楽を覚えていて、大人になってから運転中にヘビーローテーションするケースも多い(事実、影響を受けるらしい)。 ■父親の愛車遍歴で忘れられないクルマがある 車種やメーカーを問わず、父親が溺愛していたり、家族の一員だったり…。新しいクルマが納車された日のこと、長年乗り継いだ愛車が去って行ったときのこと。そのクルマが原体験となり、自分が運転免許を取得して愛車を選ぶときに大きな影響をおよぼすこともしばしば。 なかには父親が若いときに乗っていたと聞いたクルマや、結婚や出産などで泣く泣く手放したクルマを俺が代わりに手に入れよう。そして親父に乗ってもらおう、そんなことを本気で思っていて、ついに手に入れてしまうことも。 ■まとめ:たとえスーパーカーを手に入れたとしても、原体験の感動は超えられないのかもしれない 父親におねだりして「今日は特別だぞ」と運転席に座らせてもらったときの記憶。運転席に座ってハンドルを握った記憶。MT車のシフトノブをいじった記憶。シートに座ってはみたものの、アクセルやクラッチペダルが届かなくて、足を無理矢理伸ばして踏み込んだ記憶。いまでは当たり前のことでも、幼少期にはそのいずれも天にも昇る体験。幼少期の原体験はそれだけ重要なんだと思う。 幼少期の子どもにとって運転席はまさに「聖域」。大人になり、たとえ成功して誰もがうらやむスーパーカーを手に入れたとしても、原体験の感動は超えられないのかもしれない。 [画像/Adobe Stock、ライター・撮影/松村透]  

クルマのイベントは仕事ではなく、趣味として行くに限るという話
ライフスタイル 2024.01.29

クルマのイベントは仕事ではなく、趣味として行くに限るという話

仕事柄、クルマのイベントはプレス登録を行い、審査に通過するとプレスパスが発給される。 一般開催日よりも一足先に行われるプレスデーの日に会場へと足を踏み入れることができたり、つい最近まで某夢の国に存在していた"ファストパス"のような役目を果たしてくれるケースもある。 10代の頃、これが羨ましくて仕方なかった。何しろかつての東京モーターショーや、先日開催された東京オートサロンをはじめとするクルマのイベントを観に行くには「気合い」がいる。 ものすごい混雑のなか、どうにか気になるクルマを撮影し、列に並んでカタログを入手する。朝イチで会場入りして、そういえばお腹が空いたと思ったら夕方なんてこともあった。 時は流れ、何の因果か、いつの間にか仕事としてクルマのイベントに行くようになった。つまり「趣味ではなく、取材(仕事)として」だ。。 ■仕事としてクルマのイベントに赴くメリット・デメリットは? 筆者自身、若いときにうらやましいと感じていたことを実際に行うようになってみて気づいたことがある。それを下記にまとめてみた。 ●メリット・いち早く情報が得られる・いち早く実車が観られる・一般の人が立ち入れない場所の出入りが許される・プレスデーの出入りが許される・同業者の方との情報交換の場でもある ●デメリット・ゆっくり観ている時間と気持ちの余裕が(まったく)ない・会場内すべてを観る必要がある。それも何度も何度も・取材という任務という名のノルマを遂行しなければならない・プライベートでクルマを観て楽しむ時間がほぼない・多少体調が悪くても(コロナやインフルでない限り)意地でも現地に行く ■取材のあとは「原稿書き」というミッションが待ち受けている 仕事である以上、いわゆる「〜しなければならない」マストな用件が増える。そのなかには「原稿書き」という重要なミッションが含まれている。 メディアの編集部から依頼があり、「A社とB社とC社とD社の取材をお願いします。締め切りは3日後で」といった具合に取材するとなると、見る場所もピンポイントにならざるを得ない。 他には目もくれず、目指すブースに突撃する。カメラマンが同行する取材なら撮影はお任せ(指示出しは必要な場合も)だが、撮影と取材を1人でこなす「カメライター」として依頼された場合は両方をこなさなくてはならない。下手をするとこれだけで1日が終わってしまう。 ■一眼レフカメラ or スマートフォンでもなんとかなる!? それと、これはあまり知られていないかもしれないが、(こんなことをいうと一部の関係者から怒られそうだが)撮影に一眼レフカメラおよびミラーレス一眼レフカメラが必要かというと実はそうでもない。 もちろん、一眼レフカメラで撮影した方が微細に撮れる。このアドバンテージは絶対だと思う。しかし実際には、紙媒体のページ見開きに掲載するなら必須だが、最近のスマートフォンで撮影するだけでもそれなりに画になるし、ネット記事に使うのであれば解像度も問題ない。アプリやPhotoshopなどで補正できればなおさらだ。 では、なぜ一眼レフカメラで撮るのかというと、せっかくなら少しでもいい画で撮影して記事にしたいという取材者根性と、取材対象者への配慮もある。スマートフォンで撮影するというのもどうも失礼にあたるのではないかと考えてしまうのだ。これはオーナーインタビューのときも同じ。それといちど一眼レフカメラで撮影してしまうと元に戻れない。Canonでいうところの「Lレンズ(赤いリングがついているレンズ)」の再現性を知ってしまったらなおさら。画の力は重要だと思う。 ■結論としてクルマのイベントは「遊びとして行くに限る」 見出しにもあるとおり、クルマのイベントは「遊びとして行くに限る」というのが筆者の結論だ。 確かに、会場内は混んでいるし、駐車場の確保も一苦労だ。しかし、気の合う友人と一緒にあれこれクルマ談義しながら、気の赴くままに会場内を練り歩き、終わったあとの「反省会」も楽しい。公共交通機関で移動すれば、「反省会」の会場をファミレスから居酒屋に変更して飲み会として盛り上がることもできる。 一方で仕事となると、プレスルームで速報記事を書くことはもちろん、目前に迫る〆切にハラハラしながら画像の選別と原稿執筆に追われることになる。途中の飲み屋で軽く一杯…なんて時間はまずないし、その前に睡眠時間すらままならない。 いち早く会場内を観られることは確かに役得かもしれない。しかし、他愛のない話しをしながら、娯楽として行くに限るというのが両方の立場を経験した者としての結論だ。 こうして「趣味を仕事」にする醍醐味と苦悩の狭間で揺れ動きながら、締め切りに追われつつ原稿を書く日々を送ることになります。 [画像/Adobe Stock、ライター・撮影/松村透]

なぜ1/64ミニカーが流行ってる?誰もが納得の理由とは?
ライフスタイル 2024.01.15

なぜ1/64ミニカーが流行ってる?誰もが納得の理由とは?

現在ミニカー業界でもっとも勢いのあるカテゴリーが、1/64サイズのミニカー。 今や1/43ミニカーや1/18ミニカーを上回る勢いで、各社から新製品が続々登場している。 そこで今回は、1/64サイズのミニカーが主流となってきた歴史的な背景と、人気の理由について掘り下げてみたい。 ■拡大を続ける1/64ミニカー ミニカーといえば、ひと昔前はミニカーの標準スケールとなる1/43製品が主流だった。 そのあとは1/18スケールの製品が数多く発売されるようになり、大きなスケールのミニカーが数多く見られるようになった。 しかしここ数年は1/64サイズのミニカーが急速に勢力を拡大。 逆に1/43スケールのミニカーは新製品が減り、少し前まで元気のあった1/18スケール製品も現在は以前のような勢いは見られなくなっている。 ■1/64ミニカーが好調なワケとは? このようなミニカーのトレンドにはいくつか原因がある。 まず大きな理由として挙げられるのが価格面での優位性。 原材料や人件費の高騰、それに円安に伴い、ミニカー全体の価格上昇が止まらない状況になった。 そのため、1/43ミニカーは今や1万円前後のものが多く、気軽に買えるようなアイテムではなくなっている。 ましてや、1/18ミニカーになると1万円を超えてくるものがほとんどなので、欲しくても手が出せないという状況になってきた。 以前のようにひとつの車種でカラーバリエーションを揃えたり、F1マシンをドライバー違いで揃えるようなミニカーコレクションの楽しみが難しくなってきたのだ。 一方、1/64サイズのミニカーであれば千円以下で買えるアイテムもある。 もちろん単価が安ければ多くのアイテムを購入できるわけで、カラーバリエーションなどの仕様違いも追いかけられる。 1/64サイズのミニカーにはまだミニカーコレクションの醍醐味が残っているのだ。 もうひとつの大きな理由は、1/43や1/18スケールでは、製品化すべき車種がほぼ出尽くしてしまったこと。 人気車種のほとんどが製品化され、複数のメーカーが同じ車種を同スケールで製品化することも珍しいことではなくなった。 そのため、従来とは違うスケールで製品化する必要が出てきたのだ。 お気に入りの車種は、すでに1/43や1/18スケールのミニカーで持っている場合が多い。 しかし、新たに1/64サイズのミニカーが発売されれば、買ってしまうのがミニカーファンというもの。 そういった意味では、1/64サイズのミニカーはまだまだ開拓の余地があるといえる。 しかも近年の1/64サイズミニカーはクオリティの高い製品が多い。 1/43スケール並みの再現度を誇る製品はもはや当たり前。 なかにはボンネットやドアが開閉するフルディテール製品もあり、そのクオリティには度肝を抜かれる。 一切の妥協を廃した精緻な出来の製品も少なくないので、もはや1/64サイズのミニカーに「安かろう悪かろう」という言葉は通用しない。 もうひとつ重要なのは、サイズが手頃ということ。 1/64サイズのミニカーはだいたい6cmから8cm前後のものが多いので、パッケージに入った状態でもさほど保管場所に困らないというメリットがある。 逆にいえば1/18ミニカーは高価でパッケージも大きく、収納場所があっという間に埋まってしまうのがネックだった。 1/64サイズのミニカーは、手軽な価格でコレクションが楽しめ、なおかつ収納場所にも余裕があるのでありがたい。 ミニカーコレクターにとっては最後の楽園というべき存在だ。 ■実は昔からあった1/64サイズ そんな1/64サイズのミニカーは、実は昔からさまざまなブランドが存在していた。 日本のトミカやアメリカのホットウィール、フランスのマジョレットなどの手のひらサイズのミニカーがそれに当たる。 それらは1/64スケールという縮尺ではなく、パッケージサイズに合わせてスケールが決まっている。 そのため、必ずしも1/64スケールであるわけではなく「3インチミニカー」と呼ばれることもある。 ただ、その多くは1/64スケールに近い大きさで、実は子どもの頃から親しんでいた身近な存在であることが分かる。 ■日本の1/64サイズミニカー 1970年に誕生したトミカは、日本を代表する手のひらサイズのミニカー。 「黒箱」と呼ばれる初期の日本車から「青箱」と呼ばれるトミカ外国車シリーズを経て、現在は「赤箱」と呼ばれる製品が販売されている。 トミカで厳密に1/64スケールとなっているものは少なく、例えば1/62など微妙に縮尺が異なる場合がほとんど。 そのため厳密に1/64スケールにこだわるならセレクトから外れてしまうのが難点。 とはいえ、大人の鑑賞に堪える派生アイテムも多数展開されている。 2001年に発売された「トミカリミテッド」は、トミカのボディはそのままに、各部に彩色を施し、さらにゴム製のタイヤと新規製作によるホイールを装着したハイグレード製品。 現在はシリーズ自体がディスコンになってしまったが、その後継といえる「トミカプレミアム」が2015年に誕生した。 こちらはトミカシリーズとは別のオリジナル金型を使用していて、トミカでは発売されないようなネオクラシックのモデルなども発売。 ミニカーファンのみならず、クルマ好きの間で話題となるような車種も多数製品化されている。 「もしトミカが昭和30年代に誕生していたら」というコンセプトで2004年に誕生したのが、トミーテックが発売する「トミカリミテッドヴィンテージ」。 各製品はボディの大きさに関わらず1/64スケールで統一。 懐かしい国産車を中心にラインアップを広げている。 再生産をしないため、プレ値で取引されるアイテムも少なくない。 そして2006年に発売されたのが「トミカリミテッドヴィンテージNEO」。 こちらは1970年代以降に登場した国産車および輸入車を製品化したもの。 フェラーリやレーシングマシンなどはエンジンルームも再現されていて、世界的にもトップクラスの再現度を誇っている。 さらに2010年からは「トミカラマヴィンテージ」も発売。 トミカリミテッドヴィンテージのミニカーと併せて楽しめるジオラマ製品として話題となった。 トミーテックはさらに「トミカラマヴィンテージ」の新作として、高速道路を発表。 2024年2月の発売とされている。 複数の製品を組みわせることで都市部の高速道路を再現できるこの製品は、これまでミニカー関連商品の常識を覆す超大作で、その勢いは止まるところを知らない。 日本のメーカーとしてはもっとも多くの1/64ミニカーを輩出している京商。 サークルKサンクス限定で販売された1/64ミニカーは、高品質と低価格を両立したシリーズとして大好評となった。 かつては精緻な出来の「ビーズコレクション」なども展開。 現在もさまざまな企画で1/64ミニカーをリリースしている。 アオシマの「1/64 ニッサン パイクカーコレクション」は、ボディカラーが分からないブラインドトイとして発売されている製品。 880円という低価格なので、運試しに買ってみるのも面白い。 書店でも1/64ミニカーを買うことができる。 デアゴスティーニの「日本の名車コレクション」は、文字通り日本の名車を1/64ミニカーで再現したシリーズ。 1/64スケールでは表現が難しいフェンダーミラーも、別付けではなく取り付けた状態で再現するなど、精巧なつくりを特徴としている。 ■海外の1/64サイズミニカー 海外メーカーにも1/64サイズのミニカーがたくさんある。 特に最近は香港と中国のメーカーが積極的に参入し、さまざまなミニカーが発売されている。 すべてをご紹介するのは難しいので、その中からいくつかピックアップしてみた。 アメリカ製のミニカーは、ホットウィールで世界を席巻したことでも知られるように、昔から手のひらサイズの製品がたくさん作られている。 発祥はイギリスだが、ホットウィールと同じアメリカのマテル社が展開するマッチボックスは、昔から手のひらサイズのミニカーを展開している老舗ブランド。 ベイシック系からコレクター系までさまざまなアソートがあり、日本未入荷品も少なくない。 コレクション沼にハマってしまいがちなアイテムだ。 アメリカには、写真のジョニーライトニングをはじめとする1/64スケールのミニカーブランドが存在する。 アメリカ以外のメーカーでは製品化されないようなマニアックなアメリカ車もあるので、アメ車好きにはたまらない。 欧州のメーカーは、昔から3インチサイズのミニカーを発売してきた。 なかでもフランスのマジョレットは老舗とも言える存在。 日本では製菓会社のカバヤと共同で新作ミニカーを発売している。 スーパーで手軽に手に入るミニカーとしても貴重な存在だ。 ひと昔前は、100円ショップでもマイスト製などの1/64サイズのミニカーを販売していた。 出来はそれなりだが、トミカよりはるかに安い100円でミニカーが買えるという唯一無二の存在だった。 トイザらスのオリジナルミニカーブランドとして発売されているスピードシティは、現在もっとも手軽に入手できるミニカー。 1/60スケールで249円という低価格が最大の魅力。 売れ線のスポーツカーだけでなく、アウディ・スポーツ クワトロのようなマニアックな車種もラインアップされている。 シトロエン、プジョー、ルノーなどは、純正コレクションとして3インチミニカーを発売している。 1000円以下で買える気軽さとカラーバリエーションの豊富さは、純正品ならではの魅力だ。 ドイツのメーカーは、鉄道模型のHOゲージに相当する1/87スケールの製品が多く、1/64スケールはこれまでマイナーな存在だった。 1990年代につくられたミニチャンプス製の1/64ミニカー「マイクロチャンプス」は、当時人気だったDTMマシンなどをラインアップしていた。 しかし、販売が振るわずディスコンになってしまった。 ミニチャンプスでは「マイクロチャンプス」の失敗の後も「ミニチャンプス 64」ブランドで再び1/64ミニカーに参入した。 ミニチャンプスと同じようなシャープな出来栄えだったが、このシリーズも残念ながら失敗。 短命に終わってしまった。 中国や香港などのメーカーが生産する近年の1/64ミニカーは、非常にクオリティの高い製品が多い。 ターマックワークス製のミニカーは、レースカーやラリーカーのラインアップが豊富で、日本人好みの車種も数多く発売されている。 香港のTSM-Modelが展開する1/64ミニカーのブランドが「MINI GT」。 高品質とリーズナブルな価格を両立しているため人気が高い。 高品質なミニカーをリリースするメイクアップでは「Titan 64」のブランド名で高品質な1/64ミニカーを発売している。 1/43や1/18ミニカーと変わらない入念な仕上げが特徴で、究極的な完成度の高さを見せる。 その代わり価格は1万円を超えるので、良くも悪くも1/64ミニカーを超越した存在だ。 このように、1/64サイズのミニカーはさまざまなアイテムが揃っている。 厳密に1/64スケールにこだわるかどうかはその人次第だが、対象を絞り込んだとしてもバリエーション豊かなミニカーコレクションになることは間違いない。 手のひらサイズのミニカーはやはり奥が深い。 [ライター・画像 / 北沢 剛司]

令和の今こそキャブレターの魅力を伝えたい〜後編〜
ライフスタイル 2023.12.29

令和の今こそキャブレターの魅力を伝えたい〜後編〜

内燃機関である自動車のエンジンには、燃焼を行なうために燃料と空気をミックスして送り込む装置、または構造が不可欠です。 今ではほぼすべてが“インジェクション方式”となっていますが、それ以前では“キャブレター”という気化器がその役を担っていました。 その中でも、元々はレース用として開発された高性能な“スポーツキャブレター”という存在が、旧車の魅力を最大限味わいたいと思っているオーナーにとってはかなり大きいものなのです。 前編では、キャブレターにあまり触れたことが無いという人に向けて、具体的にどんな点に魅力を感じるのかをお伝えしました。 今回の後編では、もう少し具体的にキャブレターについて知ってもらいたいということで、キャブレターの起源から、主なキャブレターの種類、そして今現在入手できる旧車用の“スポーツキャブレター”についてを解説していこうと思います。 ■キャブレターの起源も知っておきたい ▲写真は1960年代のダットサンのキャブレター キャブレターは日本では「気化器」と記されますが、そもそもの「Carburetor」という言葉は炭素の「Carbon」に由来するようです。 直接の語源はフランス語で気化燃料(炭化水素を含む)のことを指す「Carburant」だと言われています。 気化燃料を供給する装置という意味合いで、機能がそのまま命名となっています。 キャブレターの起源を辿っていくと1860年にまで遡り、世界初の実用“火花点火機関(内燃機関)”である「ルノアール・エンジン」という説に行き当たります。 今の内燃機関のルーツといえる「ルノアール・エンジン」には、今のベルヌーイの定理で作動するものとは違った方式の「サーフェス・キャブレター」という気化器が使われていたようです。 作動原理を簡単に説明すると、まず燃料が半分ほど満たされた容器があります。 燃料と空気が細かい穴が空いた網状のプレートで仕切られていて、その穴から蒸発する気化燃料と空気を混合させてエンジンに送るというものです。 ただし、自然蒸発を待っているだけでは気温が低い時期には加速に使えるほどの気化が得られないので、排気ガスを導くパイプが横切らせてあり、その熱を使うような工夫が凝らされていたようです。 まさに“気化器”ですね。 ちなみにこの「サーフェス・キャブレター」の起源はもっと古いという説もあります。 今のインジェクションの技術から見れば極めて牧歌的なキャブですが、これが実用化されていた1860年代は、日本ではまだ江戸時代ですから、相当後れを取っていましたね。 その後、ベンツ社の創始者「カール・ベンツ」によって、今のキャブの原型である“ベンチュリー構造”を持つ“気化器※”が開発され、急速に機能の進化が進みました。 ※“気化器”と言うより“霧化器”と呼んだ方がしっくり来ます。 ■旧車に装着されるほとんどの“スポーツキャブレター”は“ホリゾンタル”&“2バレル”タイプな理由 旧車のエンジンに後付けで装着される高性能な“スポーツキャブレター”は、ほとんどが双眼鏡のような2つの筒が水平にレイアウトされた構造をしています。 これは、旧車に搭載されていたエンジンのほとんどが直立の4サイクルエンジンだったためです。 シリンダーが垂直にレイアウトされた直立エンジンでは、吸排気がシリンダーヘッドの側面で行なわれます。 吸気に使われるキャブレターはシリンダーヘッドの側面に装着されることがほとんどなので、必然的に水平タイプのキャブレターが多くなりました。 また、自動車のエンジンでは特殊な例を除いて4気筒か6気筒が基本のため、整備性や装着のシンプル化を図る目的で2つの筒をひとつのフロート室で繋げた“2バレル”タイプがスタンダードとなりました。 1つ1つ個別になっていると、部品点数が増え、同調作業や脱着の手間がバカにならないためです。 ちなみに「ウェーバー」や「ソレックス」などのメジャーな“2バレル”タイプのキャブレターは、バレル間のピッチ(距離)が90mmに、インテークマニホールド(以下インマニ)との固定ボルトの位置関係も統一されているので、ほとんどのメーカーのキャブは付け替えることができます※。 ※口径が違っても装着はできますが、インマニとの口径の違いで本来の性能が発揮出来ないこともあります。 ■“キャブ・セッティング”とは何をする作業? エンジンが元気にパワーを発揮するためには、適切な“燃調”が欠かせません。  “燃調”というのは、エンジンの燃焼が最も効率よくなる“混合比(空燃比)”になるように、空気と燃料の割合を調整することです。 “理想混合比”という言葉を聞いたことがある人もいるでしょう。 具体的な数値は、燃料が1に対して空気が14の割合になる混合比のことです。 この割合の混合気で燃焼すると、燃え残りが少ない完全な燃焼が行なえるという、理論上の最適値です。 「じゃあ最初からこの混合比になるように工場出荷時に調整すれば良いのでは?」と思った人もいるかもしれません。 しかしクルマのエンジンは、加速するときと巡航するときでは、求められる混合比が変わるんです。 ついでに言うと、始動時に最適な混合比もまたそれらとは異なります。 そして当然ながら、エンジンの吸気の勢いは回転数が低いと弱く、高いと強くなります。 スポーツキャブレターを装着する目的はパワーの向上なので、パワーを出すのに適した、できるだけ大きな口径のキャブが必要です。 しかし口径が大きくなると、低回転域で弱くなる吸気の勢いでは、うまく燃料が吸い出せないという問題が出てきます。 それを解消するために、低回転域と高回転域で燃料の吸い出し経路を分けて、それぞれの守備範囲で最適の仕事をさせるようにと工夫が凝らされているのが、今のスポーツキャブレターです。 そうして今のキャブでは、低回転域=スロー系、中・高回転域=メイン系と分かれた経路それぞれに、エンジンの特性に合わせて混合比の調整が必要になりますし、加速の際にはより濃い混合気が求められるので、専用の系統が用意されていて、それも調整が必要です。 そして、何よりも重要なその混合比調整の基本となる状態を整えるための、“フロート調整”や“同調”などのセッティングも欠かせません。 エンジンの燃焼具合を見ながら、最もアクセル操作に最適な反応が得られる状態に整えるのが「キャブレターのセッティング」というわけです。 ■旧車に使われる主なキャブを紹介 ノーマル車輌に装着されている純正キャブレターに換えて装着されるスポーツキャブレターにも、いろいろな種類があります。 その多くはヨーロッパのメーカーが開発したもので、“ホリゾンタル&ツインバレル”タイプを最初にリリースしたのは、イタリアの「ウェーバー」といわれています。 ここからは、日本で手に入る“ホリゾンタル&ツインバレル”タイプの主なキャブレターを紹介していきましょう。 ●SOLEX(ソレックス) 旧車に最も使用率が高いのがこの「ソレックス」です。 元々は1900年代初頭に設立されたフランスのラジエター製造メーカーで、のちに高級車やスポーツカー用としてヨーロッパのメーカーにキャブレターの供給を始めます。 日本では1960年に「ミクニ」がライセンス生産を始めて、「トヨタ」や「日産」、「いすゞ」などの量産高性能エンジン向けにキャブレターを供給していました。 1970年代には国産車のレースも盛んになり、ミクニによるキャブの販売やサポート体制の充実によって、日本のスポーツキャブレターの代名詞となるほどに復旧しました。 「ソレ・タコ・デュアル」という日産のL型チューニングの定番メニューとしても流行しました。 <SOLEXキャブの特徴> いちばんの特徴は「扱いやすい」という点です。 「ウェーバー」よりも後発ということで、開発のアドバンテージがあったことと、日本では「ミクニ」によってきめ細かくセッティングの調整機構が整えられたことがその要因かと思われます。 あとは外観がスマートでカッコイイという点もユーザーとしては大事なポイントでしょう。 希少な2型と呼ばれる国内の初期モデルは最もフロート室が小さく、この外観が好きだという人も少なくないでしょう。 また、「ミクニ」の2輪用キャブレターとジェット類が共用されているものがあるため、入手しやすいという点もメリットです。 ●WEBER(ウェーバー) 4輪用の“ツイン&ホリゾンタル”タイプのキャブレターを最初にリリースしたのがイタリアの「ウェーバー社」です。 1889年の創立時からキャブレターを製造し、各メーカーに供給。 イタリアメーカーのレース用キャブレターを開発した際は、そのマシン達の活躍もあって一躍有名になりました。 ヨーロッパのレース車輌やスポーツカーのキャブレターのシェアはかなり大きく、評判も定着していたため、後発の「ソレックス」は太刀打ちできなかったようです。 当初はイタリアで製造をしていましたが、経営の問題でスペインに製造拠点を移し、今でも生産が行なわれています。 <WEBERキャブの特徴> 長らくレースで使用され続け、様々なレース・コンストラクターのわがままな要望に応えてきた結果、相当に細かいレベルまでセッティングが追い込めるというのが特色です。 その分、豊富すぎるセッティングパーツから適したものを選ぶのに一定のスキルは要りますが、マニアな人にエンジンルームを見られた際に、「お、ウェーバーですかー」と一目置かれることもある存在です。 良い意味でおおざっぱで扱いやすさが特色の「ソレックス」とは、ある意味対極にあるといえる玄人好みの傾向のキャブレターですね。 ジェットの供給などは「ソレックス」には劣るとはいえ、いろんなインポーターが日本に仕入れているので、パーツの入手で困るということは無いでしょう。 一部の口径を除き、今でも新品が入手できるという点もメリットです。 ●OER(オーイーアール) 国産で唯一の4輪用スポーツキャブレター製造メーカーが「OER」です。 前身の「エスケーエンジニアリング」は1966年に創業し、自動車エンジンの燃焼促進装置などを製造していました。 その後、「ミクニ・ソレックス」をスポーツ車に装着できるキットの販売を始め、「ソレックス」の代理店としても活動します。 アフターマーケット用にボルトオン・ターボを発売してヒットしましたが、組み合わせる「ソレックス・キャブレター」はターボの過給に合わず、独自でキャブレターの開発を進めることになります。 1986年に「OER・キャブレター」を発売開始。 今に至ります。 <OERキャブの特徴> 最後発の“ツインバレル・ホリゾンタル”タイプのキャブレターということで、「ウェーバー」のボディ構造を基本にして、「ソレックス」の扱いやすさを加え、さらに独自の工夫を盛り込んで完成させたものなので、それぞれの良さをひとつにまとめた総合性能の高さが特徴です。 あとは“純・国産”という製造のため、信頼性が高いことも利点のひとつでしょう。 もちろんアフターサービスもレスポンス良く受けてくれます。 定番の安心感がないという点と、「ソレックス」や「ウェーバー」の良さを取り込んだとはいえ、セッティングのクセは共有できないので、セッティングの際に有用なアドバイスがもらえないなどの点で敬遠する人もいるようです。 しかし、ターボ車への装着ではいちばん安心度が高いですし、実際に過酷なレースに使用して不安は無いという声も聞きますので、何割かは食わず嫌いなのではないかという見方もあります。 ●DEROLT(デロルト) ヨーロッパでは最後発の“ツインバレル・ホリゾンタル”タイプのキャブレーターブランドです。 メーカーの「Dell'Orto」自体は1933年創業の老舗自動車部品メーカーですが、自動車用の“ツインバレル・ホリゾンタル”タイプの製造は1960年代からと、「ウェーバー」「ソレックス」よりもだいぶ後のリリースになります。 イタリア内の「フィアット」、「アルファロメオ」の純正キャブとして採用され、さらに「ロータス・エスプリ」にも採用されています。 <DEROLTキャブの特徴> 後発の強みを活かして「ウェーバー」「ソレックス」の良い部分を取り込んでより良い性能、扱いやすさを目指した結果が各部に見られます。 中心となる霧化&ミクスチャー部分は「ウェーバー」に似た構造と形状でまとめられ、全体の構成は「ソレックス」を思わせる部分があります。 日本国内にはあまり入ってきていないようで、国産旧車への後付けのキャブとして装着例もあまり無く、中古市場でも流通量が少ないレアな扱いとなっています。 使ってみれば後発ゆえの扱いやすさは実感できるようなのですが、セッティングパーツや消耗品の入手もカンタンではないので、一般ユーザーには少しハードルが高いようです。 また、上記の「ロータス・エスプリ」では純正でターボとの組み合わせとなっているので、ターボ用としても有用なキャブです。 ●SU(エスユー) 正式名称は「スキャナーズ・ユニオン」で、戦前からバイク用キャブの製造を行なっていました。 日本では日立がライセンス生産し、フェアレディZ(S30型)やスカイライン(GC10&GC110型)など、1970年代の日産車のスポーツモデルなどに採用されています。 <SUキャブの特徴> バレルの真ん中に可動式のピストンバルブがあり、その上下で通路を開け閉めすることで、空気の通過量と燃料の吸い出し調整を行なう方式のキャブです。 その構造から“可変ベンチュリー”タイプと呼ばれます。 そしてそのピストンバルブの上げ下げを、エンジンの吸う力=負圧を利用する“負圧作動式”となっています。 エンジンの吸う力に応じた混合気を自動で調整してくれるので、アクセルワークがイージーなのが特徴です。 国内に流通している個体数は少なく、ほとんどは純正装着品なのでセッティング変更が困難ですが、ハーレー向けの交換キットなどもありますので、それを活用する方法もあるでしょう。 ●FCR(エフシーアール)ほかバイク用キャブ 今現在、旧車に装着できるキャブとしては最も設計が新しく、高性能と言えるのが、バイク用として発売されているキャブレターです。 「ケーヒン」の「FCR」と「ミクニ」の「TMR」&「HSR」が旧車に装着できる主な機種です。 <バイク用キャブの特徴> 「FCR」も「TMR」も「HSR」も基本的な構造は共通で、“フラットバルブ”タイプの“強制開閉式”の“可変ベンチュリー”方式を採用しています。 特に「FCR」と「TMR」の2機種は“レース専用品”としてそれぞれのメーカーの最高の技術が投入されていて、常用9000回転オーバーの超ハイレスポンスエンジンの要求に応える性能を持っています。 スポーツキャブレターの性能は“霧化性能”と“レスポンス”が重要となります。 仕組みを簡単に説明すると、平べったいバルブを用いて急峻な負圧発生を起こすことで、その性能の両立を図っているんです。 現在も販売されているものなので、パーツの入手が容易な点も導入しやすいポイントです。 その一方で、装着するには気筒数だけ個体を用意する必要があり、かつそれらをひとつのアクセルペダルで同時操作できるようにするリンケージを用意しなくてはならないので、その面では導入のハードルが高いといえます。 加えて、口径が41パイまでしか無いため、大きな排気量のハイチューン・エンジンには向きません。 ■あとがき どうでしょう、自身の旧車に「“スポーツキャブレター”を装着してみようかな」と思ってもらえたなら、この記事を書いた甲斐があるというものです。 しかし現状は中古価格も高騰してしまっていて、新品も円安によって入手するコストが上がってしまっていますので、気軽に試してみるのが困難な状況となっています。 ただ、それでも“スポーツキャブレター”を導入すれば、それまでの小口径な純正キャブでの走りとはひと味もふた味も違う爽快な加速と、唯一無二の吸気サウンドを手に入れることができますので、けっして後悔はしないと思います。 注意して欲しいのは、中古の購入で粗悪品をつかまないようにすることと、装着とセッティングを信頼の置ける専門店に依頼することです。 費用に余裕があるなら、購入もお任せしてしまった方が安心でしょう。 自己流ですべてを行なって、結果的にしょっちゅうトラブルシューティングに追われるようなことになってしまうと、キャブに対してマイナスな印象を抱いてしまいかねません。 せっかくキャブレターというチューニングを導入するのですから、気持ちの良い部分だけを味わえるように、面倒な部分はプロに任せるというのがオススメです。 乗って、扱っているうちにキャブに慣れれば、自分自身で整備や調整ができるようになりますので、末長く付き合いができるという部分も推すポイントです。 興味が涌いた人は、思い切って導入してみていただきたいです。 [ライター・カメラ / 往 機人]

国産車のチョー当たり年。1989年モデルはなぜ人の心をつかんだのか!?
ライフスタイル 2023.12.18

国産車のチョー当たり年。1989年モデルはなぜ人の心をつかんだのか!?

奇跡といっていい年。 それが1989年。 国産車が次々と誕生し、まさに「国産車天国」「国産車の桃源郷」といっていい年だろう。 フルモデルチェンジや新規モデルはもちろん、MCや追加車種を含めると実に1年間に45モデルが誕生したとされる年。 数だけでなく、魅力あふれる質の高い国産車がどんどん誕生したのが特筆すべきことだ。 厳選して数台をピックアップしながら「なぜそれらは人気者になったのか?」を追っていき、最後に1989年が当たり年になった背景も交えていきたい。 ■まさに「スターの輝き」。まずはこのモデルを挙げないわけにはいかない、日産R32スカイラインGT-R 1989年国産車といえば……、まず日産R32スカイラインGT-Rを挙げないわけにはいかないだろう。 なにせ「1989年のクルマ=R32」と、0.7秒ほどですぐさま頭の中で結びつく人がほとんどだと思うから。 今見てもまとまりのある、2ドアスポーツモデルのカタチ。 絶妙に張り出したブリスターフェンダー。 格好いい~!と声を出さずにはいられないが、1989年当時の興奮度はこの比ではない。 先代GT-Rの販売終了から16年ぶりの復活誕生。 注目の浴び方はハンパなかった。 当時日産で行なわれていた「901運動」の集大成、新開発の2.6Lツインターボエンジン搭載。 日本車初の最高出力300psモデルを目指したが、馬力規制により280psに留められたモデル…… など、「見出し」になるネタがテンコ盛りというのもこのクルマの特色。 そして、いわゆる25年ルールが解禁され、アメリカがR32を輸入できるようになった昨今。 R32がもはや神格化している北米では、オークション落札価格が日本円で1000万円以上という事例も多いという。 日本で世界で、まさに「スターの輝き」のR32である。 ■R32が誕生した年に4代目フェアレディZ(Z32型)までも登場!もう泣くしかない! 日産のスポーツモデルの流れで、お次は日産4代目フェアレディZ(Z32型)に登場いただこう。 「フェアレディZといえばあのデザインね」と3代目までが頭の中にインプットされていたところ、このZ32型の姿を見て誰しも衝撃を受けたはずだ。 デザインからして「Zの新章スタート!」を感じるのに充分だった。 先代までのロングノーズ・ショートデッキではなく、ワイド&ロー。 先代より全幅がプラス65mmの1790mmとなり、当時としてはかなり平べったい日本車。 それだけに衝撃度も増し増しだった。 デザインのポイントは、これまた当時のクルマ好きにインパクトを与えたリアデザインとテールランプ。 現行RZ34型にこのテールランプデザインが盛り込まれているのは有名な話。 このデザインで、V6・3Lツインターボのアグレッシブな走りを見せるワケだから、街中で目を引かないわけがない。 それにしても、前項のR32スカイラインGT-RとZ32が同じ年に生まれるなんて……、やはり1989年は奇跡の年なのである。 ■ずっと憧れの的だったトヨタセリカも5代目が誕生。それが1989年という年だ 筆者のように「アラウンド還暦」世代にとって、子ども時分から格好いいクルマといえばセリカ。 憧れの存在でもあった。 そのトヨタ5代目セリカが生まれたのも1989年。 WRC用のホモロゲーションモデル、GT-FOUR RCも1991年に発表され、日本では限定1800台が販売されたという。 ということもあり、特別に5代目セリカのWRCカーの雄姿をお届けしているのが上の写真だ。 筆者の好きなハリウッド俳優、エディ・マーフィをCM起用し、「スゴスバ セリカ!」がキャッチフレーズ。 4代目より近未来感あるデザインになり、今見ると、現行クラウンクロスオーバーを思わせる顔をしていません……か?(こちらはリトラクタブル・ヘッドライトだが) 直4・2Lターボの最高出力は235psをたたき出し、当時の若者を興奮させるには充分。 歴代セリカでも強いインパクトを残した一台だ。 ■2人乗りコンパクト2ドアクーペというスペシャリティ感を味わえる、トヨタ2代目MR2 スポーティカーの流れでお次はトヨタMR2だ。 日本車史上、初の市販ミッドシップモデルとして誕生した初代のあとを受け、1989年に2代目MR2が誕生。 当時の日本車では珍しかった2人乗りコンパクト2ドアクーペ(今の日本車でも稀有な存在だが……)。 中身はセリカ/コロナベースがベースだが、初代の「角が取れた」感じの絶妙な曲線デザインが目を引いた。 のちに前項のセリカと同じ2L・直4にターボが追加され、シャープな走りを体感させてくれた。 乗るほどに2人乗りコンパクト2ドアクーペというスペシャリティ感が味わえるクルマ。 トヨタさん、よくぞこんなクルマを出してくれました~!と今でも感慨に浸るほどだ。 ■1989年誕生のスポーツモデル……。忘れちゃ困るぜ「人馬一体」のマツダロードスター R32GT-Rを皮切りに、1989年誕生のスポーツモデルの魅力を4台続けざまに取りあげてきた。 「スポーツモデルはもうないでしょ?」と言いたいところだが、あるんです。 そう、マツダ初代ロードスター(ユーノスロードスター)だ。 現行4代目まで脈々と続く「人馬一体のマツダロードスター」というクルマの礎を成した金字塔的クルマまでも、この年に生まれていたなんて……。 やはり、1989年という年は只者じゃない。 クルマ好きにとってまさに「盆と正月が一緒に来た」ような年である。  「MGのようなライトウェイトカーを作ってみよう」が開発のきっかけとされ、「人馬一体」というテーマがブレることなく現行モデルまで真髄を貫いているところは、脱帽するしかない。 爆発的な走りでもなく、アグレッシブな走りでもない。 車重を極限まで軽くした特有の「ひらひら感」あるFRの走りこそがロードスターの真骨頂、と筆者は熱く語りたい! その源流が初代モデルだ。 この誕生に感謝するしかないですね! ■海外メーカーにインパクトを与えた初代セルシオ。「高級車・新ステージ」への突入 今、「歴代の国産モデルのなかで海外メーカーにインパクトを与えたのはどれ?」と自動車ジャーナリストへ尋ねると、多くの方がこの名を挙げる。 それがトヨタ初代セルシオ。 1980年代前半、それまでの北米の高級車市場といえば、キャデラックやリンカーン、メルセデス・ベンツなどが占め、日本車メーカーが割って入れない状況が続いていた。 そこへトヨタが本腰を入れ、堅い門をこじ開けたのが高級車「レクサス」ブランドの戦略。 1989年、最初に投入されたのが初代LSで、それの日本仕様がトヨタ初代セルシオだ。 クルマ所有の大目標として「いつかはクラウン」が体の中に沁みついていた日本人にとっても、初代セルシオの登場は衝撃的だった。 (センチュリーは別格として)クラウンの上をいくセダンが誕生したわけだから。 が、当時はバブル景気、真っ盛り。 「超高級車、アリかも!」と市場が活気づき、初代セルシオは人気を博した。 時代背景も後押しし、「高級車の新ステージ」を築きあげたモデルといっていいだろう。 セダン然としたスタイル、全長4995mmという堂々たる風格。 新設計のV8・4Lエンジン搭載……。 クルマに新たな価値観が生まれたのも、1989年という年である。 ■ランクル80系と初代レガシィツーリングワゴン。のちのRVブームの礎となった2モデルも登場 現在、世界でも日本でもSUVの潮流は続くが、その源となるのがクロカン(クロスカントリー)だ。 そのクロカンやステーションワゴン、ミニバンといったカテゴリーで一時代を築いたのが、1990年代末から21世紀初頭にかけてのRV(レクレーショナル・ヴィークル)ブーム。 いまや「RV」という言葉自体が懐かしすぎますが……。 そのクロカンというカテゴリーを、歴代モデルたちが軸となり構築してきたのがトヨタ ランドクルーザーといっていい。 そして、ランクル80系が誕生したのが1989年だ。 2023年現在、復活販売として話題になっている70系の次の世代。 「無骨さの塊」という印象の70系以前より、洗練された雰囲気がある外観。 が、ランクルの真骨頂、ラダーフレームを基盤にオフロードでもタフな走りを見せる無骨さは健在。 オンロードでの快適性が向上したのも80系の特徴だ。 1989年にはもう一台、人気者のクロカンが登場している。 トヨタ2代目ハイラックスサーフで、ランクル80系を1.5まわりほど(!?)小さくしたモデルだ。 全長4470mmというサイズ感もあり、若い世代にも人気が高かったクロカン。 そして、のちのRVブームを支える大黒柱となるスバル レガシィツーリングワゴン、その初代モデルが誕生したのも1989年(写真下)。 いい意味で「レガシィよ、お前もか!」と有名な諺をアレンジして使いたくもなりますよ! スバル レオーネの後継モデルとして誕生。 それまでの各社のワゴンデザインが急にやぼったく見えるほど、洗練されたスポーティなデザインに目が留まった。 スタイルには確実に新鮮味があった。 5人がムリなく乗れ、荷物をたくさん積めるラゲッジという実用性の高いパッケージングは驚くばかり。 2Lターボが搭載され、スバル特有の4WD走破性。 「優等生」を地で行くクルマで、「ステーションワゴン」というカテゴリーに市民権を与えた立役者だ。 ■そして日産パオも誕生。1989年は「国産各メーカーの技術進化の絶頂期」でもあった! 1989年生まれの魅力あふれる国産車。 スポーツモデルやクロカンなどを取りあげてきたが、最後は毛色を変えて日産パオ。 今も記憶に残る、Be-1やフィガロとともに1990年前後に登場した日産パイクカーシリーズの一台だ。 どこかレトロ風味がありつつも、アウトドアテイストをも感じるスタイル。 いい意味で、初代マーチをベースにしたとは思えない出来。 3カ月間の予約受注で約5万1000台も売れ、時代のニーズに合致した「仕立て」だったことがよくわかる。 今スタイルを見ても、ユニークなボディサイドのキャラクターライン、上下二分割のリアガラス、開閉式の三角窓、外ヒンジのドア……など、かなり凝っている。 当時の企業としての日産の、余裕とセンスの高さが滲み出ているモデルといっていい。 ……ということで、「国産車の桃源郷」の年といえる1989年に登場した魅力あふれるクルマたちを取りあげてきたが、いやはや、よくぞこんなにも凄いクルマたちが同じ年に出揃ったな、とつくづく感じる。 国産各メーカーの技術進化と技術競争におけるひとつの絶頂期と、バブル景気の時期が重なり市場が一気に膨らんだ……ということが背景にあるといえるだろう。 後世に語り継がれる「奇跡の一年」。 1989年はなんとも濃い!です。 [ライター / 柴太郎 ・ 画像 / Dreamstime]      

今、後継を出すとヒット確実かも!? 登場が20年早すぎた惜しい日本車たちを讃えたい
ライフスタイル 2023.11.30

今、後継を出すとヒット確実かも!? 登場が20年早すぎた惜しい日本車たちを讃えたい

日本車の歴代モデルを振り返ると、「登場した時は斬新で大注目されたけど……売れゆきはイマイチ。そして、ほどなくして絶版という悲運に」というクルマは意外と多い。 しかし、なかには「コンセプトが時代の先を行きすぎ、登場が10年、いや20年早すぎただけ!君たちはいいクルマだよ」と熱く語りたいモデルもある。 そして、今、後継モデルを発売すればヒットするかもしれない、というモデルもある! 筆者の好みが多分に含まれるが(汗)、「魅力にあふれる」それらのモデルを数台取りあげ、讃えていこうじゃないか。 ■どこか不器用な憎めないヤツ。その存在にエールを贈りたい、ホンダ エレメント 時代の先を行きすぎ、登場が10年、あるいは20年早すぎた日本車といえばホンダ エレメント(2003年登場)だろう。 開発もデザインもホンダ北米法人だけに、クルマ全体にアメリカ~ンな雰囲気が漂っている。 なにせ開発コンセプトが「ビーチのライフセーバーが詰めるライフガード・ステーション」。 サーフボードが積める室内設計、左右は観音開きドアで風通しバツグンと、「ロサンゼルスのビーチのことしか考えてないでしょ!」とツッコミたくなるつくり。 観音開きドアはユニークだけど、それ以上に使うのがちょいと面倒くさかったことを今でも筆者は覚えている(笑)。 不幸にも、そのツッコミが当たり、エレメントの日本での販売は2年ほどとかなりの短命。 でもね、カクカクした四角いデザインのなかには「個性のホンダ」がいっぱい詰まっていると思う。 同じようなデザインのSUVだらけの現代、見た目はこのままでe:HEVモデルを売れば、注目される可能性高し。 筆者はそう感じる。 ■このままのデザインで今の時代に合う「クーペSUV」を出せば大注目間違いなし!いすゞ ビークロス SUVの流れで、次はいすゞ ビークロスの登場だ。 1997年に登場したクルマとは思えない斬新な外観デザイン。 このデザインだけに限定すれば「まさに登場が20年早すぎたクルマ」と太鼓判を押せる! 全体的に丸みのあるスタイルで、無塗装PPで作られたボディの下部と絶妙な流れがあるオーバーフェンダー。 フロントマスクには洗練さが漂い、スペアタイヤが内蔵されたリアドア……と、どこをとっても斬新で格好いいと、誰もが認める素晴らしさ! しかも2ドアという部分にスペシャリティ感があり、今、世界的人気の「クーペSUV」を26年も前にいすゞは発売していたのだから、まさに感嘆! ……が。乗り込めば「車内の雰囲気はまんま、ミュー・ウィザードだね!」と腰砕けするところも(笑)、ビークロスの憎めないところ。 ミュー・ウィザードのプラットフォームを採用していたので、車内の雰囲気だけでなく走破性も本格クロカン。 見た目はスタイリッシュ、それでいてタフな走り。 そのギャップ萌えもこのクルマならでは! と感じる。 海外では乗用車も販売中のいすゞ自動車。 思い切ってこのビークロスそのままのデザインで、今の時代に合う「クーペSUV」を出せば、世界中の話題をさらうことができるだろう。 きっと。 ■どれがヘッドライト?と「惑わせ上手」な顔が懐かしいぞ、日産 ジューク 斬新なデザインのSUVとして挙げないわけにはいかないのが、日産 ジューク(2010年登場)。 現行トヨタ プリウスをはじめ、今「目つきが妙なモデル」が大人気だが、それを先駆けていたのがジュークといえよう。 なにせ、どれがヘッドライト?上部にあるシャープなものはウィンカーですか?……という感じで、目つきが妙なうえに「惑わせ上手」な顔。 この要素だけでも時代の先を行っていたといっていい。 そして全長4135mmという手頃サイズは、今大ヒット中のトヨタヤリスクロスの全長4180mmと同等。 ラウンドした塊感あるスタイルは、ヤリスクロスとは別方向の個性を発揮しているので、今、後継モデルを販売していたならヒットしていたはず。 惜しい。 ……え?欧州では2代目を販売中ですって!(写真を見ながら) こ、これは格好いい。 このままのカタチで、日産自慢のe-POWER搭載モデルを日本で売れば、「小さめ超個性派SUV」として人気者になるはず。 ぜひ、日本でも! ■確かに脇役ではあったが、光るものがあった日産 ミストラルの3ドアショートボディ  日産のSUVといえば、ミストラルも登場が10年早すぎたモデルだろう。 26文字前、「SUV」と書いたが、ミストラルが登場した1994年当時は、まだSUVという名称のカテゴリーではなく「クロカン」と言われていた。 製造国であるスペインの風を感じる丸みを帯びたオシャレなスタイルは「クロカンにしては優しすぎる!」というイメージが盛られ、販売面はパッとせず。 2.7L、直4ディーゼルターボ搭載という硬派な一面があるにもかかわらず……。 ゆえに、SUVカテゴリーが急成長した10年後の2004年頃にこのままのスタイリングで登場すれば、ミストラルの命運も変わっていただろうと思う。 加えて、オシャレさが増す3ドアのショートボディもいい。 筆者、大好きでした。 もしかして今、この3ドアショートボディのミストラル後継モデルを発売すれば、飽和状態のSUV界に風穴を開けるかもしれない。 ■日本車史上、初の市販ミッドシップ。今こそ大いに拍手を贈りたいトヨタ MR2 希望を含めた結論から先に述べましょう。 「BEVも視野に入れ、全方位で開発を進めている今のトヨタさん。あの格好いい超コンパクトスポーツのMR2の後継をBEVモデルで発売してほしい!」と。   今見ても……初代(1984年登場)も2代目(1989年登場)も格好いいスタイリングのMR2。 その初代は日本車史上、初の市販ミッドシップモデルだ。 ショーで出品したコンセプトカー、SV-3をほぼそのままのカタチで発売させたトヨタの心意気に「いいネ!」と賞賛を送るクルマ好きも多かったはず。 低コスト化を図るため、エンジン(1.5L、直4)や足回りなどは既存のカローラのものを流用と、中身的にはちょいと「うむむ…」という部分もあったが、それでも他社にはない2人乗りコンパクト2ドアクーペの存在感。 そのスペシャリティ感は注目の的だった。 その後のビッグマイナーチェンジでスーパーチャージャーモデルが追加され、Tバールーフが備わるモデルまで登場。 話題に事欠かないヤンチャ坊主(でも格好いい)という印象だった。 ■趣味的BEVモデルとして、MR2後継をぜひ発売してほしい、トヨタさん!! 1989年には2代目MR2が誕生。 2人乗りコンパクト2ドアクーペというクルマの立ち位置は変わらなかったが、セリカ/コロナベースとなったので初代よりサイズアップ。 曲線を取り入れたデザインは目を引くものがあり、初代と2代目、どっちがいい?と、もし聞かれたら「どっちも好き!」と即答するほど筆者の好みだ。 大ぶりなスポーツモデルでないわりには、車重1270kgという重さなどネガな部分も指摘されたが、セリカと同じ2L、直4にターボを追加したマッチョなパワートレーンはなかなかのもの! トヨタ MR2。 2世代にわたり「孤高のコンパクト2ドアクーペ」を貫いたが、時代のニーズが薄まったこともあり、残念ながら1999年を最後に販売終了となった。 MR2の項目の冒頭にも述べたが、BEVへも舵を切りつつあるトヨタ。 趣味的なBEVモデルなら、MR2後継モデルの登場も大いにありそうだ。 ぜひとも! ■登場が20年早かったというよりも、32年後の今も視線を集めるはずの日産 フィガロ 最後は日産 フィガロ(1991年)に登場いただこう。 ご存じ、初代マーチをベースにした、Be-1、パオに続くパイクカーシリーズの一台。 最近はテレビのバラエティ番組で、バナナマン・日村勇紀がフィガロに乗っていることもあり、「あのクルマ、何?」と注目もされている。 このフィガロ、今まで紹介したクルマたちと取りあげる意図が異なり……爆発的に売れたモデルなのである! 当初は8000台の限定生産だったが、希望者殺到で2万台に増大。 イギリスをはじめ、世界でも人気が高かったこともトピックだ。 1991~1992年のわずか2年間しか販売されなかったが、インパクトも人気も絶大だったクルマ。 それもそのはず、レトロな雰囲気に仕立てあげられた小型オープンカーで、インパネデザインも白ベースのレトロ調。 加えて白の本革シートの仕立ても好演出。 さらには直4、1Lターボ搭載で走りは必要充分! 登場が20年早かった……というよりも、「32年後」の今、e-POWER搭載で後継モデルを発売すれば、日産のラインナップに華やいだ彩を与えるはず。 最後にひと言。 デザインが完成されているフィガロなので、あまりいじらないで販売してほしい。 日産さんへの願いは、これ! [ライター / 柴太郎 ・ 画像 / Dreamstime]

令和の今こそキャブレターの魅力を伝えたい〜前編
ライフスタイル 2023.11.27

令和の今こそキャブレターの魅力を伝えたい〜前編

週末の行楽地に出かけているとき、遠くから普段聞き慣れない種類の荒々しいエンジン音が響いてきて、思わず「おっ?」と気を惹かれてしまう、というシーンに遭遇したことはありませんか? そのまま運が良ければ、反対車線をすれ違う複数の旧車のツーリングに出くわすこともあるでしょう。 その際に聞こえてくる迫力を秘めたエンジン音のうち、「カアアアァァン・・・」というカン高く空に抜ける爽快な音の部分の多くは、キャブレターから発せられる吸気音なんです。 この例のように、大口径キャブレターの吸気音に魅せられて乗りたくなったという旧車ファンは少なくないでしょう。 ここではそんなキャブレターの魅力について、改めてしっかりお伝えしていきたいと思います。 まずは前編ということで、キャブレターの基本の部分を解説していきましょう。 ■旧車乗りが「キャブ、キャブ」っていうけど何がいいの?  まずキャブレターの魅力について触れておきましょう。 魅力のひとつは上で話したように“吸気音”が心地良い、という点です。 私も旧車に乗るまでは、チューニングエンジンの音を味わうのは“排気音”だと思っていました。 しかし、初めて旧車のエンジン音をしっかり聴けるチャンスが訪れたとき、排気音よりも吸気音が気になるということに気付きました。 旧車の排気音は、触媒が無かったりサイレンサーの構造もシンプルだったりして、今どきのクルマの排気音よりストレートに響いてきます。 それはそれで好きなのですが、エンジンルームをのぞき込んだ状態や室内でアクセルを煽ったときに、耳に届いて感性をくすぐってくるのは吸気音の方でした。 音の印象を頑張って擬音で表してみましょう。 排気音は「ブオンブオン」や「ガオンガオン」という低めで腹に響く系の音質だと感じます。 一方で吸気音の方は、「カオーン」や「シュゴーッ」という、空に抜けていくような感じのする高めの音だと感じます。 これが、回転が高くなるほど音量が増し音質も高くなるので、アクセルを踏む自分の気持ちも昂ぶってくるんです。 ちなみにこの抜けるように響く感じは、キャブレターの口径が大きいほど気持ち良いと感じます。 声量のあるプロの歌手が、目いっぱい歌い上げているのを聴いている感じに近いでしょうか。 あとは加速感がガラッと変わります。 だいたいの車種で普段の使い勝手の方を優先して設計しているので、使用する頻度の高い低回転から中回転の領域でレスポンスとトルクの効率が最適になるように、かなり絞った口径のキャブレターを装着しています。 したがってピークパワーに関してはだいぶ抑えられている状態なのです。 パワーを出すにはカムなど他の要素も関わってくるので一概にはいえませんが、単純にキャブレターの口径を大きくすると、それまで抑えられていた部分が解放され、エンジンが求める空気(混合気)がより多く吸えるようになります。 その結果、パワーが上がります。 上がる割合はエンジンの特性や仕様、状態などで異なりますが、適切な口径を選んで、セッティングが合ってさえいれば、パワーが下がることはないでしょう。 パワーとともにレスポンスもアップします。 特に空ぶかしの時の反応がまったく違うので、シフトダウンの時にアクセルを煽るのが楽しくなるでしょう。 そして、これは機械いじり中級者以上の人になりますが、自分でメンテや調整がおこなえるという点も、趣味のクルマの装置としては魅力アップのポイントではないでしょうか。 ボンネットを開けてもカバーが邪魔でエンジンの存在が隠されているような今のクルマは論外ですが、80年代のじゅうぶん旧車と呼べる年式のクルマでも、インジェクションや排ガス浄化デバイスなどがひしめいていて、ちょこっとメンテしようかなという気も削がれてしまうでしょう。 その点、キャブレターがむき出しになっているエンジンなら、余計な手間をかけなくても直接キャブレターにアクセスできるので、ストレスがありません。 まあ、用も無いのにしょっちゅうキャブを触っているというのもちょっと考えものですが、それだけ気軽に作業できるというのはメリットだと感じます。 ■基本の基本、キャブレターってなんだ? そもそも「キャブレター」という単語を知っているという人はどれくらいいるでしょうか?  まあ旧車に興味がある人がチェックしている「旧車王ヒストリア」の読者さんなら、ほとんどの人は耳にしたことはありますよね。 ではキャブレターが何をする装置なのかを知っている人はどうでしょうか。 まあこれも半分以上は大丈夫かと思います。 そうです、キャブレターはエンジンが燃焼を行なうのに必要な、ガソリンと空気をミックスした“混合気”を送り込むための装置です。 エンジンが調子よく回るかどうかの大部分は、このキャブレターの設定にかかっているのです。 キャブレターはその内部に、空気の通り道の一部を絞って流速を上げて負圧を作り出す「ベンチュリー」という機構が備わっています。 このベンチュリーで作り出した負圧の部分に燃料の管をつなげることで、自然と燃料が吸い出されていきます。 キャブいじりの解説で良く出てくる「ジェットの番手を上げる(大きいものに交換する)」というのは、燃料の管の入り口を絞ったり開けたりして流量を調節するための行為のことなんです。 ■キャブレターのセットアップやセッティングは難しい? キャブレターの装着とセットアップ、そしてセッティングをイチからおこなうという場合、まったくの初心者の場合はいろいろと覚えなくてはならない要素があるので、そういう意味ではけっしてカンタンではありません。 とはいえ、いまどきはキャブレターの扱い方を解説している本がいくつもありますし、動画配信などでも初心者向けに解説をしているものがありますので、そういう情報をしっかり勉強してから挑めば、エンジンを動かせるところまでは思ったほど時間はかからないと思います。 いちばんの近道は詳しい人を探してアドバイスしてもらうということですが、まあそう都合良く身近にはいないでしょう。 SNSで旧車の集まりに参加して、相談してみるところから始めるといいと思います。 キャブレターの魅力を楽しむためには、まずはキャブレター本体を入手しないことには始まりません。 そこで決めなくてはならないのがキャブレターの口径です。 エンジンの仕様や特性、オーナーの求める方向によって変わる部分はありますが、大きなガイドラインは排気量で見当が付けられます。 例えばよく使われている公式で見てみましょう。 D=0.82 √(CxNx0.001) D=キャブ口径(mm)C=1気筒あたりの排気量(cc)N=最高出力回転数(rpm) 実際にソレックスの40パイが装着されているトヨタの「2T-G型」を当てはめてみましょう。 0.82√(400×6400×0.01)=41.5 となり、だいたい合っていますね。 では旧車エンジンの代表格「L20型」を当てはめてみると、0.82√(333×5200×0.01)=34.1 となります。 実際に34パイのキャブレターとなると、ソレックスの36パイがあるにはありますが、かなり入手は難しいと思います。 私の経験では、L20型エンジンにソレックスの40パイを3機装着してみたことがありますが、ノーマルキャブレターに比べてゼロ発進の時、特に坂道発進ではすこし慎重になるものの、街乗りで不足を感じることはありませんでした。 むしろアクセルのレスポンスが良くなり、中回転から上のパワー感が増したので、差し引きでいうと大きくプラスになったと感じました。 ですので感じ方には個人差はありますが、目安はあくまで目安として考えたほうがいいでしょう。 慎重に選ぶなら小さめを、せっかく変えるなら変化が大きい方が良いと考えるのであれば、大きめを選ぶと良いと思います。 キャブレター選びで、ひとつ注意をして欲しい点をお伝えしておきます。 キャブレターは一部を除いてもう新品での販売はしていませんので、ほとんどの人はネットオークションや中古を扱っているネットショップなどから中古で購入することになると思います。 その際、さり気なく混じっている不良品をつかまないよう慎重に選ぶようにしてください。 といっても「良いか悪いか、写真とコメントだけでは判別できないよ!」というのが実際だと思います。 ただここでいえることは限られてしまいますが、可能な限り現物を見て購入するようにすれば、少しでも失敗は遠ざけられると思います。 少なくとも写真で見てキレイだったからと安易な判断は控えましょう。 ■あとがき どうでしょう、キャブレターの魅力をしっかり伝えられたでしょうか? ひと昔前に比べると、キャブレターの価格も上がってきていて、手軽に購入しづらくなってきてはいますが、私自身は旧車のカスタムパーツの中で一二を争うくらいに交換した時の変化が大きいものだと思っています。 せっかく旧車ライフを楽しむならば、ぜひ一度はこの効果を体感していただきたいです。 次回はもう少しマニアックな部分に踏み込んで、キャブレターの楽しさの奥深さを話してみたいと思います。 [ライター・画像 / 往 機人]

スマートフォンでクルマを撮影するときに考えると(たぶん)役立ついくつかの事柄
ライフスタイル 2023.11.15

スマートフォンでクルマを撮影するときに考えると(たぶん)役立ついくつかの事柄

■実はワタクシ・・・・ 実はワタクシ、過去に映画カメラマンだったときがあります。 映画といっても「産業映画」や「教育映画」が多く、あとはスタジオでのCF撮影やアニメーション撮影などもこなしておりましたが、まあそれもフィルムを使っていた時代のお話。 とはいえ、今でも企業向けのムービー制作や、観光映像などの演出や撮影に関わったりしています。 フィルムからデジタルに時代が変わっても、レンズを使って撮影する「カメラ」の撮影の基本は、実はあまり変わらなかったりするものです。 ■写真を考えてみる というわけで、ほとんどの皆さんが持っているであろうスマートフォン
。 スマートフォンは、たいてい「写真」の撮影ができますね。 お出かけしたときだけでなく、普段から自分のクルマの写真を撮ったりしていると思うのですが
、そういうふうに撮っている「写真」って、自分で見てどうですか?

 雑誌やウェブに載っている、プロの人が撮った写真と「違う」のはなんとなく「解るような気がする・・・」という感じだとは思いますが、どうせ撮るならカッコよく綺麗に撮りたいですよね。 普段何気なく撮っているスナップ写真でも、たまには「いいね!」って時があるけれど、やはりいい感じで写してみたいもの。 それって実は、プロ用の機材を使ってるからとかの違いだけでなく、露出などの「光」の使い方、場所や時間にあった「設定」の選び方などが大きな理由でもあるのです。 ■構図は大事 で、実はそれだけではなく、コレからお話しするような 「写真のレイアウト」、すなわち「構図」も 大きな「違い」の理由のひとつだと思います。 写真を撮るとき、なんとなく「構図」って考えてるとは思いますが、じっくり「考えて撮る」と少しだけいつもよりイイ写真、ちょっとイイ感じの写真が撮れるのではないかと思うのです。 というわけで、今回は写真撮影時にちょっと役立つ 「構図」について考えてみようかと思います。 さて、ここでいう「構図」にも、実はある程度の「作法」があります。 なので、ここではよく言われる「作法(スタイル)」をいくつかご紹介。 コレから自分で写真を撮るときに
、ちょっとだけ意識してもらえればいいかなと思うのです。 ■構図とかレイアウトとか

 この写真の構図の考え方は、
ほぼそのまま「映画」や「アニメーション」でも同じように作られており
、ソレは「画面のレイアウト」という呼び方で
、専門のスタッフがレイアウトを手がけるのが一般的です。 スタッフロールにも「レイアウト」とかの役職が出てくるときがあります
。 なので、コレからは映画やアニメーションを観るときも、ちょっと気をかけて観ていると写真を撮る際にも使えるような色々な発見があると思います。 なお、今回は画面解像度1920ピクセル×1080ピクセルという、パソコンで使われる一般的な画面サイズ(FHD)でお話を進めていきます。 スマートフォンは機種によってサイズの違いがさまざまですが、構図そのものの考え方に大きな違いはありません。 と、前置きが長くなってしまいましたが、ではスタート。 ■1.日の丸構図 って、いきなりクルマじゃねえじゃん! とか言わないでね。 ネコは全てを赦します。 というわけで、この「日の丸構図」と呼ばれる構図は、メインの被写体をど真ん中に持ってくるシンプルでわかりやすい構図。 
ありきたりすぎて「つまらない」写真の代表といわれることもありますが、記念写真などでもよく見かける安定したとてもいい構図だと思います。 ■2.対角線構図 いわゆる遠近法で見せる構図
。 奥行きであったり、動きなどを表すときに使う構図で
、スマートフォンなどの場合は広角側で撮るといい感じになると思います
。 大きなものを撮る時などに使うと、結構効果的かもしれませんね。 って、クルマ出てこねえ・・・・ ■3.シンメトリー構図 基本「左右」あるいは「上下」が線対称となる構図で、ベーシックな構図として写真だけでなく絵画などでも多用されているのはご存知の通り。 古典的な構図としては定番という感じです。 クルマはどうした! ■4.三分割構図 写真構図の基本ともいわれている、画面を縦横に三分割した交点に被写体を置く方法。 線の交点あたりに、何か目立つものを配置してバランスをとる。 コレも絵画の考え方から使われる構図です。 ここではヘッドライトや人物の顔がだいたい交点に、背景の壁を水平線に見立てている感じです。 ■5.動いてるヤツは前を空けろ 動いている被写体(クルマだ!)を撮るとき、進行方向を空けておくと「動いてる感」が増してちょっとカッコよくみえる(ハズ)です。 試してみるといいですよ。 ここでも水平線を向こう側の歩道のラインに合わせていますが、水平線が「水平」になっていると安定感が増します。 ■6.光と影 これは「構図」の話ではないのですが、光と影をうまく使うと、普段見慣れたなんでもない風景もドラマティックに見せることができるかもしれませんね。 ボディに映る風景なんかも、うねうね曲面に沿ってこんなカタチになるんだ!という発見があったりします。 と、いう感じでさらりとご紹介いたしましたが、いかがでしょう? なんだよ、こんなの知ってるぜ!という方も多いかと思います。 構図の話などは写真撮影のノウハウとかの記事で見かけたりもしますよね。 ということは、この「構図」の選び方、使い方というのはそのくらいポピュラーな考え方なんだと思うのです。 普段スマートフォンで写真撮る際も、ちょっとだけ「構図」を考えて撮ってみると、なんとなくウデが上がったような気分になるかもしれません。 頭の中に描いたイメージ通りに撮るってのはなかなか難しいものですが、構図を考えたりすることでそのイメージに少しでも近づけることができますよ。 [ライター・画像 / まつばらあつし]

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