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同い年の愛車のすゝめ
ライフスタイル 2023.04.28

同い年の愛車のすゝめ

私が所有するアウディ・初代TTは、2002(平成14)年製。オーナーであるライター・林も2002年生まれ。 すなわち、私と初代TTの関係性は“同い年”であるといえます。 今回のテーマは、「同い年の愛車のすゝめ」。ちょっとだけ愛車語りをしながら、私と初代TTの関係性についてご紹介したいと思います。 セルフ・オーナーインタビューみたいな感じで少し照れ臭さもありますが、お付き合いのほど、よろしくお願いいたします。 ■私と初代TTの年式的な結びつき 私が所有する初代TTは、FF(前輪駆動方式)に5MTを組み合わせた「1.8T」というグレードです。 発売当初の初代TTは、四輪駆動の「1.8Tクワトロ(6MT・225馬力)」のみのグレード展開。 「1.8T(5MT・180馬力)」は2001年1月に追加された、所謂廉価版のモデルでした。 MTを組み合わせた「1.8T」の日本における発売期間は比較的短く、2002年11月には、6速トルコンATモデルの登場に伴いカタログから姿を消しました。 私の初代TT 1.8Tも、先述の2年弱の発売期間の間に生産されました。 記録によれば、初年度登録は2002年7月。シートベルトの生産は2002年4月だったので、4月か5月あたりに生産されたと推測されます。 初夏にかけて、日本に上陸したのでしょう。 シートベルトの付け根にはベルトの生産年月が書いてあります。 クルマが生産された年月を簡単に推測できる手段のひとつです。 初代TTのシートベルトには「MADE IN HUNGARY」との記載も。 そうそう、アウディTTってドイツではなくハンガリーで作られているんですよね。 ハンガリー北西部にあるジュール(Győr)という工場で生産されています。 初代TTを手に入れてからしばらくは、てっきりドイツのインゴルシュタットで生産されたと思い込んでいました。 ハンガリー製と知って衝撃を受けた記憶があります。  …話を戻しましょう。 私の初代TTは2002年の春に生産されたわけですが、オーナーである私は2002年3月に生まれました。 所謂「2001年生まれの代の早生まれ」なので、初代TTとの関係性は、正確には「学年違いの同い年」ということになるでしょう。 私が愛車を手に入れた際の決め手は、年式とボディカラー(ステッペングラス・パールエフェクトというきれいな緑色)の2点でした。 私にとって「愛車が同い年であること」は、愛車との関係性を築くうえで最も大切な要素のひとつであるといっても過言ではありません。 ■ネオ・ネオクラシックとの豊かな暮らし 私の愛車、2002年式初代TTは、昨年度に晴れて(?)20年落ちになりました。 現在は「旧車」のオーナーとして旧車王ヒストリアの記事を執筆しているわけですが、当のオーナーはあまり初代TTのことを「古いクルマ」と認識していない気がします。 旧車王では「新車から10年以上経過したクルマ」を旧車と定義しているようなので、私(と私の周囲の友人たち)の感覚が異常なだけなのかもしれませんが…。 傍から見たら十分古いのでしょう。 初代TTは21世紀のクルマ。 まだまだ元気に走るし、消耗品の交換などの事前整備さえ怠らなければ、道端で三角表示板を広げてレッカーを待つ機会はそう多くないはずです。 ちなみに私の場合、自身が金欠大学生であるが故に、冷却系の消耗品が限界を迎えてしまい、ロードサービスのお世話になったことがあります(2年弱の所有期間の中でたった2回です)。 少し話が脱線してしまいました。 私は、初代TTは“ネオ・ネオクラシック”なクルマであると認識しています。 1990年代後半から2000年代前半にかけて、曲線を効果的に用いた、従来とはまったく異なるデザインを纏ったクルマが急増しました。 国産車ではトヨタ・WiLL Viやホンダ・初代インサイト、輸入車では初代TTやルノー・アヴァンタイムなどをはじめとした、エキセントリックなデザインのクルマたち。 大きくラウンドした面構成は、従来の角ばった(所謂“ネオクラシック”なクルマの)自動車デザインとは大きく異なるものだったといえるでしょう。 21世紀の到来を目前にして数多く誕生した未来感に溢れたクルマは、20年余りが経った現在においても、未だにアヴァンギャルドだと感じます。 この1980年代~1990年代のクルマ(現在のネオクラシックカー)の「定石」からの脱出を図った2000年前後のクルマ、これらを“ネオ・ネオクラシックカー”と私は捉えています。  前置きが長くなりましたが、私と“ネオ・ネオクラシック”との暮らしはとても豊かで、刺激に満ちたものです。 私にとって初代TTの“ネオ・ネオクラシック”なデザインやテクノロジーは決して「懐かしい」と感じるようなものではなく、すべてが新しい発見の連続なのです。 それもそのはず、私にとって初代TTとは、まさに産声を上げた瞬間に発売されていたクルマです。 当然、私の幼少期の記憶の中に、当時のアウディ・ディーラーに並ぶ初代TTの姿はありません。 物心がついた幼少期には、今でいう“ネオ・ネオクラシック”なクルマは数年落ちで、新規性に乏しいクルマだと捉えられていたことでしょう。 20歳になって、自身が生まれた時のことをさまざまな資料を通じて辿ってみると、幼少期に当然のように接していた自動車デザイン・自動車テクノロジーが、実は非常に新規性と先進性に富んだ、挑戦的なものであったことに気が付きました。 インターネットで当時のブログ記事を漁ってみたり、古書店で当時のカーグラフィックやTipoを探してしてみたり、オークションアプリで当時の新車カタログを落札して情報収集をしてみたりするうちに、自身の「クルマ好きの原点ともいえる幼少期の記憶」の解像度がどんどん上がってくるのです。 このような知的好奇心が満たされるような「オタ活(=オタク的活動)」に出会ったことは、私の今後のモビリティライフに大きな影響を与えたといえるでしょう。 自身と歳が近いクルマに惹かれ、いざ初代TTを所有してみて2年弱が経過した今でさえも、さまざまな「気付き」の連続です。 1/1のプラモデルを前にして、自身の最古の記憶と、自身が知り得ない古の情報を辿りながら、愛車の隅々に投影された設計思想を紐解くオーナー体験、なんとも贅沢で刺激的なものだなァと思っています。 さまざまな地にドライブに赴き、幾度も洗車を重ね、基礎的な日常整備を繰り返す日々の営みのなかで、愛車のことをより深く知り、愛車と自身が生まれた時代背景をも理解するモビリティライフ。 成人してから再会した幼馴染と接するような、懐かしくてストーリー性のある暮らしは、同い年のクルマと接する醍醐味でしょう。私の“ネオ・ネオクラシック”、最高の相棒です。 ■自身の成長と愛車のエイジングを共に楽しむ生活の在り方 私は21歳の大学生。世間的に見たら(特に自動車メディアの世界においては)、まだまだ「若い」と捉えられて当たり前ともいえる年齢です。 けれども私と同様に、製造されてから21年“しか”経過していない私の初代TTは、すでに「旧車」として扱われ、「古いクルマ乗ってるね!」といわれることも少なくありません。 なんだか不思議ですが、20歳の猫が「長寿」といわれるのと同じような感覚だと思っています。 ちなみに、20歳の猫は人間年齢で96歳らしいです。 クルマが使われる期間の平均年数はたったの13年(!)とのことなので、私の初代TTはご長寿さんということなのでしょう。 いつも酷使してゴメンネ、高齢なのに。 私のはじめての愛車であり、最高の相棒でもある、同い年の初代TT。 これからずっと、私が墓に入るまで所有していたいと願ってやまないのですが、クルマと人間では平均寿命があまりにも違います。 イレギュラーが発生しない限り、私よりも先に初代TTがお釈迦になるということは、誰から見ても明らかでしょう。 けれども、クルマはあくまでも人間が造り出した工業製品です。 すなわち、生殺与奪の権は人間にあるのです。 クルマの寿命は人間がコントロールすることができる、ということですね。 現に、幾度にも及ぶ移植手術を受け、今もなお公道を走り続けるヒストリックカーはこの世に何台も存在しています。 しかしながら、オーナーの財布の中身が尽きた場合や、移植するドナーが見つからない場合、愛車を健康な状態で保つのは非常に困難になるでしょう。 放置車両となって「寝たきり」になってしまうことは、私としては何としても避けたい。 そのためには、現在付いている部品を温存するのが最大の近道だと考えています。 オイル管理をしっかりとして、早め早めに整備工場に足を運び、愛車の弱点を知り、今後の治療(整備)計画をしっかりと立てることが、今の私にできる最大の延命術だと考えています。 そして、財布の中身を温存しておくこともとっても大事。 些細なリフレッシュに気を取られて、突然の大規模故障に対応できなくなってしまったら元も子もありません。 そのためには、意外にも「細かいことは気にしないスキル」が重要だと私は信じています。 私の初代TTも、細かいところを見たら随所に“オンボロ”が垣間見えます。 ドット欠けが著しいデンターディスプレイに、動きが怪しい燃料メーター。 外気温計もおかしな温度を指しています。もちろん、これらはすべて正常に作動するに越したことはありません。 けれども、今の私にとっては、初代TTに末永く乗るために、程々に貯蓄をしながら必要な箇所をリフレッシュしていくことが求められているのです。 私も、20歳を超えてから脂っこい食べ物が苦手になってきました。 今までよりも肺活量も落ちていて、息を切らして電車に駆け込むことが増えました。 人間もクルマも、歳をとったら少しずつ劣化していくものなのですね。 愛車にも完璧を求めることなく、程々に適当に、都合の悪いところは見て見ぬふりをしながら、一緒に老いていきたいなァなんて思っています。 同い年の愛車とともに過ごす毎日、なかなか良いモノですよ。オススメです。 [画像/Adobe Stock、TOYOTA、HONDA、RENAULT・撮影/ライター 林 哲也]

改めて思う「2ストロークエンジン」っていいよね
ライフスタイル 2023.04.26

改めて思う「2ストロークエンジン」っていいよね

前回「2ドアセダンっていいよね」とか言ってたワタクシ、今回も「2」という数字にかかわるおはなし……。 ■現代の旧車たちが「まだ新車」だった頃 旧車王をお読みの皆さんなら、モチロン2ストロークエンジンについてご存知ですよね。 旧車たちが「まだ新車」だった頃のおはなし。 それは昭和時代……。 原付やスクーター、それに500ccくらいまでのバイクの多くは2ストロークエンジンを積んでいたし、多くの軽自動車も2ストロークエンジンの車が結構走ってましたよね。 詳しい仕組みは省くとして、シンプルな機構と軽快に回ってレスポンスの良いエンジンとして、多くのクルマやバイクに積まれていた2ストロークエンジン。 平成令和と年を重ねてゆくうちに、いつの間にかほとんど見なくなってしまいました。 ■2ストマシンのノスタルジー オールドファンの方々であれば、アクセル回して(踏んで)瞬時に答える「パランパラン・・」という独特の音と、マフラーから吐き出される薄青っぽいケム・・・いや、排気煙。 3000回転以下でクラッチーミートすると「ボボボボボ・・」とか言ってストールしそうになるけど、回転数を取り戻すとアッという間にフケ上がるエンジン特性。 こまめにエンジンオイル足してあげないとエンジン壊しちゃうし、燃費も正直あまり良くない。 けれど、2ストロークマシンが通り過ぎた後の、なんというか独特の匂いに、ノスタルジーを感じちゃう人も結構多いでしょ? 40〜50代以上の人なんかは、ねえ。 まあ、今の世の中「ただクルクル良く回る」ってだけで(だけじゃないけど)、正直環境にも良くないしガソリン喰うしで、ほとんど絶滅しかかっている2ストロークエンジンのクルマやバイク。 それでもときどき街の中で、ケム吐きながら独特の音を立てて通り過ぎる2ストバイクの音に振り向いたり、旅行に出かけた先の山奥や小さな漁港で、地元のジイさんの乗る2ストの軽トラが通り過ぎた後の匂いに泣きそうになる。 そんな経験あるかもしれませんよね。 ■2ストローク初体験 2ストロークのクルマやバイクが廃ってきた理由とか、そんなのは正直どうでもいいんですよ。 でも、今では「珍しい」というか、ほぼ「絶滅種」のライチョウとかトキとかシーラカンスみたいな存在になってしまった2ストロークエンジン車のことについて、少しは思い出してみようかな、とは思っているのです。 2ストロークマシンの初体験は、多くの昭和30年代〜40年代生まれの方々同様、ほとんど原付バイクですよね。 ヤマハのミニトレだったり、スズキのミニクロだったり。 ところがワタクシはホンダ派だったので、初めて乗ったバイクがスーパーカブで、自分で初めて買ったバイクがCB50JX-1という、4ストロークのバイクだったのです。 まあ、これに乗って友達といろんなところ(なんとヤビツ峠も登った!)に出かけたものです。 ということで、ワタクシの2スト初体験は、その後に中古で買った、ヤマハDT125というオフロード車。 なんでこれ買ったのかといえば、世界で初めて市販車で「モノクロスサスペンション」を積んだバイクだったから。 今では珍しくもないリアサスペンションが「1本」というスタイルが、このバイクから始まったようなモノ。 正直それ以外には、背は高いし音うるさいし結構振動するしケム吐くしで、多摩川の河原やよみうりランドの近くにあった多摩サーキット以外では、あまり面白くなかったような思い出があります。 ■超トンがってたフロンテクーペ ところが! ところがですよ。 ワタクシが20代の頃に、とんでもないクルマを安く手に入れたことがあるのです。 それは、あの!スズキの初期型(71年)フロンテクーペ。なんと2ストローク360ccの3キャブ!(ほとんどバイクじゃん)。 駆動形式はRRで2シーター。 2人しか乗れない小ちゃなスーパーカーみたいなやつで、しかもタイヤが10インチの「合わせホイール」という特殊な形式で、ラジアルタイヤ履けない(笑)という、なんかイロイロおもしろいクルマでした。 なにしろRRなもんだからフロントが軽い軽い。 雨の日なんて走らせると直進するのが難しいくらいだし、例によって3000回転以下は使い物にならないので、常にバンバン吹かせて、ドカンとクラッチミート! サスペンションはカート並みで、首都高走ると継ぎ目の度にボディ全体がギシギシ言い出す始末。 しかもガソリン喰うわオイル喰うわで経済観念ゼロ(笑)。 加速中にルームミラーを見ると、ほとんど真っ白(笑)でケム吐きまくり。 内装も真っ黒の中にメーターが6個も横にずらりと並んで、まるで松本零士の描く宇宙戦艦ヤマトの艦内みたい。 というように、正直「むちゃくちゃオモシロかった」クルマなのです。 難儀したのが車検で、スズキのディーラーに持っていったら、露骨にヤな顔されて(笑)、今整備できる人が少なくて……と、1ヶ月くらい待たされた覚えがあります。 なんでも3連キャブの調整ができないので、近くのバイク屋さんに外注したという話を聞いたりしました。 ■超トンがってたRZ250 また、当時ワタクシは、RZ250の初期型も所有しており、バリバリの2スト野郎という感じで、毎日ケム吐いて過ごしていたようなモノでありましたよ。 こちらも興味本位で買っちゃったわけですが、山道走行時のバンク中に、ヘタにアクセル開けると怖い目に遭ったり、音がうるさいので早朝は大通りまで押して歩いて、そこでエンジンをかける、みたいな気遣いが必要だったのですが……。 まあ、この2ストの2台、合わせて5気筒600ccほどの排気量の乗り物も、結婚を機に売り飛ばしちゃったんですけどね。 ■2ストロークのマシンって、いいよね そんなわけで、ワタクシは今でも2ストロークエンジンの、パランパランという乾いたサウンドや吐き出されるケムリ。 ほのかに漂う燃えたオイルの匂い。 そしてエンジンを止めた時に訪れる「シーン」という静けさ。 そしてやはり、止めた後でもなんとなく匂ってくるオイルの香りを思い出す度に、ああ、2ストロークのマシンって、なんかよかったよなあ、という気がするのです。 あの刹那的にビヨーンって吹け上がるエンジンの音と振動、そして目まぐるしく動くタコメーターの針が、結構好きだったのかな、と思ったりするのです。 2ストロークのマシンって、いいよね。 [ライター/まつばらあつし]

ベテラン旧車オーナーがひそかに心がける、愛車維持の秘訣とは?
ライフスタイル 2023.04.17

ベテラン旧車オーナーがひそかに心がける、愛車維持の秘訣とは?

昨今の旧車ブームによって、旧いクルマに対してにわかに興味を持たれた方は多いことだろう。 これまでもお伝えしてきた通り、旧車には現代のクルマにはない魅力があるのは紛れもない事実である。 しかし、相手は最低でも20~30年落ちのクルマだ。 快適装備をこれでもか!と装備した現代のクルマと同じように扱えるとは到底思えない。 同じように感じる方は少なくないだろう。 旧車に憧れはあっても、実際に手に入れようとすると、どうしても購入をためらってしまうことは決して不思議なことではない。 クルマは自身の生活の一部分になるものだ。 初めて旧車を購入しようとする方にとって、旧いクルマを一筋縄に扱えるか、不安なことこの上ないものだろう。 筆者自身、プロ・アマチュアにかかわらず、数多くの旧車愛好家とお付き合いをさせていただいている。 これらの観点および自身の経験も含め、これから旧車を購入予定の方に少しでも参考になるように、愛車を末永く維持して旧車ライフを満喫できるヒケツを紹介したい。 ■旧車の不便な部分とは? ▲エアコンが備わる前の旧いクルマ独特の装備、三角窓 この記事をご覧のあなたは旧車、すなわち旧いクルマは現代のクルマに比べて、何かと不便な部分が多いイメージをお持ちではないだろうか?  当時を知る由もない、とくに20代の若いオーナーにとっては、憧れの旧車とはいえ、自身が生まれる前のクルマの購入を考えたときに悩みがちな部分であろう。 ある程度、歳を重ねたベテランオーナーには当たり前のことかもしれないが、ここで具体的にどのような部分が不便なのか、ここで一例を挙げてみよう。  ●「エアコン・パワステ・パワーウィンドウ」が装備されていない 昭和や平成初期の中古車には、「フル装備」と表示がされていたが、これは「エアコン・パワステ・パワーウィンドウ」の3点を指す。  ある一定の年代より旧いクルマは、これらが備わらない車種が多いため、快適性能からして劣るイメージを持たれる方が多いよう感じるが、まずこの部分から考えてみよう。  なお、エアコンについては後述する。  パワステ(パワーステアリング)については備わらなくとも、カスタムなどで極端に太いタイヤを履かせていたり、小径ステアリングを装着していない限りは、それほど困ることはないだろう。  ステアリング操作の軽い現代車に慣れてしまっていると、やや旧車への抵抗感を感じるかもしれない。 しかし、クルマが停車した状態で無理に据え切りをせずに、少しでもクルマが動いている状態でステアリングを切るなど、当時、誰もが行っていた運転方法に慣れれば、それほど苦にならないはずだ。  思えば、筆者の母も当時細い腕で、ノンパワステのVWゴルフを転がしていたものだ。 次に、パワーウィンドウが備わらないクルマについて述べよう。  よく、パワー(いるんです)ウィンドウなどと揶揄されるが、そんなことはない。 レギュレーター周りのメンテナンスがしっかり行き届いていれば、窓の開閉が重いということはまずないはずだ。  むしろ筆者はクルマを修理する観点から、旧車にパワーウィンドウが装備されていると、逆に身構えてしまう。 まずパワーウィンドウの開閉スイッチは、そもそも旧車でなくとも壊れる可能性が高い部品であるし、経年劣化によりモーターやレギュレーターが傷んでいるクルマが多い割には、部品の供給を心配しないといけない部分でもある。 偏った考えではあるが、パワーウィンドウが備わらないことで、イグニッションスイッチがオフの状態、さらにバッテリーが上がっている状態でも窓の開閉ができるといえば、これは意味メリットではなかろうか?  パワステにしても、パワーウィンドウにしても、無くてもなんとかなるものではないだろうか?  最後にエアコンについて述べる。  エアコン(エアーコンディショナー)とは、その名の通り、空気を調整する機能だ。  クーラーとヒーター両方の風を混合(ミックス)し、室内空間をドライバーにとって快適な温度と湿度に調整する機能がエアコンである。 少なくとも70年代前半までのクルマには、エアコンという概念がないクルマが数多く存在する。 ヒーターと三角窓(画像参照)のみ備わるのだ。 旧車であれば、現代のクルマには絶対にない三角窓やクロッチクーラー(外気取り入れ口)といった装備がある。 これらはドライバーの体感温度をそれなりに下げてくれるが、気温40℃を超えることもある昨今の猛暑では完全に役不足だ。  旧車にはクーラーのみ後付けできることが多い。 これは当時からの贅沢な手段ともいえる。  旧車にクーラー装着はエンジンに悪影響があり、NGという意見もあることは確かだ。 しかし、昨今のクーラーキットは旧来のものに比べ、コンパクトかつ性能が良く、とても冷えるものが多い。 高額な装備ではあるが、検討してみても良いと思う。 ●現代のクルマでは当たり前のものが装備されていない その他、旧車にはナビやドライブレコーダーはおろか、ETCも後付けが当たり前、ドリンクホルダーなども当然のごとく備わらない。 リモコンドアロックなど、もっての外だ。 シートについてもフルフラットはおろか、ある年代より旧くなるとリクライニングすらできない車種もある。 ビジュアル面からのイメージが先行して、こういった部分を知らずに旧車を購入してしまい後悔したという話もないわけではない。 ■多少不便な部分があっても、まずは自分をクルマに合わせる ▲エアコンが備わらないクルマの、後付けクーラーの一例 ここまで、ほんの一部分ではあるが、旧車の不便な点を解説した。 今日は空前の旧車ブーム真っただなかであり、業界はとても賑やかだ。 旧車であっても、自分好みのカスタムを楽しんでいるオーナーは多く存在する。 なかには旧車カスタムの域を超え、旧車の不便な部分をフォローすべく、現代の最新デバイスを装着する例も決して珍しくはない。 極めればそれをレストカスタムとも、魔改造とも呼ぶ。 いかんせん旧車の構造は現代車に比べれば、とてもシンプルである。 例えば、クラシックな鉄板製のダッシュボードを切削加工して、最新の2DINナビを装着することも可能であろう。 リクライニングができないシートの代わりに、現代車のパワーシートをシートレールごと溶接して装着する方法だってある。  筆者も20代の頃は個人的に、このようなカスタムが好みであったが、皆さまはいかがお考えだろうか?  不便だからといってあまり深く考えず、これ見よがしに最新装備を旧車に移植するようでは、何のために旧車に乗っているのか分からない。  一度加工したものを元に戻すことはとても面倒である。 そもそも絶版となった部品はハード・トゥ・ファインドである場合が多く、失ったら最後、2度と手に入らないモノも多い。  決して、現代の装備を旧車に装着することを否定するわけではないが、その最新のデバイスが自身にとって本当に必要なものかを考えることも重要である。 多少不便な部分があっても、その当時の時代背景を考えることも、旧車趣味のひとつではなかろうか? 旧車に乗れば、現代車への進化の過程を身をもって体感できる。 なぜ、現代においてマニアがビートルズを真空管アンプとLPで聴く趣味があるのかを、よく考えてみたい。  旧車趣味も同じベクトルであるのは間違いないのだ。  なお、ベテランかつ通なオーナーは、あたかもそのクルマが新車のころのオプションを装着したかのように巧みにカスタマイズする。 筆者はこういった先輩オーナーの隠れたこだわりをみて、自分もまだまだであると感じるものである。  当時モノのモモやナルディーのステアリング、レカロシートなどが高額で売買される理由はここにある。 旧車と長く付き合いたいのであれば、自身にとって本当に足らないと感じたモノを後付けすれば良いのではなかろうか。 機能がなくなることで、その大切さやありがたみが分かってからでも決して遅くはないはずだ。 クルマを自分に合わせるのではなく、まず自分をクルマに合わせることが、ベテラン旧車オーナーへの道ではなかろうか。  ■洗車をしたら、車庫にしまわずにドライブへ  旧車は磨きがいのあるクルマが多い。  旧いクルマはその佇まいこそが特別なものであり、一切カスタムせずとも存在感のあるクルマが多いものだ。 ボディーにしっかりワックスが乗りかかり、モールに磨きがかかっていれば、多少のキズヘコミがあろうとも、凛として見えるモノだ。  旧車を手に入れれば、クルマを磨くことも趣味の一つになることであろう。  ただ、一つここで注意を促したい。 雨を浴びたり、洗車後のクルマは、ボディ内側の至る部分に水分が溜まっている。 フェンダーやトランクの裏側、足回り、そしてフロアやドアの内側などだ。当然この部分は、手の届かない部分である。 タオルで水分を拭き上げることはまず不可能だ。 では、いったいどうすれば良いのか? それは、クルマが水を浴びたらまずは走行してほしい。  クルマの内部は走行することで、至る部分で負圧が生まれる。 この負圧が、クルマに溜まった水分を吸い上げてくれるのだ。 旧いクルマは錆びるからといって、バケツに水を汲み、軽く絞ったタオルで吹き上げる。 いわゆるバケツ洗車を行うと、塗装に傷が入りやすい。 しっかりと水を使ってホコリを流したうえで、シャンプーで汚れを浮かし、入念に泡を流し、これを吹き上げる。 これこそ洗車の基本だ。  そのうえで、先述の通り、クルマを走らせることでしっかりと水を切りたい。 洗車後のドライブも、洗車の一工程といえるのだ。  ドライブから帰ってきたら、各部をグリスアップすれば完璧だ。 これも旧車維持のための必須事項だ(旧車のグリスアップについては以前の記事をぜひお目通しいただきたい)。 ■目先のカスタムよりも、メカにお金をかける ▲旧車は一筋縄とはいえない。常にメンテナンスは念頭に入れておくべきだ 憧れのクルマを購入した次には、自分好みにカスタムをしたくなったり、アクセサリーを購入したくなる。 これは至極当然のことだ。  ただ少し待ってほしい。  購入したクルマのコンディションはいかがだろうか? 購入したクルマの見た目はキレイであっても、クルマの下回り、すなわちメカの状態が悪かったということは決して珍しい話ではない。 クルマを購入するときに、下回りを見て購入することはほとんどないことであろう。 また旧車の場合、車検切れなどで、試乗をせずに購入することも多いことだろう。  購入元がメンテナンスや修理に力を入れているショップであれば心配はないであろう。 しかし、これが販売専門のショップであったり、個人売買などでクルマを手に入れた場合、まずメンテナンスを引き受けてくれる工場を探すべきである。  購入したばかりの愛車が、次回の車検に問題なく合格できるとは限らない。  大きな費用がかかる場合もあれば、入手困難な部品が必要になる場合もある。  旧車は一筋縄では行かないとよくいわれるが、こういった場合に痛感することが多い。 カスタムは、購入したクルマが本当の意味で絶好調になってからでも遅くはない。 クルマを購入してから、少なくとも最初の車検を通すまでは、しっかりメンテナンスの予算を用意しておくべきだ。 ■とにかくクルマに乗ろう!使用による傷はなんのその ▲さほど使用せずとも、家庭用充電器では完全放電したバッテリーの充電は難しい どうしても愛車を大切にしている気持ちから、なかにはセカンドカーを購入し、クルマをガレージにしまいがちになるオーナーもいることだろう。 そして、それは筆者も同様だ。 色々な要因があると思う。  雨風に愛車をさらしたくないといった、至極単純なことから、燃料の高騰が叫ばれるなか、燃費が悪いため、ガソリン代がかさんだり、絶版部品が多く、できる限り事故に遭いたくなかったり・・・。  しかし、旧車を放置するとロクなことがない。  まず、キャブレター内のガソリンが劣化しエンジンが掛かりづらくなる。 さらに、ガソリンタンク内は結露が発生するため、ガソリンに水分が混じりやすい。 そしてこれがタンク内部の錆の原因となり、これが燃料ポンプの故障の原因ともなる。  タイヤは常に地面に接している部分に力がかかるので、丸いタイヤが四角く潰れる。 これがいわゆるフラットスポットだ。 このまま走ると、バタバタとした振動が不快なこと極まりない。 バッテリーも短命になる。 充電器を繋げれば良いと思われるかもしれないが、一般的な家庭用充電器は劣化して抵抗と化したバッテリーの過充電を避けるため、50%以上容量が消耗したと思われるバッテリーの充電を行わない。  バッテリーを交換するか、ブースターケーブルを繋げない限り、エンジンを始動できなくなってしまうのだ。 とにかく旧車は1週間に一度はエンジンに火を入れて、それなりの距離を走るべきだ。  旧車の日常使いはもったいないという意見を耳にするが、こればかりは肯定も否定もできない。 しかし、愛車のコンディションを隅から隅まで理解しているオーナーは、やはり日常使いをしている方が多い。 筆者もその傾向にあるのだが、どうしてもバッテリーを放電しがちなほどクルマに乗らないと、自身のクルマであっても、完調なのか不調なのか分かりづらくなってくる。 旧いクルマの扱いに長けたベテランの旧車オーナーは「やはりクルマは乗ってなんぼ」であることをよく理解している。 日常的に火が入るエンジンは、隅々までオイルが行き渡り、クランクの回りも軽くとても調子の良いものだ。 とにかく乗ることが、愛車の維持管理の近道であることは間違いない。 多少の傷など、何のその。 とにかくクルマは乗って楽しもうではないか! ※私クマダはYouTubeでポンコツ再生動画を公開しております。ぜひ動画もご覧になってください。チャンネル登録お待ちしております。 ●YouTube:BEARMAN’s チャンネル(ベアマンチャンネル)https://www.youtube.com/channel/UCTSqWZgEnLSfT8Lvl923p1g/ ●Twitter:https://twitter.com/BEARMANs_Ch [ライター・撮影/クマダトシロー]  

持ち家を検討している場合、先にクルマを買うのはアリorナシ?
ライフスタイル 2023.03.26

持ち家を検討している場合、先にクルマを買うのはアリorナシ?

筆者の友人・知人の何人かが自動車関連業や不動産業に従事している。 そこで話題になるのが「ローンに関すること」だ。 個人情報があるので親しい間柄であっても詳しくは教えてくれないが、最近多いのが「クルマのローンを先に組んでいて、そのあとに家を買おうとして住宅ローンの審査で引っかかるケース」だという。 クルマのセールスの友人曰く、旦那さんの方が独身時代に「今のうちに買っておかないと後で買えなくなる」と、勢いで趣味車や自分好みのクルマをローンを組んで契約、その残債がネックとなってすんなり住宅ローンの審査が通らなかった……というケースがしばしばあるとか。 家を買うとなると、結婚して子どもが産まれて・・・といった具合に、比較的若い、いわゆる「子育て世代」が多い。 友人であるクルマのセールスも、「正直1台でも多く売りたいのはヤマヤマだが、子育て家族と商談する場合『すでに持ち家か、あるいは近々購入予定があるか』を聞くようにしている」という。 理由は前述のとおりだ。 筆者自身も、取材を通じ、結婚して子どもが産まれて、せっかく家を建てるならいっそビルトインガレージ付き…といった未来予想図を描いている20代〜30代のクルマ好きの方と知り合う機会が多い。 たしかに、結婚して子どもが産まれたら、家のクルマはミニバンかSUVなど、実用的な選択肢のなかで選ばざるを得ない。 ましてや趣味車を増車するなど論外だ(よほど稼いでいれば別だが)。 筆者はファイナルプランナーのような専門知識を有する立場ではないが、自身の体験と、現場からの声を備忘録的にまとめておこうと思う。 今回は特にそんな方たちに向けた予備知識として、記憶の片隅に留めてもらえたら幸いだ。 ■かつて「月賦払い」なんていわれていた時代もあった 会話のなかで「月賦(げっぷ)」というキーワードが出てきてといってピンとくるのは昭和世代だろうか……。 現代ではローンという言葉の方が一般的だと思う。 職業や年収、クレヒス(クレジットヒストリー)に代表される信用情報……などなど。 ありとあらゆる要素が加味されたうえでの「最大公約数=審査結果または融資額」ということを意味する。 つまり、ローンが組めたということは「一定の社会的な信用があると認められた」わけだ。 いっぱしとして認められた、ということかもしれない。 ■ローンの審査基準は謎。そして一律ではない ローンの審査基準は会社によってまちまちで、A社では断られたけれど、B社ではクリアできたというケースも少なからずあるようだ。 これはクルマおよび住宅ローンいずれも共通していて、いろいろな攻め方があるように思う。 ただ、最初にNGが出たあとすぐに別のローン会社に審査を依頼すると不利という話も耳にした。 イチかバチか的なローン申請をできるだけ避けることはもちろん、普段から支払い関係をクリーンにしておくのが懸命だろう。 また、すでに住宅ローンを組んでいて、ローンや残価設定ローンなどでクルマを購入する場合「高額な住宅ローンを組めるほど支払い能力がある」と評価するか「すでに高額なローンを組んでいる」と判断するケースもあるという。 ■クルマを買う前に押さえておきたい、住宅ローンを組む際にチェックすべきポイント 筆者は、フリーランス時代に2度住宅ローンを組んだことがあるが、その際、別々のメガバンクを利用した。 面談の際に、ここぞとばかりに担当者さんを質問攻めにして教えてもらったことをまとめておきたい。 家を建てる前にクルマが欲しいといって譲らない旦那に頭を抱えているそこの奧さん、これを見せてあげてください。良識ある旦那さんなら、ヘタに統計論とか理詰めで攻めるよりも冷静に現実を受け止めてくれるはずなので。 ●どれくらい頭金を用意できるか 住宅ローンであれば購入金額の20%までが目安とされる。これはクルマも同様だが、決して安くはない金額といえる ●他のローンの残債 特に響いてくるのがクルマのローン。まずこれを完済しないと住宅ローンを組ませてもらえないケースもあるので要注意 ●過去のローン実績(組んだ回数) いわゆる現金派の人がいるが、たとえ高収入であってもローンを組んだ実績がないと未知数と見なされる可能性大 ●過去のローンの完済実績(繰り上げ返済を含む) ここはかなり重視されるようだ。繰り上げ返済も加点ポイントとなる ●職業(正規/非正規/自営業を含む) 会社員だけでなく、公務員や士業、看護師など、安定性や誰もが知るまたは資格を活かして生計が立てられると見なされるようだ。その点、非正規およびフリーランスは不利(過去3期分が判断基準) ●勤続年数 勤続3年以上が望ましいが、最低1年以上であれば可能性はゼロではなさそう。転職直後であっても前職の勤続年数が長いと加点となるようだ ●年収 当然ながら多ければ多いほど有利。年齢が低ければ、年収が低くても将来性(若い)ということで加点となるケースも ●過去のローンのお手つき(滞納)の有無 1ヶ月以上の滞納、3ヶ月以上、複数の滞納でそれぞれ減点(あるいはローン不可)と見なされるようだ 心配であれば、CICに問い合わせて自身の信用情報をチェックしてみるといいかもしれない。 CIChttps://www.cic.co.jp/ CICについて(YouTube動画)https://www.youtube.com/watch?v=wuFubU09uJg ●保証人のおてつきの有無 これ、意外と盲点だという。本人はまっさらでも、保証人になった当人がブラックだったりするとアウト。ローン審査時に初めて知ったというケースもあるので事前に要確認 ●各種税金や保険料の納付状況 会社員であれば強制的なので問題なさそうだが、フリーランスだと忙しさにかまけてつい滞納していた…となりがち。要注意ポイント ■【超重要】携帯電話やスマートフォンの料金滞納は絶対にNG いっぱしの社会人であれば「言わずもがな」かもしれないが、この記事を未成年の方が読んでくれている可能性もある。 これは他のメディアに寄稿している記事で何度も記しているが、携帯電話(現在はスマホだろうか)の料金滞納はぜったいにNGということだ。 「1度くらい滞納しても問題ないでしょ」と思うなかれ。 こういってはナンだが「日常的に使うモノの支払いが滞るようなら、はるかに高額なクルマや住宅のローンの毎月の支払いもきちんとできるか怪しい」と判断されてしまうわけだ。 これは故意に支払いを忘れたケースはいうに及ばず、当然ながら「うっかり忘れていた」も含まれる。 故意だろうがうっかりだろうが、自宅に督促状が届いたら即対応。 もし、手元に現金がなければ、すぐに親族や友人知人に借りてでも(ここでノンバンクに手を出すのは本末転倒だが)対応すべき最優先事項だと断言しておきたい。 ■結論:近々持ち家を検討している人が先にクルマを買うのはアリorナシ? 筆者なりの経験ならびに、セールスの友人・知人たちの見解は「ナシ」だ。 ローンはもちろんのこと、現金一括であったとしても、持ち家を購入するための頭金を削っていることは事実だからだ。 FIREできるほどの資産があったり、年収が何千万もあって、大して気にしなくていいというのであれば話は別だが、少数派だろう。 将来、結婚を約束している相手がいない場合はやむを得ないとしても、数年以内に結婚して持ち家の購入を考えているとしたら……。 ローン(サブスクや残価設定も含む)を組んでクルマを買うのは待った方がいい。 頭金ゼロ、60回払いでミニバンを買ったとして、その残債が住宅ローンの審査のときに引っかかってくる。 かなりの確率で住宅ローンの融資額が減るだけでなく、融資そのものが通らない可能性もある。 または「クルマのローンを完済すれば住宅ローンの審査を通すか、●●●万円まで増やせる」といった条件が課せられたりする。 どうしても欲しいクルマがある、必要に迫られているとしたら、クルマは現金や親ローン(オススメしていいものか………)で対応し、少しでも住宅ローンの融資が通りやすいまたは融資額が増えるようにしたい。 最近はクルマのサブスクも一般化しつつあるとはいえ、借金であることに変わりはない。 解決策として「おまとめローン」のように、家とクルマ、同じタイミングでローンを組んでしまうという手もある。 実際問題、毎月の返済額に驚いて、クルマどころではなくなってしまう可能性大だが……。 ■余談:フリーランスは不利? それほど高額なクルマを購入したことがなかったかもしれないが、筆者がフリーランス時代にもローンは組めた。 しかし、住宅ローンとなるとかなり苦労したことも事実だ。 情けない話ではあるが、何しろ融資額が低すぎた。 審査のとき、売上の金額には目もくれず、年収の数字しか見てくれない。 仮に年間の売上が1000万円だとして、年収を250万円で申告していたら、後者の基準で判定される。 銀行の方に聞いたところだと、3期連続で300万円くらいの年収がないと話にならないらしい。 とにかくフリーランスは社会的な信用が低いということを身に染みて味わった。 テレビで「芸人、家を買う」という企画を観たことがあったが、まさにあれだ。 いまは売れっ子芸人でも、来年、5年後、10年後はどうなっているか未知数だ。 いま以上に売れっ子になって世田谷に豪邸が建てられるレベルに到達しているかもしれないし、「あの芸人はいま?」の特集で紹介されるほど過去の存在になっているかもしれない。 はたまた、体調を崩して療養しているかもしれない。 不確定要素が多く、長期に渡って支払い能力があるかどうかは分からないと判定するようだ。 将来、独立を考えているとしたら、クルマはともかく家は先に手に入れておいた方がいいかもしれない。 はたまた、キャッシュで買えるくらいゴリゴリに稼いでしまえば何の問題もないのだか……健闘を祈る! [画像/Adobe Stock ライター/松村透]  

改めて思う「2ドアのセダン」って、カッコいいよね
ライフスタイル 2023.03.25

改めて思う「2ドアのセダン」って、カッコいいよね

■2ドアセダンってイイよな、って思う 「セダン」とか「クーペ」の正しいカテゴリわけって、正直アイマイというか、わかりにくい気はするんだけど、要は「ハコみたいなドンくさそうなクルマでドア2枚」ってのが2ドアセダンかな。 ▲トヨタ カリーナ(1977年)2ドアセダン。リアクォーターパネルあたりがスクエアなセダン的 ▲トヨタ カリーナ(1974年)2ドアセダン。リアクォーターパネルあたりがクーペっぽい滑らかさ そんな2ドアセダンって、ちょいと髪の毛に白髪が混ざったオジサンとか、上品すぎるワケではないカジュアルでラフな服装のオバサンの乗り物、という感じかなあ。 あるいは、ちょっとボロい感じの2ドアセダンに、お金持ってなさそうなワカモノが何人かで、窓を開けて腕を出しながら楽しそうにどこかに出かけてゆく、そんなイメージがありますね(現在空想モード)。 冷静に見ればハコのクルマならドア4枚の方がずっと便利だし使いやすいのはわかっております。 ■現代の多くのクルマは4ドア なので、最近の多くのクルマはドアが4枚がフツーになってきてますよね? いわゆる「スポーツカー的なやつ=すなわち走るのが目的=以外」は、ほとんどがドア4枚。 今や、ポルシェやフェラーリでさえ4枚ドアがあるんだから、現代の基本はドア4枚と考えて宜しかろうと思います。 なので、最近というか、ここしばらくは2ドアのセダンなんてまず見かけないです。 若い人たちは「その存在を知らない」人も多かろうと思うのです。 ところがココは「旧車王ヒストリア」です。 旧車には2ドアセダンという、今では絶滅しかけたスタイルのクルマがいた(←ここ過去形)のであります。 ■懐かしの2ドアセダンたち ▲スバル1000(1965年)。60年代の典型的な2ドアセダン。すっきりしている ちょっと思い起こしてみましょうか。 BMWの02シリーズなんていかが? サニーとかカローラの2ドアセダンなんて、今見ても魅力的。 VWジェッタなんかも良さそうですね。 サーブ90なんてのも、このカテゴリかもしれませんね。 FIATの850なんて今見てもシャレオツ! ▲BMW 02シリーズ(1975年)。まさにハコのクルマ感 ▲トヨタ カローラ(1966年)2ドアセダン。60年代のベストセラー ▲日産 サニー(1966年)2ドアセダン。同じく60年代のベストセラー ▲VW ジェッタ(1979年)2ドアセダン。70年代後期の2ドアセダン絶滅期に近いクルマ ▲サーブ 90(1984年)2ドアセダンというよりは、クーペかハードトップに近いスタイルかな ▲フィアット 850(1964年)2ドアセダン。60年代のイタリア車はみんなカワイイ ■かつて、日本車は2ドアセダンの宝庫? さて、我が国ジャパン。 実は2ドアセダンの宝庫だった時代があります。 上記で挙げた出始めのトヨタ カローラや日産 サニーなんかは、最初にリリースされるのは2ドアセダンというパターンが多かった。 当時の感覚からすると、同じボディならドア4枚より2枚の方が安上がりってなもんで、単にコストの問題もあったような感じです。 また開口部が少ない方が強度が保てる、みたいな理由もあったかもしれません。 いや、もちろんこれらは推測ですが、こうしてみると実際1960年代〜80年代のファミリーカーは「2ドアセダン」「4ドアセダン」「ハードトップ」「クーペ」というカテゴリがほとんどだったような気がします。 ▲トヨタ カローラ(1970年)2ドアセダン。70年代になっても基本は変わらないスタイル ▲日産 サニー(1970年)2ドアセダン。ちょっとカローラ的な雰囲気も出てきた70年代サニー おっと、ハードトップってナンだよ?と思う人もおりましょう。 ま、旧車王ヒストリアの記事を読んでいる方々であれば、それが「オープンカーのようにサイドのサッシュ・ピラーのない大きな窓のある、いわゆるオープンカーの屋根が固定の金属バージョン」だから「ハードトップ」というのはおわかりでしょうから、説明は省いておきます(笑)。   ▲日産 ローレル(1968年)2ドアハードトップ。屋根が別塗装でスペシャルな雰囲気 ということで、今ではアタリマエの4枚ドアのハコ型クルマのドアの数が、単に2枚のヤツが2ドアセダン。ほんと今では見かけませんが、実際に使ってみると、ドアの数が少ないからちょっと不便かもしれません。なにしろ後ろの席に乗り込むときは・・・・ 1:ドアを開ける2:前席の脇にあるレバーを操作する3:すると前席のシートバックが前に倒れ、同時にシート全体が前方にスライドする4:そうしてできたスキマに体を滑り込ませ、後ろのシートに乗り込む5:もう一度レバーを操作して、前席のシートを下の位置に戻す6:ドアを閉める というような「手順」が必要だったワケです。 いやメンドクサイですね。 しかも後ろのシートに座った人は、ほぼ「軟禁」状態になるので、イザというときに脱出するのも難しいという。 実用面では「4人乗れる」けれど、普段は「2人で乗る」のがメイン、という感じなのが2ドアセダンではなかろうかと。 ▲リアシートへのアクセスは手順が必要。出入りがメンドイのは2ドアモデルの宿命 さて、あらたまって写真とか眺めてみると、2ドアセダンってやっぱカッコ良くないですか?カッコいいですよね。 でも、上記のようにその実用面から姿を消したと思われる2ドアセダン。 姿勢を正して(笑)考え直してみましょう。 ▲BMW 02シリーズ(1967年)。シンプルなデザインはいまの時代でもかっこいいっス ■実はリアシートを使う機会って少ないかも? 現在、実用性をメインにクルマを選ぶ、というのはトラックとかタクシーとか、クルマを仕事に使う人たちであって、いわゆる「自家用車」を選ぶ場合、絶対的な実用面をメインに選ぶことってあまりないのではないか?と思うのです。 街中を走っていても、田舎道を走っても、高速道路を走っても、周りを見てみると、ほら、ほとんどのクルマに乗っている人たちの数はひとりかふたりじゃないですか? まあ、時折りレジャーにゆくのか、獅子舞みたいなデザインのでっかいワンボックスカーにたくさん乗っていたりしますけど、タクシーでさえ乗せているお客さんの数は1人か2人、多くて3人って感じですよね? 自家用車ならなおさら!普段はあまり使うことのない後部のドアがなくても、実際あまり困らないんじゃないかと思うのです。 ▲ルノー アヴァンタイム(2001年)。やたらデカくてこのデザインで2ドア。ダブルヒンジで狭いところでもドアの開閉ができる変態構造(笑) なので、ここらでですね、2ドアセダンをもう一度見直してもいいんじゃないかって思うのです。 特に理由もなく「かっこいい」っていっててもしょうがないんですけど、ハコクルマのドアが2枚って、ストイックな潔さというか、とっつぁんグルマのような野暮ったさがありつつも、ときには1人で夜の高速を流したり、山道で細いタイヤ鳴かせながら上がったり下がったり。 いざとなったら後ろにもヒト乗せることできますよ、ええ……みたいな感じで、何となく旧い映画とかドラマの主人公的な「生き方」というか「過ごし方」ができそうな気がするじゃありませんか(笑)。 まあ、気がするだけかもしれませんけどね(再び空想モード)。 実用面からすれば少々使いにくい。 滑らかなスピード感あふれるシャープな造形でもない。 すなわちカクカクしてて少々やぼったいデザイン。 走らせてみると特に速いワケではない。 けれど何となく頑丈そうでなかは結構広い。 その気になれば荷物積めちゃうしヒトもたくさん乗ることができる。 ▲トヨタ カローラ(1970年)2ドアセダン。人数少なければ大変実用的なコミューター。今でも通用するんじゃないかと そんな2ドアセダンにカッコよく乗れるオトナになりたいな、と思うのは、ちょっとオジサン入っちゃってますかね?いや充分にオジサンなんですけど、その辺はちょっとしたノスタル爺ってことで、そんなオトナになりたいものです。 ▲スバル レオーネ(1986年)2ドアセダン。セダンなのにかなり戦闘的。もうやる気まんまん的な80年代を体現しているかのようで これ読んで旧いサニーとかコロナやカリーナの2ドアセダン、検索してみてね。 「あれ?結構高いな」なんて思ったりしますよ。 [ライター/まつばらあつし]

旧車専門店オーナーが伝えたい「旧車購入の5つの落とし穴」とは?
ライフスタイル 2023.03.01

旧車専門店オーナーが伝えたい「旧車購入の5つの落とし穴」とは?

筆者は25年前、1998年からフェアレディZ、Z32専門店を営んでいます。 気づけばZ32もすっかり旧車になってしまいました。 それら平成初期のクルマは一時期人気がガタ落ちしましたが、ここ数年で空前の旧車大ブームになっていることはご存知のとおりです。 海外と国内のW需要で、相場が急騰。 R32〜R34型スカイラインGT-Rを筆頭に、信じられない価格になっています。 カーセンサーやグーを見れば憧れのクルマたちがまだ買えるとあって、購入を急ぐ方も多いことでしょう。 いい方は悪いですが、ここだけの話し、そこに「落とし穴」が潜んでいることも事実です。 専門店の私たちからのアドバイスは一言。 『思い込みで旧車を買わないこと』です。 その思い込みは、固定概念や心理から生まれるもので、どのようなものが多いのか下記に挙げてみました。 これから旧車を購入される方々のヒントになればと思います。 ■落とし穴1:販売価格が高いから程度が良いと思い込んでしまう 販売価格が安いクルマは、程度が悪く見えます。 「販売価格が高い=価値が高い」と思い込んでしないがちです。 販売価格と、程度は比例するとはいい切れません。 「販売価格が高い=仕入れが高い」可能性もあるのです。 ■落とし穴2:見た目が良いから程度が良いと思い込んでしまう 見た目が悪いクルマは、程度が悪く見えます。 見た目が良いと、大事にされてきたと思い込んでしまいがちです。 見た目と程度が比例するとはいい切れません。 見た目が良いのは、表面上、そのように見せているからかもしれません。 ■落とし穴3:走行距離が少ないから程度が良いと思い込んでしまう 走行距離が多いクルマは、程度が悪く見えます。 走行距離が少ないと、劣化や傷みが少ないと思い込んでしまいがちです。 走行距離と、程度は比例するとはいい切れません。 走行距離が少ないのは、単に長年動いていなかったかもしれません。 ■落とし穴4:ノーマル車だから程度が良いと思い込んでしまう 改造車やいじったクルマは、程度が悪く見えます。 ノーマル車は、大事にされてきたと思い込んでしまいがちです。 状態と、程度は比例するとはいい切れません。 ノーマル車は、実は元々改造車だったかもしれません。 ■落とし穴5:今買わなければなくなってしまう、もっと高くなると思い込んでしまう タマ数が減ってくると、欲しい欲求が高まります。 「今買わなければなくなってしまう」「今買わなければもっと高くなってしまう」と思い込んでいるからです。 希少性と価値は比例しません。 旧車は、焦って買うものではありません。 どうかこれだけは覚えておいてください。 ・ホームページhttp://www.Z32-Zone.com/ ・Facebookhttps://www.facebook.com/pages/Fairlady-Z32-Proshop-Zone/286263454768481 ・Instagramhttps://www.instagram.com/Z32_Zone.omura/ ・YouTubehttps://www.youtube.com/user/ZoneZ32 [ライター・撮影/小村英樹(Zone代表)]

DIY旧車オーナー必読!「初めてのオイル交換でのリアルな注意点」とは?
ライフスタイル 2023.02.27

DIY旧車オーナー必読!「初めてのオイル交換でのリアルな注意点」とは?

前回は、愛車のメンテナンスを自身の手で行いたいと思う旧車オーナーにとって、初めてのDIYにふさわしいであろうメンテナンスとしてエンジンオイル交換について触れた。 ▲多少面倒でも、愛車の面倒は自身で見たいと思う方は決して少なくないはずだ そして、まずはじめに、旧車用エンジンオイルの選択方法について記事を執筆した。 DIY旧車オーナー必読!「複雑なエンジンオイルの選択肢」とはhttps://www.qsha-oh.com/historia/article/oldcar-eg-oil-1/ 今回の記事はその続編であるが、具体的なエンジンオイル交換の方法について、ハウ・トゥー的な記事はインターネット上など他にも数多く存在する。 また、クルマ一台一台がすべて同じ方法でオイル交換できるとは限らないことから、以前の記事に記した通り、修理書やサービスマニュアルを参照するべきであると筆者は考えている。 今回はあえて、筆者の経験が中心となるが、DIYの初心者がエンジンオイル交換で陥りやすいリアルな注意点についてまとめてみた。 なお、本題に入る前にあらかじめお断りするが、今回の記事もすでに豊富な知識を持つベテランオーナーや評論家のための記事ではない。 DIYを志し、初めて作業される方などの参考になるよう、幅広い内容をできるかぎり分かりやすくお伝えするための記事であることをご承知おきいただければ幸いだ。 ■1.作業前に最低限用意したいものはこれだ! 基本的な工具の他に、以下のものを用意していただきたい。 ●エンジンオイル 当然のことだが、これを用意しないとエンジンオイル交換が始まらない。 あらかじめ取扱説明書やサービスマニュアルを参照したうえで、そのクルマに使用するエンジンオイルの規格や必要な量を確認しておきたい。 また、旧車に限らず、間違ったエンジンオイルの選択は、エンジンにダメージを与えてしまう可能性がある。 エンジンオイルの選び方については、前回の記事において詳細を記したので、併せて読んでいただきたい。 ●オイルジョッキ 意外と忘れがちだが、これもぜひ用意してほしい。 先述のとおり、エンジンオイルの規定量は、車種・エンジンによって千差万別である。 エンジンオイルは、それこそウォッシャー液のごとく、タンクの口まで目いっぱい入れれば良い訳ではない。 エンジンオイルの量は、多くても少なくてもNGなのだ。 給油するオイルの量を間違えると、エンジンにダメージを与える原因となる。 DIYで作業することを目的として日本国内で流通するエンジンオイルを検討した場合、荷姿は4リットル缶と20リットルのペール缶のどちらかであることが多い。 オイルジョッキはこのオイル缶から、おおよそではあるが計量して使用する分を給油する目的に使用する。 このオイルジョッキがないと注ぎづらいだけではなく、自身でエンジンに何リットル給油したか分からなくなってしまうこともある。 購入したオイルを無駄にしない目的のみならず、しっかりオイルレベルを合わせるためにも必須のアイテムだ。 ▲オイルジョッキとオイルドレンパンはDIYエンジンオイル交換では必須だ なお、これは筆者からのアドバイスであるが、使用後はチリやホコリなど異物が入らぬよう、オイルジョッキにはビニール袋をかぶせるなどして配慮してほしい。 余談であるが、海外で流通するオイル製品はプラスチック製のボトル容器入りであることがほとんどだ。 特に北米市場で出回るものは1クォーター(4分の1ガロン=0.946リットル)のものが多く、ボトル自体に中身が透けている部分があり、これで計量できてしまう。 DIYの盛んな、北米ならではともいえるだろう。 ●ドレンボルトとパッキン 次に用意してほしいものは、細かいものではあるが「ドレンボルト」と「パッキン」だ。 旧車の場合、パーツの入手性の問題からか他車種のものが間に合わせで使用されていたり、長年の使用で傷んだドレンボルトやパッキンに、液状ガスケットを塗って無理やり止められていたりといった話を耳にすることがある。 旧車に限らず、中古車を購入して初めてオイル交換をする場合は、このドレンボルトが度重なる使用により傷んでいる場合がある。 そのため、あらかじめ用意しておくと良いことだろう。 可能であればドレンボルトとパッキンは純正部品での用意をおススメする。 昨今アフターマーケット品として、複数サイズのドレンボルトやパッキンが詰められたセット物が販売されているのを見かけることがある。 これらは組み合わせによっては、微妙な寸法違いからオイルにじみの原因ともなりかねない。 自身の愛車のメンテナンスの第一歩として、まずはこういった部分をしっかり正して、デフォルト(初期)状態に戻していきたい。 ●オイルフィルターとフィルターレンチ(2種類) エンジンオイルと同時交換することが多いオイルフィルターも用意されることと思うが、オイルフィルターが適合品であることは当然として、このオイルフィルターを外す工具(レンチ)にもアドバイスをしたい。 ▲締めすぎで固着したオイルフィルターを緩めるのは至難の業だ できればオイルフィルターレンチは2種類を用意したい。 お椀状のカップ型レンチがその代表的なものと思われるが、これとは別に種類はあるが、回転させるとともにオイルフィルターに食い込んでいくタイプのアジャスタブル型も併せて用意をおススメする。 というのも、長らく交換されていなかったオイルフィルターは固着して外れない場合が多い。 筆者は何度も経験があるが、カップ型レンチがオイルフィルターにうまく噛まずに緩まないので、最終的にオイルフィルターに貫通ドライバーをハンマーで打ち込み、強引に外すなどの方法を行ったこともある。 余分な工具がひとつ増えると思いがちだが、役に立つときがきっと来るはずだ。 オイルフィルターとて甘く見てはいけない。 何らかの手段は事前に準備しておくべきだ。 ●オイルドレンパン・ブレーキクリーナー(パーツクリーナー) 抜いたオイルを受け止めるための器(ドレンパン)は必須だ。 キッチン用品などでも代用できなくもないが、工具店で販売されている、専用のドレンパンをおススメする。 抜けたオイルが飛び散りにくい形状になっていたり、ドレンボルトやオイルフィルターが置きやすい形状になっている部分があったりするなど、それなりに工夫されているものが多い。 購入を検討する場合は、交換するクルマのエンジンオイル量に対して、余裕をもった容量のものであることをおススメする。 また初心者のうちは、どうしてもクルマの周りにオイルをこぼしてしまうことがある。 作業用のマットや、ロールウエス、洗浄用にブレーキクリーナー(パーツクリーナー)なども用意してほしい。 そして、まずいないと思うが、絶対に廃油をその辺に撒いたりしてはいけない。 環境汚染はもちろんであるが、火災の原因にもなりかねない。 廃油の処理方法については後述するので、最後まで記事を読んで欲しい。 ■2.初心者がやりがちな作業ミスはこれだ! ●オイルをこぼす(ぶちまける) これは誰もがやってしまうことであろう。 オイルを抜くときなど、ドレンボルトを緩めた後に抜けゆくオイルの放物線が予想と異なり、ドレンパン内に着地せず周囲を汚してしまったり、新しいオイルをエンジンに注ぐ際に、ジョッキからエンジンルームにオイルをこぼしてしまったり・・・。 なにかと作業をする周辺にオイルを撒いてしまったことは、当然筆者も経験済みだ。 注意したいのは、エンジンオイルは当然ながら「可燃性である」という点だ。 高熱となるエキゾーストマニホールドや触媒、マフラーなど排気系にオイルが付着してしまった場合、車両火災の原因となる可能性がある。 万一、オイルをこぼしてしまった場合は、よく拭き取ったあとにパーツクリーナーなどでしっかり洗浄してほしい。 ●抜くオイルを間違える 笑いごとではない。 これが意外と「あるある」なのだ。 FR車であれば、エンジン後部にトランスミッションがあり、さらにドレンボルトの形状がエンジンとまったく異なるので、まず間違えることはないであろう。 問題はエンジンとトランスミッションが横に並んだFF車だ。 このFF車のなかには、エンジンオイルとATFのドレンボルトの見かけがそっくりなクルマが稀に存在する。 クルマを下から覗いた場合、当然ながらエンジンルームを上から見た場合と景色が異なる。 クルマの構造に詳しくない場合、ここで錯覚してしまうことがあるようだ。 筆者はエンジンオイルを抜くつもりが、ATFを抜いてしまったという失敗談を耳にしたことがある。 確かに筆者もオイルパンの形状も含め、紛らわしい車種を目にしたことがある。 ベテランのメカニックであれば、紛らわしい車種であっても、ファンベルトやクランクプーリーがある側と論理的に判断するだろう。 万が一ドレンボルトを緩めてしまっても、ATFは抜いた瞬間に色や臭いで瞬時に気づくはずである。 残念ながら、これは実際に発生した失敗談で、ATFをすべて抜いた後に、エンジンオイルを規定量エンジンに注入、オイルが規定量の2倍入りながらも(オイルレベルはどうした?)エンジンは通常通り始動し、工場内から車両を移動する際に、クルマが突然走行不能となり作業ミスが発覚した次第である。 初めてエンジンオイル交換をする場合は、念のため注意してほしい。 ●やけどする 作業に慣れたメカニックは、あらかじめエンジンをある程度暖機して、エンジンオイルを温めてからオイル交換を行う。 これは必須の作業ではないが、確かにエンジンオイルが抜けやすくなり作業がはかどる。 ただ、作業に慣れないうち、さらにジャッキアップやスロープなどを使用して、狭いクルマの下に潜り込んだ場合はマフラーなどに体が接触して、やけどを負ってしまう可能性がある。 作業に慣れないうちは、暖機運転はほどほどにするか、ある程度エンジンルームが冷えた状態で作業することをおススメする。 ●ドレンボルトやオイルフィルターを締めすぎてしまう これも、初めて作業を行った際に起こしがちな失敗であろう。 正しい締め具合が分からず、ドレンボルトが緩んでこないか心配で、ついつい力を入れて締めすぎてしまいがちだ。 手元に独特な感触が伝わってきたあと、いくらボルトを締めても力がかからなくなってしまったなど・・・DIY初心者のこういった失敗談はドレンボルトに限らず、さまざまな部分で耳にする。 ドレンボルトを締めすぎる場合は、おもに軽量化と放熱性向上を目的にしたアルミ製のエンジンオイルパンにて発生することが多い。 現代車のみならず、旧車でも高性能なエンジンでは決して珍しくない仕様である。 アルミは鉄に比べて、柔らかい材質だ。 アルミ製のオイルパンの場合、鉄製のオイルパンと同じ感覚で、ドレンボルトを締め付けると、すぐにネジ山を傷めてしまうことだろう。 軽症であれば、ネジ山を切りなおしたり、少し長めのドレンボルトを使用したりしてごまかすことができるだろうが、基本的にはオイルパンを交換するか、ヘリサートなどを使用してネジ山を修正するしかない。 また、オイルフィルターについても締めすぎにより、次回の交換時になかなか緩まず、オイルフィルターの頭部のカップレンチが引っかかる部分を丸めてしまい、緩められなくなってしまったなど・・・。 あくまでも個人的な意見であるが、ドレンボルトにせよ、オイルフィルターにせよ、単なる締め忘れを除き、締め付けトルクの不足よりもオーバートルクで締め付けてしまった場合に、トラブルが発生しがちに感じる。 トルクレンチで締め付ければ、一見問題なさそうに考えられるが、相手が旧車の場合、そもそもネジ山などが傷んでいる場合もある。 トルクレンチはレンチ自体が重めであることと、レンチ自体が長いため、一般的な3/8インチ角のトルクレンチでは、ドレンボルトやオイルフィルターを締め付ける場合、手元へのトルクの伝わり方、すなわちフィードバックが少なくなる。 可能であれば、ソリッドに手元に間隔が伝わる、長すぎないコンビネーションレンチやメガネレンチを使いたいところだ。 言葉で伝えるのが難しいが、手元の感覚で交換した新品のドレンボルトのパッキンが少しだけつぶれる感覚が確かめられれば、締め具合はそれで充分といえる。 オイルフィルターについても、パッケージに締め付けトルクと共に記載されていることが多い。 オイルフィルターのパッキンが対象に接地してから、4分の3回転~1回転と角度締めをすることもできる。 トルクレンチを使用すると分かるが、実はカップレンチを使用して感覚で締め付けた場合、オーバートルクとなっていることが多い。 初めてのオイル交換の場合、プロとは言わないので、作業に慣れたオーナーを呼び、アドバイスをもらえれば心強い。 一度行えばどうという作業ではない。 誰だって、最初は初心者だ。 賛否両論かもしれないが、ここでは、あえてトルクレンチを使用せず、手の間隔を身に付けて欲しい。 ●オイルフィラーキャップやドレンボルトの締め忘れ 締め忘れは集中力が落ちてくると、発生しやすいミスである。 慣れない作業に疲れていても、作業完了後にもう一度、しっかり確認したい。 特にドレンボルトは締めたつもりでも、もう一度、工具を軽く当てて再確認をしよう。 これは基本的な作業であるが、やはり車両火災やエンジン破損など重大なトラブルを防ぐための必須の作業だ。 熟練のメカニックにとっては、欠かさず行うルーチンワークとなっていることが多い。 ベテランメカニックほど、作業はとことん慎重なものである。 我々も見習うべきではなかろうか? ■3.DIYで困りがちな作業後の廃油・その他の処理について さて、問題はオイル交換後の廃油だ。 オイルを段ボールに入った袋入りの吸収材に吸わせることで処理できるものが安価にホームセンターなどで販売されているが、燃えるゴミとしての回収を拒否する自治体もあると聞く。 筆者は本格的にDIYを行う場合には、やはり廃油用にペール缶(20リットル)、可能であれば空きドラム(200リットル)を用意すべきと考える。 個人的に軽貨物運送業を営んでおり、運送業だけでも年間ドラム一本が一杯になるためだ。 筆者は年に一度、回収業者に廃油の引き取りを依頼している。 気になるコストはゼロだ。 基本的には無料(業者による)で引き取ってくれる。 ベテランのDIYオーナーに話を伺うと、以前は1リットル数円~十数円程度で買い取ってくれたそうだが、さすがに令和の今日ではそんな話はないようだ。 無料で引き取っていただけるだけでもありがたいものだ。廃油はしっかりとリサイクルされる。 ▲筆者は廃油をドラム缶にまとめ、年に一度、廃油の回収を業者に依頼している なお、ここで注意を促したい。 エンジンオイルをはじめ、自動車に使用する石油製品やケミカルは、その大半が危険物となる。 オイルのみならず、一時保管している廃油も当然危険物となり、消防法の対象となるのだ。 エンジンオイルやギアオイル、ATF等、各種オイルについては、消防法上の危険物等級で第4類(引火性液体)とされ、保管できる量が消防法によって決められている。 これを「指定数量」と呼ぶが、個人用途など管轄消防署への届出をしない場合に保管できる最大量は指定数量の最大20%となることが多い(※各市町村により異なる)。 カーショップでも開業しない限り、まず個人の用途ではこの数量を超えることはないであろうが、心当たりのある方は念のため、ご確認いただきたい。 重要なのは廃油のみならず、ガソリンはもちろん、オイルやその他のケミカルなど石油製品は危険物であるという認識を持つということだ。 10数年ほど前であろうか。かつて、かのF1の名門ウィリアムズでも、ピットガレージにて静電気が石油製品に引火したと疑われる火災が発生したことがある。 オイルやガソリンの浸み込んだウエスなどは、乾燥した冬場では静電気火災の原因になる可能性もある。 周辺に放置せずにしっかりと片付けるべきだ。ガレージ内でストーブを焚いたり、喫煙をしたりする際も、くれぐれも用心してほしい。 少し厳しい話をしたが、次はオイルフィルターの処分についてだ。 これはとても厄介だ。 結論から話すと、オイルフィルターの処分は自治体では拒否されることがほとんどだ。 燃えないゴミ、すなわち不燃物として取り扱ってもらえないのだ。 大半の自動車部品のゴミも同じくであるが、ある程度まとまったところで専門の産業廃棄物処理業者に依頼をするしかないだろう。 とはいえ、交換の頻度が多く溜まりやすいオイルフィルターがいちばんの悩みのタネだ。 筆者はここ数年、画像の方法で処理をしている。 簡単に言えば、解体して金属・紙・ゴムとして分別しているのだ。 ここまで分別すれば、地域の自治体で通常通り、処理が可能である。 「捨てればゴミ、分ければ資源」とはよくいったものだ。 余談ながら、鉄・アルミなど、くず鉄の買い取り価格はここ数年、高値安定している。読者の方も挑戦されてはいかがだろうか? ▲専用工具:オイルフィルターカッターでオイルフィルターを分解してみた ■4.まとめ:少しずつできることからやっていこう 今回の記事はDIYをバリバリとこなすベテランオーナーにとって、当たり前ともいえることを徒然と書いたので、内容について退屈に感じた方がいたかもしれない。 しかし、今回も文中にも記したが誰もが最初は初心者だ。 DIY作業は少しずつできることからやっていくことがスキルアップの基本と筆者は考える。 「千里の道も一歩から」、「ローマは一日にして成らず」。 これらの言葉と同様、大きな目標を設定する前に、まず小さな目標を達成し、その積み重ねを通じて大きな目標に向かって進んでいく。 段階を踏んだアプローチは、どことなくビジネスライクに聞こえるが、クルマいじりにも応用できる。 今回は「メカと向き合う初めてのDIY」としてエンジンオイル交換を紹介した。 DIYを志す初心者の方には、じっくりと取り組むことで、少しずつ自身でできる作業を増やし、ひとつひとつ目標を達成することで得た満足感を、次回のDIY作業に取り組むモチベーションの糧にして欲しいのだ。 これを繰り返せば、それが次第に自信となりレベルアップにつながっていくはずだ。 筆者は目標を成し遂げたときの、この何とも言えない達成感を得たくDIYに取り組んでいるといっても過言ではない。 何度も言うが、誰もが最初は初心者だ。 次回は何を書くかまだ決めていないが、引き続きDIY目線で記事を書いていこうと思う。 次回の記事もよろしければお目通しいただきたい。 ※私クマダはYouTubeでポンコツ再生動画を公開しております。ぜひ動画もご覧になってください。チャンネル登録お待ちしております。 ●YouTube:BEARMAN’s チャンネル(ベアマンチャンネル)https://www.youtube.com/channel/UCTSqWZgEnLSfT8Lvl923p1g/ ●Twitter:https://twitter.com/BEARMANs_Ch [画像・AdobeStock、ライター・撮影/クマダトシロー]        

のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の重要性」とは?
ライフスタイル 2023.02.26

のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の重要性」とは?

国産車および輸入車を問わず、これまで多くのオーナーさんにお会いし、取材する機会に恵まれた。 気づけばのべ1000人近い方にお会いして、愛車に対する想いをお聞きしてきた。 いずれも「自他ともに認めるクルマ好き」に位置付けられる方たちばかりだ。 老若男女問わず、愛車への想い入れがケタ違いに強く、そして深い。 取材を終えたあるとき、これだけの熱量を帯びている方には共通する理由があることに気づいた。 それは「強烈な原体験」が、現在の愛車を手に入れる動機となり、さまざまな困難に直面しても、心変わりすることなく維持するモチベーションにつながっている方が本当に多いのだ(実は、筆者もそのひとりだ)。 そこで今回、「強烈な原体験の重要性」について紐解いてみたいと思う。 ■「強烈な原体験」がその後のカーライフを大きく左右する オーナーインタビューをしていると、幼少期の頃「父親がクルマ好きで自宅のリビングにクルマのカタログや自動車雑誌が何冊も置いてあった」あるいは「祖父母の家に遊びにいくたびに買ってくれたトミカ。こんなにたくさんのクルマがあることを知り、興味を持った」などなど、置かれていた環境が大きく影響していることが多いように思う。 なかでもアラフィフ世代の方にインタビューすると、スーパーカーブームが強烈な原体験となり、クルマが好きになったというエピソードを伺う機会がとても多い。 これが20代〜30代前半くらいの方であれば、頭文字Dや湾岸ミッドナイト、グランツーリスモ、ワイルド・スピードシリーズといった、漫画やゲーム、映画などが原体験になっている人が多いように思う。 また、成人になってから強烈な原体験をした方ももちろん存在する。 たとえばこんなエピソードを伺ったことがある。 「仕事帰り、バス停のところに立っていたら、黒い2ドアのクルマがサーッととおり過ぎて、リアガーニッシュに『MR2』の文字が見えた。そこから夢中で調べ、実際にMR2を手に入れた」といった具合に、突然の出会いが、その後のカーライフを大きく変えることになった方も実在する。 強烈な原体験のエピソードは本当に人それぞれ。 たとえ、それが兄弟であってもだ。 いずれも「そのときのできごとを鮮明に記憶している」点は、驚くほど共通している。 ■原体験が強烈であればあるほど上書きが難しい 私事で恐縮だが、筆者が17才・高校3年生のときに体験した「ポルシェショック」が、その後のカーライフはおろか、人生まで変えてしまった。 要約すると、ある方のご厚意で、当時のポルシェの正規ディーラーで試乗車に同乗走行させてもらう機会があった。 自分にとっては、30分弱の試乗で、その後で人生が変わってしまうほどの強烈な原体験だった。 それだけに、30年以上経ったいまでも、当時の記憶が強烈に残っている。 ディーラーの試乗車は964型のカレラ2(MT)、ボディカラーはルビーストーンレッド。 後に、漫画「彼女のカレラ」にも登場するボディカラーのそのものだ。 ディーラーのメカニック氏がサービス精神旺盛な方だったのか、空冷エンジンをブン回し、蹴飛ばすようにブレーキを踏んでくれたのだ。 それまでスポーツカーというクルマに同乗したことがなかったので、余計に強烈な体験になったのかもしれない。 そして帰り際、ポルシェのカタログをいただいた。 帰宅してから改めて読んでみた。 身分不相応極まりないが、不覚にも「自分も欲しい」と思ってしまったのだ。 しかし、新車価格が1000万円以上、当時、時給750円でアルバイトしていた身にはあまりにも別次元の存在だった。 その後、運転免許を取得し、成人して年齢を重ねていっても「いつか自分の911を所有してみたいという」想いが消えることはなかった。 深夜、ママチャリに乗って30kmくらい離れたショールームまで何度も観に行ったこともあったし、911の特集が組まれた雑誌は片っ端から手に入れた。 CGTV(カーグラフィックTV)で911が特集された回にオンエアされた曲名が知りたくなり、制作会社の方に頼み込んでオンエアリストを送ってもらったこともあった(笑)。 その後、紆余曲折あって、自動車関連業に従事するようになった。 仕事をつうじて国内外のさまざまなクルマに触れる機会に恵まれたが、とうとうポルシェ911を超える存在に出会えなかった。 で、どうしたかというと、空冷バブルが起こる寸前に、ボロボロのナローポルシェを手に入れ、復元し、どうにかこうにか現在も所有している。 一念岩をも通したのだ。 ■原体験はできるだけ幼少期の方がいい? これは筆者の持論だが「原体験はできるだけ早い方がいい」と思う。 もちろん、それには理由がある。 「いわゆる『禁欲期間』が長ければ長いほど、達せられたときの喜びが大きい点」と「憧れのクルマを手に入れるべく頑張ろうという明確な目標がひとつ定まる」の2点が挙げられる。 毎日を漫然と過ごすよりも、明確な目標を決めた方が生活にもハリがでるはずだ。 ただ、これには思わぬ落とし穴がある。 長年の想いが成就した瞬間、気持ちが冷めてしまう方が一定数いるのだ。 また、理想と現実との違いに直面し、何かのアクシデントに遭遇して一気に冷めてしまうケースもままある。 もしかしたら、手に入れることが目的で、その先のことを描いていなかったのかもしれない。 あるいは、憧れを美化しすぎてしまった、ということもあるだろう。 「憧れのクルマを手に入れることはゴールではなく、スタート」だということを認識し、手に入れてからのカーライフをイメージしていおく必要があるのかもしれない。 ■まとめ:のべ1000人のオーナーを取材して気づいた「強烈な原体験の大切さ」とは? 人それぞれ、いま置かれているさまざまな境遇があるし、そう簡単にコトが進まないことも現実問題としてあるだろう。 いっぽうで、冷静に考えてみると、人生を変えるほど・・・は大げさとしても、寝ても覚めても忘れられない、いつか自分のモノにしよう、したいと思える存在って、生きているうちにそう出会えない気がする。 「憧れは憧れのままでいい」というのであれば、すでに自分の気持ちに決着がついているので問題はないが、いまこの瞬間も「強烈な原体験が忘れられずモヤモヤしている」としたら・・・。 どんな形でもいい、夢の実現に向けてまずは一歩踏み出してみることで「きっと何かが動き出す」はずだ。 原体験が強烈であればあるほど、勇気ある一歩の大きな起爆剤となってくれるに違いない。 この記事が、そんな方が一歩踏み出す動機付けとなれば幸いだ。 [ライター・撮影/松村透]    

00年代軽自動車の魅力を語らせてほしいvol.2:Life you UP編
ライフスタイル 2023.02.08

00年代軽自動車の魅力を語らせてほしいvol.2:Life you UP編

軽自動車の多くは似たようなディメンションで、興味のないひとにはどれも同じようなクルマに映りがちだ。 特に、アシ車として乗るのであれば、デザインや走りよりも安全装備やカーナビにフルセグのチューナーが入っているかどうか...の方が魅力的に映る人も少なくないと思う。 しかしながら、それぞれのクルマには開発時に込められた個性がある。 筆者も最初は興味が薄かった軽自動車。 しかし、同年代の軽自動車を何台か乗ってみると「どれも似ているようで全然違う...ではあの車種は?この車種は?」と、沼に落ちかねない。 24年落ちのメイン車と併用するつもりで購入した00年代の軽自動車。 しかし、いざ乗ってみると、ラクに乗れて、維持費が安く、便利で、快適。 そんな軽自動車に筆者は絶賛ハマり中だ。ひょっとしたらこの記事が出るころには、また何か別の軽自動車をフラフラと手に入れている可能性すらあるのだから...。 前回の記事では、自身が所有した、Fun to Driveな00年代軽自動車を紹介した。 そこで今回の記事では、これまで長期で乗った車両のなかから...「これは欲しい...!」と思ったものを紹介していこうと思う。 前回は走りの楽しさに特化したので、今回はあなたの生活を豊かな気持ちにしてくれるクルマ。 いうなれば“Life you Up編”だ。 ■スペース効率の新世紀 ダイハツ・タント(2003) 初代タント、ベースグレードのL。写真は2005年モデル 筆者が初めて初代タントに乗ったのは2005年のダイハツディーラーだった。 知人が三菱・ディンゴからの買い替えを検討していた際だった。 ディンゴもコンパクトカーとしては広々した空間のクルマだったが、タントに乗った瞬間の視界の広さや頭上空間の高さには「軽自動車なのにデカい!」という鮮烈な記憶を筆者の心に深く刻みつけた。 初代タントに再び乗り込んだのは2020年の中古車店。 コロナ禍もあり、家のみでの生活にウンザリしはじめたころ、自宅の庭で車中泊をしようと考え軽自動車を探していた。 あの頃、新車ディーラーでその空間に驚かされた初代タントはもうすでに市場では底値となっていたが、各社からリリースされたスーパーハイト軽が席巻する現代においても魅力は衰えずあった。 ▲水平基調でボクシーなタント。写真の個体はクラシカルな仕様にフロント部をカスタムされている 174cmの筆者がシートアレンジ次第で横になれることもそうだが、インテリアデザインの魅力度がかなり高い。 ドアトリムの配されたアームレストや前後シートはソファ的な意匠で統一されていたり、座面は極力フラットに作られており、生活車としての機能を高めながらも座り心地は筆者的に大変好みだ。 余談ではあるが、筆者は初代タントで400km以上の道を連日、車中泊をしながら移動した経験がある。 アームレストに左腕を預けながら走る幹線道路は非常に楽。 もちろん過度にだらしない体勢は取るべきではないことを意識しているが、近年の軽自動車と比べても大変好みなシートなのである。 ▲フルフラット状態の内装。マットなどを敷けば快適な仮眠も可能だ インパネもハイトワゴンにしては低い位置にレイアウトされている。 水平かつシンメトリーなデザインでまとめられ、それに併せてウインドウも大きくとられている。 積載性も非常に高く、ダイブダウンしてシートを格納した荷室は、なぜバンモデルを設定しなかったのか気になるレベルだ。 NAのKE-VEエンジン搭載車は車体10万円代から充分に選択肢があるし、ワインディングなどをよく走るのであれば、予算をあげてターボ搭載のグレードを選べば解決できる問題であろう。 ■スタンダードの素敵な回答、ダイハツ・ムーヴ(2006) ▲ワンモーションらしさを高めたフロントのフォルム。運転席からの見切りも良好だ さて、タントはスペース効率が素敵なクルマであったが、よりコンパクトに、ベーシックカーらしさを追い求めるのであれば、2006年に登場した歴代4代目となるダイハツ・ムーヴもおすすめしたい。 ライバルだったスズキ・ワゴンRも歴代ごとに進化していくのだが、4代目ムーヴもその後の軽自動車のパッケージングに大きな影響をもたらしたクルマの一台と言っても過言ではないはずだ。 それまでもムーヴは”ビッグキャビン・コンパクトノーズ”をエクステリアのテーマに掲げていたのだが、3代目までのワゴンスタイルから流麗なワンモーションフォルムへと進化を遂げる。 三菱・アイのホイールベースには60mm届かないものの、ムーヴのホイールベースは2490mmと歴代最長のものだ。 フロント席もリア席も足元スペースは広々としており、新開発のKF-VEエンジンはNA車でありながら4名乗車でもなかなかに快適なドライブが可能だ。 目の肥えた現代人的にはいささか物足りなさを感じるところもあるかもしれないが、内装においても質実剛健なあしらいは飽きがこない。 特にセンターメーターへかかるアーチインストルメントパネルは構成がダイナミックで、シトロエンなどのラテン車的なエッセンスすら感じる(PSAと共同開発したAプラットフォームを使うダイハツだからこそ...と思うのは調子が良すぎるだろうか)。 ▲センターメーター上部へ掛かるアーチがダイナミックな存在感を車両の内外に感じることができる 標準車でも残照式のメーターパネルは、ささやかながら乗降時のもてなしを感じる。 こういったささやかな配慮は、クルマを長く使ううえで意外と記憶に残ったりするものだ。 カスタムシリーズともなれば、上級グレードならステアリングにエアコンの設定ボタンがついたり、オプションでレーダークルーズが装備されたりとクラウン...いや、レクサスにすら迫る部分だ。 ■ハイクオリティ軽の大穴 スズキ・セルボ(2006) ▲写真は2008年モデルのG リミテッド。純正エアロパーツなどが引き締まった印象を与える と、ここまで前回の記事と併せて何台かの軽自動車を紹介してきたが、00年代軽自動車の多くのモデルが小型乗用車に負けず劣らずのモデルが増えていく。 セルボもそんな一台だが、内外装の装いが独特で興味を惹かれた一台だ。 エクステリアは4代目ムーヴのようにワンモーションのフォルムだが、ボンネットフードからルーフまで繋がるようなフロントのプロポーション、そしてルーフからリアウインドウへと連なる構成は後年発売される3代目ランチア・イプシロンのような流麗さがある。 ▲リアウインドウ上端からハッチのガラスへと伸びるラインがユニークなリズムを生む 筆者はイプシロンにもしばらくの間乗っていた期間があるのだが、パーソナルなコンパクトカーとしての振る舞いや少し重めのステアリングなど...記憶を辿ると共通項を感じたりもしなくもない。 インパネの造詣はドア側へと連続するもので乗員の包まれ感は高い。 樹脂類のシボはルイ・ヴィトンのエピ柄を思わせるセブラ調パターンとなっており、暗めの内装色と相まってパーソナルカーとしての雰囲気はさらに高まる。 ▲軽自動車のなかでもクールな印象の内装色を採用。メッキモールなども相まって夕方や夜のドライブでは雰囲気の良さを感じることができた スイフトと共通の部品やサポート部分があるシートなど、ちょっと高級感がある内装が所有する日々の生活のなかで気持ちをアップしてくれる。 アルトやミラなどのボンネットバンタイプも素晴らしいが、ちょっとだけ色香を感じてニヤニヤできる生活を送ってみるのはどうだろう。 もちろん恰好だけではなく、スマートキーやスズキに採用例の多いシートヒーター装着車も冬の時期には嬉しい機能だ。 ゲート式の4ATを左手で味わいながらドライブに出かけてみるのはいかがだろうか。 今回も3台の軽自動車を紹介してきたが、いずれも車両10万円を切る個体を見つけることができる。 ただ古いだけの小さなクルマ...ではなく、魅力的な箇所を引き出せば味わい深い円熟のAセグカーだ。 人によっては、ひょっとしたらご実家のクルマが00年代の軽自動車だったりするかもしれない。 見慣れたクルマたちも当時のカタログや文献を眺め、コンセプトを味わいながら運転してみると新たな一面を発見できるかも?しれない。 [ライター・撮影/TUNA]

00年代軽自動車の魅力を語らせてほしい vol.1:Fun to Drive編
ライフスタイル 2023.02.03

00年代軽自動車の魅力を語らせてほしい vol.1:Fun to Drive編

■筆者、サブ車が欲しくなる 令和5年がはじまって約1ヶ月。 筆者は平成2年生まれの32歳。 目上の人からは「まだまだ若いネェ〜」と言われて少し安堵し、初代プリキュアやJ31型の日産ティアナが誕生20周年といわれ、信じられずに腰が痛くなってくる。 愛車のカローラは1998年式車。 今のところ故障知らずではあるものの、走りはじめると見た目以上に“ネオクラシックカー”に片足を踏み入れはじめたような実感はある。 古いクルマを維持していくには毎日エンジンをかけるのも大切なことのひとつだと感じつつも、行く場所や用途によって低年式車ですべてをまかなう必要もないような気がしていた。 なにより、イギリス製のカローラは販売地域の特性上からエアコンレスなこともあり、年々暑くなる日本の夏を走りぬくためにどうしても、サブ車が欲しくなってしまうのだ。 若者のクルマ離れが叫ばれる昨今、公共交通機関に困らない地域でクルマを一人で複数台所有することは本当に贅沢なことだと思うが…。 良いじゃないか、そのために働いているのだから。 そんな気持ちは以前からあり、筆者はメインカローラの他にサブ車でクルマを所有している。 だが、安くて経済的なことだけを理由にクルマを選べないのはマニアのサガかもしれない。 筆者は国産車なら割となんでも大好きだ。 昔クルマに関係ない媒体のインタビューで「なんでもクルマが好きってことは、僕ら一般の男性目線でいうなれば街中に好みの女性がウヨウヨしているような感じですか?」と質問を投げかけられたことがある。 そのときは受け流したが、今だから答えて差し上げよう、その通りだ。 だがもし仮に、よだれが出るようなレア車が運よく手に入り毎日乗るとなれば…。 保守部品の確保を含めて少し神経質な気持ちになることはすでに自己診断済みだ。 そういった沼に嵌らず、かつ買いやすく、維持しやすく、昔から好きなクルマ…。 いやいや、あるじゃないか。 筆者はすかさず中古車サイトを「安い順」に並べて検索をする。 ■中古車サイトを安い順で並べると語りかけてくる“00年代軽自動車”の魅力 現在筆者がメインとして使っているカローラには、キーレスも電動格納ミラーもパワーウインドウも装備されていない。 中古車市場にある“フル装備”の車両は輝いて見える(そもそも今どきフル装備を高らかに謳う中古車物件なんてあまり見なくなったが…)。 それどころか、掲載車を安い順で少し探せばHID・スマートキー・カーナビ位は余裕でついてくる。 古いクルマをメインで所有していると忘れがちだが、走行距離は10万キロ以下、車検付きで車体10万円未満で快適装備。 それが00年代の中古軽自動車だ。 ▲オートエアコンにHDDナビ、これで10万円未満なら十分すぎないだろうか 小学生のころから運転免許を取る18歳まで自転車で頻繁に通ったカーディーラー。 ショールームに並んでいたクルマたちも生産から十数年が経過し、今や底値を越えて鉄や希少金属・リサイクル部品として生まれ変わって久しいことだろう。 当然のこととしてわかってはいたが、その年月と事実に小さくため息が出る。 デビュー当初の魅力と現在味わう“00年代の軽自動車”として見つめ直し、その魅力を残していきたいと思ったのが記事を書いたきっかけだ。 第一弾は“Fun to Drive 編”としよう。 この、Fun to Driveというワードは決してワインディングを軽快に走ることだけを指していないと筆者は思う。 さまざまなシーンを気持ちよく走る性能があれば、まずそれはFun to Driveたらんとしていると感じる。 もし、生活を支えてくれるバランスの良い車が叶えてくれるならばなんて嬉しいことだろう。 今回は筆者が所有したなかで、これは走るのが面白かったな…というクルマを紹介していきたい。 もし、もっとこんな軽自動車も面白いよ!というのがあればこっそり教えて欲しいものだ。 ■酷道から車中泊までオールラウンダー スズキ・Kei(2008年式) ▲スズキのKeiという名前を誰かに説明する際「スズキの軽ってなんですか…?車種名で教えてくださいよ!」と一回くらいいわれるのはKeiユーザーのあるあるネタだ 1台目はスズキのKeiだ。 なんとなく憎めない相棒として日常に溶け込んでくれるクルマだが、そのポテンシャルは低くない。 正確にいうなれば、Keiは00年代ではなく1998年の登場から2009年まで11年間もの長きにわたって生産されたモデルだ。 それだけにエンジンや内外装の仕様は時代によって大きく異なる。 派生モデルのKeiスポーツやワークスなど、スポーティに性格を振った仕様から扱いやすい通常車までグレード構成も多様で、一概にKeiといってもさまざまな顔を持つ。 筆者が所有していたのはほぼモデル末期の2008年モデルでNA車。 軽自動車のNAだと若干非力な印象もあるが、マニュアルのトランスミッションと600キロ台後半の車重によってピュアな乗り心地を味わうことができるクルマだ。 最低地上高を高くしたクロスオーバータイプのボディのため、ちょっとした不整地でも気兼ねなく踏み込むことが可能だ。 もちろんジムニーのようなアクロバットな領域は難しいのだが、良好な燃費と積載性を考えるとバランスが良い。 このコンセプトを受け継いで後継のハスラーができ上がったことも頷けるものだ。 筆者はKeiを所有するまで比較的車高が低い車両に乗り続けていただけに、Keiが持つポテンシャルは自らの行動範囲をグンと拡げてくれることになった。 1日で300㎞以上走ることも少なくなかったし、軽自動車特有の揺れや車内騒音から受ける影響は決して小さくなかったのだ。 しかし、布団一式を常に携行し“疲れたらすぐ寝る、元気になったら走り出す”を実践することになったきっかけの1台だ。 筆者のなかでKeiを所有した経験が、中央ヨーロッパを自家用車で一周する挑戦に繋がっているのは間違いない。 新生活に向けたドライバーさんなど運転が好きで、日々のなかに小さな冒険を望んでいるならKeiは推していきたい。 20万円くらいまでの予算でもMT車で選べる個体はあるはずだ。 ■コンパクトカーじゃなくてもこれで十分…ホンダ・ゼストスポーツ(2007年式) 次に紹介したいのが2006年登場のゼスト。 Keiからは軽自動車としてのピュアな歓びを教わった。 しかし、keiの登場から約8年の年月は、軽自動車の開発において小さくないと教わったのがゼストスポーツの存在だった。 筆者が高校生のころ、実家に初代FITの中期型があった。 まだ運転免許を持っていないながらもその完成度には目を見張るものがあり「ホンダが本気で作ったコンパクトカーってすごい…」と感じさせられていた。 そんなさなか、フィットの代車でやってきたのが新車で登場したばかりのホンダ・ゼストだ。 いつも後席から眺めていたFITのインテリアと比べると「ちょっと狭いかも…」なんて当時は思っていたが、実際に所有することになってその印象は大きく変わった。 筆者が購入したのは2007年式のゼストスポーツ。過給機が付いた最上級グレードのWだ。 そもそも、装備がとても良い。 90年代のベーシックカーであるカローラやKeiと比較するものではないのかもしれないが、スマートキー(なんと同車のフラッグシップ、レジェンドと同一のキー!)、HIDヘッドライト、おまけに純正のHDDナビまでついてきた。 ▲視認性のいいシンプルなメーター。普段90年代のクルマに乗っている筆者としては計器類がLEDで光ることすら嬉しい フロントシートは大きなアームレストつきのベンチシートで、長距離は心も身体もラクチン。 後部座席は両側がダイブダウン格納されるタイプのシート。 リアハッチの開口部が広く、低床ボディと相まって使い勝手は良好。 乗用車でなくともむしろ軽ワゴンだからこそといったレイアウトはかなり気に入るものだった。 エアロとターボが装備されたゼストスポーツは若干足回りが固い印象をうけるものだったが、剛性感は当時の軽にしてみれば悪くなく、2006年度のJNCAP試験で運転席と助手席の総合評価で軽自動車唯一の6スターを獲得しているのも頷ける。 もちろんクルマも自分の運転も過信してはいけないが、嬉しい装備と過給機がついたエンジンの存在により、日々の運転はとてもFunな経験となった。 ■軽自動車界の風雲児!親しみやすいのにマニアック 三菱・アイ(2006年式) 3つ目におすすめしたいのは三菱のアイ。 2006年に登場して2014年まで生産されていたクルマだ。 そのコンセプトは強烈で、ダイムラー社のスマートやルノーのトゥインゴなど、世界に通用するシティカーの素質と日本の軽自動車に対する問いかけを、その完成度から伺うことができる。 走りの面で特筆すべき点はその小回り。 ホイールベースは2,550mmとフェアレディZやヤリスクロスなどと同一でありながら(駆動方式もホイールサイズも異なることは認めたうえでだが)RRレイアウトのボディに前後異径の14インチのホイールを履くアイは、グルグルとその場で旋回できるのは強烈な体験だった。 ▲エンジンはトランクの下に配置。分厚い吸音材のハッチを開くと見えてくる。内装から見えるエンジンのギャップにときめく 昨今のN-BOXをはじめとした軽自動車の進化ぶりは大きく、比較してしまうと可愛そうなほどでもあるのだが、RRの独自のレイアウトは4人での乗車空間はしっかりと確保されている。 筆者が購入したグレードはMターボ。加速や巡航速度に関しては現代の軽ワゴンにも引けをとらない。 それどころかRR+後輪駆動+アイポイントの高い車両の加速感はあまり味わったことのないもので、これを体感するだけでも価値ある1台だ。 内装の造形感覚にも吟味とこだわりが感じられる。 シートやドアトリムなども加飾して魅了するのではなく、素材の良さを楽しむことができるデザイン。 スペース効率を上げようと、なるべくワイドにインパネを見せようとする軽自動車が多いなか、アイのインテリアやインパネのレイアウトはあえて求心的に作られているようにも感じ、フロント席に座るとどことなく“包まれ感”すら感じる。 ワンモーションの軽自動車は今や数多いが、「このクルマならでは」があちらこちらに備わっているのもアイの良いところだ。 と、今回紹介した車は2023年現在、10~20万円台で狙えるクルマばかりだ。 (実際に筆者はこの3台の車体をそれぞれヒトケタ万円で購入している) もちろん年数は経っているのでメンテナンスは必須なのだが、それを差し引いてもリーズナブルだといえるのではないだろうか。 底値の軽自動車たちは今が狙いどき。 次回は生活をちょっとだけ“アップ”してくれる…。そんな00年代の軽自動車を紹介していきたい。 [ライター・撮影/TUNA]      

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