シビックは、1972年から現在まで販売が続いている、ホンダの世界戦略を担う代表的なモデルです。ホンダの乗用車のなかで、最も長く同一車名で販売されている車でもあります。
初代は、1972年から1979年にかけて製造・販売されました。世界一厳しいといわれた排ガス規制「マスキー法」を、世界で初めてクリアしたCVCCエンジンが搭載されたことで有名です。5速MTと76psまで出力を向上したエンジンが組み合わせられた「1200RS」も登場しました。
キープコンセプトで開発された2代目は1979年に登場。1983年まで製造・販売されました。通称「スーパーシビック」と呼ばれ、ホンダ初のステーションワゴン「シビックカントリー」がラインナップに加わった世代です。
3代目のワンダーシビックは1983年に登場し、ZC型DOHCの「Si」によってその存在感が高まりました。3ドアハッチバックの後方部分を切り落としたデザインからは、現代にも通じる新しさが感じられます。シビックの黄金時代の基礎を築いた世代であり、ホンダとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。
1987年には4代目にあたる通称「グランドシビック」が登場します。キープコンセプトだと思われがちですが、ダブルウィッシュボーン式サスペンションやVTECエンジンの搭載で、ワンダーシビックから大きく進化を遂げました。
正常進化型の5代目は1991年にリリースされました。このモデルから4ドアセダンにサブネームが付与され、車名が「シビック・フェリオ」となります。VTECエンジン搭載の、いわゆる「EG6」は現在でも高い人気を誇ります。また、人気アニメ「頭文字D」のガムテープ・デスマッチに登場することでも有名です。
1995年に登場した6代目も、5代目と同様に正常進化したモデルといえますが、1997年に初の「タイプR」が追加されたため、特別な扱いをされている世代です。「タイプR」は通称「EK9」と呼ばれ、シビックのなかでナンバーワンと言っても過言ではないほどの人気を誇ります。
5ドアハッチバックがメインの7代目のシビックは2000年に登場します。5ドアハッチバックは、ミニバンに近い高効率なパッケージングで、広大な室内空間を実現させました。さらに4ドアセダンのハイブリッド車や英国製の「タイプR」も追加されますが、全体的に人気が大きく落ち込んでしまいます。
8代目のシビックは2005年にリリースされました。先代の5ドアハッチバックが販売不振だったために、ハッチバックが廃止されます。同時に「フェリオ」のサブネームも廃止されました。2007年には、初の4ドアセダンの「タイプR」が追加され、その人気が復活。しかし、全体的な販売台数は芳しくなく、国内から姿を消すことになってしまいました。
国内のラインナップから外されていたシビックは、2017年7月に国内での発売が正式発表され、10代目シビックとして7年ぶりに復活します。なお、4ドアセダンは寄居工場生産の国産車、5ドアハッチバック及び「タイプR」は英国生産の輸入車です。これまでの「タイプR」は、あくまでノーマル車の性能アップ版でしたが、10代目では設計段階から「標準車」と「タイプR」を別々に開発し、双方のレベルアップが図られました。
11代目のシビックは、正常進化型として2021年に登場しました。ホンダの英国工場の閉鎖に伴って国産車として発売されたため、「タイプR」に関しては、FD2型以来の国産シビック・タイプRとなります。ただし、4ドアセダンの国内導入は見送られています。
シビックは、ホンダを代表する世界戦略車として、国内はもとより海外の人々からも愛され続けてきました。歴代モデル全てに個性があり、ステアリングを握るだけで当時の開発陣の思いを感じることができます。