シーマは、1988年から2022年まで(一時生産終了期間を含む)、5世代にわたって製造・販売されていた、日産が誇る高級セダンです。車名は「頂上・完成」の意味をもつ「CIMA」に由来しています。
初代は1988年1月に発売されました。バブル真っ只中でハイソカーブームが巻き起こっていたこともあり、4年間での販売台数は12万9,000台にも上りました。爆発的ヒットは「シーマ現象」と呼ばれ、この言葉が1988年第5回流行語部門の銅賞にも選ばれたほどの人気ぶりです。
3ナンバーのセドリックとグロリアをベースにつくられ、日産モーター店系向けが「セドリック・シーマ」、プリンス店系列向けは「グロリア・シーマ」として別々に販売されました。大型なボディを存分に活かした、ロングでワイドなスタイルからは高級感が色濃く匂い立っています。
エンジンは、3.0L VG30DET型 V型6気筒 DOHC ターボエンジン(ハイフローセラミック式)と、3.0L VG30DE型 V型6気筒 DOHC NAエンジンを採用。サスペンションは電子制御式サスペンションが使用され、静かで快適な乗り心地を実現しながらも、時に激しく加速する二面性をみせつけました。
1991年8月に発売された2代目からは、「セドリック・シーマ」と「グロリア・シーマ」が統一され、「シーマ」として独立しました。車名だけではなく、クルマそのものにも数多くの変更が加えられています。エンジンには、4.1L VH41DE型 V型8気筒 DOHCエンジンが採用されました。トヨタのセルシオやクラウンに対抗するための変更だったといわれています。
そのほか、先代でピラーレスだったドアがピラードドアに変わってボディ剛性が確保され、ホイールベースが80mm延長したことで後席の居住性が向上しました。内装に関しては、タンカラーの本革シートやアナログ時計が使用され、より上質で豪華に仕上げられています。
1992年9月には、前輪と後輪のトルク配分を最適化するアテーサE-TS搭載したモデル「S-four」が追加されたほか、1993年9月のマイナーチェンジでは、VG30DET型V型6気筒 DOHC ターボエンジンを搭載した「ツーリング」シリーズが登場するなど、さまざまな面で進化や変化のみられた世代です。
3代目は1996年6月に登場しました。エアロパーツや減衰力を高めたスポーティサスペンションを装備したスポーツ志向の「グランドツーリングシリーズ」と、高級感と快適性を追求した「リミテッドシリーズ」の2タイプが設定されます。
デザインに関しては、それまでの控えめな印象が一新、まるでドイツの高級車のような豪快なデザインへと変わりました。また、日本車で初めて前席アクティブヘッドレストとSRSエアサイドバックが採用され、安全面における進化も垣間見えます。
3代目は海外進出が始まった世代でもあります。2代目までは日本国内でのみ展開されていましたが、3代目〜4代目は、日産の海外ブランドであるインフィニティのフラッグシップ「Q45」の兄弟車として販売されました。
4代目が登場したのは2001年1月。「Dynamic&Modern」をコンセプトに、豪快かつ現代的な雰囲気を纏ったクルマへと進化します。目を惹かれるのは、やはりマルチプロジェクターキセノンヘッドランプでしょう。小さな7つのレンズから構成され、世界最高レベルの明るさを誇り、通称「バルカン砲」とも呼ばれる圧倒的存在感を持つヘッドランプです。
エンジンに関しては、直噴 4.5L VK45DD型 V型8気筒 DOHCエンジンが採用されました。日産で初めての直噴V型8気筒エンジンです。アイドリング時は驚くほど静かでありながらも、加速時にはやはりダイナミックな力をみせつける、まさしく「Dynamic&Modern」のコンセプトに相応しいエンジンだといえるでしょう。
内装はモダン色が強く、明るい色使いによって開放感を演出したとともに、8インチの上下可動式大型液晶モニターを搭載して広々と使いやすいコックピットを実現させました。
4代目の販売終了を最後に一度は生産を中止したものの、2012年5月にハイブリッド専用車としてシーマは復活します。環境への配慮と同時に、注力したのは快適性の向上。疲れにくい低反発ウレタンシートや、車内温度を容易に調節できる前席エアコンディショニングシート、騒音を低減するためのアクティブノイズコントロールなどさまざまな装備が追加されました。