旧車の再生と維持

常に一難去ってまた一難?愛車スバル360のDIYレストアについて
旧車の再生と維持 2025.06.24

常に一難去ってまた一難?愛車スバル360のDIYレストアについて

一昨年、自宅から「車庫証明が取れなくもない程度」に離れた場所にガレージを借りて、スバル360のDIYレストアを再開したのは、以前、記事に書いた通りです。 そこで、ふとスバル360のレストアっていつから始めたんだっけ?と思い返してみると・・・。 セリカLBがレストアから戻ってくるタイミングと入れかえだったので、2016年末、気が付くと6年も経っていました。 そう考えると、フルレストアをしたばかりだと思っていたセリカLBも、レストアから6年経過していたことになります。 フルレストアしたことで、これまで見落としていた不具合が洗い出されるように発生してはその対処に追われていたので、あっという間でした。 このあたりの話も、いつか触れることができたらと思っています。 ■ボディは想像以上に腐食していた 当初は各部の浮いてきた錆をサンダーで削り落として、錆止め剤を塗布してサフェーサーを吹けばと思っていたのですが・・・。 フロントフェンダーやフロントエプロンを外すと、左のフロントサブフレームがこの有様。 腐食というより、溶けてなくなっているという状態です。 察しの良い方の中にはシャシーブラックがマスキングしたかのように途切れており、違和感を感じる方もいるかもしれません。 実はこのシャシーブラックの途切れている部分には、FRPが貼ってありました。 そのFRPも加水分解をおこし、もはや部材としての用を成してない状態です。 今でも、腐食部分の補修にFRPを紹介する事例も散見します。 FRPは錆びないことをメリットに挙げる例もありますが、10年~20年スパンで見ると加水分解で腐食と同じ結果です。 それどころか、加水分解でボロボロになった箇所や、はみ出たグラスマットが水を含んでしまい、錆を進行させる原因にもなります。 個人的にはFRPでの補修は好ましくないと考えています。 なにより、この状態で何年も走行し、ときには高速道路も走っていたと思うとゾッとする話です。 昔からスバル360はバッテリートレーの部分がバッテリーの液漏れで腐食しやすいことが知られています。 しかし、近年はさらにバッテリートレーだけでなく真下のサブフレームにも腐食が進行する個体も見受けられます。 心当たりのあるスバル360のオーナーは一度確認し、状態によってはレストアを考えた方がいいかもしれません。 ■厚盛りパテの洗礼 あちこちパテが割れていて覚悟はしていたものの、試しに右フロントフェンダーにグラインダーをあててみたところ、ミリ単位どころかセンチメートル単位でパテが盛ってあったのです。 自分のセリカをレストアした整備工場の社長は「鈑金は基本ハンマリングで成形、パテはハンマーの打痕の傷消しに使うだけ」という「パテを使わない鈑金」をする人です。 とはいっても付け焼刃で真似できる物でもなく、せめて数ミリ単位に抑える方向で頑張っています。 しかし、パテを剝がしていくと、過去に事故でひしゃげたフェンダーを鈑金修理したものということが判明します。 事故による全体のゆがみが酷くヘッドライトベゼルとフェンダーの曲面がまったく合いません。 ホイールアーチのアールもくるっていて、このフェンダーの再生は断念。 結局、ひずみのないフェンダーを探すのに1年ほどかかりました。 ■ボディの腐食の進行は思いのほか重症だった 元々、閉まりの悪い右ドアは諦めて(今までと比べれば)状態のいい中古ドアに交換します。 このあたりから、モノコックだけの状態にしてから腐食部分をすべて直さないとだめだと思うようになり、エンジンミッション・サスペンション・ステアリング・電装系ハーネス、すべて取り外すことにしました。 錆びた部品はサンドブラストで処理できれば一番いいのですが、錆取り剤に漬けおきでもかなり効果があります。 そこで、一晩漬けてワイヤブラシでこすれば、おもしろいように錆が取れました。 錆取りといえば、サンポールやクエン酸も有名ですが、母材への影響や安全性もメーカーが確認している専用の錆取り剤を使うようにしています。 もちろん、このあとは錆止め剤を塗布してシャシーブラックで塗装したのですが、結局最近になって、より強固な二液ウレタン塗料で塗りなおそうかと思っています。 下地を塗装し、塗料店を通じて塗料メーカーに純正カラーコードで調合してもらった二液ウレタン塗料まで用意したところで、どうやって塗装するかという難題にぶつかります。 ソリッド色ならパネル1枚1枚を塗装して研いで修正ということもできます。 しかし、このクルマはシャンパンゴールドのメタリック塗装。 クリアコートまで一発勝負ということにここにきてようやく気づいたのでした。 ゴールド+クリアの2コートを一気に仕上げるには簡易的な塗装ブースでもいいのですが、建屋内で作業する必要が出てきてしまいました。 その後、「ガレージを借りる」という大技にたどりつくまでに3年ほど要することになるのです。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]

手に入れて20年!スバル360とセリカLBが直面するレストア問題
旧車の再生と維持 2025.06.24

手に入れて20年!スバル360とセリカLBが直面するレストア問題

■平穏無事とはまったく無縁な筆者のカーライフ 運転免許が取得可能な年齢になる10年以上前からスバル360に惚れ込んできた筆者。 免許取得後は周囲の制止にも聞く耳を持たず(笑)、スバル360とセリカリフトバックのオーナーになって早20年。 これまで、問題に直面してばかりというのが正直なところでしょうか。 ■早20年。経年劣化の残酷さを知る 世間では「クラシックカー」や「旧車」と呼ばれているクルマを買う以上、新車や高年式の中古車を買うのとはワケが違うということは覚悟の上でした。 部品を探したり、時には自分で手を入れることもありました。 トラブルは楽しむくらいのつもりで乗る、苦労は情熱でカバーすればいい・・・今思えば、若かったからこそできたのかもしれません。  しかし、経年劣化に慈悲はないとでもいえばいいのでしょうか。 いくら定期的な消耗品交換やオーバーホールを繰り返していても、「経年劣化」は、まるでこちらの整備スケジュールの裏をかくかのように出現するのです。 入念に整備しても「まったく想定していなかった箇所が突然壊れる」ということは日常茶飯事です。 新車から20年も30年、さらに40年、50年も経てばいくらレストアしても、新車当時からまったく手を付けていない場所があれば、いつどこが壊れるかまったく予想がつきません。 そして、あたふたしているうちに、昔オーバーホールした箇所がまた 耐用年数を迎える。 結果、この繰り返しになるのです。 ■エンジンオーバーホールは定期的? 筆者の愛車である1973年式セリカリフトバックは、現在、通算3度目のエンジンオーバーホールで入庫中です。 最初のオーバーホールは購入してから2年後のこと。 「ノンレストア・未再生」という触れ込みで購入を決めました。 しかし、 筆者が現車確認をしにいった時点ですでに、バルブからオイル下がりが発生していたようです。 さらに、ピストン・シリンダーも圧縮が抜けが発生し(エンジン分解時にバルブが割れ、3番のピストンリングが折れていたことが判明)排気ガスには白煙が混じっていました。 購入当初から、お世話になっている整備工場の社長から「ブローバイガスの圧が高すぎる。今すぐにでもオーバーホールしないとダメなくらいだ」という指摘を受けていました。 そして、購入から2年後、ついにヘッドガスケットが吹き抜け、重篤なオーバーヒートが頻発。 ついに1度目のエンジンオーバーホールとなったのです。 そしてなんと、2度目のオーバーホールはそれからわずか3年後のことでした。 最初のオーバーホールで使用した社外品のハイコンプピストンの形状に問題があったようで(但し、ボアアップを目的としない純正オーバーサイズと同程度のサイズ)、ピストンにクラックが入り(この時も3番のピストン)わずか3年、5万kmにも満たない走行距離でエンジンブローしたのです。 鋳造関係に詳しい知人に割れたピストンを見せたところ「リブの入れ方が間違っている。応力のかかるところが強度不足、いくらなんでも設計がひどすぎる」と指摘を受けました。 このとき、詳細は不明でしたが、かなり古いパーツだったことが判明。 おそらく、チューニングパーツメーカーもまだまだ手探りで、試行錯誤の時代だったのかもしれません。 実は、タイミングよく同年式同グレードの18R-G型エンジンの状態の良い(シリンダー摩耗なし)部品取りが整備工場に余っていたので、ピストンリングだけ交換しました。 部品取りのピストンシリンダーにもとから載っていたシリンダーヘッドと、補器類を組み合わせるという「ニコイチ」で組み上げることにしました。 前回の反省を踏まえ、極力「純正部品」を使用し、メーカー指定値準拠の信頼性を優先しました。 このとき「基本的に、純正のノーマル仕様でエンジンを組めば、最低限のメンテナンスで長く乗れる」と期待したのですが、さすがに2回目のオーバーホールから14年。 走行距離にして15万km以上となると、いくらノーマル準拠で、サーキット走行やスポーツ走行はしないといっても、そろそろ限界のようでした。 そこで2022年3月、クーラントの異常減少とオーバーヒートの頻発という最初のオーバーホールと同じ症状により、通算3回目のオーバーホールとなりました。  エンジンをおろし、ピストンを確認すると、やはり3番4番のシリンダー部分のヘッドガスケットが抜け、異常燃焼を起こしていることを確認。 どうやら、ラジエターから離れている4番と熱の逃げ場のない3番のシリンダーは熱による負荷が大きいことが分かってきました。 ■年々高騰するオーバーホール費用 オーバーホールの度に頭を抱えるのが、いうまでもなく一連の作業にかかる費用です。 詳細な金額は伏せますが、同じような症状でも回を重ねるたびに、おおむね10万~20万円くらいずつ増えていく印象です。 今回のオーバーホールでは、1回目のときと比較して倍近い金額にまで膨れ上がりました。 高額になった原因は、原材料費の高騰による部品の値上げが挙げられます。 また、年々稀少になりつつある部品のプレミア価格もその要因のひとつです。 さらに無視できないのが、前回のオーバーホールでは問題がなかったり、摩耗が規定値内だった箇所について。 (当然ながら)2回目、3回目のオーバーホールのタイミングでついに寿命を迎える部品があるのです。 例えば、当初シリンダーヘッドはバルブとバルブステムの交換とタペット調整と修正の研磨で済んでいたのが、回を重ねるごとに、バルブシートの打ち換えやクラックが発生するようになります。 その結果、アルゴン溶接をおこない、修正漏れがないか水圧検査するといった作業が増えていきます。  エンジン本体でも、ポンプ類や電装部品、点火系および燃料系の補器類で、前回は許容範囲内で「続投」と判断された部品も例外ではありません。 次のオーバーホール、その次のタイミングで寿命と判断され、回を重ねれば修理・交換する箇所が増えていきます。  さらに、新車から50年〜60年を経過することで、気候も使用環境も大きく変化し、日常使用の範囲内でも設計当時の想定をはるかに上回る高負荷がかかっているケースもあります。 そのため、シリンダーブロックやシリンダーヘッドが大きくゆがみ、最悪の場合、前述のアルゴン溶接によるクラック修理、あるいは状態のいいシリンダーブロックやシリンダーヘッドに交換する必要が出てきます。 その結果、オーバーホール代が高額となっていくのです。 ■ただし、部品は手に入りやすくなっている  しかし、悪い話ばかりではありません。 最近は一部の国産車メーカーがヘリテイジ部門を立ち上げ、すでに絶版となった部品の再生産の告知が話題となっています。 中には、「ダメモト」でメーカーの部品販売部門に問い合わせたら、純正部品がそろったという話も聞きます。 レストアの文化が成熟した国では、以前から復刻部品や社外品のアフターマーケットパーツが流通しています。 近年は日本のクラシックカー人気に呼応して、国内の国産クラシックカーの専門店に海外からも部品のリプロダクトのオファーがあると聞きます。 そういう意味では、10年前と比べて部品の供給状態は改善の方向に向かっているといえるでしょう。 筆者のセリカも、以前は、ガスケット一つの入手だけでも何か月も待たされることは当たり前でした。 今回のオーバーホールも、部品をそろえるだけで数か月から半年はかかるだろうと思っていました。 ところが、実際には「クランクシャフトやシリンダーブロックといった大物」を除けば、オーバーホールに必要な補修部品程度なら、大体復刻部品がそろうのです。 しかもネット注文すれば、早いものなら翌日に届くと聞き、拍子抜けでした。 以前は、2.2L仕様のボアアップピストンしかなかったものが、今では純正オーバーサイズ準拠のノーマル圧縮の鍛造ピストンが某有名チューニングパーツメーカーのラインナップに存在するなど、新品の部品が充実しています。 以前は、部品の値段が売主と交渉が成立するまでわからず、ある程度作業が進まなければ概算金額がわからず苦労したものです。 今はエンジンを分解し、どの部品の交換が必要なのかわかれば「定価」が各リプロ部品販売サイトに表示されています。 そのお陰で、かなり早い段階から正確な概算金額が把握できるようになりました。   ■状況は厳しくなる一方だが、悪い話ばかりでもない ガソリン自動車の先行きの不安や、旧型車の市場価格の暴騰、人気車種の盗難の横行など、目をそむけたくなる話題も多い感じることもあります。 しかし、市場価格の高騰や盗難が横行するというのは、それだけ人気があり、需要も多いということでもあります。  それはつまり、弊害はありつつも、人気があって、大金を払ってでも購入する人がいるということです。 見方を変えれば、ある程度手間や金額をかけてでも十分見合った価値があるともみなされることを意味します。 レストアやオーバーホールを敢行するオーナーが増えれば、部品の需要が増えて再販部品、アフターマーケットのリプロ部品の商品化が期待できるということもでもあります。  さらには複数回のレストア作業を受ける個体が増えることで「症例」が蓄積され、レストアのノウハウの共有も進んでいくでしょう。 最近、自動車メディアがクラシックカーの情報を取り上げる機会が増えてきた印象を持ちます。 クラシックカーを手にすること自体のハードルは高くなりましたが、情熱のある人、多少の出費や手間に躊躇しない人にはむしろいい時代になっているのかもしれません。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]

後世に残せるかは現オーナー次第!ネオクラシックカーを持つ覚悟とは?
旧車の再生と維持 2025.06.24

後世に残せるかは現オーナー次第!ネオクラシックカーを持つ覚悟とは?

近年、新たなるヴィンテージカー、クラシックカーのカテゴリとしてネオクラシックカー、ヤングタイマー(以下ネオクラ車)と呼ばれる1980~90年代のクルマが注目されています。 中古車市場でも1980~90年代のクルマの販売価格は高騰気味、極端な例ではR32~34型のスカイラインGT-Rは状態が良ければ1000万円以上、新車当時価格の3倍ほどの値を付けることも珍しくありません。 しかし、これらの「ネオクラシックカー」も、製造から30年が過ぎ、本格的なフルレストアを要している個体も珍しくありません。 実際に筆者が某旧車専門店の現役従業員として感じるのは、ネオクラシックカーのレストアは想像以上の「試練」が待ち受けている印象すらあります。 その結果、時間的ば猶予もなく、解体処分という最悪の結果を招いてしまうこともあるのです。  ■実はオールドタイマーよりも維持やレストアが難しいネオクラシックカー 時に神格化され、まるで工芸品のような扱いを受ける1970年以前のクラシックカーより、1980~90年代のネオクラ車のほうが実は維持や修理が難しいというのをご存じでしょうか? 筆者が、現在所有するスバル360やトヨタ セリカリフトバックに乗りはじめた頃、「昔のクルマに乗りたいけど、1960~70年代のクルマは大変そうだから80年代のクルマに乗る」という話をしばしば耳にしたものです。 そんなときは「『簡単そうだから』という理由だけで手を出すと、アセンブリ交換でしか対応できないケースがある。また、樹脂部品や電子制御部品が入手困難になったときに、思わぬ苦労をするかもしれないから注意した方がいいかも」とやんわりと伝えていました。 一般的にオールドタイマー世代の車両は、維持やレストアが難しいと思われがちですが、自動車は古くなればなるほど機構がシンプルになります。 そのため、故障の個所も要因も特定しやすいことが多いのです。 よって、修理する作業事自体はそれほど難しくないとさえいわれることもあります。 シンプルな機械式のデバイスは分解修理が可能なうえ、他車種および汎用の工業機械の部品や消耗品を流用できることもあります。 また、材料から切り出して部品を作ったりすることも可能です。 時には磨り減ったり割れた部品を、アーク溶接で接合したうえで「肉盛りして」再生するケースもあります。 「持続可能」という点において、クラシックカーのレストアは意外と「サスティナブルな行為」といえる・・・かもしれません。 しかし1970年代後半から、自動車は快適性の向上や運転の省力化に加え、安全性、排ガス対策、製造工程の効率化等も求められるようになっていきます。 その後、電子制御デバイスが普及するようになると、軽量化する目的で樹脂部品が多用されるようになります。 結果として次第に故障要因も複雑になっていきます。 モジュール型の精密機械や、コンピューター等の分解修理が困難なデバイスが多くなり、樹脂製の部品は一度外せば再使用不可のものもあります。 また、それらの部品は専用設計となっていることが多く、他車の部品や汎用品では代用することはできません。 市場に流通している部品がなくなれば、もう直す術はなくなるのです。 この数年で、ボディ・エンジン本体は何ともないが、機能部品・保安部品が1個入手出来なかったがために、車検をどうしても通せないという個体が増えてきました。 ギリギリの「延命処置」として、部品が見つかるまで保管。 それでもだめな場合は、継続車検を断念し、そのまま解体処分・・・なのです。 ■そもそもクルマは何十年も使用されることは想定していない? 国産車は古くから10年10万kmが耐用の基準となっています。 近年は使用年数が延びたとはいえ、20年、20~30万km以上乗る人はごく少数でしょう。 近代化された結果、故障率が下がり、1980~90年代のクルマはメンテナンスフリー化が進んだ印象があります。 とはいえ、油脂類の交換のみで乗りつづけて「ノーメンンテで」乗れるは最初の10年・10万km程度でしょう。 それ以降は、部品の摩耗や経年変化から逃れることはほぼできないと考えるのが自然です。 実は、2022年7月現在、筆者の愛車である1973年式トヨタ セリカリフトバックは、ヘッドガスケットが吹き抜けてしまいエンジンオーバーホールに出している最中です。 整備工場の社長の話によると、特に筆者のセリカに搭載されている2T-Gエンジン、さらに18R-Gエンジンは、シリンダーブロックやシリンダーヘッドが、今まで見たことがないような歪み方をするケースが増えたそうです。 それだけは済まされず、クラックが入った状態でオーバーホールする事例が急に増えたというのです。 前述の社長曰く、どうやら「元々、高回転型で燃焼温度高めの高負荷のエンジンに、近年の夏場の猛暑が関係しているのではないか。当時の開発設計担当者でさえ、想定できなかった負荷がかかっているのではないか」という話でした。 製造から30年どころか、50年、あるいは60年経ったクルマに「高回転型のエンジンに対して高負荷を掛ける行為」が「当時のメーカーの想定をはるかに超えた使い方」ということが想像できます。 結果として「20年・30年無交換だった部品が寿命を迎えた頃には、既に補修部品は入手不可になっていた」という事態が起こるのです。 大半の車両が部品が寿命を迎える前に解体処分されてしまうのであれば、メーカーとしては「この部品が寿命を迎える前に、車両自体が廃車になってしまう。それならば、長期間に渡って補修部品を供給する必要があるのか否か」という判断基準を持つこともやむを得ないでしょう。 「280馬力モデル」も登場から早や30年。いまや3オーナー、4オーナー車も少なくありません。もちろんなかにはワンオーナー車も含まれますが、「経過した時間」はどれも同じ。 あとはどの程度の負荷やダメージを負っているかによって、機関部はオーバーホール、ボディはレストア・・・という選択肢が視野に入ってもおかしくない時期にきているのです。 ■旧車・ネオクラシックカーを後世に残せるかどうかは「現オーナー次第」 最近ではユーノスロードスターや第二世代GT-RといわれるR32〜R34スカイラインGT-R、ハチロク、スープラなどの部品再販やレストアサービスを自動車メーカー主導で行うようになってきました。 とはいえ、それはごく一部のモデルや、さまざまな条件が課せられることもあります。 個人では限界がありますが、同じクルマを持つ仲間や専門店などと協力して「後世に残せるかどうかは現オーナー次第」という気概を持つ必要があるのかもしれません。 [ライター・撮影/鈴木修一郎]  

旧車ライフを支える「主治医」が大切な5つの理由とは?
旧車の再生と維持 2025.06.24

旧車ライフを支える「主治医」が大切な5つの理由とは?

1990年代から2000年代前半にかけて生産された「ネオクラシック」と呼ばれるクルマが人気だ。最近は若い世代のオーナーも増えつつある。幼い頃から、漫画やレース映像などで親しんでいたなどの原体験をもつオーナーが多いように感じられる。 いっぽうで、実際クルマを手に入れても「整備費用が払えずに手放した」とか「どこに相談すればいいのか分からなかった」という声も少なくない。 困難を乗り越えているオーナーの多くは、共通点を持っている。それは「主治医(かかりつけのショップや整備士)」との関係を築いていることだ。 愛車の変化に気づいてくれる。予防整備を提案してくれる。まるで主治医のような存在が、旧車の維持を可能にしてくれる。 今回は、旧車ライフに欠かせない主治医のような整備士が、なぜ重要なのかをあらためて考えてみたい。 ■1.履歴と経験にひもづいた診断ができる 旧車のトラブルは、突然発生するように見えて必ず予兆がある。これに気づけるか(事前に対応できるか)どうかだ。 異音や振動、匂いなどの違和感を見逃さず、先手を打つことが致命的なトラブルを回避できるかどうかの分かれ目になるといってもいいだろう。 そのためには、愛車の整備履歴を把握し、クセや傾向を読み取れる主治医の力が欠かせない。履歴と経験がひもづいたメンテナンスができる主治医の存在は、大きな意味を持つ。スポット対応の場合、それは難しいだろう。 例えばあるオーナーの話だが、愛車の水温計がいつもよりも高めの数値を示していることに主治医が気づいた。すぐに「クーリングファンが動いていないかもしれない」と判断。確認すると案の定、左右のファンのうち片方が停止していたそうだ。 こんな例も聞いたことがある。エンジンのかかりにくさを相談した際には「このクルマは○○(同メーカー別車種)と症状が似ている」と、経験と車種知識をもとに原因を的中させたという。 豊かな経験をもつ整備士は、クルマの過去と未来を見ることができる。 ■2.トラブルを突破する実行力を持っている 旧車ライフには、ある種の覚悟が求められる。ときに「乗り続けることが無理かもしれない」と思う瞬間が訪れる。 例えば部品が出ない、保険の見積もりが通らない。また、原因不明の不具合に行き詰まることもある。「詰んだ…」と思うような状況でも、経験とネットワークを持った整備士がいれば活路を見出せることもある。 あるオーナーは、廃番となった部品を製作してもらったことで、愛車を延命できたという。 こんな例もある。事故の際に部品代の見積もりが出せないことから、保険会社とのやりとりが滞ってしまった。そこで主治医が部品の実勢価格や入手ルートを調べ、根拠となる明細を提示したことで解決に結びついたそうだ。 こうした対応が可能なのは、日頃から「何が入手できて何が代用できるか」という部品の供給状況を把握しているからだ。 このように「修理できるかどうか」ではなく「どうすれば修理できるか」を一緒に探してくれる安心感が、愛車の維持にもつながる。 ■3.不安な時間に寄り添ってくれる 繰り返しになるが、旧車は壊れる。 そして修理には時間がかかる。部品待ち、優先順位の都合など避けては通れない。 それでも、何の音沙汰もないまま何週間も待つのと「今こういう状態です」「◯日から着手します」という進捗報告、必要なら写真や動画を添えてくれるのとでは、オーナーの心理的負担がまるで違う。 あなたの信頼する主治医を思い浮かべてほしい。豊かな経験と技術はもちろん、オーナーの気持ちも汲んでくれているように感じられないだろうか。 何が起きているかを共有しながら、まるで一緒に乗り越えているような感覚は、旧車を維持していくうえで心の支えになる。 ■4.オーナーに合った整備を提案してくれる 旧車の整備に正解はない。同じ症状でも交換部品の範囲や修理の方法、費用や時間は異なってくる。 だからこそクルマの状態、オーナーの予算、理想とするコンディションを把握したうえで、いわゆるオーダーメイドな整備計画を提案してくれる主治医は頼りになる。 一気にやるのか、段階を分けるのか。新品を使うのか、中古や代替品を利用するのか。主治医なら「この使い方ならここはまだいける」「ここをやるなら次はここが弱る」といった見立てができる。 限られた予算でやりくりする若い世代のオーナーや、日常使いしているオーナーにとっては心強い。 ■5.主治医との関係そのものが愛車維持のモチベーションにつながる 技術はもちろんだが、信頼できる主治医との関係性も、カーライフを支える大きな要素になることは間違いないだろう。整備方針を一緒に考えられる関係ができると、モチベーションも揺らぎにくくなる。 しかし「一見さんお断り」としているショップは少なくない。 それは、作業効率やトラブルの回避といった理由や、クルマとオーナーを長く見守っていきたいという姿勢の表れでもある。 そんな主治医と出会いたいが、実際に接してみなければわからない。最初から大きな修理を依頼するのではなく、オイル交換や軽整備などからはじめて、整備士の姿勢や考え方にふれたい。 言葉のキャッチボールを重ねながら少しずつ信頼を築いていくことが、長く付き合える主治医との出会いにもつながる。 ■まとめ:主治医との信頼関係を築く際にはオーナーの姿勢も問われる 5つの理由からもわかるように、主治医の重要性は多くのオーナーが実感していることだろう。加えて、整備士との信頼関係を築くには、オーナーの姿勢も問われていることを忘れないようにしたい。 たしかに、ようやく手に入れた1台に思いが強くなるのは自然なことだ。メンテナンスに対して意見したくなるのも、真剣さのあらわれかもしれない。 だが、主張を通そうとしたりネットで調べた知識や持論をぶつけたりするなど、疑うような態度で接してしまうと、主治医との信頼関係は築きにくい。 「謙虚になる」とは黙って従うことではない。希望や疑問は伝え、委ねるべきところは任せよう。そのバランスが主治医との信頼関係を育み、カーライフの土台となるのではないだろうか。 [画像・日産,Adobe Stock、ライター・カメラ / 野鶴美和] 

16年目・25万キロ超え。愛車ホンダ S2000のエンジンをリフレッシュ
旧車の再生と維持 2025.06.24

16年目・25万キロ超え。愛車ホンダ S2000のエンジンをリフレッシュ

筆者の愛車はホンダ S2000(AP1)。 1999年式の「初期型」だ。約16年前に中古で手に入れた。 16年という年月を過ごしているうちに、S2000は「旧車」となったようだ。 S2000を含む80〜90年代に生産されたクルマたちはいつしか「ネオクラシック」と呼ばれ、中古市場も高騰中と聞く。 しかし正直なところ、現在のS2000の立ち位置など個人的にはどうでも良い。 ほぼ毎日乗り、人生の節目はもちろん、苦しい場面も一緒にくぐり抜けてきた存在。 S2000が語られるときは「唯一無二」と表現されるが、自分にとってはこの個体こそが唯一無二だと思っている。 ▲エンジン載せ換え以降25万キロ以上走行している(実走行は31万キロ)筆者のS2000。外内装ともくたびれてきた 筆者のS2000は、2012年に中古エンジン(約8万キロ)に載せ換えている。 それから約10年が経過。 エンジンも25万キロを越え、車体は31万キロを越えた。 2021年の秋頃からはエンジンが掛かりにくくなる症状も。 「本当に良くないことが起こり始めている。早く対処しなければ二度と乗れなくなるかもしれない」 そう危機感を抱いていたところ、友人の紹介でS2000のリフレッシュ&チューニングを数多く手がける広島県福山市の「ComeTec」にご縁があり、エンジンのオーバーホールが決まった。 今回は愛車の修理レポートとともに「S2000との付き合い方」を取材。 “旧車”となったS2000とのこれからの付き合い方について「ComeTec」の代表・熊谷展宏さんにお話を伺った。 ▲AP1に搭載される直列4気筒DOHCエンジン「F20C」の特徴的なカムシャフト。高回転エンジンのため慴動部が多く複雑な構造[写真提供/ComeTec] ■S2000のスペシャリスト「ComeTec」 今回、お世話になった「ComeTec」。 代表の熊谷展宏さんは、ディーラー勤務を経てホンダ系のチューニングショップへ。 2010年に「ComeTec」を設立。 自動車メディアでは「ホンダ車のスペシャリスト」として登場するイメージが強いが、手掛ける車種は幅広い。 熊谷さん自身がMINIのオーナーだったこともあり、MINIやAbarthなどの輸入モデルからGRヤリス、86/BRZといった近年の国産モデルまでさまざま。 ショップを経営する傍らスーパー耐久のメカニックとしても活動するなど、豊かな経験と実績を誇る。 なかでもS2000は特別な存在で、リスペクトしているとのこと。 ◆熊谷さん:20年も前によくぞ出したなと思います。ホンダはこの先、FR車を出すことはないでしょう。S2000は特別な存在だと思いますし、ライフワークとして携わりたいですね。「あと20年以上元気に走る」をモットーに取り組んでいます。 ●デモカーはサーキットマシンとして22万キロの個体をリフレッシュ! ▲塗り替えられたマツダのボディカラー「セラミックメタリック」が、S2000のもつ凛とした美しさを一層引き立てる[写真提供/ComeTec] デモカーは22万キロ走行個体を譲り受け、サーキットマシンに生まれ変わらせている。 リフレッシュとチューニング、耐久性も高められている。 「車体がしっかりしていれば、一級のマシンになります」と熊谷さん。 ◆熊谷さん:デモカーはサーキット専用ですが、最も力を入れているのは、できるだけ新車に近づけるリフレッシュメニューです。お客様が手に入れた当時の気持ちになっていただけるようにベストを尽くします! もちろん、お客様のサーキットと普段乗りの割合によって、リフレッシュ&チューニングメニューも調整可能です。基本のメニュー設定は「エンジン、トランスミッション」「車体、足回り」「外内装」の3パートあり、いずれかを軸にプランを立てていきます。サーキット仕様をご希望の場合は、レストアしながらモディファイできますよ。 ▲ベース車両は22万キロ以上走行したAP1の初期型[写真提供/ComeTec] ▲エンジンはオーバーホールの際に戸田レーシングのキャパシティアップ2350キットを導入[写真提供/ComeTec] ▲骨組みまで分解。ボディや足回りにはAP2補強パーツも加工流用されている[写真提供/ComeTec] ▲車体、足回り、エンジンが完成した後はレースに出場[写真提供/ComeTec] ▲どんなサーキットでも扱いやすく、耐久性も高められている[写真提供/ComeTec] ■あらためて愛車の状態を目の当たりに ▲カーボンが堆積してしまったエンジン内部[写真提供/ComeTec] さて、筆者の愛車。 エンジンの内部を確認して言葉を失ってしまった。 真っ黒に汚れたエンジン。 「愛車は大切な存在」などと、SNSで発言した言葉がみるみる霞んでいった……。 エンジンを分解した直後の状態を熊谷さんに伺った。 ◆熊谷さん:カーボンの堆積が、これまで見た中で最もひどいレベルでした。原因はいくつかの要因がからみ合っていると思われます。8万キロの中古エンジンに載せ換えているそうですが、このエンジンが載せ換えられるまでにどんな乗り方やオイル管理をされていたかも影響していると思います。 ーーこのエンジンが載せ換えられるまでに、どんな乗り方がされていたと推測されますか? ◆熊谷さん:近距離移動の「ちょい乗り」が多かったり、渋滞によるストップ&ゴーが頻繁だったりするシビアコンディションが多かったと推測されます。 「ちょい乗り」やストップ&ゴーの繰り返しは、低回転走行により理想的な燃焼がしにくくなり、カーボン発生の原因になります。 さらにエンジンオイルの温度が低いままだと、性能が発揮できずエンジンの消耗が進み、ブローバイガスが増えて、これもカーボン発生の原因になります。 この堆積したカーボンがピストン、シリンダー、バルブシールの間に入り込んでしまうことで燃焼が悪くなり、さらにカーボンが溜まるという悪循環を生みます。 ーーオイル管理は、適切なサイクルで行われていなかったということでしょうか? ◆熊谷さん:交換時期というよりも、S2000に適したオイルを使用していなかったことでエンジンに負担がかかっていた可能性があります。 エンジンオイルにはポリマー(添加剤)が入っていますが、オイルが熱して冷えたり水分を含んだりを繰り返すうちに、ポリマーが分解されて泥状の沈殿物、いわゆるスラッジになります。 質の良くないエンジンオイルだと、スラッジが出やすくなります。さらにスラッジがオイルと一緒に回ってしまうと、仮にその後良いオイルを使ったとしても性能は落ちます。ピストンリングに堆積すると燃焼室にも入り込み、オイル上がりを起こします。 筆者の1基目のエンジンが17万キロを迎えた頃、当時お世話になっていた主治医からオーバーホールの提案があった。が、当時の筆者は予算の事情もあり、結局中古エンジンへの交換を選ぶ。そして主治医に無理を言って探していただいたのが、現在のエンジンだ。 ▲筆者のエンジンはオイル上がりを起こし、ブローバイガスが増えていたはずだ[写真提供/ComeTec] ーー最初に「いくつかの要因」とおっしゃっていましたが、他にはどんなダメージが考えられますか? ◆熊谷さん:S2000が高回転型エンジンであるがゆえのダメージですね。一般的な自動車よりも1000回転以上多いS2000の圧縮比は11.7対1と高いため、シリンダーやピストンに負担が掛かります。元々強くつくられているものの、通常より消耗は早く、劣化にともなって出力も低下していきます。 ▲摩耗したピストン[写真提供/ComeTec] ▲シリンダーも摩耗していた[写真提供/ComeTec] ●あらゆる部品を交換 さらにエンジン周りのあらゆるパーツが、経年劣化によって交換レベルに達していた。 乗り始めてまもなく交換したラジエーターも樹脂部分がボロボロに。 エンジンマウント、ミッションマウント、ノックセンサー、オルタネーター、O2センサー、サーモスタット、オイルポンプ、ウォーターポンプなどが交換となった。 エンジンハーネスは熱で損傷。 始動不良の原因にもなっている可能性があるという。 ありがたいことに、ストック部品を使って新調することになった。 エンジンハーネスは今後、供給が危ういとされる部品のひとつでもある。 「ストックしておくのがおすすめです」と熊谷さん。 ●ヒーターバルブの破損 ▲ヒーターバルブが割れている。いつ水漏れしてオーバーヒートしてもおかしくない状態だった[写真提供/ComeTec] ●アクセルワイヤーの劣化 ▲ケーブルの表面被覆材が剥がれ、要交換レベル。そしてアクセルワイヤーはすでに廃盤。生産はもちろんメーカーも在庫はないため中古品で対応[写真提供/ComeTec] ●エンジンマウントの破損 ▲ちぎれたエンジンマウント。かなりの振動があったはずだが、毎日乗っていると劣化のサインにも気づきにくくなってしまうそう。今後は定期的なメンテナンスを心がけたい[写真提供/ComeTec] ■油膜の厚い高性能なオイルと「適度なドライブ」でエンジンを保護 S2000といえば、エンジンオイルはどんなものを使うかがよく話題になる。熊谷さんに「良いエンジンオイル」について尋ねてみた。 ◆熊谷さん:S2000にとっての良いエンジンオイルとは「エンジンを保護するオイル」です。油膜の厚い高性能なオイルがおすすめです。 エンジンオイルは冷却、潤滑、汚れを取るなど、いくつもの役割をもちます。それがひとつでも欠けると、エンジンにダメージを負わせてしまいます。S2000のエンジンは高回転型で慴動部が多く、オイルに要求するレベルも高いだけに、役割がひとつ欠けたときのダメージも大きくなります。 当社では、24時間耐久レースで使われているものと同じエンジンオイルをおすすめしています。Moty'sのM111(5W-40)は、強力な油膜でピストンの摩耗を防ぎ、気密性も向上するのでブローバイガスの排出量を減少させてくれます。さらに洗浄性能の高さも大きな特徴です。このオイルを使ってレースでトラブルなく完走できているので、安心して使えますよ。 ーーオイル管理とともに心がけるべきことがありますか? ◆熊谷さん:1度のドライブはできるだけ長距離を走り、ときどきエンジンを回してあげてください。また、カーボンを分解してくれるガソリン添加剤での定期的なクリーニングがおすすめです。そして何よりも愛情をもってS2000に接してあげてください。 ●よみがえるF20C 筆者のくたびれたエンジンは新品に近づいた。 バルブシートカットを行い、バルブの気密性を改善。摩耗したピストンは新品に交換。シリンダーヘッドとブロックは面研して修正された。 ▲シリンダーヘッドはダミーヘッドボーリング、ホーニングされている[写真提供/ComeTec] ■この先、S2000を手に入れたい人へ 最後に、この先S2000を購入する際の注意点を熊谷さんに伺った。 ーーS2000の中古車を購入する前にまず、決めておいたほうが良いことはありますか? ◆熊谷さん:AP1とAP2、どちらの型に乗るかを決めておいたほうがいいでしょう。型式にこだわらずS2000というクルマが欲しいなら、AP2をおすすめします。年式が新しいぶん故障が少ないことと、今後最後まで生産され続ける部品は、AP2の最終モデルが中心になると思われるからです。 ーー程度の良い個体の競争率は高く、一刻も早くキープしたいと思われている方がほとんどだと思います。実際に店へ足を運んでの現車確認は大切ですか? ◆熊谷さん:大切だと思います。試乗が可能であれば必ず乗って、変な振動や異音がしないか確認しましょう。 例えば、S2000はもともとリヤのハブベアリングが強くありません。そこが傷んでいる個体は、乗ってみると高音で引きずるような、あるいは唸るような異音がするはずです。しかも一定の速度域でしか症状が出ないこともあるので、できれば速度域ごとの確認もしたほうがいいかもしれません。 ーーもし試乗が難しい場合は、どんなポイントを重点的にチェックしておくと良いのでしょうか? ◆熊谷さん:S2000はサーキットで酷使され、エンジンを消耗している個体が多いです。できるだけ状態の良いエンジンを選びたいですね。最も素早く見分ける方法は、煤の付き方でしょうか。マフラーのテールとバンパーが煤けている個体は避けたほうが良いでしょう。 外観では、色褪せと幌の状態をチェックしてください。レッドやイエローのボディカラーを選ぶ際は色褪せしやすいです。 ちなみに、特に色褪せしやすいレッドやイエローなどは屋内保管推奨ですが、露天駐車がやむを得ない場合は、2〜3年おきにコーティングして、できるだけ塗装を長持ちさせるようにすると良いでしょう。全塗装するのも手ですね。色にこだわりがなければ、色褪せが目立ちにくいシルバーやホワイトを選ぶのもありです。 幌は、10年を越えていれば張り替えがおすすめです。穴やヒビが入っていないかをチェックしましょう。今は社外品でも質の良い幌があります。カラーも豊富なので好みの幌を選んでみるのも楽しいですね。 ▲レッドやイエローは色褪せしやすい。部分的に塗装していると、経年劣化によって色のばらつきが出ることも ーー極端に低走行な個体も見かけますが、そのような個体はどこに注意すれば良いでしょうか? ◆熊谷さん:例えばAP1(初期型)で約8万キロ走行の個体があったとします。年式にしては低走行だからといって、状態が良いとは限りません。サーキットで消耗しているかもしれないですし、「ちょい乗り」によってカーボンの堆積があるかもしれません。 S2000は高回転型エンジンで消耗が早いぶん、8万キロだとコンディションが落ちている個体が多いはずです。走行距離よりも「どんな乗られ方をしてきたか」に注意したほうが良さそうです。 ●「リフレッシュ費用」込みで購入計画を ーーお話を伺っていると、購入してから何らかのトラブルに見舞われる可能性が高い気がしますね。 ◆熊谷さん:そうですね。現在流通している個体は、10万キロ以上のものがほとんどだと思われます。車齢20年以上といえば、通常なら寿命を迎えているはずです。 購入の際はぜひ、リフレッシュ費用込みで予算を組んでいただきたいです。ゴム類、マウント、パッキン、などの消耗品交換からオイル漏れ対策なども必要になります。しかし骨格がしっかりしているなら、新車に近いレストアもできます。メンテナンス次第で良い状態のS2000と長く付き合えると思います。 ーー今回の修理でリフレッシュがどんなに大事かをあらためて実感しました。納車当時の16年前の気持ちを思い出し、愛情をもって乗っていきたいと思います。ありがとうございました! ■取材後記 プロの手に委ねてみて、気づきはもちろん反省点が多すぎた。16年間どれだけボーッと乗ってきたかを痛感した…。 この先はエンジンだけでなく、コンピュータや足回りなど、他の部分の問題も抱えるかもしれない。 できるだけ対応しつつS2000と長く暮らしたい。「人生の相棒」となるように…。 最後に、丁寧な作業とアドバイスをくださった「ComeTec」さんに感謝申し上げます。 [取材協力]ComeTec 広島県福山市神村町2107-2公式HP:https://www.cometecracing.com/Facebook:https://www.facebook.com/profile.php?id=100032848646363 [ライター・撮影/野鶴美和] 

主治医のセカンドオピニオン問題について考える
旧車の再生と維持 2025.06.24

主治医のセカンドオピニオン問題について考える

人間や一緒に暮らしている動物と同様に、古いクルマを楽しむためにも主治医の存在は不可欠だ。 主治医と知り合うきっかけは人それぞれ。 口コミやネットなどで評判を聞きつけてオーナー自ら主治医のガレージを訪ねる人、友人や仲間の紹介というケースもあるだろう。 誰よりも愛車のコンディションを把握していて、トラブルが起これば根気強く直してくれる。 出先でクルマが動かなくなったときは、休みの日でも積車で駆けつけくれる主治医もいる。 多くのオーナーにとってこれほど心強い存在はいない。 その主治医は1人でなくても構わない。 セカンドオピニオンとしてもう1人(あるいはそれ以上の)主治医がいてもいいのだ。 事実、車検はAさん、重整備はBさん・・・といった具合に、用途や目的に応じて主治医を使い分けている(こういう表現は好きではないけれど)オーナーさんも実在する。 ここから先はあくまでの個人的な考えだが、こちらの記事でも触れたように、主治医のセカンドオピニオンについては反対というスタンスだ。 ■突然の愛猫の主治医探しに奔走して痛感した「古いクルマの主治医の大切さ」の話 https://www.qsha-oh.com/historia/article/personal-doctor/ それには理由がある。 古いクルマのメカニックというと、広告はもちろん、工場の目立つところに看板すら出さずに1人で黙々と、少しだけシャッターを開けてその奥で作業しているなんてことが少なくない。 自社のホームページやSNS、YouTubeチャンネルを持っている(自ら更新している)人もおそらく少数派だろう。 商売っ気がないともいえるし、自分のペースで黙々と納得のいくまで、自分の技術を信頼し、愛車を託してくれるオーナーのクルマだけ面倒を見たいという職人気質の人も少なくない。 そんなわけで、傍目にはぶっきらぼうだし、無愛想に映るかもしれない。 場合よっては怖い人…に映るかもしれない。 けれど、それはあくまでも表面的なことだ。 いちど心を許せば案外饒舌だったり、さまざまなアドバイスもくれたりする。 つまり、不器用なだけで「根は優しい人」が多いような気がしている。 セカンドオピニオンということは、自分の技術を信頼してもらえていないと思われても仕方ない。 と同時に、他のメカニックが整備した箇所をいじりたくないと考える人も多い。 人それぞれやり方があるからだ。 セカンドオピニオンをする必要があるくらい不安なら、安心して任せられる主治医を新たに見つけるか、どちらか1人にしぼるか、いっそのこと古いクルマを手放した方がいいかもしれない。 1台の古いクルマと徹底的に付き合う。 それはイコール、1人の主治医を信じ抜くことと同義ではないか? そんな気がしてならない。 [ライター・撮影/松村透]

オイル交換のタイミングは?時期を早めるべきケースや放置するリスクについても解説
旧車の再生と維持 2025.06.24

オイル交換のタイミングは?時期を早めるべきケースや放置するリスクについても解説

オイル交換のタイミングがよくわからないという人も多いでしょう。「車の取扱説明書では10,000kmと記載されているのにディーラーでは5,000kmを目安にと言われた」など、何を基準にすべきか迷うという声も聞きます。 今回は、オイル交換のタイミングやオイル交換をせずに放置するリスク、交換費用などについて解説します。エンジンオイルの交換時期について詳しく知りたい人は参考にしてください。 オイル交換のタイミング はじめに、オイル交換のタイミングについて詳しく解説します。 3,000~5,000km走行した オイル交換時期の基準として、走行距離3,000~5,000kmごとが1つの目安とされています。エンジンオイルは走行距離がかさむごとに劣化や減少するため、本来の効果が低下してしまうことが理由です。エンジンオイルには、「潤滑」「冷却」「気密」「清浄分散」「防錆防食」などの重要な役割があります。 エンジンの負担を減らし正常に稼働させるためのオイルが劣化すると、エンジンを傷めるなど大きなリスクが発生するため定期的な交換は非常に重要です。また、エンジンオイルの劣化具合はターボの有無や走行内容などによって個体差が生じます。 そのうえで走行距離で考えるならNAエンジンは5,000km、よりエンジンに負担がかかりやすいターボ車なら3,000kmを目安にするとよいでしょう。 ただし、サーキット走行はもちろんのこと、「短距離運転を繰り返す」「時速30km以下の低速走行しかしない」「アイドリング時間が非常に長い(1日2時間以上)」「悪路や急斜面での走行が多い」「高速道路を長時間に渡って走行する」などといった車はエンジンへの負担も大きいため、こまめにエンジンオイルの交換をすることをおすすめします。 メーカー推奨の交換時期を迎えた 「メーカー推奨の時期」とは、車の取扱説明書やメンテナンスノートなどに記載されているオイル交換時期の目安です。車輌が生産された時期やエンジンのタイプによって異なり、「10,000km、または1年」などの記載がされています。 メーカー推奨時期は一般的な使い方をした場合の目安であり、街乗り中心やアップダウンの激しい道ばかりを走行しているケースはオイルの劣化が早まる可能性があります。エンジンへの負担が大きいと車の寿命を縮める結果となるため、早めのオイル交換がおすすめです。 前回のオイル交換から3~6ヶ月経過している 走行距離を目安にオイル交換を行う人も多いでしょう。しかし、エンジンオイルは「頻繁に運転しない」「短い距離しか走行しない」場合の方が劣化しやすいといわれています。走行距離は短くても、エンジンのコンディションを保つためには3~6ヶ月ごとを目安にオイル交換することがおすすめです。 車にほとんど乗らなくてもオイル交換は必要? 車にほとんど乗らなくてもオイル交換は必要です。数ヶ月に渡って車を乗らずに放置しておくとバッテリー上がりのリスクもあるため、短距離でも走らせている方も多いでしょう。しかし、短い距離でも走行している場合はむしろオイルの劣化が早まるため、最低でもメーカー推奨時期ごとのオイル交換は行うべきです。 オイル交換の時期を早めるべきケース オイル交換の時期を早めるべきなのはシビアコンディションで車を運転するときです。シビアコンディションとはエンジンの負担が大きい過酷な状況のことで、走行距離の30%以上の内容が下記のいずれかに該当する場合はオイル交換の時期を早める必要があります。 シビアコンディションの例・悪路や雪道での走行が多い・年に20,000km以上走行する・山道や登降坂路での走行が多い・短距離の運転が多い・30km/h以下の速度での運転が多い・外気温が氷点下での走行が多い・アイドリング時間が長い・高速道路での走行が多い オイル交換をせずに放置するリスク 続いて、オイル交換をせずに放置するリスクについて詳しく解説します。 燃費が悪くなる オイル交換をせずに放置すると燃費が悪くなります。オイルが劣化すると本来の潤滑や冷却、密封効果が減少して燃料の燃焼効率が下がると考えましょう。同時にエンジンへの負担も増してしまうため、こまめなオイル交換がおすすめです。 異音や騒音が発生する オイル交換をせずに放置しておくと異音や騒音が発生します。オイルの劣化や減少で潤滑がうまくいかずに発生する異常音のため、放置しておくと大きな損壊につながる可能性もあります。エンジンをかけていつもと違う音がする場合は早めに点検を依頼しましょう。 エンジンが壊れる オイル交換をせずに放置すると、エンジンが壊れてしまう可能性があります。オイルの劣化や減少が進むと最悪の場合はエンジンが焼き付いて全壊となり、修理費用(エンジン乗せ換え)に数十万円単位の金額が必要となるケースも少なくはありません。特に日々の走行距離が長い人はこまめにオイル交換をするようにしましょう。 オイル交換にかかる費用 オイル交換にかかる費用は、作業工賃とエンジンオイル代です。エンジンオイルは品質と必要量で大きく変わります。一般的な国産車であれば2,000〜5,000円程度が目安といえるでしょう。 オイルフィルターも定期的に交換が必要 オイルフィルターも定期的に交換が必要です。オイルフィルターは、エンジンオイルの汚れを取り除く濾過の役割を果たしています。通常ではオイル交換2回に1度が目安となり、オイル交換時期を大幅に超えてしまっている場合は毎回交換するとよいでしょう。

車の修理時に代車は借りられる?代車利用時の注意点を解説
旧車の再生と維持 2025.06.24

車の修理時に代車は借りられる?代車利用時の注意点を解説

車の点検や修理を依頼するにあたって、代車を借りられるかどうか気になっている方も多いでしょう。代車は業者が善意で行っているサービスのため、店舗によって対応が異なります。 この記事では、代車のサービスや費用について解説するとともに、トラブルを防ぐためのポイントについても詳しく解説します。 車の修理中に代車を借りられるケース 車の点検や修理などの事情で手元に車がない場合には、代わりの車が必要になることがあります。 ディーラーや修理工場などでは、代車を用意しているところが多いです。ただし、代車の有無は店舗により異なります。車の点検や修理などによって一時的に車を預ける際には、代車を借りられるかどうかを事前に確認しておきましょう。 車の代車を借りられないケースもある 代車は、業者が善意として行っているサービスのため、必ず用意できるわけではありません。また、台数も限られているため、空きがない場合には借りられません。 通勤や買い物など日常生活に車が必要不可欠な場合には、車検や修理の日程が決まり次第、代車が必要であることを伝えましょう。 車の代車にかかる費用 車を点検・修理する場合、代車を無料で借りられることが多いです。事前に予約して修理する場合は、代車がすべて出払っていて借りられないという状況も少ないでしょう。 ただし、事故などで突然代車が必要になった場合には有料になるかもしれません。代車が必要な期間によっては、レンタカーの方が安く済む場合もあるでしょう。 車の代車を借りるときの確認事項 ディーラーなどの業者とのトラブルを防ぐためにも、借りる際には確認しておくべき事項がいくつかあります。 ・傷をつけたときの対応 ・料金 ・返却時のガソリンの補充 ・保険の加入 ・代車の貸出期間 ・グレード ・チャイルドシートの貸出の有無 ・スタッドレスタイヤの貸出の有無 ・禁煙車かどうか それぞれ詳しく解説します。 傷をつけたときの対応 車に乗っていると気づかないうちに傷がついてしまっていることがあります。 自身がつけた傷かどうかを判別し、トラブルを防ぐためにも、可能であれば代車を借りる際に担当者と一緒にチェックすることをおすすめします。 もし運転中に傷をつけてしまった場合には、代車を借りている業者に連絡しましょう。その後、修理費用は誰が負担をするのか話し合います。 料金 代車は無料のケースと有料のケースがあります。返却時に料金のことで揉めないためにも、借りる前に料金について確認しておきましょう。 修理や車検などで借りる場合、口頭で説明がなくても、見積書には記載されていて費用が取られるケースもあります。修理や車検で借りる際には、見積書の項目も確認しておき、納得したうえで利用することがトラブルを防ぐうえで大切です。 返却時のガソリンの補充 代車はレンタカーとは異なり、借りる段階でガソリンが満タンでない場合も多いです。 ガソリンの補充については借りる際に業者側から説明を受ける場合があります。そのまま返却してくださいというところもあれば、満タンにして返却してくださいというところもあるため、事前に確認しておきましょう。 保険の加入 代車を借りる際には、保険の加入についても事前に確認しましょう。普段乗っている車と異なる車を運転すると、操作性や視界の違いなどを理由に事故を起こしやすくなります。 万一の事態に備えて、ほとんどの方は保険に加入をしていますが、保険の内容によっては他の車を運転した場合には保障が受けられないこともあります。 最近では、レンタカーなどの需要も高まっており、自動車保険に他車運転特約がついていることが多いです。 この特約は、契約者またはその家族が所有している車以外の車を運転していて事故を引き起こしてしまった場合に保障が受けられるものです。所有車以外を運転することがないと特約を外してしまっている場合もあるため、代車を運転する前に自身の保険内容を確認しましょう。 代車の貸出期間 代車を借りられる期間は数日〜長くても1ヶ月程度です。車検であれば2〜3日程度、長くても1週間以内には終了します。修理の場合も、1ヶ月もあれば完了するでしょう。 ただし、新車の納品待ちなどであれば1ヶ月以上かかるケースもあります。長期間貸出が必要な場合は事前に借りられるか確認が必要です。 また、長期間借りる場合には一部有料になってしまうこともあります。トラブルにならないよう、費用も確認しておきましょう。 グレード 代車で借りられる車のグレードは、利用者が乗っている車と同じグレードのものが多いです。しかし、数は限られているため、出払ってしまっている場合には高いグレードのものや高級車を貸し出されることもあります。 逆に、乗っている車が高級車の場合には同じグレードの代車が用意されておらず、グレードダウンすることが多いです。 グレードアップは希望できませんが、グレードダウンするのであれば、好きな車を選べる場合もあります。 チャイルドシートの貸出の有無 代車では、チャイルドシートを含め、付属品の貸出を行っていないことがほとんどです。そのため、代車を利用する際にはチャイルドシートを含め、付属品は載せ替えておきましょう。 万一の事故やリスクを回避するため、業者ではチャイルドシートの載せ替えを行っていないところもあります。小さい子どもを連れて借りに行く場合には、載せ替えている間に子どもを見る人に同行してもらうと安心です。 スタッドレスタイヤの貸出の有無 冬場に積雪の多い地域で代車を借りる場合、スタッドレスタイヤが装着されている場合があります。これは地域によって異なるため、積雪の心配がある地域では借りる前に確認しておきましょう。 禁煙車かどうか 代車のほとんどは禁煙車ですが、なかには喫煙車が用意されている場合もあります。車内で喫煙する方は、車内での喫煙ルールについて確認しておきましょう。また、タバコの匂いが気になる人や小さい子供を乗せる可能性がある人も、事前に禁煙車であるかを確認しておくことをおすすめします。 他にも犬や猫などのペットを飼っている人も、ペットの乗車ルールについて確認しておくと安心です。借りたものにペットをそのまま乗せるのはマナー違反になってしまうことがあります。ペットの乗車OKとされていてもケージやクレートに入れて車内が汚れないように配慮しましょう。 まとめ 車の修理利用に関する注意点を解説しました。 ディーラーでも整備工場でも、基本的には無料で代車を借りられます。ただし、突然の事故や故障に見舞われ、急に修理しなければならなくなった場合には、有料になったりそもそも代車を借りられないかもしれません。 また、トラブルを防ぐためにも、借りる際に傷の有無やガソリンの補充、禁煙車かどうかなど、いくつかのポイントを確認しておきましょう。

車の雪対策は何をすればよい?雪対策のグッズに必要なグッズも紹介
旧車の再生と維持 2025.06.24

車の雪対策は何をすればよい?雪対策のグッズに必要なグッズも紹介

豪雪地帯に住む人は、車の雪対策を行うことが常識とされています。一方で、雪が頻繁に降らない地域では雪対策が不十分な傾向があります。この場合、雪による突然のトラブルに戸惑うこともあるでしょう。この記事では、車の雪対策の方法や注意点、グッズなどを紹介します。 車の雪関連のトラブル 車の雪関連のトラブルとして、交通事故のリスクが上がったり、車に不具合がでやすくなったりすることが挙げられます。まずは、雪関連のトラブルを紹介します。 交通事故のリスクが上がる 冬は凍結や積雪によって路面が滑りやすくなるため、交通事故のリスクが高まります。凍結路や雪路は、雨が降ったときより滑りやすく大変危険です。 たとえば、乾いた路面に比べてブレーキが効きにくかったり障害物を避けられなかったりします。スタッドレスタイヤを装着していても、予想以上に路面が滑ることを意識して運転しましょう。 車に不具合がでやすくなる 雪が降ると気温の低下により、車に不具合がでやすくなるため注意が必要です。たとえば、ディーゼル車の場合、気温の低下により軽油が凍結するためエンジンを始動できない場合があります。 軽油が凍結した場合は、気温の上昇による解凍を待つか、JAFもしくは修理業者のレッカーを手配しなければなりません。始動してもアイドリングが不安定になるほか、最悪の場合は走行中にエンジンがストップするケースもあります。 また、気温が低下するとバッテリー液の温度が下がるうえにエンジンオイルも硬化するため、バッテリー上がりにつながります。 なお、一般的な冷却水は不凍液が配合されているため、基本的に冬は凍結しません。しかし、気温が-10°以下に達すると凍結し、最悪の場合はラジエーターが破損する恐れがあります。雪が降る前に、ディーラーや整備工場で外気温に合った濃度の冷却水に交換してもらいましょう。 雪崩の直撃を受ける 車の雪関連のトラブルとして、雪崩の直撃を受けるリスクも挙げられます。舗装された道路を運転する場合は、雪崩の直撃を受けるリスクは少ないものの、観光地や旅館へ向かう際の林道や勾配な坂では注意が必要です。 なかでも、日中に気温が上昇しやすい場所は雪崩が起こりやすいため、車を運転する際は経路を考慮する必要があります。雪崩は鉄筋コンクリートの建物を押し倒せるほどのエネルギーを持っているため、なるべく直撃しやすい道路を避けるようにしましょう。 なお、雪崩によって道路が塞がれた場合は、通行止めに巻き込まれるトラブルもあります。 ホワイトアウトに遭遇する 車を運転している際に雪が降った場合は、ホワイトアウトに遭遇する可能性があります。ホワイトアウトとは、吹雪や大雪により視界が奪われる気象現象のことです。 一瞬で数十cm先が見えなくなり、走行中の車線や前方車などを見失うため、事故につながる可能性があります。気温が低い山間部や、風が強く吹く場所でよく発生する特徴があり、遭遇した場合はハザードランプやヘッドライトで周囲に自分の存在を知らせましょう。 なお、雪片が大きい場合は、気温が高くて風が弱くてもホワイトアウトに遭遇するケースもあります。豪雪地帯で雪が降った際は、気温や風の強さを問わず、十分に注意して運転しましょう。 雪で倒壊した建物による被害を受ける 雪で倒壊した建物によって、車が被害を受ける可能性があります。雪は空気を多く含んでおり、新雪の重さは1m3あたり、50kg〜150kgといわれています。 日中の気温上昇により一度溶けて、再度凍結した場合は1m3あたり300kg〜500kgにも及ぶため、雪で建物が倒壊することは珍しくありません。たとえば、雪の重みに耐えられずカーポートが倒壊し、駐車している車が被害を受けることもあります。 なるべく早く雪下ろしを行い、建物の倒壊による車の被害を避けましょう。なお、補強されていない一般的なカーポートは、積雪20cm程度まで耐えられます。 車の雪対策に必要なグッズ 車の雪対策に必要なグッズを事前に用意しておくと、スムーズかつ安全に運転できます。続いて、車の雪対策に必要なグッズを紹介します。 スタッドレスタイヤ スタッドレスタイヤは、グリップ力が高く積雪路面や凍結路面で効果を発揮するため、車の雪対策に必要なグッズです。ただし、グリップ力が強いとはいえ、道路状況によってはスタッドレスタイヤを履いていても滑るケースもあります。なかでもアイスバーンは特に滑るため、スタッドレスタイヤを履いていても、雪が降った際は十分に注意して運転しましょう。 また、スタッドレスタイヤに加えて、タイヤチェーンを装着しないと通行できない道路もあります。タイヤチェーンは滑り止め器具であり、装着することでより安全に運転できます。チェーン規制は急な上り下りがある峠や、過去に雪による立ち往生が起こった場所などで実施されているため、目的地に応じて車に載せておくとよいでしょう。 解氷スプレー 解氷スプレーは、フロントガラスの凍結を解凍する際に役立つグッズです。 フロントガラスが凍結している場合は、車内の暖房を使ったりお湯をかけたりして解凍する方もいるでしょう。一時的に解凍できるものの、再び凍結するケースもあります。また、お湯をかけて解凍することはフロントガラスのひび割れにつながり、修理代が発生してしまうおそれがあるためおすすめできません。 一方、解氷スプレーはすばやく解凍できるほか、再凍結も予防できるため車内に1本用意しておくのがおすすめです。 冬用ワイパー 冬用ワイパーは、豪雪地帯で運転する際に必要なグッズです。豪雪地帯で通常のワイパーを使用した場合、ワイパーの金具が凍結したり、フレームの隙間に雪が詰まったりして正常に作動しなくなる場合があります。ワイパーが正常に作動しないと、事故につながる危険があるため、豪雪地帯では冬用ワイパーがおすすめです。 また、通常のワイパーは気温が低いとゴム部分が硬くなる特徴があります。一方、冬用ワイパーはゴム部分が硬くなりにくい素材を採用しているため、フロントガラスへの傷を予防できます。冬用ワイパーの値段は、通常のワイパーより3倍程度するものの、豪雪地帯で役立つため取り付けを検討してみてください。 スタックした車の脱出道具 雪道ではタイヤを取られて立ち往生する可能性があるため、脱出道具があるとスムーズにスタックを抜けられます。雪道でスタックした場合は、自力で脱出するかロードサービスを呼ぶ必要があります。ロードサービスを利用すると、費用が発生するほか混雑状況によっては数時間待たなければ、スタックを脱出できません。 脱出道具を備えていれば、タイヤを取られてもスムーズに自力でスタックを抜けられるため、万が一のために用意しておくとよいでしょう。なかでも、タイヤと雪の間に脱出道具を設置して、そのまま発進するだけでスタックを抜けられるものがおすすめです。 スノーブラシ スノーブラシがあると、ボンネットやルーフに積もった雪を出発前に降ろせるため、安全に運転できます。ボンネットやルーフに雪が積もったまま運転すると、走行中に落下し事故につながる可能性があるため大変危険です。 たとえば、ブレーキを踏んだ際にルーフに積もった雪がフロントガラスに落下し、視界が遮られるケースです。出発前にルーフに積もった雪をスノーブラシで降ろしておけば、事故のリスクを軽減できます。車用スノーブラシは、傷がつかないよう設計されているため、購入時に参考にしてみてください。 ジャンプスターター ジャンプスターターは、一時的に電力を供給してエンジンを始動できるため、バッテリー上がりが多く発生する寒い時期に活躍するグッズです。バッテリーは、気温が低い場所で上がりやすい特徴があり、急にエンジンが始動しないケースがあります。バッテリーが上がった場合は、ロードサービスの救援を呼ぶ必要があり、1万円程度の費用が発生します。 また、ブースターケーブルを持っていれば自力でエンジンを始動させられるものの、電力を供給する救援車が必要です。交通量が少ない道路でバッテリーが上がった場合は、協力してくれるドライバーが通ることを待たなければなりません。 ジャンプスターターは、モバイルバッテリーが内蔵されており、救援車が不要なため自分1人でエンジンを始動させることが可能です。 車の雪関連のトラブルの対策方法 車の雪関連のトラブルの対策方法を事前に把握しておくと、スムーズに目的地にたどり着けるほか、身の安全も確保できます。続いて、雪関連のトラブルの対策方法を紹介します。 安全なルートをあらかじめ検索しておく 豪雪地帯では、タイヤのスタックや通行止めに遭遇するケースがあるため、安全なルートをあらかじめ検索しておきましょう。交通量が多い幹線道路は、スタックや通行止めに遭遇するリスクを軽減できるため、参考にしてください。 また、林道や峠道などは除雪が行き届いていないほか、圏外の場所もありロードサービスを呼ぶことが困難なケースがあります。気象情報や道路状況をチェックしつつ、目的地までの安全なルートをいくつかピックアップしておくとよいでしょう。 スピードを出さない 雪道は止まりにくいほか、予想外の方向に進んでしまう可能性があるため、スピードを落として走行しましょう。たとえば、スピードの出しすぎにより交差点の手前で停止できず、他の車と衝突する危険性があります。 雪道を運転する際は、スピードを出し過ぎず前方車との車間距離を十分取って走行することを意識してみてください。なお、雪道は滑りやすくスリップする可能性があるため、急ブレーキや急ハンドルは避ける必要があります。 雪に埋もれたらエンジンを切る マフラーの穴が覆われると、車内に排気ガスが進入し一酸化炭素中毒になるため、車が雪に埋もれたらエンジンを切る必要があります。最悪の場合は死に至る恐れがあるため、必ずエンジンを切りましょう。 また、雪には断熱作用があり内部の熱を逃さずに止めてくれます。かまくらと同様に、内部の温度はさほど下がらないため、窓を1cm程度開けて車内を換気しましょう。 マフラー周囲の雪を取り除く 一酸化炭素中毒になる恐れがあるため、エンジンをかけたまま停車する場合は、定期的にマフラー周辺の雪を取り除きましょう。窓を5cm開けて車内を換気しても、マフラーが雪で覆われている場合は、40分程度で頭痛やめまいなどの症状が出ると言われています。 一酸化炭素中毒による死亡事故は毎年のように発生しているため、エンジンをかけたまま停車する際は、必ずマフラー周辺の雪を定期的に取り除きましょう。 参考:JAF「クルマが雪で埋まった場合、CO中毒に注意(JAFユーザーテスト)」 適切な場所に駐車する 建物の崩壊により、車に被害が出る可能性があるため、適切な場所に駐車しましょう。たとえば、カーポートや家屋の屋根付近などは、雪の重さに耐えきれず崩壊する可能性があるため大変危険です。 車内にいる状態で周辺の建物が崩壊した場合は、運転手や同乗者がケガをするリスクもあります。大雪警報が発表されたら、車や自分の身を守るためにも、崩壊の危険性がある場所を避けて駐車してください。 また、気温が氷点下に達すると、ワイヤー部分の凍結によりサイドブレーキを解除できないケースがあります。気温が氷点下に達した場合は、サイドブレーキは使用せず、以下にシフトを入れて駐車しましょう。 ・AT車……P・MT車……1速(下り坂の場合はR) なお、気温が低いとワイパーがフロントガラスに張り付いてしまうケースもあります。強引に剥がすと、ブレードが折れたりゴムが切れたりする可能性があるため、駐車する際はワイパーを立てるようにしましょう。 まとめ 車の雪関連のトラブルとして、交通事故のリスクが上がったり不具合がでやすくなったりすることが挙げられます。雪崩の直撃や建物の崩壊によって、車に被害が出るケースもあります。雪道を運転する際は、紹介した雪対策に必要なグッズを活用しつつ、スピードを落としてあらかじめ安全なルートを検索しておくとよいでしょう。 また、マフラーが塞がれると一酸化炭素中毒になる危険性があるため注意が必要です。マフラーが塞がった場合は、周辺の雪を取り除くか、エンジンを切り窓を開けて車内を換気しましょう。

雪の日に車のワイパーを立てることは正解?デメリットや注意点も紹介
旧車の再生と維持 2025.06.24

雪の日に車のワイパーを立てることは正解?デメリットや注意点も紹介

雪が降ったときは車のワイパーを立てることが常識とされています。しかし、ワイパーが雪の重みで破損しないか不安に思う方もいるでしょう。ワイパーは、立てても基本的に問題はないものの、状況や扱い方によっては破損するケースもあるため注意が必要です。この記事では、雪が降ったときに車のワイパーを立てる理由やデメリット、注意点を紹介します。 雪が降ったときに車のワイパーを立てる理由 雪が降ったときに車のワイパーを立てることは、破損の防止やフロントガラスを掃除しやすくするためなど、いくつかの理由があります。まずは、雪が降ったときに車のワイパーを立てる理由を紹介します。 ワイパーを無理に動かすことによる破損の防止 気温の低下によりゴム部分が凍結し、フロントガラスに張り付くケースがあります。除雪する際に無理に引き剥がすと、ゴム部分が切れたりアームが折れたりするため、誤操作したときのトラブルを防ぐために、ワイパーを立てておかなければなりません。 また、凍結した状態で無理に作動させると、ワイパーに動力を伝えるモーター部分が破損するケースもあります。凍結した状態で作動させることは、フロントガラスに傷がつく可能性もあるため、ワイパーで除雪作業は行わないようにしましょう。 フロントガラスの清掃のため フロントガラスに積もった雪を掃除しやすくするため、降雪時にワイパーを立てます。積もった雪を降ろす際は、スノーブラシを使用するため、立てたほうがフロントガラスを掃除しやすいでしょう。 また、立てていない状態でフロントガラスの雪を掃除すると、スノーブラシがワイパーに当たることにより、故障するケースもあります。スムーズにフロントガラスを清掃するためにも、降雪時はワイパーを立てておくとよいでしょう。 車を見つけやすくする 自分の車を見つけやすくするため、事前にワイパーを立てるドライバーもいるでしょう。豪雪地帯では車が雪で覆われることが珍しくありません。また、猛吹雪のときは視界も悪くなるため、ますます車を見つけづらくなります。ワイパーを立てておけば、目印となり車を発見しやすくなります。 雪が降ったときに車のワイパーを立てるデメリット ワイパーを立てると、周囲の建物からまとまった雪が落ちて来た際に下敷となり、折れてしまうデメリットがあります。立てたワイパーが見えなくなるほど車が雪で覆われた場合は、除雪時にひっかけてアーム部分を折るケースもあるため注意が必要です。 また、雪の重みによりアーム部分が変形したり折れたりするケースもあります。たとえば、比較的気温が高い本州で降る「もち雪」や「べた雪」などは水分を多く含んでおり、粉雪や乾雪より重い特徴を持っています。 水分を多く含んだ雪が車全体を覆うと、重さに耐えきれずアーム部分が変形したり折れたりする可能性があるため、必ずしもワイパーを立てることが正解とは限りません。気象情報をチェックしつつ、状況に応じて立てるかどうか判断しましょう。 ワイパーが破損した場合は、新たに購入する必要があり以下の費用が発生します。目安として参考にしてみてください。 ・ゴム 1,000円程度・アーム 3,000円程度・モーター 1〜2万円程度 ワイパーに動力を伝えるモーター部分が破損すると、交換費用が高額になるため、雪が降ったときに立てるかどうかよく考える必要があります。 降雪時に車のワイパーを立てるときの注意点 降雪時は、雪の塊が落ちてくるところには駐車せず、すでに載っている雪を落としてから立てるようにしましょう。続いて、降雪時に車のワイパーを立てるときの注意点を紹介します。 雪の塊が落ちてくるところには駐車しない 降雪時に車のワイパーを立てる際は、雪の塊が落ちてきそうな場所に駐車しないようにしましょう。立てた状態で雪の塊が落ちると、アーム部分が変形したり折れたりする可能性があります。特に建物の軒先(のきさき)や庇(ひさし)の真下などは、雪の塊が落ちてくる可能性が高いため注意が必要です。 また、強風の場合はアームが折れるケースもあります。除雪する際の負担の軽減もできるため、風向きを考慮して駐車しましょう。 すでに載っている雪を落としてから立てる 降雪時は、すでに載っている雪を落としてから車のワイパーを立てましょう。降る量によっては数時間で積もるケースがあるため、除雪する際の手間を考慮すると、少しでも雪を落としておいた方がスムーズに目的地へ向かうことが可能です。 また、ワイパーを立てる際はアーム部分を持ち上げる方法が一般的ですが、スイッチ操作が必要な車種もあります。たとえば、ドイツ車であるフォルクスワーゲンのほとんどの車種は、以下の方法でワイパーを立てます。 1.始動スイッチを数秒間ONにしてからOFFに切り替える2.ワイパーレバーを下げる3.サービスポジションに移動したアーム部分を手で掴んで持ち上げる 無理に持ち上げると破損や故障につながるため、愛車の正確なワイパーの立て方を把握しておきましょう。 まとめ 気温の低下によりゴム部分やアームが凍結するケースがあり、無理に動かすことによる破損を防止するためにワイパーを立てます。フロントガラスを掃除しやすくするためや、車を見つけやすくすることも、ワイパーを立てる理由の1つです。 ただし、周囲の建物からまとまった雪が落下した際や、除雪時に引っ掛けて破損させてしまうケースもあるため、注意してワイパーを立てなければなりません。立てる際は、雪の塊が落ちてくる場所を避けて駐車しましょう。

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